ユニバースの誕生から40年。この書体もいつのまにか多くの神話と伝説に包まれていました。そこで簡単にユニバースと原作者のアドリアン・フルティガーについてご紹介しておきましょう。

1928

1948-51
1951

1957
1976
1998

スイス・インターラーケンに生まれる
オットー・シェフリー印刷所の植字工となる
チューリッヒ芸術大学にてタイポグラフィとカリグラフィを学ぶ
卒業制作の小冊子『Schrift,Ecriture,Lettering』が縁で
パリのドベルニ・ペイニョ活字鋳造所に勤務
ユニバース(普遍的な)、メリディエン(子午線)発売
パリ・ドゴール空港用サイン書体フルティガー発売
スイス・ベルン郊外にて書体制作実施中



ライノタイプ・ユニバースについて

 パリの名門活字鋳造所ドベルニ・ペイニョ社のシャルル・ペイニョ社長は、その頃関連会社リヨンの「ルミタイプ」という写植メーカーに資金を投入していました。「ルミタイプ」はサンセリフ活字が隆盛化していた、ドイツ・スイスの市場を狙っていました。しかしペイニョ氏はまったくサンセリフの活字には興味がなかったようです。ですからまだ20代の若さながら、その卒業制作から才能を見抜いていたパンチカッター・フルティガーを適任として、「フーツラをもとにして、そんなようなサンセリフ活字を大至急つくれ」とまことにおおらかなご下命だったようです。

 小説家の原点が結局のところ芥川賞や直木賞に帰結されるように、書体デザイナーの原点も意外に卒業制作から推測されます。フルティガーの卒業制作は蛇腹折りの木版による印刷物で、現在複数の出版社が発売しているほど評価の高いものです。それをみますと機能主義や合理主義が風靡していたスイスの1940年代にあって、ギリシャの昔から、さらに金属活字が揺りかごの中にあった時代「インキュナブラ」を丹念に調査していることが分かります。つまりフルティガーの造形の原点はニコラ・ジェンソンだったことが分かるのです。

 ユニバースは最初ルミタイプ社の写植活字として発表され、モノタイプ社が自動活字鋳植機用として、最後にドベルニ・ペイニョ社が手組み活字用として発売したものです。ですから基本はあくまでメジュームの55番で、写植活字はそれをもとにアレンジされましたし、金属活字は自動活字彫刻機を用いました。それがあまりにも有名なユニバースのファミリー・チャートとなったのです。

 ところでユニバースの所有権を見ると、この書体を取り巻く複雑な企業社会の状況や、流転の原因が見えてきます。ドベルニ・ペイニョ/ルミタイプ(フランス)→ハース社(スイス)→ステンペル→ライノタイプ→ライノタイプ・ヘル→ライノタイプ・ライブラリ(ドイツ)。

 誕生から40年を経て、ユニバースは世界中でおよそ100社程が発売していて、各社のシステムと整合させるためのアレンジが繰り返されてきました。その結果いつのまにかユニバースはすっかり原点を失って痩せ衰えた存在になっていました。

 コンピュータ技術の進化にあわせて、その力強い再生を目論んだのがライノタイプのオットマー・フォーファー氏でした。フランクフルトからスイスのベルンまで車にパソコンを積んで何度も通ったそうです。フルティガーもその心意気にうたれて40年ぶりにユニバースの全面改刻に挑みました。写植活字の時代には容易に実現できなかったこともパーソナル・コンピュータの支援で実現されました。ファミリーは29から59に増強されました。そしてすべての書体に3桁の数字が振られました。1桁目はウルトラ・ライトからエキストラ・ブラックまでのウェイトを表わします。2桁目はコンプレストからエクステンデッドまでの幅を表わします。3桁目はすべて0でポジションを表わします。すなわちこの書体の正統なる管理・発売元「ライノタイプ・ライブラリ」の電子活字であることを証明するものです。

 企業とは自らの過去を否定することはできません。つまりライノタイプ社自身の過去の「ユニバース」と「ライノタイプ・ユニバース」の比較はおこなわれていません。それは「ヘルベチカ」と「ノイエ・ヘルベチカ」に関しても同様に見られます。しかしこの両者を比較すると歴然たる違いがあります。もちろんそこに差異がなければ手間暇と資金を投入するはずもありません。すでに欧米の主流は従来の「ユニバース」「ヘルベチカ」とはオフィスユーザや日曜プリンタのものであって、デザインや印刷・出版のように大量複製につながるものはあたらしい「ライノタイプ・ユニバース」「ノイエ・ヘルベチカ」とするのが常識になっています。

 書体とは蕎麦造りにおける蕎麦粉であり、パン造りにおける小麦粉のような物かもしれません。すなわち地味な存在ですが決定的な違いをもたらします。そして良いものは悪いものより高価なのは仕方ないかもしれません。しかし「ライノタイプ・ユニバース」は全書体が1枚のCD-ROMに収録されて18万円という高額で発売されました。小社もライノタイプの代理店ですがこの価格で泣く泣く購入しました……。ですからこんな不況の時代に皆さんにご紹介することにためらいがありました。でも……せっかくユニバースを用いて頑張ってデザインしても、そろそろ国際ステージにそれを提示することは問題がでてきました。そんな訳で大げさではなく、ひっそりと一部のかたにだけこんな形で情報を提供することにしました。

「ライノタイプ・ユニバース」は一括してドイツのライノタイプ・ライブラリ社(ハイデルベルグ・プリプレス社の関連会社)が管理しています。もちろん最新のマルチプラットフォームによって、マックでもPCでも稼働するフルパワーが備わっています。ですからCD-ROMには使用者の名前が刷り込まれてきますし、登録・バージョンアップ対応も万全ですが、入手がやや面倒であり、2〜3週間時間がかかるのが難点です。

 もしこの新「ライノタイプ・ユニバース」に関心のあるかたは、小社『文字百景』23・30号をご覧ください。また各種資料用意しましたのでご希望のかたはご相談ください。



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