第7回 二期会日本歌曲研究会演奏会  2009年6月6日() 
                                                  
旧東京音楽学校 奏楽堂


先週に引き続きのコンサートでしたが、おかげ様で元気に歌い切ることができました。
午前10時前、小雨の中、ドレスと着物など大荷物を抱えて傘を差して奏楽堂まで歩きます。
上野駅公園口の改札から大混雑です。
ルーブル美術館展は長蛇の列、阿修羅展へお出かけの人の波、皆さまの熱意がすごいです。

午後1時開場ですが、その前からいつものことですが奏楽堂の門前には長蛇の列ができています。
1時半開演。 席は満席です。 毎年楽しみにしていらっしゃる方も多く、有難いことです。
今回はソロだけでなく、石桁真禮生先生(1916〜1996)の民話による四重唱曲「河童譚」をというご指名があったので、お引き受けいたしました。


さてまずは第1部の2番目に私の独唱。
平井康三郎作曲の『秘唱』と『うぬぼれ鏡』です。



小黒恵子作詞の『うぬぼれ鏡』は中年にさしかかった女性の心理を心憎いまでに表現されている独白形式のユニークな曲です。
何といっても最初の一声が「まあ 今朝のわたし なんて美しいんでしょう」と始まります。 テンション上げて、そんな気分にならなくてはフォルテでこんな事は言えませんものね!




曲もウインナワルツ風にシャレています。
「気づかなかった ほくろでさえ 何故かとってもチャーミング」と言った自分の言葉に思わず
「うふっ!」と含み笑いを発してしまう女心。



音楽の運びはワルツのリズムに乗って軽快にそして主人公の心の動きによって揺れます。
最後は「ああ 昔なじみの 鏡よ鏡 あんなにも 若く美しかった日々を おぼえていてください」とオペラティックにクライマックスで曲が終わります。

さあ、第1部の最後を飾る『河童譚』の始まり始まり。

『河童譚』について石桁先生が書かれた文章があります。  

1954年、二期会から大阪労音で演奏する目的で四重唱曲の作曲を依頼された。そこで僕は、ありきたりのテキストを四重唱曲にしたところで余り意味がないし、4人の登場人物が出る譚詩ふうにものに作曲したいと考え、松本重真氏に作詞をお願いすることにした。
松本氏は出身地の福島県白河地方の民話から、この河童譚を書いて下さった。

登場人物


 
河童河太郎・・実にいい気ないたずら者で、底抜けにくったくのない河童(バリトン)

 
お 花 ・・・村娘。早くお婿さんがほしい年頃(ソプラノ)

 
おっ母さん・・お花の母親(アルト)

 
与 作・・・・村の若者で、お花にほれている。少々たりない(テノール)

曲は陽旋法と長調を基にしたやや日本風な旋律を主としているが、こだわらないで平易に作った。連弾の伴奏で、4人の歌い手が地唄を合唱したり、登場人物として独唱や重唱をするという仕組みである。

初演(伊藤京子・佐々木成子・渡辺高之助・畑中良輔)のときから、存外にアピールして、その後何回となく演奏された。この頃ではちょっとしたコスチュームでアクトやライトをつけて、すっかり楽しいものに演出するようになっている。


一昨年NHKTVで、米山ママ子たちの影絵風のパントマイムを画面にしての四重唱は、成功した演出の一つだった。(音楽の友社 『河童譚』の楽譜より引用)


演奏後、かじったきゅうりを持った河童を囲んでホッとした表情の歌い手とピアニストたちです。

左から
ピアニスト  朴 令鈴
与作     小林 彰英
河童     宮本 哲朗
おっ母さん  清水 邦子
お花     竹内 宏佳
ピアニスト  東井 美佳


ある村のはずれの深い沼に、人間に化け村人を騙すのが何よりの楽しみな河童が住んでいました。
村の貧しい百姓のせがれ与作が、村のかわいい娘お花に想いをよせています。一方お花は村の村長の息子、長太郎に思いを寄せています。河童はそのお花の長太郎への思いを知り、長太郎に化けてお花に結婚しようといって騙します。
結婚が決まって、めでたしめでたしと祝杯をあげていると与作が戻ってきて長太郎は家にいたといい、河童が長太郎に化けていたことがばれてしまいます。
福島県白河地方の民謡を基にした短いオペレッタで、欲の深い人間が空想の世界の河童にだまされてしまうというお話です。

皆様の楽しそうな笑い声が色々な場面で聞こえ、演奏しながら私もおっ母さんになりきって楽しかったです。
普段なら恥ずかしいことも、役それぞれの扮装やメークをするとワクワク、ウキウキして何でもでき
ちゃいますね。 
この写真を見ただけでも、雰囲気が
伝わってきますでしょ!  
またどこかで演奏できるといいですね。