畑中良輔・更予の米寿&卒寿記念コンサート(2010年2月12日)



立春を過ぎてもまだまだ雪が舞いそうな寒い日です。
畑中先生と更予先生の記念コンサートが2月12日に開催されました。
この日は畑中良輔先生の88回目の誕生日です。更予先生は5月に卒寿を迎えられます。

畑中先生には私が大学院のときオペラ科の授業でそれはそれは厳しい身の縮むような指導を受けました。
それからはリサイタルの招待状をお送りする度に必ず励ましの葉書きを頂き、先生の優しさに感謝していました。

「青の会」のコンサートで楽しいトークを聞かせていただいてお元気でいらっしゃることをいつも陰ながら喜んでおります。

会場は超満員です。
先生は音楽界の大御所でいらっしゃるので、お客様方も大物が沢山いらしてます。
久しぶりに遠山一行さん、三善清達さんのお元気な姿も見られうれしく思いました。
開演までプログラムの「ご挨拶」を読んでいると昨年暮れからつい先ごろまで入院されていたと書かれていましたのでとても気にかかりました。
  当日のプログラムの表紙

いよいよ始まりです。
ステージの中央まで歩いていらっしゃるのに足元が少し不安です。 声は変わらずお元気で「入院してしまって、足がちょっと弱ってしまい、いつもだったらビロードのような歌をお聞かせできるのですが、今日はちょっとガラガラ声になってしまって、ほんとのガラコンサートになってしまいました。」 と、冗談をおっしゃり会場の皆様を笑わせてくださっています。

さてまず初めは慶応ワグネル男声合唱団OB・現役有志の演奏です。
先生は38歳のときからワグネルを指導されていて今年50周年なのだそうです。
すごい歴史ですね。
そのワグネルと藤沢男声合唱団で草野心平の詩による 『富士山』 の演奏です。 
アカペラで雄大な富士山をすばらしい迫力のある歌声で歌い上げていました。

余談ですが実は、私の夫も慶応在学中、ワグネルの団員でした。 聞くところによるとやはり厳しいご指導で、新曲を練習するときなど譜読みをきちっとしていないと、「僕帰る」といって本当に帰ってしまわれたそうです。
また、ワグナーの『タンホイザー』を福永陽一郎先生の編曲で男声合唱のみで定期演奏会の演目にしたときには、今回の出演者、平野先生、瀬山先生、そして昨年亡くなられた指揮者、若杉宏氏の奥様の長野羊奈子先生らがソリストで出演されたそうです。 今考えるとなんと贅沢な学生合唱団の演奏会だったのでしょう。 

合唱が終わり、指揮台から降りられるときも少し足元がふらついています。  カーテンコールに出ていらして戻られるときに舞台で倒れられました。  大変なことにならなければいいと気が気ではありません。 尊敬して止まない先生が今日という日を頑張りすぎて倒れられては困るのです。
まだまだ元気でいてくださらなくてはならないのですから。
それから先生が解説をなさりながらソロの演奏が始まるのですが、私は心配で心臓がドキドキして演奏を聴く状態ではありませんでした。
3番目には 『天の夕顔』による四つの歌 をご自身で歌われます。
歌う前に 「皆がやめろやめろと言うけれど、ぼくはやめない」 と、おっしゃって歌い始められました。
ピアノに摑まりながら柔らかいやさしい声がホールに響きます。


   こちらがチラシです。

プログラムを見てわかるように先生の作曲された曲と作詩されたもの、ピアノ曲 『九つのピアノプレリュード』 などすべて先生の作品なのです。
先生の多彩な才能が窺えます。
ピアノ曲は花岡千春さんによって演奏されました。 心地よく音が流れ、心が洗われるような美しい曲でした。

平野忠彦先生は傑作な身振り手振りで楽しい演奏をされました。

瀬山先生は畑中良輔作詞・三善晃作曲の 『超える影に』 を歌われました。

畑中良輔作曲、低声のための 『三つの抒情歌』 をご自身で歌われました。
胸に染み入るすばらしい演奏でした。

私もリサイタルで歌ったことのある大好きな歌、『「八木重吉の詩による五つの歌』 が最後に小泉惠子さんの歌、花岡千春さんのピアノで演奏されました。
八木重吉がまだあまり知られていなかった頃、詩を読んで自然にメロディーが浮かんできて、でき上がった曲だそうです。

なんとか無事にコンサートは終わりました。 いい演奏をたくさん聴かせていただきました。
でも心の奥がぎゅっと締めつけられるような痛みが残りました。             
あんなに素敵な歌がお歌いになられるのですもの!
どうかまだまだお元気でいらしてください。 心からお祈り申し上げます。