METビューイング オッフェンバック歌劇「ホフマン物語」 (2010年1月29日)



指 揮 : ジェイムス・レヴァイン
演 出 : バートレット・シャー
演 奏 :メトロポリタン歌劇場および合唱団

《出 演》

ホフマン      : ジョセフ・カレーハ
オランピア     : キャスリーン・キム
アントニア/ステラ : アンナ・ネトレプコ
ジュリエッタ     : エカテリーナ・グバノヴァ


さいたまMOVIXでは上演されなくなったので、早起きをして新宿まで行きました。
午前10時開演で新宿ピカデリーで観賞しました。 
場面転換が多いせいなのか音響のせいなのか正直とても疲れました。

さいたまでの観賞でも半ば諦めていた肝心な音響の方は、こちらもあいも変わらず貧弱でさらに悪いことにこちらは音がうるさい! 音が割れるのです。 いくらか聞いていくうち諦めがつきなんとか聞けましたが・・・。 
しかしとても疲れます。 今後の改善に期待したいですね!

さて、配役は私にとってネトレプコ以外ほとんど無名の歌手です。
脇役はベテランが多いようでしたがキャスト表には載っていないのでわかりません。

やはり貫禄があったのは、アントニア役のネトレプコでしょう。 先だってお子さんを生んで少しふくよかになったのでしょうか、声も前よりまろやかになったように聞こえましたが、生ではないのでよくわかりません。 ただ役柄としては、胸を病んでいて、歌うと命が短くなるので父親から歌うなと厳命されているにしては立派すぎるかな、と疑問は残りますが。
主役のホフマン役のカレーハはとても若く、インタヴューによると初役でMETも初出演です。 地中海のマルタ島出身です。
ちょっと高音を延ばすときに変なビブラートがかかり気になりましたが、声は立派ですし、最後までしっかりと歌えてましたし、二幕以降ではより声にまろやかさが出てきて、音楽性もあり将来有望なのではないでしょうか。
昔、無名だったパヴァロッティが初来日の時、確か『リゴレット』をやりましたが、その時のパヴァロッティを思い出しました。 そのときもこのカレーハのように音を延ばす時微妙なビブラートの癖がありました。
しかしその後は皆さんご存知の通り世紀の偉大なテノールになりましたものね。
先だっての『トゥーランドット』をうたったテノールのジョルダーニといい、カレーハといい、日本にもこのくらいの若手のテノール出てきてくれるといいのですが。 体つきも大柄で日本人の我々とは違いますが!

韓国系の(多分?)小柄なキムというコロラトゥーラ・ソプラノの歌手も最高音も綺麗に出していましたね。
聞いている方にとってもほとんど不安なく、あの至難のオランピア役を見事にこなし、拍手喝さいを浴びていました。
ジュリエッタ役グバノヴァも安定した歌で文句なしです。

日本と大きく違っていつも感心するのは脇役です。
悪漢4役を一手に引き受けるアラン・ヘルドの存在は圧巻でした。
多分他も常連のベテランぞろいなのでしょうが、聴衆を笑わせ、歌の方もしっかり歌い見事です。
こういう役もしっかり固めているので全体がまとまるのでしょう。

レヴァインの指揮ですが、オッフェンバックのあの微妙な音楽のニュアンスが足りない気がしました。
堅実にオ−ケストラは鳴らしてはいるのですが、オッフェンバックの持つあそびがないっていうのでしょうか。 また、フランスの作曲家の持っている独特な上品な味わいがうすい気がしました。

今回の演出であるバートレット・シャーはミュージカル『南太平洋』でトニー賞を受賞しています。
シャーはMETでは『セヴィリアの理髪師』を演出しザルツブルグ音楽祭では『ロメオとジュリエット』を演出して新感覚のオペラ演出家として注目されています。
今回のステージはカフカにインスピレーションを受け、登場人物のキャラクターを精神分析的な観点から捉えられ幻想的で謎めいた舞台になる予定とプログラムに掲載されていました。
登場人物が大勢なのですがその一人一人に存在の意味を持たせ、細部にわたって練り上げた演出を見て取ることができました。