ウィーン国立歌劇場 2008年 日本公演(10月31日 金) 東京文化会館
「コシ・ファン・トゥッテ」、「フィデリオ」、「ロベルト・デヴェリュー」をもってウィーン国立歌劇場がやって来ました。
どれも魅力的で聴きたいものばかりですが、そんなに軍資金があるわけではないので、聴いたことのないドニゼッティの「ロベルト・デヴェリュー」に行きました。
あの「ランメルモールのルチア」の作曲家であるドニゼッティはシューベルトと同じ年(1797年)に生まれています。彼の作品は、皆さまもご存知のように主役のヒロインが至難なドラマティックなアリアを歌う難役が多いのです。聴く側は歌手の業と音楽を期待して行くわけですから、歌手はコンディションを調整には神経をさぞ使って臨んでいることと思います。
この演目だけ演奏会形式です。D席24000円 5階のセンター席で聴きました。
指揮: フリードリッヒ・ハイダー
ウイーン国立劇場管弦楽団および合唱団
エリザベッタ(イングランド女王、ソプラノ)
: エディタ・グルベローヴァ
サラ(ノッティンガム公爵夫人、エリザベッタの女官、メゾ・ソプラノ)
: ナディア・クラステヴァ
ロベルト・デヴェリュー(女王の寵臣エセックス伯爵、テノール)
: ホセ・ブロス
ノッティンガム公爵(ロベルトの友人、サラの夫、バリトン)
: ロベルト・フロンターリ
序曲はフレーズの出だしが少し揃わなかったりしたところなど気になる部分は多少ありました。
演奏会形式なので視覚的に仕掛けがないぶん音楽に集中して、より耳を傾けることができました。
グルベローヴァは一幕に一曲は難曲と思われるアリアがあり、丁寧に冷静に音を創っていき、私たちを物語の中へと引っ張っていってくれました。
女王としての威厳をもって、しかしながら自分の愛する人への想いを激しく歌い、テクニックと深い表現力とを駆使してたっぷりと酔わせてくれました。コロラトゥーラでの高音の出し方の美しいこと、天から舞い降りるかの如くすばらしかったです。
当然低音も出てくるので、そこは音を軽く作って、負担をかけないようにして、表現に変えている歌い方ではあったけれど、致し方ないと思われます。
サラもノッティンガム公爵も声、表現共にすばらしいと思いました。
デヴェリュー役のテノールはちょっと声に伸びやかさが足りないような気がして少し不満でした。
グルベローヴァは幕ごとに3回衣装を変えて登場してそちらの方も楽しませてくれました。
初めて生で聴いたオペラでしたが、ドラマチックで見ごたえのあるすばらしいオペラでした。
11月13日にサントリーホールでグルベローヴァのソロ・コンサートがあり、チケットは買ってあったのですが残念ながら28日の自分のコンサートのリハーサルと重なってしまい行けませんでした。
女性のお歳のことを言ったら失礼かもしれませんが、グルベローヴァは1946年12月23日生まれです。でも少しも衰えることなくあれだけの高音を楽々歌ってしまいます。響きも艶やかです。歳を重ねて益々円熟味も増しているようです。いつでしたかインタビューで「疲労が少ない効率の良い高音の出し方をつかめたのでまだまだ歌い続けることができます」と語っていらっしゃいましたので楽しみですね!
歳と共に歌い方を変えていく、日々研究を重ね、努力できる者が永く満足のいく演奏ができるということですからね。
今日のこの感動を胸に自分の演奏に何か力を頂けたような気がしました。