METライブビューイング 2009年1月31日〜2月6日上映
第5作 ジャコモ・プッチーニ作曲(1858年〜1924年)「つばめ」
主なる出演者
マグダ アンジェラ・ゲオルギュー
ルッジェーロ ロベルト・アラーニャ
ランバルド サミュエル・レイミー
リゼット リゼット・オロペーサ
プルニエ マリウーシュ・プレンチュー
指揮 マルコ・アルミリアート
2009年1月10日MET上演より
2月6日 MOVIXさいたまで映画鑑賞しました。
今回の案内役は先月「タイス」を歌ったルネ・フレミングです。
「つばめ」の中のアリア「ドレッタの夢」は単独で歌われていて、皆さまもよくご存じのことでしょうが、このオペラがMETで上演されるのは1936年以来のことです。
‘96にロンドンのコヴェントガーデン歌劇場で夫婦であるゲオルギューとアラーニャが公演し、メトロポリタン歌劇場でも公演できないだろうか、ということで2008年12月31日にMET新演出初演となりました。歌える歌手が増えてきているということでしょうか。
今まで余り上演される機会がなかったオペラもこれからは光が当たるということでしょう。「タイス」は30年ぶりでしたし、「つばめ」は73年ぶりだったわけですから。
開演に先立ちゲルブ総裁が舞台に出て来て主役のゲオルギューが風邪をひいている事を告げました。この映像は末永く残るので、歌手の名誉のために一言お断りしたかったのでしょうが、言って欲しくない一言ですね。生身の人間ですから、いつも万全とはいかないことは充分承知していますがその一言が気になって聴く側の私にとっては逆に鑑賞の妨げになってしまいました。
さてストーリーですが、パリに住む主人公のマグダは銀行家の愛人です。しかし真実の愛を夢みています。そこに世間知らずの青年ルッジェーロが現れてマグダに恋をします。
しかし、つばめのように海をわたって遠くに行っても必ず古巣へ戻ってくるという、結ばれることのない恋の物語です。
一幕で歌われる「ドレッタの夢」はまあまあ歌っていましたが、中音から低音にかけてはやはり鳴りが悪くて、咽喉も余程乾燥するらしく、演じるよりコンディションを整えるのに気を配っている様子が見て取れて、私はオペラの世界に溶け込めなくて残念に思いました。
女中のリゼットは「フィガロの結婚」のスザンナ役でMETデビューしています。
よく響く声でお茶目な感じが良く出てました。詩人役のブレンチューはこの作品がMETデビューだそうです。やわらかい音色がきれいでしたが、詩人の持つ人間味の深さまではまだまだ表現が足りないように思われました。ゲオルギューとはルーマニアの同郷の出身ということでした。
舞台は1920年代のパリ。衣裳も舞台装置など色彩がきれいで楽しめました。
ゲオルギューも次第に声が出て来て最終幕での二人の二重唱は心を打つものがありました。しかし幕切れの高音ではちょっと中途半端な終わり方のようでしたので、この音に意味が感じられず、芝居の終わり方に納得できませんでした。
家に戻ってからこの場面をCDで聞き直してしまいました。しかし、このオペラ自体ちょっと終わり方があっけないかなという印象を持ちましたのでゲオルギューの歌い方だけの責任ではないかもしれませんね。
今回のライブビューイングは全米に無料配信されているそうです。また劇場にも子ども達を招待しているそうです。次世代の子供たちにもオペラに興味を持て欲しいということで、歌手たちによるワークショップも開かれたり様々な取り組みが成されています。
日本でも学校を回ってオペラやコンサートを提供する試みはありますが、もっと大々的な取り組みをして子供たちにすばらしい本物を聴いてもらいたいですね。
METで本番を観るにこしたことはありませんが、私にとっても滅多に見ることのできないオペラを、このように映画で鑑賞でき大変勉強になりました。
次回は2月14日(土)から2月20日まで(金)
グルック作曲「オルフェオとエウリディーチェ」が上映されます。