10月24日(金) 第21回 東京国際映画祭 特別招待作品
(渋谷BUNKAMURAオーチャードホールにて)
MET創立125周年記念上映
『The Audition〜メトロポリタン歌劇場への扉』を観て
去年の大晦日に歌舞伎座でメトロポリタン歌劇場の「ロメオとジュリエット」を観たことはすでにHPでもお話しましたね。
私は行かれませんでしたが、今年の1月から5月にかけて、「MOVIXさいたま」はじめ松竹系の映画館および「めぐろパーシモンホール」で「ロメオとジュリエット」、「ヘンゼルとグレーテル」、「マクベス」、「マノン・レスコー」、「ピーター・グライムズ」、「トリスタンとイゾルデ」、「ラ・ボエーム」、「連隊の娘」などがMETライブビューングとして上映されました。
つい先日の10月6日から一週間、NHKのBSハイビジョンTVで「セビリアの理髪師」、「マクベス」、「ロメオとジュリエット」、「ヘンゼルとグレーテル」、「連隊の娘」をやってましたね。ご覧になった方も多いことと思います。幕間に歌手のインタビューや楽屋、舞台裏なども見ることが出来てオペラファンにとっては楽しかったことと思います。
10月24日金曜日、秋晴れの日が続いていたのに、今日に限って雨です。乾燥しきっていたので咽喉のためにも恵みの雨とでもいいましょうか?
今更、若者たちの頑張っている姿を見てもと内心ちょっぴり思いながら渋谷のBUNKAMURAの映画祭に足を運びました。
これはMETライブビューングの2008/2009シーズンの開始も意味しています。
内容はMETの歌劇場の登竜門であるオーディション風景を撮ったものです。毎年、この名門歌劇場で歌えるチャンスとオペラ界でのキャリアの入り口を求めて世界中から多く若い才能に溢れた若者たちが集まってきます。2007年最終選考までの1週間を追います。
準決勝に残った11人が1週間共に過ごしながら、決勝に臨みます。最終的に6人が受かるまでの道程を色々な角度から描いていきます。指揮者、コルペティ(歌劇の演目をパート別にピアノ伴奏などで練習をつけてくれる役回りの人)などの指導を受け、各自の良い持ち味、魅力を引き出してくれるようなアドバイスをもらいながら練り上げていきます。
まずスタッフが将来有望な歌手の卵として丁重に扱ってくれていることに心を打たれました。このオーディションに何としても受かりたいと思っていて必死のあまり興奮気味の人、これに受からなければ歌をやめて他の仕事につこうと思っている人、など様々な人間模様を描きながら進行していきます。競争心はあってもお互いの良さを認め合い、励ましあいよい雰囲気です。
そんな合間に歌劇場の前で写真撮影があったりもします。
そのそばにベビーカーを押した女性が見守っています。スタッフが「この子のお父さんは誰?」と叫びます。「僕です!」と手を挙げて。そんな微笑ましい光景も撮られています。
私も彼らと同じ年代の時、2歳の娘を育てながらNHK/毎日新聞主催の日本音楽コンクールを受けていましたので、今思うと随分無謀とも思えることをやっていたのですね。
本選の時、ドイツ歌曲、日本歌曲はピアノ伴奏で、アリアは東京都交響楽団、森正指揮でヴェルディの「運命の力」より「神よ、平和を与えたまえ」を歌いましたが、あまり丁寧に扱ってもらえず、こちらの歌いたい意志なども余り聞き入れてもらえなかった記憶があります。緊張ばかりで楽しんだ思いはなかったですね。
映画ではお互いに信頼しきって身をゆだねて、磨き上げていく様が羨ましく思われました。
上映後、2007年ファイナリストのアンジェラ・ミードさんが舞台挨拶と歌唱披露がありました。
劇場側の歌手を育てていく姿に感激させられましたし、フレッシュな人たちのパワーも見ることが出来て、まだまだ私も若い人たちに負けないように頑張りたいと思いながら帰路に着きました。