新国立劇場オペラ公演 ロッシーニ作曲「ラ・チェネンレントラ」(平成21年6月14日)
グリム童話で知られるシンデレラ物語、おとぎ話の枠組みを残す中、笑いと感傷を交えて、みじめな境遇の娘が善良な心によって王妃となるまでを大人の恋愛劇として描いたのが、喜歌劇『ラ・チェネレントラ』です。
先日までMETビユーイングで5月30日から6月5日までこの『ラ・チェネレントラ』を上映していました。
両方見ることが出来れば、もっとよかったのですが、ちょうど自分の演奏会や練習などで時間を作ることができず見られませんでした。
このオペラ公演では以下の配役で行なわれました。
指揮 : デヴィッド・サイラス
演出・美術・衣装 : ジャン=ピエール・ポネル
ドン・ラミーロ : アントニーノ・シラグーザ (テノール)
アンジェリーナ(チェネレントラ) : ヴェッセリーナ・カサロヴァ (メゾ・ソプラノ)
ダンヂーニ : ロベルト・デ・カンディア (バリトン)
ドン・マニフィコ : ブルーノ・デ・シモーネ (バス)
アリドーロ : ギュンター・グロイスベック (バス)
クロリンダ : 幸田 浩子 (ソプラノ)
ティーズベ : 清水 華澄 (メゾ・ソプラノ)
東京フィルハーモニー交響楽団、新国立劇場合唱団
舞台の様子はカメラに収めることはできないし、かと言って文章ばかりでまわりの雰囲気が伝わらないのもつまらないかもしれないと思いまして、ちょっと恥ずかしいのですが劇場の入口でまるでおのぼりさんのように、記念撮影です。
エントランスに飾ってあった、美しい花のオブジェです。
日曜日のマチネーとあってほぼ満席です。
チェネレントラ役のヴェッセリーナ・カサロヴァは『セビリアの理髪師』のロジーナでデビュー。 『カルメン』『バラの騎士』のオクタヴィアンなどで大活躍のメゾソプラノです。 特に低音は深みがあって柔らかくて実に美しい!
高音は独特なフォームで出していて、少し硬い音色に感じましたが、全体的に丁寧な歌唱振りには好感をもちました。
王子(ドン・ラミーロ)役のアントニーノ・シラグーザは質のいい声のテノールで甘く上品です。 心地よく胸に響いてきます。 ハイCの最高音も2回とも充分延ばし、拍手喝さいを貰っていました。 久しぶりにいいテノールの生を聴くことができました。
どの役の方たちもそれぞれの持ち味を生かした配役で粒が揃っていてアンサンブルの多いオペラでもありますので、バランスよく聴くことができました。
ロッシーニのオペラの特徴でもある装飾的なパッセージ、音を転がすというのが何とも皆さん素晴らしく軽妙且つ圧巻で、楽しませてもらいました。
5重唱、6重唱などはそれぞれ早口でまくし立てていながら、しかもアンサンブルもピッタリというのはなかなか難しいでしょうに、見事でした。 ロッシーニはアリアは余りなく、これらのアンサンブルが命なのです。 こういうオペラが来日公演ではなく、新国立劇場で聴けるのは嬉しいことです。
音楽全体をとりしきるデヴィッド・サイラスという指揮者は初めて聞く名前で、なんでもこの新国立劇場初登場だそうですが全体を綺麗にまとめ、またロッシーニの音楽を楽しく聞かせてくれました。
東京フィルハーモニーも生き生きと楽しんで音楽を奏でていました。
いつもオペラというと、NHKホールか東京文化会館がほとんどでしたからあまり他の劇場と比較は難しいのですが、もう少し声を際立たせ、しかももう少しソフトに響いてくれるといいのにと思いました。 席にもよるのかもしれませんが若干硬い感じがしました。
これも時間がたつにつれ馴染んで綺麗になっていくのでしょうか?
今回の演目は、配役が際立ってよかったのでチケットの入手も困難で、発売当日に売り切れでした。
やっぱりファンはちゃんと見ているのですね!
舞台も客席も盛り上がる、オペラはこうでなくてはね!