アンナ・ネトレプコ(ソプラノ・リサイタル)を聴いて (5月5日)
5月1日、東京オペラシティコンサートホールに出かけました。
自宅にCDもありましたし、数ヶ月前、NHK・BSでイギリスの毎年恒例のプロムスを放映していました。
オケ伴奏でオペラ・アリアを何曲か聴き、丁寧で、好感が持てたので、来日するとのことでしたのでチケットを求めました。
演奏会のプログラムは、当初の予定では、オペラ・アリアはまったくなく、前半がモーツアルトのコンサートアリアが2曲とリヒャルト・シュトラウスのリート。後半がラフマニノフの歌曲でした。
しかし実際の公演では以下のプログラムでした。
《前半》
1. モーツアルト作曲:歌劇『イドメネオ』よりレチタティーヴォとアリア「いつ果てるので
しょう...お父様、お兄様、さようなら!」
2. リヒャルト・シュトラウスの歌曲より6曲
「献呈」、「セレナード」、「子守歌」、「夜」、「朝」、「ツェツィーリエ」
3. グノー作曲:歌劇「ファウスト」より「宝石の歌」
《後半》
4. ドヴォルザーク作曲:歌劇『ルサルカ』より「月に寄せる歌」
5. ラフマニノフ作曲の歌曲より9曲
「私の窓辺に」、「彼女たちは答えた」、「夢」作品8-5、「乙女よ、私のために歌わない で」、「リラの歌」、「ここはすばらしい場所」、「夢」作品38-5、「不協和和音」
《アンコール》
1. プッチーニ作曲:歌劇『ラ・ボエーム』より「メゼッタのワルツ」
2. プッチーニ作曲:歌劇『ジャンニ・スキッキ』より「私のいとしいお父さん」
3. ドニゼッティ作曲:歌劇『ランメルムールのルチア』より「あたりは沈黙に閉ざされ」
舞台に現れただけで、花があり、かわいらしく、チャーミングでした。
リヒャルト・シュトラウスの歌曲はとてもポピュラーなプログラムで、私もよく歌った曲でしたので、とても懐かしく思いました。
ピアニッシモからフォルティッシモまで、声を自由自在に操り、コントロールもよく、素適でした。
感情の起伏を表現するのに、ちょっと身体を動かしすぎるところが、すこし気になりましたが・・・・・。まぁ、カラスもそうでしたね。
「宝石の歌」も声と役にぴったりで申し分のない演奏でした。
「ルサルカ」のアリアもダイナミックで且つ繊細で情景が目に浮びます。
ラフマニノフの歌曲を9曲。これはめったに日本では聞けないもので当夜の演奏では一番の聞きもののはずでした。事実そうだったのですが、聴きなれていないラフマニノフということと、その他の曲の演奏があまりにもすばらしく、まして名曲中の名曲のアリアを「アンコール」で立て続けに歌うものですから、すっかり霞んでしまうほどでした。
上手く歌えたとき袖に戻るときは、ピアニストと手をつなぎ、そして手を振りながら、嬉しそうに戻っていくのです。本当に演奏会を楽しんでいるように、また子供のようにはしゃいでいるようにも見えました。
アンコールの「ムゼッタのワルツ」、「私のいとしいお父さん」、『ランメルムールのルチア』から「あたりは沈黙に閉ざされ」の3曲これはこの演奏会の白眉でした。
よく「アンコールこそ、その日の最高のプログラム」といわれますが、まさにこの3曲がそうでした。
CDの録音は、スタジオ録音であり、また二年前の3月におこなわれた録音ですので、それからますます磨きがかかったのかもしれませんが、今回の演奏会の歌唱のほうが声の響きも、表現力も数段上回っており、まさに絶好調!といえるほどでした。
今後ますます楽しみな歌手です。
日本での最後の公演でしたので、大サービスだったのかもしれません。
ルチアを歌い終わったときには、「ふぅ!」と。
「大変だったけれど、歌ったわ!」と言っているように見えました。
若さのパワーとヴァイタリティですね。そして愛苦しい美貌の持ち主なのです!
オペラのヒロインのすべてにぴったりと言えるほど可能性を持っているネトレプコでした。
とにかく幅広い声の表現力(コロラトゥーラといわれるものからドラマティコといわれる声質をもっている、という意味ではなく、自分が歌いたい曲に自然に同化させてしまう柔軟性のある声質といったほうがぴったりなのです。)、声の輝き、発声の無駄のなさ、聞いている聴衆にたいするエンターテイナーぶりは、同年輩の歌手を一段も二段も上をいっているように思われました。
久しぶりに声に堪能いたしました!!
最後にご希望の方にサイン会までしてくださっていました。
本当に楽しい一日でした。
2002年にメトロポリタン・オペラでデビューしたばかりで、2006年のメトの日本公演で「ドン・ジョヴァンニ」のドンナ・アンナを歌う予定です。
今回聴けなかった方、次回は是非!