第四回 アキバ


秋葉原のことをアキバという。
小学校時代の友人の一人は「アキバハラだ」と言って譲らなかったが、正式には「アキハバラ」だ。それほど「アキバ」という呼び名は、その特異な文化と共に世に浸透していた。

アキバ
◆久しぶりのアキバ


1970年代から、後にカメラ系量販店(ヨドバシ、サクラヤなど)が台頭するまでは、家電を安く買うと言ったら必ずアキバであった。ちなみに我が家では石丸電気を愛用していた。その理由は、店員が余計な売り文句をうるさく言わないところにある。
他の店に行くと、あれを買えこれを買え、こっちの方が性能がいい、などと聞いてもいないのにまくしたてる。

その点、石丸電気は奥ゆかしかった。
質問にだけ答えるし、性能差などは客観的に評価を聞けた。
だいたいどこの家も御用達の家電店があったのではないだろうか。


また、太古の昔から電気オタクの街として繁栄し、裏通り表通りを問わずいかがわしい「部品屋」が軒を並べていた。PC専門ショップもあるにはあったが、前回触れたような一般人排他的な店が多かったように思える。
最近ではアニメオタク(アニヲタとも)関係勢力が台頭してきて、なんと表通り(中央通り)は「萌え」色で彩られている。

すわ、アニヲタに征服されたか!と思いきや、裏通りは自作関連ショップが隆盛を極めていた。「萌え」系の店もあるにはあったが、大半は硬派なパーツショップで占められている。一安心だ。

燃えたヤマギワソフト館燃えたヤマギワソフト館
◆先日の火事で燃えたヤマギワソフト館


ちなみに、今話題の画廊商法のお姉さんもいた。あれで騙される人の気がしれないし、仕事としてやってる人も気がしれない。

角々にはオウムの青年達の代わりに中国系のお姉さん達がチラシを配っていた。
カタコトの日本語で、


「ソフト、おねがしまーす」


と言っていた。
恐らく不正コピーのディスクを売ろうというのであろうが、あれでついていってしまう人の気もしれない。

ああ、だめだ。アキバを語り出すと止まらないのでこのへんでやめておこう。




今日はケースと光ドライブとFDDだ。
雑誌を見ると、安いもので3000円、高いもので数万円と随分幅のあるPCケースだが、何しろ長く使うものなので、予算に合わせなるべくしっかりした物を選べとのことだった。
僕は、「安物買いの銭失い」がなによりキライなので、ケース選びは慎重を極めた。二日間で主要なほぼ全ての店を歩いた。
電源付きと無しがあったが、気に入った電源を別購入するとどうしても割高になるので、

「まともな電源がついたしっかりした作りの物で、1万円以内」

をテーマに探した。


歩いていると、ケースの中身、即ち配線やマザーボード、CPUなどが外から見える「シースルータイプ」が目についた。しかも内部は蛍光管やLEDで電飾が施されており、かなりすごいことになっている。

シースルータイプ
◆すごいことになってるケース


「なんで中が見えるんだ? ワケワカラン」


だいたい、PCの性能になにも関係ないことである。PCは計算機であって、さっさと計算結果を表示すればいいのである。なにも繁華街ばりにネオンで自己アピールする必要はないのである。

などと考えながら選んでいたら、いつのまにかシースルータイプを買っていた






だってキレイなんだもん テヘ☆






僕は長いこと、PCとは仕事の手段としてしか付き合ってこなかったが、突然思い出したのだ!



PC=趣味だということを!



趣味性が高い品物ということは、オリジナリティを出したくなるのは人の情けである。自然の摂理といってもいいだろう。



ちなみに人から「趣味は何なの?」と聞かれたとき、ちょっと答えに詰まる数年間であった。
「趣味は仕事」ってのもなんだか引かれそうだし、「人生全部趣味」とか言ったらバカにするな!とか言って怒られそうだし、「音楽やってます」って言いたいけど何もやってないし、料理かな?とか酒かな?とか曖昧なことを言って場を濁していたものだった。

料理も酒も人間の三大欲求であるところの「食欲」に起因するものであり、趣味とは違う気がする。全ての食材はよりよく調理されるべきだし、よりよい食べ物を口にしたいと欲するのは命に関わることなので趣味にならない。趣味はグルメ、なんつってる人は考え直した方がいいのではないか。でもB級グルメは可。


で、趣味を思い出したのでこれからは胸を張って答えようと思う。





趣味は自作PCですっ




やっぱ引かれるじゃん_| ̄|○