私的名馬 〜 シャトーゲイ

シャトーゲイ(Chateaugay)
1960年米国生 牡 栗毛 通算24戦11勝
父スワップス(Swaps)
母バンケットベル(Banquet Bell)
母の父ポリネシアン(Polynesian)
1985年死亡

 父Swapsは米国産、25戦19勝。ケンタッキーダービー(G1)・サンタアニタダービー(G1)・ハリウッド金杯(G1)など。主な産駒は本馬の他にAffectionately(スピンウェーSなど)、Primoetta(本馬の兄弟、デラウェアオークスなど)、No Robbery(ウッドメモリアルS)、日本ではスピリットスワプス(きさらぎ賞)など。

 1962年10月17日にデビュー、ピムリコフューチュリティ2着の後4連勝でケンタッキーダービーを勝った。この時の2着馬は歴史的名馬ネヴァーベンド(Never Bend)。ちなみに5着には同じSwaps産駒であるNo Robberyが入った。
 続くプリークネスSではCandy Spotの2着に敗れたものの、ベルモントSでは雪辱を果たし二冠馬となった。この年、ハンデ競争2レースを勝ち12戦7勝。
 翌年以降は一般競走を2勝したのみで、重賞勝ちはなく1965年引退。

 RibotやNasrullahに並ぶほど気性の激しいKhaled直系ということもあり、競争馬時代はネヴァーベンドを凌ぐ成績を残しながら、種牡馬としてはあまり成功しなかった。ただKhaledの上はHyperionであること、母方にSickleやBull Dogを含むため、Khaledクロスは避けつつこれらの馬とクロスさせれば米的スピードとスタミナを備えた産駒輩出は可能な種牡馬だと思う。

 日本に輸入後、G1勝ち馬はホクトフラッグ(朝日杯3歳S)しか出していない。しかし後のダービー馬であるメリーナイスの母、ツキメリーを出した。同じくグリーンシャトーはタマモクロスの母として有名。

 1986年日本ダービーを勝ったメリーナイスは、シャトーゲイの子孫として最も早くに活躍した名馬なのだが、同年代には皐月賞と菊花賞を勝ち同年有馬記念中に故障引退したサクラスターオー、無敵のステイヤーとして君臨し続けた芦毛の名馬タマモクロス、そして公営から殴りこんだイナリワンがいた。彼らは全て86年、87年、88年の年度代表馬になっており、メリーナイスの存在が薄く見えてしまう。タマモクロスとイナリワンはクラシック競走に出走していないから、比較するのは愚かなことだ。

 メリーナイスの時代は「悲劇」に包まれていた。皐月賞1〜3着の馬はその後数年のうちに死亡しているし、何よりこの世代は「強い」と評されながら、メリーナイスは「強いダービー馬」と見られなかった。メリーナイスは映画「優駿」のモデルになった馬である事はどれほどの人が知ってるのだろう?

 メリーナイスの父コリムスキーはノーザンダンサー直子で、当時種牡馬としてはかなり期待されていた。しかしながらなかなか活躍馬が出ず、メリーナイス誕生前後の時期はコリムスキー人気は低落傾向にあった。そこにツキメリーとの配合はHyperionの5*5*5を持つ名馬の多重クロス。誕生した子馬には四白流星に美しい栗毛、見た目にも美しいこの馬は、デビューすると強い相手関係も苦にせず朝日杯3歳Sを制覇した。この頃ともに戦ったのは後の名脇役ホクトヘリオス、西の3歳王者ゴールドシチー、内国産の傑作サクラロータリー(父トウショウボーイ、母父シンザン)、怪物マティリアル(シンボリルドルフと同配合)、そしてサクラスターオーなど。

 運が味方しダービーを6馬身差で勝ったメリーナイスは、映画「優駿」のオラシオンのモデルとなった。が、メリーナイスのゴールシーンが使われることはなく(カメラはマティリアルに向いていてメリーナイスを撮影していなかった)、何度も撮り直しをしたお粗末なゴールシーン、撮影用に借り出されたサラブレッドたちは何度も過酷に追われた末に故障馬続出。そんな犠牲の上に公開された映画「優駿」はファンには不評だったらしい。(私は見てないので何とも言えない)

 菊花賞をサクラスターオーが制して主役の座を奪われた感のあったメリーナイスは、有馬記念で巻き返しを図るはずが、何とスタート直後落馬失格。しかもサクラスターオーは第4コーナーで故障、競走中止。翌年春サクラスターオーは桜とともに散ってしまった。

 メリーナイス自身も翌年の函館記念でサッカーボーイに敗れた際故障を出し、そのまま引退。

 またマティリアルは6歳の京王杯オータムハンデで後方一気の差し切り勝ちを収めるのと引き換えに故障し、予後不良。ゴールドシチーは故障なく引退したものの種牡馬にはなれず乗馬となるが、放牧中の事故で骨折、安楽死処分された。

 こんな悲劇まみれの中、現在は功労馬として余生を過ごすメリーナイス。種牡馬としては重賞勝ち馬を出し、内国産としては成功の部類にある。その中から更にシャトーゲイの血を引く馬が今後も現れて欲しい。

 最も、種牡馬として今後も期待できるという意味ではタマモクロスの方が上だろう。現役時代は2000mから3200mまで距離不問の強さを見せ、シャトーゲイの血を引く馬としては傑作と思う。

 メリーナイスにもタマモクロスにも、米国二冠馬の血が流れていた。血の淘汰が進む現代競馬の中で、生き残るのは「ここぞという時の根性」を見せられるかどうか。それも良質なスピードとスタミナを兼備していなければならない。この2頭には、シャトーゲイ譲りのそれがあるはずだ。

 先日の3歳未勝利戦で勝ちあがったタニノエモーション。6代父に映画「シービスケット」の主役である名馬シービスケットの血を持つが、今後の競走内容に注目したい。

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