私的名馬 〜 フリートウイング

フリートウイング(Fleet Wing)
1966年生 牡 通算26勝
父フリートナスルーラ(Fleet Nasrullah)
母アキンボ(Akimbo)
母の父パン(Pan)
※詳細データ見つからず

 父は名馬ナスルーラの後継種牡馬。本馬はグレードレース勝ちはないが、他にコンビニエンス、フリートワイン、イースタンフリートなどを輩出している。
 ナスルーラの後継として成功した部類とはいえないが、フリートナスルーラ自身は今でも血統表のあちこちに見かけるのでそれなりの影響力はあると言える。
 ナスルーラの後継種牡馬には、他にネヴァーセイダイ、ナシュア、ボールドルーラー、ネヴァーベンドなどがいる。

 ナスルーラは英チャンピオンSを買った程度だが、狂気の気性と共に近代競馬において通用するスピード能力を子孫に伝え、今でもその影響力の程は計り知れない。特にボールドルーラーは三冠レースの一冠、プリークネスSを制すなどG1を5勝。その下にはボールドリーズニング→三冠馬シアトルスルー、同じくセクレタリアト、日本でも御馴染みのロイヤルスキー、ネヴァーベンド→仏2000ギニー勝ちリヴァーマン→アイリッシュリヴァー→パラダイスクリーク、リヴリア→ナリタタイシン(皐月賞)、近代三冠馬ミルリーフ→シェイディハイツ・クリエイター・イブンベイ・マグニテュード(ミホノブルボンの父)・ミルジョージ、ブレイヴェストローマン(マックスビューティの父)、レッドゴッド→ブラッシンググルーム→クリスタルグリッターズ(マチカネフクキタルやアブクマポーロの父)・レインボウクエスト(サクラローレルの父)・ナシュワン(キングジョージ馬スウェインの父)・グルームダンサー・バイアモン・ブラッシングジョン・マウントリヴァーモア(ハウスバスターの父)・ラーイ(トキオパーフェクトの父)・アイシーグルーム(ケイワンバイキングの父)、グレイソヴリン→ゼダーン→カラムーン→カンパラ→トニービン、フォルティノ→カロ→コジーン(アドマイヤコジーンやエイシンバーリンの父)・ゴールデンフェザント(トキオエクセレントの父)・シャルード(ビワハヤヒデの父)、シービークロス(タマモクロスの父)、と現代日本競馬に与えている影響力は物凄いものがある。

 サラブレッドの傑作はリボーだというのに異論はないが、遺伝力という点では、ナスルーラが近代競馬のスピードを与え、ノーザンダンサーにより枝葉を伸ばし、今はノーザンダンサー系種牡馬やミスタープロスペクター系種牡馬によって占められている印象さえある。

 その中でフリートウイングは「ひたすら強い」戦績を残しながらも種牡馬として成功しなかった。日本でのステークスウイナーはハッピープログレス(安田記念)、フリートホープ(日経新春杯)が出た程度に留まる。何故か牝馬産駒が多く後継活躍牡馬に恵まれなかったのだが、フリートウイング全体としては、珍しくセントサイモンの血が主要を成していて、スピードの血はテディが父母間でクロスしているに過ぎない。セントサイモンは日本の芝向きスタミナを補給するので、フリートホープのようにクラシックディスタンスもこなす産駒が出たものと思われるが、もっと配合相手に恵まれていれば大物輩出も可能だったのではないか。

 競走馬が繁殖に上がる時、「精根尽き果てた」状態で繁殖に上がると期待通りの結果を出せない馬がいるらしいが(オグリキャップやビワハヤヒデなど)、フリートウイングの場合もそうだったのかも知れない。父系譲りの狂気のスピードにものをいわせた生涯26勝は、レースを酷使されてのものではないのか。

 サラブレッドには「競走で勝つ」ことの他に「繁殖として成功する」目的もあるのだから、時期を見極めて燃え尽きないうちに繁殖にあげた方が馬の為になるんじゃないかと思う。例えば近年の快速ノーザンダンサー後継種牡馬ダンチヒは3戦3勝で故障を出し、底を見せないまま引退したが、本領発揮は繁殖に上がってからだった。

 過去のG1の栄光を背負って辛い斤量を背負い走るサラブレッドは今もいる。走りが「G1馬のそれでない」と思うなら引退させて早く子供たちに期待を寄せた方がいいんじゃないのか、と思うのは私だけだろうか。

アクセス解析