2004 Spring           トップへ

一ノ倉沢 雪渓歩き

 2004・6・13 曇り ☆☆

一ノ倉出合い1130〜滝沢下部雪渓1300〜下山・出合い1400 曇り

 Pre 越後湯沢で前日にギャモンの大会があって、この日は旅館で8時から朝食。のんびりした休日です。現地でメンバーは解散となって、その後関越トンネル抜けて一ノ倉出合いまで。やっぱり通り過ぎて帰るわけには行きません。

 昼近くでしたね。一ノ倉出合いに到着したのは。谷川の山開きはまだですが、すでに出合には多くの観光客。実はこの日もショートスキー持って来ました。もしかして滑れるのかと。過去の6月の一ノ倉の記憶もそうですが、出合いのすぐ上から雪渓が始まっているはずです。谷に入るのに最も簡単な季節でしょう。

 なるほどその通りで、林道直前から雪渓。ただ途中でちょっとだけ切れていて、5分ほど山道に入ります。そう昨年の秋に来たときと同じように、林道から双眼鏡で一ノ倉覗いているオジサンがいて、観光客の案内しているのです。この日もいました。

 5分山道に入って、雪渓に降ります。そうそう思い出しました。この谷はスプーンカットになっている雪渓の波に沿って、いつも泥がたまっているのです。その泥のこと前には「馬糞泥」とか言ってましたが、これってデブリに混ざっていた泥が溶けて、波沿いに残っているのでしょう。どんどん登って、ヒョングリの滝辺りで、15mくらいの残雪でしょうかね。


 雪渓の上からこんなに近くで滝沢見るのは初めてです。もう手に取るように近いですよ。ルートにシュリンゲ残置されているのも見えます。滝沢のトラバースルートというのは、ちょうど目線の高さでしょうかね。残雪が多いと滝沢も小さく見えるものです。40mくらいの残雪量でしょうか。

 出合いの標高が875m。200m登ってテールリッジの取り付き。300mで右が烏帽子スラブ、左に二ノ沢。それ以降が未体験ゾーンです。400mで滝沢出合いでした。ただ二ノ沢から滝沢までは急ですね。それにやはり滝沢には簡単に取り付けないように、おおクレバス。むしろ本谷方面には岩壁に降りられそうでした。それでもそこに行くまでにけっこう雪渓は崩壊していますが。


 その滝沢の足元にあるのが、このクレバスでちょっと越えられませんね。覗き込むのも怖いもんです。右方向が本谷です。

 それにしてもここの雪渓は固い。何しろストックの輪っかまで、雪に刺さりません。アイゼンも歯の部分だけ。ピッケルのシャフトも突き刺すことできませんね。だからザラメとは程遠くて、スキーする気にならないのです。それに相変わらず泥も多いし。傾斜は思ったほどでもなくて、よくある雪渓と同じくらいですが。

 ちょうど昨年の6月には鹿島槍の北ノ俣谷の雪渓詰めて、頂上の吊尾根までいったものです。雪も全部繋がっていたし。それにあのときは、アイゼンつけたものの、キックステップみたいに蹴りこめるし、シャフトも根元まで刺さったものですよ。ところがここの雪は違う。過去に8月の剣でも、腐れ雪みたいのいくらでもあるし、この一ノ倉でも、腐れ雪の中下山した記憶もあるのですがね。今日は曇っていて直射がないからですか。それだけの理由でしょうか。山によって6月の雪の状態がどうしてこうも違うのか不思議です。

 雪渓は本谷バンドの下で終わりになっています。そこから上は夏の岩登り。に比較して、鹿島槍が6月でも頂上の吊尾根まで雪渓が綺麗に残っているのは、積雪量の違いでしょうかね。なんだか2時間半の一ノ倉観察みたいなものでした。


 ここれがバスツアーご一行様。一ノ倉の二ノ沢出合いですよ。ちょっとやっていることが信じられないのですか。これも登山の自由化でしょうか?

 ps ところで20人くらいのオバサン・オジサン団体が、二ノ沢出合いで雪渓で訓練しているんです。「雪渓の歩き方」だそうですが、しかし5月のマチガ沢なら分かりますが、一ノ倉のしかも二ノ沢出合いまで登って、そこで訓練とは、初めて見ました。なんだか少し危なっかしい。しかもバスツアーだとかで日帰り9000円。新宿朝の7時半に出て、出合い1130。私よりちょっと遅いくらいだったのですが、2時間練習して下山だそうです。仲間2,3人単位で、他は他人だと。夏山にはどこでもツアーがきますが、ついにこんなとこまで来たとはね。「今日初めて雪登る」というオバサンもいて、トレッキングブーツに12本歯持って来たと。なんだそれ?

誤算のラストラン
剣岳・早月尾根 早月小屋まで

2004・6・5 晴れ ☆☆
馬場島500〜早月小屋1200〜小屋前でスキー1530まで
6・6 曇り 下山600〜馬場島1030

 Pre 剣岳の早月尾根というメインルートに、これまでいったことがない。山スキーヤーにあらず、登山者にあらず。シーズン最後に、そこを登って滑降する計画を立てた。HPを検索していて、何を勘違いしたのか、早月小屋(かつての伝蔵小屋)が、すでに営業していると勘違いしていた。それでも入山したその日に、本峰まで登って、剣沢に滑れば、御前小屋は営業している。2週前に室堂から入っていいことなくて、馬場島からの登山スタート。

 馬場島というのは、何回来ても裏街道だというイメージですね。華やかさがない。でもしょうがないか。さてこの遠大な早月尾根を登ります。スタートが750m。小屋が2200m。頂上が3000m弱。2200mの登行です。

 5時快晴の中をスタートしたものの、登山道の下部はすでに夏山。休憩しているとブヨが飛んできて、刺された後にすぐに痒くなってきます。かといって、休憩しないでブンブン飛ばすわけには行きません。なにせ、東京から富山まで片道で400kオーバー。夜を徹して走ってからの入山ですから。相変わらず調子悪くてノロノロいきますが、途中で、2人に抜かれ、1600mを越えてくると、残雪が出てきました。これがまた妙に歩きにくい。急坂になったらアイゼンを付けようと思っていたのですが、緩傾斜が続いていたのと、少し行くと雪が切れて泥になる。雪はずるずると滑って、何だか疲れる。

 それにこの早月尾根というのは、剣岳西側をおおよそ把握するのに、やっぱりとてもよくて、風光明媚ですよ。右側にまだまだ白くて高いのは、大日岳と奥大日。左側はブナグラ谷が深く切れ込んでいて、その上部には猫又山に続く稜線。その手前赤谷尾根は赤谷山まで続いていて、白ハゲと続いて、白萩川は大窓、小窓に続いていて、さらに手前に小窓尾根が見えてくる。そういう景色が変わるたびに、1回1回地図を見ていれば、当然時間もかかってくる。
 最後の急傾斜の前に、再び大休止して、アイゼンつけようと思っていると、学生5人パーティに抜かれて、けっきょく小屋に着いたのが、スタートしてなんと7時間後の12時。途中コンビニ弁当食べたりしていれば、まあこんなもの。

早月小屋手前ピークからの小屋と池ノ谷側の残雪。雪は池ノ谷まで続いているようす。でも上部ガスになってきた。

 さて、ここについてガッカリしたのは、先の小屋が営業しているという勘違い。しかも上空にガスが出てきて、朝は頂上まで見えていたのに、ガスが2600mくらいまで降りてきた。それに閉鎖している小屋なのに、小屋の兄さんがいて「この先何時間?」と聞くと「登ってきた時間と同じくらいですよ」と。「ええええ」。「登ってきた時間よりちょっと短いくらい」と訂正されたものの、またまた愕然。噂によると、この人、下からここまで2時間。ここから頂上まで1時間らしいとも。ここまでのコースタイム4時間30分に対して、私7時間。ではこのさきタイム3時間半にたいしては、「5時間以上」ということ?ヘナヘナ。
 ところで装備は、ツェルト持って来たものの、寝袋とコンロはなし。食料はまあ多めのパンなど。本日ここでストップ決めました。
 1時間休んで元気出て、「足慣らし」しようと、持って来たショートスキー履きます。実は小屋の前の池ノ谷側にけっこう雪が残っているのです。というよりも、この雪渓は池ノ谷まで続いているように思えるのです。ならばエントリーだと。休憩すれば元気になるもんです。ところで、どのくらい下るものかと。まあ2,300m。

小屋の前から雪渓にエントリー。赤谷山正面に見ての、ボッコン、ボッコンの雪ですが、それでも楽しいなあ。

 雪はもう6月の様相で、というのは、縦じまが入っているのです。あれって、雨水が雪渓の上を流れた後でしょうか。ターンするたびにガクガクとラフロードみたいです。それでも、滑り出すとまあ楽しい。右に一旦出て、左に細くなって、さらに急になって、けっきょく250m滑降できたのです。ブナグラ谷の小ブナグラ正面に見ての、高度下げでした。どんどん後400m下ると、やっぱり池ノ谷みたいですね、後で地図よく見ると。

さらに下ると細くなって、調子にのってどんどんいくと、池ノ谷まで続いていますよ。正面は、大小のブラグラ谷ですね。

 でスキー外してアイゼンで登り返すと、おお雪渓の間に水が流れているではないですか。水筒持って来たもので、簡単に水補給できます。言い換えれば、水汲み滑降でしたかね。登り返しは、300mちょっとで、小屋の上部に出ました。それほど辛くはないんですよ。スキーヤーの義務みたいなもので。そして、そこからまた、小屋まで少しの滑降。そんなことで2時間半ばかり遊んで、夕焼け見ながらテント泊でした。


夕方はガスも消えて、小屋前のテントからは小窓尾根のニードル、ドーム、マッチ箱。20年も前の5月に登ったはずなのに、さっぱり覚えていないなあ。

 日が沈むと気温も下がって、お腹も空いてくる。ザックにたまたま温度計が入っていて、明け方は5度。やっぱり雨具着ただけでゴロンと横になっているだけでは寒くて、寝られませんね。腹減りは、パンをぱくついて、水飲んでいれば何とかなりますが。
 翌日は高曇り。学生パーティは5時半に頂上目指して出発しましたが、私すでに下山の覚悟です。やはり寒くてほんの1時間うとうとしただけ。天候もいまいち。ところで下山といっても、ここから1500m。雪が無くなって、土となると、どうも疲れます。休憩たくさんとって、4時間半で馬場島まで。

 さて問題はその翌日の今日のこと、足が筋肉痛で下界を歩くにも痛い。そう太腿の部分です。このシーズン毎週のようにスキー行っていたのに、どうして夏道を下山しただけなのに、こんなのでしょう。
 やはり雪があるというのは、慣れれば登りも下りも実に楽なものなのでしょうか。だからスキーは楽してインチキしているようで、大好きなのですが。こんな筋肉痛数年ぶりですよ。夏の早月尾根を小屋から下って筋肉痛など、もう登山辞めろということでしょうか。すべてが信じられない山行なのです。シーズンのラストランは大ボケでした。
 ちなみに早い時間に下山できて、温泉の後に、片貝川から猫又山、毛勝山の林道終点までいきましたが、おお、寂しいところから取り付くものだなあと、さらに感慨にふけりました。

白馬鑓ヶ岳・鑓沢

2004・5・15 ☆☆☆☆

猿倉430〜大雪渓から稜線最低コル930〜杓子岳巻き道1000〜黒部方面へ滑降・清水谷左岸台地1100〜白馬鑓ヶ岳1330=1350〜鑓沢滑降・鑓温泉1430=1630〜小日向コルから猿倉1930

Pre 今日で3回目となるファット・ショート98センチにスノボー用のソフトビンディングに皮登山靴という組み合わせが、予想以上に良く滑れるということで、シーズン終了に近い白馬周辺の山スキーベーシックコースの鑓沢に向うことに。GW以降、何だか大勢の仲間と楽しく登って楽しく滑るという、夏の百名山オジオバに混ざったようなスキーも、まあ楽しいという実感。

 もちろんいつものように、登山のそれらしく、空が明るくなる時間の430に猿倉出発。駐車している車もたくさん。駐車場テントもたくさん。けっきょく今日は白馬大雪渓を登った人は80人くらいだったようです。私たち出発はその中で3番目くらいだったとは思うのですが。

 実は今の季節に白馬大雪渓登るのは初めてです。想像していたように、もちろん雪がたくさんある。金山沢見送って、雪渓尻の小屋付近(雪に埋没していて建物不明)からの白馬沢見送って、どんどん登っていきます。
 おお、中にはスノボー5人組というのもいますよ。あのソフトブーツに、12本歯アイゼンつけて、雪渓下部の傾斜10度という、ぬるっちいところでも登っていますよ。そういうの、なんだか強い個性発揮していて、ヨーロッパの連中みたいで、いい雰囲気かもし出しています。でも雪渓から主稜線というのは、思ったよりも近かったですねえ。下部から見える正面の稜線がそれですから。


 白馬大雪渓の主稜線間近。五月晴れと快適なステップつき(入山が多いため)で、雪渓は不安もなく稜線へ。

 それに5月というのは、夏の葱平から右へ小屋方面というのは、積雪の関係で、マイナー経路になっていますね。大勢のステップ辿っていると、自然と最低コルに導かれます。まあそうですよ。夏に逆方向から稜線来て、最低コルからお花畑トラバースして雪渓へショートカットしようとすると、当然通行禁止ですからね。積雪期だけのショートカットでした。
 そうして430くらいで順調に稜線へ。まだ10時前です。どうせ昼過ぎからの滑降だと思って、この空き時間に、ふと黒部側方面へ、遊びの滑降してみることにしました。
 フォトの菊池さんが、何気なく「清水谷左岸台地は10倍面白い」と報告していましたが、自分なりにその意味理解して
「杓子巻き道から鑓頂上経由の鑓沢ドロップポイントまで、通常だと300m登って100m下り。しかし清水谷滑り込みだと300m下って500m登りで、似たようなものか」
 という解釈。はは、けっきょく大間違いしていましたが。
 というよりも、実は後立山という山脈は、黒部方面には実に穏やかに長い稜線を引いているのです。その先に、黒部側下の廊下という、とんでもないV字渓谷が待ち受けていますが。しかし、こうした非対象山脈というのは、クライミングするものには、興味深いものなのです。大昔は冠松という人は、鹿島槍の下りには、必ず棒小屋沢を利用して、黒部側まで達していたのです。夏ですけれど。
 まあいまどきはそんな面倒くさくて、危険100倍コースは誰もトレースしませんが、でもこの5月ならば、そのつまみ食いくらいは簡単にできるぞということで、そこから300mの滑降で、清水谷の台地へ私ドロップイン。連れの相棒は拒否していたもので、どこかで3時間待つように指示。


杓子岳巻き道から黒部側清水谷台地へ。正面が大崩壊の2181m。右側旭から清水岳への稜線。中央台地まで300m滑降。

 下ってみると、ふむふむ、谷の大崩壊、旭岳から清水岳に続く稜線、いやそのまま不帰岳2053mだよ(有名な不帰ノ剣とは違います)、百貫山、名剣山と続くと、稜線はそのまま剣岳の方まで続いているように錯覚しますねえ。というような地味で魅力的な稜線も近いです。でさて、登り返し。
 右上部で残雪辿るのですが、鑓から中背尾根というんですね、回りこみは成功するのですが、天狗平方面とのコルへは、これ斜面が急峻だし、雪切れています。おお、計画失敗。でそのまま稜線忠実に辿って、鑓頂上へ。久しぶりの這い松こぎ5分というのも、経験しました。でも滑り込んで10倍楽しいというのは、私が登った方のルートからでしょう。台地形状が、言ってみれば山間の稲作棚田みたいに、整理されています。剣、毛勝方面の展望。いずれにしても、ちょっと面白い経験。
 で、3時間半後に、スタートpの2800mへ。けっきょくこの日には、15人くらいが、ここから鑓沢に滑り込んだようでしたが、おおそうだ、伊那のエキスパートも、たまたま同じ日、同じルートだったようです。


鑓沢大滑降。ちょっと降りて左へ。ヤブの向こうが沢コース。温泉まで800m

 私到着1330、スタート1350で最終になりましたよ。でも快晴でどこにも不安なし。温泉まで800mドロップ・インです。途中でコースが左右に分かれてしましたが、傾斜が緩そうな、右の沢コースいきましたね。人気左は台地コースでしょうか。途中の2300mで待たせていた相手とコール。その下2000mの温泉は、おお大人気。S並労山クラブが総勢20人で合コンしていますよ。


2200m付近で、おお鑓温泉見えてきました。といってもカラフルなのは、冬季に畳まれている小屋の土台に張られているテント。その少し下に天然温泉ありました。なお、稜線右コブが小日向山、その左がコル。そこ登りかえしで、その向こうが下山場所の猿倉。ここからでも景色とルートは壮大ですねえ。

 年中無休の天然温泉は、その時間「女性会員の貸切」時間で、皆水着持ってきて、こんな雪山の開放露天風呂でくつろいでいるのです。シーサイドじゃなくて、風呂サイドで斜め横向いて、悩ましい格好しているお姉さんもいましたね。その横で、仲間の男性会員も数人ふり○○で堂々と入力。ここも、ヨーロッパ風ですよ(もちろん小屋は冬季閉鎖中)。テント5張りでした。あの人たち翌日どうしたのでしょう。1時間に20ミリの豪雨振ったのですよ、ここ。
 さてそこから下って、小日向コル登りかえしで、下山です。初めて通ると、その辺りからの鑓、杓子の東面もミニ剣みたいで、なかなか格好いいものです。やはり言われるだけの白馬人気ルートです。それにコルから林道へというのも、広い台地の小さい沢の横断など、クロカンっぽいコースでした。
 トレースは先のスノボー5人組というのも、ここだったはずで、固い雪をガリガリと広く白くしてくれて、滑りやすかったものです。5月の雪ですから、下部は雨水が流れたトヨ状跡とかありますが、まあ仕方ないでしょう。でも上部は素晴らしいザラメでした。

Ps この山行でパートナーとのトラブルあり。2300mコールのあと「温泉で合流」との約束だったのだが、相手は温泉で私を目撃しただけでそのまま下山。理由は「私も相手を確認し、私が温泉に入るようだったので、合図して下山した」とのこと。しかし私は相手を目撃できずに、そこで2時間待ち(うち、40分は待ち、1時間20分は、2300mまで登りかえしの確認)後下山。その後猿倉で合流。例えどんな理由があっても、合流ポイントでは相手の前に来て会話交わすなりが、パートナーとの基本。それ無視されて、私最悪のことまで想定し、長いクラブメンバーの相手だったのだが、以降、二度とパートナーになれないことを確認する。


穴毛谷〜抜戸岳
 2004・5・8 快晴後晴れ ☆☆☆

新穂高400〜三ノ沢出合600〜大滝横700〜杓子平入り口830〜稜線2500m100=1030〜抜戸岳1140=1220(下山)三ノ沢出合1330〜雪渓末端1400=1430〜新穂高1530

Pre この1年、新穂高によく行くようになって、そのバスターミナルの目の前に見える堰堤パラノイアの谷が、穴毛谷だった。いつでも工事中のような谷で、わずかに隙間にあれだけ堰堤が作られてしまって、工事中なのに登山者がそこに入ってもいいのかという、嫌悪感を持っていた。
 しかしそれにしても、春の笠ヶ岳に最も接近できるのが、この穴毛谷でもある。すでに毎週末に入山があるようで、先週も塚田、伊那のエキスパートその他のパーティが入っていた。雪解けの最後のチャンスに、ルートのトレースとなった。


最終堰堤先(帰り)からの穴毛谷。ゴルジュの中の雪渓を辿って、中央右の雪渓から、上部は広い杓子平に出て、抜戸岳山頂は右端最高峰。ここからコースのすべてが見渡せます。

 いつものように明るくなり始める時間にスタート。林道から堰堤に行き当たるが、毎度のように、この堰堤というやつは、越えるのに苦労する。何故だか沢を横断せずに、右側からヤブコギ堰堤越えを2回も繰り返してしまって(失敗)そうそうと、疲れてしまう。さらに最終堰堤の向こう側でも、飛び石渡渉の往復があって、気分が重い。


本谷に合流する四ノ沢。上部稜線はクリヤノ頭から笠ヶ岳に続く。ミニ一ノ倉沢という感じ。

 ところがその先、雪渓が出てきてからは急にご機嫌。特に四ノ沢出合など、これはマチガ沢か、ミニ一ノ倉かと思うほど。雪渓もゴルジュの中を続いている。
 大体ここへ行くときに地形図をしっかり見ると、谷底は明らかにU字渓谷になっているわけ。何度か足を運んだ鹿島槍の北俣谷みたいなものかと、期待していて、まあゴルジュの様子は期待を裏切らなかった。
 ところが今日は何故か体調が思わしくなくて、休憩の度にトイレタイムを使って、行動がはかどらず。先週下山した後にまた風邪をぶり返した様子だし、今日はノロノロペースと決め込んだ。


穴毛大滝と、右脇に続く雪渓。この雪渓を終了点まで登っていきます。そこが杓子平の入り口。

 さて明るく開けた四ノ沢を過ぎて少し行くと、出てきました、問題の穴毛大滝。でも見てみると何でもないじゃない。ここって、変則地形なのです。大滝はまさに谷の本流ではあるのだが、実際には支流に見える。ということは、支流のはずの右側の谷が本流のようで、雪渓も頭上の稜線まで続いているように見えた。ただ急なのが難点。
 それでも1週間前のパーティのキックステップトレースが残っていて、大助かり。アイゼン蹴りこんで、どんどん高度は稼げます。といってもね、支流の詰めですから、最後は35度くらいの急傾斜になっていますよ。さてそこを登りきると、ここが杓子平の入り口でした。
 ドーンと真っ白に広く開けて、傾斜も緩くなってきます。笠ヶ岳からの稜線がこれも真っ白に続いている。そこに左側から本流もやっぱり合流しています。支流と同じくらいの谷ですね。
 そうそうこの穴毛谷は、笠ヶ岳への大クラシックルートだったのです。播隆上人はもちろん、ウェストンも登っていますよ。ただ例の堰堤工事で登山道が閉鎖されてしまったんですか、その後隣に笠新道ができたんでしょう。


稜線2500mから抜戸岳頂上。写っている板が98cm。

 傾斜は緩くなったのですが、何故かペースは上がらずに、登りやすそうなところを選んでいると、稜線にでましたね。笠ヶ岳からの稜線かと思っていたら大間違いで、抜戸岳から下ってくる稜線の2500m付近でした。10時。ここまですでに6時間。もしかしたら笠ヶ岳までいけるかなあと思っていたのは幻で、ここで大休止して、もう明らかにチンタラペースです。でもしかし、それにしても眺めがいい。
 ミニ槍みたいのはジャンダルムだよねえ、隣にロバの耳も見えますか。目の前は蒲田富士で、本当に頂上はまっ平ですねえ。それと笠ヶ岳は間近で見てやっぱり立派です。大笠と小笠の組み合わせは、飛越新道の方からはとても目立っていました。十分に休憩した後は、ここから300m、1時間で登れるでしょう。
 とそのとき、今日はずっと一人だったのですが、上から一人スキーヤーが降りてきます。登りのトレースなどなかったぞ。ということは別ルートからですか。あっという間に下っていきました。
 私アイゼンでジグ切って、楽登りしてましたが、頂上直下で急になって、小さな雪庇も出てきます。それどうにか乗り越えて、おお頂上ですよ。


抜戸岳頂上ケルンと、笠ヶ岳。手前が小笠。実に風格ありますねえ。本日は笠ヶ岳見学ツアーだったような。

 ケルンがあって、雪ははげていますが、誰もいません。先週登った双六岳が見えます。遠くに水晶岳も特徴的ですぐ分かる。黒部の方面はやっぱりいいですよ。ここでもまた大休止40分で、12時半に下山。
 今日も装備は先週に続いて、98センチ板。滑り出しの雪庇回りこみはアイゼンで下って、その下から、いよいよスタート。標高2800mのカールはとても快適ですよ。そうそう先週の双六東側カールも同じような標高でしたね。似たような感じですが、規模はこちらの杓子平がずっと大きい。
 600m下って、先の大滝の横雪渓に入ります。この雪渓標高差で300mもありますよ。立派な雪壁になっています。そうだ、杓子平の滑降途中で、登山者が3人パーティと、単独1人。単独スノボーもいました。遅い時間になると、賑わっていますねえ。
 大滝横では、先行者は滑降していきましたが、私念のために一部アイゼン下り。でもこの辺りは、本谷大滝の脇に、妙な支流が登り下り易くなっていて、実に不思議な地形です。それとそうそう、大滝横に「穴毛」由来の地形があって、ぷぷぷ、実に良く似ている。明治の人は、しかし下品な名前付けたよなあもう、しょうがないか。
 大滝下まで来ると、傾斜は急に落ちて、三ノ沢まで滑降できます。ここで標高1500m。頂上から1300mダウンヒルでしたね。
 その下で雪渓も途切れて、ゴロタ石を選びならが下降します。堰堤は上流から見て、右岸の通過がいいようです。登っているときには、林道から堰堤に突き当たったときに、その場で堰堤河原を飛び石で渡って、左側に出るようにするということです。私は反対側登って、大いにロスしました。
 あとは、登りに雪渓の中にデポしたビール飲み、休み、ダラダラと新穂高へ下山です。連休翌週につき、ガラガラでタクシーも大いに暇していました。


新穂高バスターミナルからの笠ヶ岳稜線。手前穴毛谷のわずかなスペースに堰堤10個。

Psバスターミナルから見える遠景に、笠ヶ岳の頂上少しだけ見えますが、その稜線は、右端が抜戸岳です。
 カッパ橋からの風景は有名ですが、こちらはあまり紹介されていませんねえ。宣伝が下手です。
 それと、ちょうどここからすべて見渡せてしまう穴毛谷は、やはり堰堤で、実に汚らしくなっています。実はねえ、最終堰堤は最近できたものなのですが、その上に、最古の昭和43年堰堤というのがあるんですよ。もう石に埋没していて、まったく機能していませんねえ。どうせ堰堤など10年しか持たないものですよ。なんで今でもどんどん作っているのか。新穂高に林野庁の事務所が「治山事業が、国土の緑を守る」と看板出して、ログハウス風のオシャレ事務所開いていますよ。その考えが根本的に間違っていると思っている私は、バカの壁同様に、一切の話が先方と通じません。堰堤が見苦しいのは明らかです。私堰堤は地雷と一緒だと思っていますよ。一回作ったら二度と補修しない。そのまま河川の土砂に埋もれていずれ分からなくなる。それと堰堤は登山者と釣り客に嫌がらせして、本当に超えることが難しくなっています。階段もハシゴもない。つまりその向こうに人を入れていはいけないというポリシーです。逆に上から降りてきて堰堤にぶつかってしまうと、これは極端な場合、上り返さないと下山できない場合もあるっていうことです。穴毛谷という大クラシックルートが堰堤で潰されて、春スキーの連中は、多分お勧めではない入山をおこなってスキーしても、実はあまり楽しくないのです。見苦しい粗大ゴミ堰堤をどんどん作られて、穴毛はお粗末な砂漠の谷になってしまいました。数年前の三月に上宝の村長が、工事中に穴毛の雪崩で亡くなって、その慰霊碑も新穂高にありますが、私は天罰だと思って、穴毛の味方をしています。上部は素晴らしいルートでしたが、何故かもう一回行きたいというルートではありません。


双六岳・水晶岳・鷲羽岳・黒部源流
☆☆☆☆☆

2004・4・30 快晴 新穂高300〜わさび平430〜弓折岳900=930〜双六谷1000=1030〜双六小屋1200

5・1 快晴 双六小屋500〜三俣蓮華下610=630〜黒部源流730〜岩苔乗越830〜水晶岳下1030〜(下山)〜鷲羽岳1200〜三俣蓮華小屋1330〜弥助沢滑降1400=1430〜モミ無名沢登行1630〜双六小屋1700

5・2 快晴 双六小屋800〜双六岳930〜南峰1000〜東面カール滑降・双六谷の大ノマ乗越出合1030〜大ノマ乗越1200〜わさび平1300=1330〜新穂高1500

 Pre GW前半が快晴予報でしたが、週前半から風邪を引いて、ついに出発を1日遅らせることになって、残念なスタートになってしまったのです。それに今回はつい興味半分で買ってしまった98cmのファット・カービングなどを持っていくことにして、皮靴にアイゼンという装備なのです。さてどうなるか。

 満天の星空の元、新穂高300出発で、やはり初日には気合を入れなくてはということです。林道は歩いて行きますが、まもなく残雪出てきて、それにここは林道に右側からのデブリ跡があって、予想していたように雪はまだ残っている。明るくなりかけた頃にわさび平小屋。ここも前日からGWの営業が始まって、お客さんもいるような気配ですね。ベンチで少し休みましたが、誰か出てくる前に出発。
 ここで今回始めて使う98センチ板履きました。何しろ通常のビンディングの上に、スノボー用のソフトブーツ用のビンディング(登山靴のために)つけて、短い板なのに重さ4k。通常の板と変わりないんですよ。すごいもの持ち込んでしまいました。と言っても、小屋泊まりですから、総じて荷物は少ないのですが。
 で、その板にシールなど付けてみるのですが、これが下駄履いているみたいで、機能しているのかいないのか。なんかとっても遅いです。
 小屋から少しで、橋のところから、見えてきましたよ、快晴で真っ白な秩父沢とその向こうに、大ノマ・弓折岳。なんだかぞくぞくしますねえ。その広々した雪面を、手前から登っていきましょうか。まだ早朝で、雪はガリガリです。それになんだか、シール機能も弱いしねえ。途中でアイゼンに履き替えたり、なんだかのそのそしています。
 さて1時間少しで、鏡平方面と、本流の大ノマ方面に分岐します。さてどちらへと思いますが、前日の祝日に大勢人が入っているんでしょう。いくつかのトレースがあって、多そうなのは鏡平方面だと思われて、素直に従って行きます。取り付きの急登を30分も上ると、一旦傾斜が落ちて、2200mくらいでしょうか。ここで朝飯にしましょう。直射が暖かで、薄手のアウターは脱いでいきます。


弓折岳頂上下からの、登ってきた秩父谷方面。

 コンビニ朝飯終わって、さて出発というときに、後続1人きますね。オジサンです。が、パワー大有りで、どんどん追いついてくるのです。抜かれる前に出発。そうそう板は、一旦脱いだ後に、山靴アイゼンで通すことにしました。なぜなら、4月以降の雪山は、スキーのシール能力が落ちるというか、山靴でも潜らないというわけで、登りの速さは変わらないですね、いやツボ足が速いことがある。板は下りにとっておきます。
 さてそこから私は一つのトレースどおりに、直接弓折岳に上がる、稜線ルートってやつを行きました。後続オジサン来ないと思ったら、どうも夏道方面に迂回していたようです。頂上まで400m。黙々と登っていくという感じです。さて残り100mくらいになったときに、そのオジサンいきなり右側から同高度っぽく出現してきました。「なんだあ」。ここで夏道方面迂回が明らかになったわけです。負けじと、私そのまま頂上まで、900到着。わさび平から430です。まあいいペースだったでしょうか。
 ところがオジサン、山頂でもまったく休まずに稜線沿いの夏道を進んでいきました。鉄人です。さて私はここからどうしましょうか。弓折からけっこうノタノタ長かった気がするんですよね、双六小屋まで。そんなわけだからスキーで行きましょう。@金沢先生も、なんだかここから上流にトラバース斜滑降したようですから、真似して。で、98c板で初めて滑ります。頂上で2,3回ターンしますが・・・、おお、いいですねえ。山靴とはいっても、スノボーのソフト靴がフィットする仕組みですから(バックル2個だけど)なるほど、悪くないです。よかった、これダメだったら今回のツアー失敗ですからねえ。
 それで、右斜めへトラバース滑降スタート。くねくねターンは良くできます。アルペンターンですね。沢を2個越えて、そのさきの大きな沢を下って行きます。トレースもなくて、実に快適ですよ。200m下って、双六谷。ここには2,3のトレースありますね。大ノマ乗越から下降したスキーヤーの登り返しですよ。半分流れが出ていて、半分は雪に埋まっていて、このくらいの景色が春の谷では最高でしょう。実はまだまだ昼前。のんびり休憩して、小屋まで登り返します。


双六谷に滑り降りた広い谷底。正面は双六岳肩。大ノマから滑降して登り返しのトレースあり。

 150mくらいですよ。昨日から春の営業を始めた双六小屋ですよ。この辺り営業しているのは、あと太郎小屋ですか。連休中にはどこかに来たいと思っていたのです。1泊2食で8500円というのは、北アルプスの夏の協定料金みたいなものですよ。春でも割り増し料金はなかったですね。私昼の12時に到着。それでも出発してから9時間も立っていたし、病み上がりだということで、さっさと小屋にチェックイン。暖房の談話室が用意されていて、なんと先のパワーオジサンが先客にいて、ここで長々と話だしました。ということは本日の行動は終了。
 ところがです。そこに昼休みしていた3人パーティは、なんとこの時間から再びお出かけで、モミ沢を湯俣川に500m滑降してくると。私、カルチャーショックでした。ふむふむ、夏スタイルの小屋生活というのは、そういうものかと。生活時間は下界と一緒じゃないかと。そんなんでいいのか? 小屋の夕飯は19時で、考えてみればまだ6時間もあるのです。ビール飲んだり、ウイスキー持ってきたの飲んだり、オジサン話とか、でもこの60歳過ぎのパワーオジサンは、過去に夏の太郎から黒部川に下って、ダムまで行くといったら、黒部の鉄人の志水さんが追いかけてきて、小屋の人が止めに入ったがといわれたのだが、無視してダムまでいったそうです。世間にはすごい人がいるものだ。
 その後昼寝などしてしまって、この日は終わります。但し翌日の朝食聞いたら、なんど7時。私「遅すぎる」といい、朝食抜きで弁当にしました。

 5・1日、翌日、5時出発。小屋は寝ていて、外は明るいのにねえ。この日も快晴。小屋から斜面トラバースして、三俣蓮華岳方面にいきますが、早い時間はやはりいいのです。雪は完全にクラストしていて、アイゼンで歩くと、アスファルトの上みたいに、実にはかどる。わずかに1時間少しで、三俣から小屋の稜線にたどり着きます。本日は水晶岳を目指すのです。なぜなら、いつも100回くらい見ている山なのに、一度もいったことないというのはいけませんよね。


朝焼けの丸山カール。その尾根の向こうに三俣蓮華岳。そこまで1時間ほど。

 それでここで朝飯弁当。ご飯がちょっと冷えていますが、冬のコンビニ弁当の凍りついた飯思い出せばなんともないですよ。腹ごしらえ十分。さてどのように、水晶岳方面に行くのか考えていたのですが、ここから三俣蓮華の小屋かすめて、黒部側の源流に下るのが最も能率がいいわけです。三角の鷲羽岳はパスしましょう。ところがです。朝630では、まだ雪がクラストしていて、嫌な予感が当たりました。98c板では、エッジが立たないのです。せっかく持ってきたのに、私潔く、三俣小屋付近にデポしましたよ。「おお、荷物が軽くなった」。そしてアイゼンで下降します。と思ったときに、ここでもトラバース下降しましょう。2550mの小屋から、素直に源流に下ると2350m。斜めに下ると2450m。100mもお得でした。
 

黒部源流斜面上から下流。正面が黒部五郎岳。ここからはカールが綺麗に見えています。

源流に降り立つと、おお昨日のトレース3人分くらい残っています。昨日の小屋宿泊は30人くらいで、8割が山スキーヤーですから、それくらいの人数がこの一体に放し飼いされると、あちこちに1人前くらいのトレースは付くものです。おもしろいですねえ、こうした現象は。源流は、まだ日影ですから、クラスト斜面が続いて、どんどん高度が稼げますよ。岩苔乗越まで400m登りが1時間足らず。


源流から頭上の岩苔乗越方面。トレースは昨日の3人パーティ。一直線に登り易いクラスト雪が続いています。

 私ここに20年前の夏に2人で来たのですが、もはや当時の風景の記憶は、今日の景色では思い出せません。源流もここまで来ると、全面的に積雪に埋没しています。やっぱり半分くらいは流れが出ていないといけないなあと、人間強欲になってきますよ。岩苔乗越に出ると、祖父岳からの稜線にトレースが1本。そうです、その向こうが雲ノ平で、平らなところにはスキーヤーは行きませんが、祖父岳から源流の斜面というのは、双六小屋からは遠いですがねらい目なのです。
 さて私は、ワリモ分岐から、いよいよ水晶岳の稜線を行きますが、このあたりは半分夏道になっています。風が強いんでしょう。雪が吹き飛ばされているってことですよ。それよりも、左側の谷は、岩苔小谷。そう高天原へ続く谷なのです。地図で見ると高天原は近いようなのですが、しかし稜線からはそれらしい平坦地は分かりにくいものです。雲ノ平だけは、確かにまっ平で、がけの上の平坦地ってことでしょうか。そして水晶小屋までいくと、野口五郎岳の裏銀座と、黒部支流の東沢谷が、これは細く切れ込んでいます。ずっと行けばダムですが。この辺りも景色は大きいものです。


東側から見た水晶岳。右トップが山頂ですが、左へ4個目のさらに左下雪田が夏道ですが、登れません。残念ながら敗退。

 そして水晶岳にどんどん近づいていきますが、実はなんと頂上からコブ4個目の斜面が登れないのです。黄色ペンキが矢印で方向示しているのですが、そこが雪壁となっていて、斜度50度。「もう、かあちゃんと子供いっからさあ、無理できねえ体なんだよ」というのは、昔読んだ記憶がありますが、真似するわけじゃないけれど、パートナーもいないし、ザイルもないとちょっとねえ、あっさり敗退。ちょっと横で、雷鳥が登って行きましたがね。ここまで来てとは思いましたが、でも頂上だけが登山でもないし、この辺りで初めて見える景色というのも、またいいものですよ。ちょっと休んで戻ります。


快晴のこんな日にレンズ雲ですか? 不気味でしたが、天気は益々良くなって、雲は夕方に消えました。(中央三角は常念岳)

 まだ10時半。予定通りに、戻るときには鷲羽岳に登ろうということで、分岐からワリモ岳へいき、鷲羽岳へ。でもこのゴツゴツ三角は、90%夏道になっています。そういえば、昨日スキー靴でこの山頂にきた2人は、「靴が傷む」と言っていましたが、なるほどその通り。


ワリモ岳北側からの鷲羽岳の西面。強風ですっかり雪もなくて、夏道は稜線右についています。

岩だらけですから。頂上からは400mの急降下で三俣蓮華小屋のコルにでます、というか戻りました。
 ここで帰りはどうしようかと思っていたのですが、まず3人パーティ、続いて4人パーティがいますよ。湯俣川に下降する弥助沢を滑ると。13時半ですがね。30分で降りて、2時間で登り返すとすると、16時。まだまだ十分に明るいのですが、でも5月というのは、こういう行動を平気でするものですかねえ、またまたカルチャーショックなのですが、板を小屋付近にデポしているし、いまさら三俣蓮華の頂上でもないということで、この双六スキームーブメントに合流することにしたのです。気になったのは、滑り出しが35度ということくらいですが。
 まず3人組がドロップ。続いて4人の年配先生ドロップ。私その後からドロップ。このチビ板滑降は、昨日に続いて2回目ですね。何とかなりますか、尻餅付きましたが。この谷は有名な谷です。広い楽しい。

弥助沢中間部から滑り込んできた上流を。滑り出しは三俣蓮華小屋脇。下流は湯俣川。上にまだ年配4人組います。

500m滑降して湯俣川ですが、というよりも「漢字の樅沢」だといいますね。丸山谷とも言ってましたが。湯俣川なんていう、恐ろしい名前の谷に下降してしてしまっていいんでしょうか。でもここはゴルジュの上流で穏やかです。金木戸川はゴルジュですが、双六谷が穏やかなのと同じことのようです。
 それで「カナのモミ沢」というのもありますが、それは80m下流から。どこを登るのかと、4人組と、そこで休憩していた別の2人組と相談しますが、モミ沢のスノーブリッジの厚さが、今日辺りで崩壊するという噂もあって、しかし4人組みはモミ沢へ。2人組は樅沢へ。私は、いま休憩している目の前に合流する枝沢を行くことにした。どうせどこを登っても登高は500m。大体上にでる。
 思ったように、そこにはトレースもなくて、静かだった。けどやっぱり。ツボ足で潜るといっても程度は知れているんです。でもトレースあった方が楽ですね。小沢詰めて、小尾根に出て、するとどうなんでしょう。間違いなく熊のトレースですよ、下っている、しかも本日、おお。


トレースは熊ですか?間違いですか? これ利用して30分近く登ってきました。熊に感謝。

その熊トレースを利用して、どんどん上へ行きます。熊って自分の歩いた後に戻ってくる習性あるんでしょうか、ないですね、きっと。こうして2時間の登行で稜線のトラバース道に合流して、最後にはまた100mほど滑って、小屋に到着、午後5時。先の4人組が下から登ってくるのも見えました。
 本日は充実しました。こういう日には小屋に戻っても、何だか元気がありますよ。いや、皆元気でしたね。この季節に小屋に入るような連中は、何だか誰もがスキーに一言あります。イチローのCMやっているフィットネスの上下着ている人や、飯食いながらも、同じようなフィットネスパンツのまま、ストレッチしている姉さんとか。1日で二日分楽しみました。明日は雨でもいいやって感じ。それでも夕方までしっかり快晴で、夕食のときでも外は明るい。本日また人数増えて、宿泊40人。

 5・2も快晴です。このまま永久に雨は降らないんじゃないかという錯覚。昨夜は10時まで数人とだべっていて、熟睡。本日朝7時の飯コールで起床。わずかに5分で朝飯食って出発するパーティもいるんですが、私最終で8時出発、下山だけですから。
 ところがここで思いつきました。何かやってから帰ろう。本日放し飼いされた40人のうち、10人が小屋から直接双六岳の頂上目指しています。私も最終で後を追って、稜線近くで追いつき。双六肩から本峰、さらに三俣蓮華岳の頂上までは、やっぱりこれもほとんど夏道が露出しています。1時間半で頂上。


双六岳頂上は雪がはげていて、向こうに南峰。さらに向こうは笠ヶ岳。稜線から左が東面カール。滑り込んで行きます。

 さてここまで登った人は、これも定番の東側カールを滑り込んで、双六谷に出るようです。それ滑って下山がやっぱりいい。オバサン2人組入れたパーティも同ルートだそうで、私付いていきます。ここから南峰へは、ほんの10分。そこからカールへ。
 部分的に35度ですが、問題ないでしょう。一昨日、昨日とこのチビ板で滑って、慣れてきました。小さいターンがよくできる。それよりもこのカールの滑降が素晴らしいのは、槍ヶ岳正面に見ての滑り込み。こんなロケーションは、そうありません。やっぱり、北アで滑るというのは、こういう快適さでしょう。素晴らしすぎる。双六小屋の定番として人気があるには、それなりの理由があったものだと再認識でした。
 およそ400m滑って双六谷合流。さらに100m滑って、大ノマへの取り付き合流です。先行パーティはすでにいってしまったし、後続オバサンは来ません。木陰で休憩の後、大ノマ乗越への350mの登り返し。どうせ1時間でしょう。確かにしっかりしたツボ足トレースあるし、急だけど雪崩れないでしょう。12時少し前に到着。
 ここで対岸から登ってきた人に「クロカンアドベンチャーですか」。愛読者の一人でした。双六岳に向うようです。昼飯弁当食べて、いよいよまたチビ板でドロップイン。思ったよりなだらかで、滑り出しで30度くらいで安心。ここから概算で下界まで1000mですから、ロングランです。ただし100m降りるたびに、「ハアハア」と休憩入れますから、長い滑降も楽しい疲労感。


大ノマから秩父谷の滑降は、正面に大キレット。1000mダウンヒル。

 林道に突き当たる最下部では、総勢50人の雪ハイキング部隊が、尻セードして遊んでいます。春の連休真っ只中ですよ。わさび小屋でビール飲んで13時。わずかに5時間で2本滑って下山ですから、都合が良すぎる。春山ってこんなに簡単でいいですか?
 そこから林道もヨタヨタ歩きながら、さらに1時間半で、新穂高に到着です。そこの駐車場で、先に大ノマでコンロ使っていた一人に会いました。本日大ノマ往復、昨日は穴毛谷から抜戸往復だったそうです。エキスパートでした。
 下界には、オートバイ族がいたり、松本ではもう水田に水をはっていますよ。間もなく田植えでしょう。春山残りは少ないです。

守門岳1537m With 浅草岳

 守門岳 ☆☆☆ 2004・4・18 快晴 大原スキー場730(リフト2回)〜守門岳稜線1000〜守門岳山頂1140=1220(下山)〜大原スキー場1400
 浅草岳(ガス敗退)☆ 2004・4・17 曇り 浅草山荘600〜ムジナ沢経由1150m830(下山)〜枝尾根から浅草山荘1100


 2月の小谷温泉メンバー3人でツアー。17日夜の宿泊は浅草山荘近くの民宿。新潟県入広瀬村でございます。但し今年の秋から「魚沼市」になるそうで、中心地は小出です。さて本日の夜は満天の星空です。明日の晴天を約束しているでしょう。朝食は早めの630に予約して、食べてさっさと出発。車でわずかの大原スキー場に向って、そこから守門岳目指します。
 メンバー他の2人は、共に3度目の守門岳のようで、過去2回とも悪天候で敗退しているようです。お天気次第なのですが2,3月にここにきてもなかなか登れるチャンスに恵まれないようです。私は初めて。さてスキー場は、すでに閉鎖で関係者のみの大会のようなことしていて、それでも730にはリフトが動いていて、乗ってもいいようでした。2回乗り継いで高度250m稼いで、スタートの400mから650mへ。
 さてそこから左側の尾根に取り付きます。リフトからすでに山頂はっきり見えますよ。コブが3つ連なっているうちの、最も左側が山頂のようです。さて最初は順調ですが、途中から雪が切れて少しだけヤブコギ。

稜線近くから登ってきた尾根を見下ろし。

その後アイゼンに履き替えて、急な雪渓のエッジみたいなところを、なんだか危なっかしく乗り越えていきます。その後稜線に合流。さてここからはもう下から見ただけでは想像できないほどの、のんびりした広い平らな稜線を進んで行きます。雪の砂漠ってこのことでしょうねえ。

守門岳主稜線上の雪の砂漠の尾根。とんでもなく平坦です。

 ところで今日は快晴につき、後続に数人のパーティもいました。春になるとどうも「山菜取り」のグループのような感じの人たちも多いのですが、中には釣り道具屋で売っているスパイク付きの長靴履いていたり、ザックにわかんつけていたりして、見掛けオジオバグループですが、けっこう雪の処理もうまい人たちもいるんですよ、ツボ足ですけれど。

間もなく守門岳頂上。左のピークが頂上です。右端に休火山の噴火口。

でそんな人に混じって、1時間少しで山頂に行きます。稜線に出てからは、楽なものでした。頂上付近に20人くらいでしょうか。二分口方面(西側)から登ってきた人も多いですよ。そのほか山スキーは10人くらいですね。春の賑わいです。

頂上だけは雪もすっかり融けて、春の賑わい。皆日帰りなのにコンロ持ってきて、昼食パーティ。

 頂上に昼を挟んで40分くらい滞在して、おおそうだ、天気が良くて周囲の山が良く見えますよ。昨日ガスって敗退した浅草岳はもちろん下田の粟ヶ岳などはまだまだ白いです。そこから青里岳、矢筈岳などはマイナー系ですが、ごちゃごちゃしていてよく判別できません。分かり易いのは毛猛山、これは守門と同高度でなかなか立派です。さらに右には越後駒ヶ岳、八海山、さらに荒沢岳ですね。下田の山々は1200m程度なのですが、それらに比べれば守門岳、浅草岳はやはりなかなか立派です。それに古い噴火口を持っていて、そこも真っ白になっていましたね。今回の山行が新潟のマニアックな低い山々に今後行くきっかけになればいいと思いますが。真夏には実はこうした低い山はダメなのですよ。ヒルとメジロというアブの仲間なのですが、その大群がいて春か秋ですね。

スキー場に戻る直前は、緩い斜面の連続。

 さて下山は稜線に登りついた地点までは雪の砂漠を滑降。ところでその場所は藤平山の一角で、下山後に入広瀬の露天風呂から、藤平山は良く見えました。地元の人に聞いて初めて覚えるような山ですよ。その地点から、登りの雪渓エッジ部分を通過して、メンバー2人はそのまま滑り降りて行きました。部分的に急傾斜ですよ35度くらい。私アイゼンで少し降りてからスキーで合流します。後はスキー場まで一直線。春スキー定番の楽しいコースでした。

浅草岳1585m

 前日の土曜は浅草山荘からムジナ沢経由で浅草岳目指しました。今週末両日晴れ予想でしたが、何故か朝から曇り。600にスタートして順調に上りますが800に滝を一箇所高巻きする地点から、ガスが濃くなってくるのです。

 浅草岳ムジナ沢途中の滝。右の斜面から高巻いていくのだが、この頃からガスで雲行き悪し。

 それでもさらに登って1150mの二股付近を通過しますが、もうダメです。視界50m。登っても楽しくないときにはあっさり敗退。同ルート下るのもつまらないということで、左側の尾根に下りトラバースで上がることにします。尾根上に上がりついたのが900。

敗退の下山は、尾根に登ってからこんな斜面の滑降。

 ここでもまだ視界が悪くて時間待ち。小一時間まっても変わらずで、その細い尾根を滑り出します。適当に下って、尾根の二股はその中の沢に入って、その後緩やかになった左右の尾根を行ったり来たりしながら、浅草山荘パーキングに午前中に到着。展望もなく、本当に浅草岳目指したのか不明のまま(当然目指していたのだが)その実感もないままに、この日は終了。

 下山途中の斜面から破間川(あぶるま)ダム

 全国的に移動性高気圧だといっても、山はガスでダメなときもあるものです。


北ノ俣岳2661m・黒部五郎岳2839m
 ☆☆☆☆
2004・4・10 快晴 和佐府600〜飛越トンネル800〜寺地山1200〜北ノ俣避難小屋1300 
4・11 曇りのち晴れ 避難小屋330〜北ノ俣岳530〜黒部五郎岳900〜北ノ俣岳1200〜避難小屋1230=1330〜飛越トンネル1630〜和佐府1730

 Pre 最近スノーモービルの被害が大変で、北ノ俣の避難小屋日記があるのですが、そこにも某大学山岳部が2年ほど前の同季節にここに来て、モービルが北ノ俣頂上まで登った跡があると記しているし、管理の一人の姫路の村上さんも、ペットボトルにモービル用のガソリンだと思われるものが小屋の中に放置されていて困ったとあります。
 さて私も今回登りには1週前くらいのモービル跡があり、下りではほんの数時間前のものと思われるモービル後が寺地山まできていました。取り付きは同じ飛越トンネルで、駐車場からいきなり右側の川を横断してそのまま直上、高圧線辺りで一般道に合流して、そのままどんどん上がってくるのです。国立公園の中、登山者用の道、自然保護、林道閉鎖中、その他多くの理由の中に、エンジン付きで遊びだけが目的で入山してくるのは、即刻辞めさせなくてはなりません。禁煙の避難小屋の中で煙草吸う私の1万倍悪いことです。
 やはり月曜朝帰宅になって、勤務終えた後に3週前の尾瀬のモービルのことも気になって、怒りの電話しまくりでした。尾瀬は東京電力の子会社の尾瀬林業が管理しているようですが、明らかにその連中の遊び。
 今回はトラックにモービル乗せてどこからかくる、偽者アウトドア連中でしょう。2月に神岡は飛騨市になりましたが、その元神岡役場の観光課に電話しました。やはり実態知りません。いっとき富士山麓に四駆を乗りまわす馬鹿者が問題になり、いまは春に山を荒らすモービル連中がいます。どうにかならんか、おおい助けてくれ。

 さてまたまたロングツーリングです。新雪の12月に敗退して、その後一月前にここにいったMr吉田の雪に隠れた小屋写真に刺激されて、雪辱戦です。週末両日晴れ予想です。
 神岡の山之村はいついっても遠いです。和佐府に到着も遅くなって600出発。村のはずれの橋のところから林道は積雪そのまま。スキースタート。2時間で飛越トンネル。夏道どおりに左に取り付きます。

飛越トンネルの取り付き付近。道標も雪に埋もれて、積雪は十分。

 おお取り付いてすぐ分かりました。今の季節は本当に登り易い。クラスト斜面にシールぴたぴた。思い出します、12月のあれは何だったのかと。ここから避難小屋まで12時間かかったのです。今の季節のこのコンディションなら夏時間と変わらんと。
「有峰湖展望台」ってのがあったんですね、取り付いて1時間くらいのところに。夏はこの辺りも道がごちゃごちゃしてますよ。右折左折させられるのですが、それが3mの雪を被っていると、実に地形が分かり易い。あの笹薮の上を通過しているのですから。トンネルからわずかに40分です。

神岡新道と合流した付近から振り返る。ここからすでに平原状の尾根。

 さて尾根道は左折1回、右折1回で神岡新道に合流します。この合流も今の季節は実に分かり易い。向こうから白い尾根がだんだん近づいてきます。そして合流すると、平原の向こうに寺地山、北ノ俣岳、薬師岳、さっきから右に見えていたのは笠ヶ岳ですよ。親(主峰)子(コブ)が並んだ頂上ですね、格好いい。そこから1時間で寺地山トラバース。

寺地山下りの斜面から北の俣岳。真っ白な雪原が続いています。

 北ノ俣に向って休んでいると、なんか静かで誰もいなくて、ジリジリと春の日差しが強くて、さらに雪の照り返しもあって。昼間なのに静かで誰もいないと、白日夢みたいです。ずっと前に北欧の夜中23時でも、昼間と同じように明るくで、皆寝ていて実は真夜中で、なんかそういう気分です。ぼ〜と、時間がたつのも忘れてしまいそう。
 そこから1時間で避難小屋。さてそこに到着する寸前にいやなことよぎりました。「小屋が見つけられるか」。私12月の夕方薄暗い17時頃に、樹林の中の小屋探しに1時間かかって、遭難しかけています「そうなんだよ」、冗談よしましょう。今回も不安の山盛りでしたが、「な〜んだ」と。稜線右側ぎりぎりに寄って歩いていると、右下にいきなり「小屋の赤い屋根」発見できました。どうして春だとこう簡単なんだ。夏でももっと難しいぞ。同じ道に夏来て、春来るとこうも大きく違います。楽しいねえ。

北ノ俣避難小屋。冬季用の裏口は除雪されています。1階は埋もれて、この裏口は2階入り口ということになります。

 小屋は1ヶ月前の小屋よりも1mくらい雪が減っていますかね。正面から見てドアの半分、後に回るとドア全部開きます。そうそうこの小屋は正面が北向き、冬用の裏口が南向きになっています。1週前に姫路の村上さんというボランティア管理人がきていたようで、大助かり。本日いまから稜線にいってみる気はしなくて、早々と宿泊体制に入ります。夕方は暇で小屋日記を全部読んでしまいました。大体年間に50人くらいが、この小屋を利用しています。黒部五郎の営業小屋よりも、こちらが快適だと書いていた人もいましたよ。柱時計も着いている有名な快適小屋でした。夜中でも室温はプラス。戸外は明け方に少しだけマイナス気温という、暖かい春の臭いです。
 4・11 いま4時半に明るくなってきますから、1時間前の3時半に出発。数時間前まで満天の星空だったのですが、急に高曇りです。下弦の月もおぼろ月でちょっとガッカリ。小屋からだと高い方向にどんどん登っていけば稜線です。その理屈に従ってクラスト斜面をドンドンと。400m登って、残り200mになったところで、スキー担いでアイゼン。どっちでも潜らないから時間は変わりませんよ。2時間を切って、北ノ俣岳頂上に5時20分に到着。昨年の7月以来で懐かしいです。

北ノ俣頂上を過ぎてから上流方面。中央手前が祖父岳。左に水晶岳、右に野口五郎岳、鷲羽岳。

稜線の向こうに、水晶岳、鷲羽岳、野口五郎岳。そうして目的の黒部五郎岳です。こちらから見るとカール見えませんから、無骨な山に見えますよ。ここから先は200m下って、400m登って目的地。稜線が波打っています。

 最低コルからの黒部五郎岳。ここから300m登って頂上。水平に見える左のピークから、夏道は向こう側のカールへ下っています。頂上は右側ピークの奥。

 それに黒部側は赤木平、薬師の左俣、赤木沢、ウマ沢と、沢を滑りながらトラバース縦走するのか、稜線を堅実に辿っていくのか。といっても、斜面に踏み出した瞬間に、まだ6時前の斜面ではクラストそのもの。それに景色はすべて見渡せますが高曇りで青空と白い雪のコントラストが弱くて、やっぱり春山はお天気が第一ですよ。稜線を忠実に行く気がしなくて、クラスト斜面をアイゼンのまま行きます。
 でも一旦トラバース始めると、中俣乗越近くまでの大巻きになるんで、なんかスリルあるなあ。そこからもう1回トラバースして黒部五郎取り付きの鞍部ですよ、ここから300m直上です。そういえば避難小屋の日記にあったけど、この正月「ブナの会」が8人パーティで小屋に泊まって、翌日快晴の中黒部五郎いきましたが、中俣乗越で急に吹雪かれて引き返し。そのまま稜線ビバーク。翌日小屋戻って、さらに翌日大ラッセルの下山だったようです。なんか大変だなあと。
 この辺りで7時半。天気もだんだん良くなって、やっぱりジリジリ、テカテカ、大いに静かで絶対に誰も来ないし、南極の夜中みたいだなあという錯覚に陥ります。休憩の後に黒部五郎の300mの急登にいきます。まだクラストしていてアイゼン効きます。そうだ休憩でスキーデポしたのです。目の前の急坂は滑る気持ちになれません。左に水平な稜線は、頂上からまだ100m下の稜線なんですね。夏道はそこから向こうのカールに降りるようになっていますが、私このダイヤモンドコースは初めてで、地形の把握ができていません。

 来た方向を振り返って、北ノ俣岳。手前が赤木岳。稜線を忠実にきてもいいし、私は右側(黒部側)の斜面トラバースしながら、ここまで。

 水平稜線に合流してさらに100m。アイゼンでジグ切りながら、いよいよ頂上ですよ。いきなり「おお、向こう側に槍と穂高」。@金沢さん始め大勢が向こうを滑っていたのですね、知るよりもありません。

黒部五郎岳頂上からの槍ヶ岳と、キレットが大きくU字刑に切れ込んで、その右に滝谷と北穂高岳。奥穂高岳。

ただ槍の穂先だけは黒々としていました。でもねえ頂上は長居できませんよ。カールに向って雪庇出ているし、カール覗き込もうと思って向こうに少し下りますが、この尾根はけっこう切れているんです。むしろ双六谷に続いている尾根の方がずっと緩やか。カール見えなくて、黒部側に寄ると、またまた雪庇「おお怖い」。頂上は風が少しあって、それに登った斜面が腐らないうち下ろうと、まもなく出発。
 下り始めてカールに向う夏道方面へも少しいってみました。カール底へは、けっこう急斜面になっているものですねえ。さらにもと来た方向へどんどん高度を落とします。ちょっと融け始めた雪が下り易いのですが、部分的に中途半端で、クライムダウンの姿勢になってしまったりして「私こんなとこで何やっているんだ」と。
 スキーデポ回収して、さらに稜線を忠実にいこうっと思ったのですが、中俣乗越からの登り返してやはりどうにも能率が悪いように思えてならない。黒部側の緩やかな斜面の方が楽そうで、途中の小さな雪庇の間から、また黒部側に出ます。再び大トラバース。頭上に雪庇が覆いかぶさってきてちょっとスリルあり。最後100m登ると再び北ノ俣岳の頂上に出ます。黒部五郎までの往復は、6時間ほどでこれも夏時間と同タイムくらいです。12時に北ノ俣。

 夏道方面からの黒部五郎岳のカール側頂上。ここから見ると山頂の様子がちょっと違いますね。カールは斜面の下に大きく広がっています。

 日差しを背中から浴びて、首筋だとか耳たぶだとか、すでにヒリヒリ状態。夏用の庇のある帽子でも被るようにしないと、春の日差しは強すぎます。さて頂上からいよいよスキーに履き替えます。大斜面はちょうど下り易いくらいに溶け出しています。夏に木道を歩いているときと、大いに違います、楽しいです。

北ノ俣岳頂上付近からの大斜面。寺地山まで樹林の少ない雪面が広がっています。この斜面下りきったところが、避難小屋あるコル。そこまで標高差600m。一気にいきましょう。

 真っ直ぐ下って左に折れて、その先は這い松が少し出ていて残り雪は細くなっていて、それを過ぎるとまた大斜面。右に大きくターンすると、その先尾根が切れ落ちていて、そんな地形は夏には把握できません。それに朝登ったときにはまだ夜明け前だったし、こうして明るいときに滑り降りるのとも、イメージが違いますねえ。
 実は今回はサロモンの新雪クロカン用のカービング「Xアドベンチャー」145cmという今期限りで生産中止の欧州スキーレース用のおかしな板履いてきました。ステップソールです。私カービングで滑るのが初めてで、おおなんと滑りやすいものかと感動です。あっという間に目の前に小屋が現れて、頂上から30分で、1230分着。北ノ俣岳と黒部五郎岳の二つ。欲張りの大満足になりました。
 1時間で昼飯、撤収してまたまた大荷物で下山開始。寺地山まではシールで下って登って、するとなんと寺地山のこちら側まで、つい1時間ほど前のスノーモービルの後。雪が荒らされていて愕然とします。そのモービル跡に沿って、シールの登り返しは途中に1回だけで、広い斜面を大回りで下っていきます。小屋から3時間で飛越トンネル。最後高圧線を過ぎて林道に出るときには、沢の向こう側に行かずに手前をモービル跡に続いてそのまま下り、埋まった沢を横断すると、広い駐車場付近にいきなり飛び出します。
 そのまま林道をどんどん下って、しかしこの2日間の晴天で林道の雪もけっこう溶け出して、最後の1キロは板担いで歩くはめになって、和佐府まで1時間。明るいうちに到着できました。今回の晴天の2日間で、グレイト・ツアー慣行できました、感謝。



上越・上ノ倉山2107m ☆☆☆

2004・4・3 三国スキー場st・1150m 630〜西沢の頭800〜セバトノ頭1000〜上ノ倉山1200(下山)〜三国スキー場上1440〜駐車場1520

 Pre。先週の平ヶ岳に気をよくして、同じようなマイナー山探してましたが、なんと私も今週になって知った上ノ倉山にいきます。「山頂猟渉」という本がありますが、国内の2000m以上の600座すべてに登頂したというおじさんの本です。そのオジサンは、白砂山あたりで7座ほど。西は志賀高原、東は谷川岳、北は苗場山というわけで、妙に白砂山が山塊になっているのです。その東端にある2000峰が、この山でした。白砂、佐武流というのは、通の山です。その見学にいってみようというわけです。しかも入山は東側の三国スキー場。それに都合のいいことに、ちょうど先週でスキー場の営業も終わって、ゲレンデのそのそ登って取り付いて見ましょうというわけです。でも前日寝過ごしたりして、出発は春スキーにあるまじき遅さ630になってしまいました。

 三国スキー場についてビックリ。営業は終わったはずなのに、なぜか「貸切オープン」で人が出ています。「ゲレンデ登るだけだからさあ」と、端っこ登り始めます。ゲレンデシール登りというのも、そう経験はありませんが、はかどりますねえ実に。標高差300mのゲレンデトップまで30分ちょいです。それにゲレンデおやじとか圧雪車とか走っていて、さっさといってしまおうと頑張りました。さらに上に廃止になったゲレンデがあって、そこから尾根に取り付きます。一旦稜線にでると、苗場スキー場の筍山がおおきいですよ。
 ここまで標高差500mを1時間少し。はかどるってのはいいことだ。高度計もう1700m台になってます。例によって冬の縦走は地形が複雑なのです。

西沢ノ頭1774mから上越国境の枝尾根の眺め。中央に上りついて左へ縦走。下山時に、この尾根に入ってこれずに、通り過ぎてしまったあと、戻れた。

 登りついた稜線を辿っていって、上越の国境稜線の枝尾根にでます。この辺なだらかでスキー履いたままでOK。その後枝尾根を国境稜線に向うのですが、ここが痩せ尾根になってます。スキー脱いでアイゼン。
 その後国境稜線に合流してからは広い稜線になって、スキー大活躍。

上越国境に出てからの眺め。3ピークのうち右は登りつく大黒ノ頭。中が上ノ倉山2107m。左は2120m最高ピーク。

 上越国境ですから、ずっと東には谷川岳、西に白砂山から志賀高原ですよ。昭文社の地図に「猛烈なヤブ。大学ワンゲルのヤブコギ合宿の世界」とかいてありますよ。そんな合宿あるのかと、思い出し笑いの連続。天気はとてもいいです。
 この辺りから目的の上ノ倉山が目の前にだんだん大きくなってきますよ、10時。昼までに登れればまあいいかなあと。最後急登になって、11時大黒の頭です。

大黒ノ頭から上ノ倉山眺め。

 ここまでくれば目的達成ですが、でもやはり山頂行かないと後悔するというわけで、スキーデポしてアイゼンで、片道30分の上ノ倉山にいきます。2107m。実はその10分先には、最高峰ピーク2120mもありました。向こうの白砂山方面展望するにはそこ行かないと良く見えないということで、最高ピーク1200到着。

中央最高峰が佐武流山2191m。この辺りの最高峰です。

 綺麗な稜線が白砂山まで続いていますが、でも遠そうに見えますよ。今日歩いた距離より短いのですが。それと佐武流山が実はこの辺りでは、最も貫禄あるわけです。その奥に赤倉山あって、苗場山の緩斜面は、佐武流辺りまで続いているようにみえますよ。この辺りからだと、とんでもなく高い高度で、だだっ広いものですよ。さて本日目的達成して大満足。登り5時間半。あとは安全に下りましょう。

国境稜線を白砂山方面へ。中央右よりの最高峰が白砂山。上ノ倉山から尾根が続いています。

 ところが1時間ほど下ると、曇りになってガス。そのガスもだんだん濃くなって2時間くらいすると視界50mまで低下。自分のトレースあるからいいのですが、しかし朝方のスキーはクラスト斜面にトレースありません。上越国境から枝尾根に入るのは成功しましたが、実はそこから西沢の頭方面にもう一回尾根を分ける地点を、通り過ぎてしまいました。怖い。
 一本の尾根が等分されて分かれている場合、視界50mでは、違う方に入り込んでしまうわけです。行き過ぎて戻って、しかし戻りすぎてまた進んで、その途中で、かすかな朝のトレース探し出して、大助かり。自分で赤布用意しないとだめですね。午後から曇るような日は。適当に突っ込むとまた夜かと、一瞬頭よぎりました。
 さて正規ルートに戻れればあとは簡単にスキー場方面に突っ込むだけ。なんとゲレンデは、今日は石井スポーツのニューモデル試乗会の貸切だったようです。午後3時過ぎても大盛況で、ブランドメーカーがたくさん出店やっていて、驚きでした。