2006 Winter NO 2          トップページへ




仙ノ倉沢 1100mまで 06・3・18 晴れ・強風 ☆ −1度
毛渡沢P530〜群大ヒュッテ700〜720〜仙ノ倉沢1100m820=850(下山)〜群大ヒュッテ910=940〜毛渡沢1030

 春の嵐が通過している谷間の晴れ。山も穏やかでいてくれればいいと思ったが、先週と同じように毛渡沢出合に車を止めて仙ノ倉谷に入っていく。スタート気温が先週は+2度、今日は−1度。この違いはけっこう大きくて、つぼ足で入り込んでいったときに、ズボッと潜るか潜らないかの違いがある。

ドライアイスの煙のように、足元に飛ばされた雪が風と一緒に流れてくる。ダイコンおろし沢

 群大ヒュッテ辺りで直射日光が差してくるが、しかし稜線は雪煙が上がっている。仙ノ倉谷に入ると、数日前の雨がここでは雪になっていて、斜面は綺麗になっている。しかし若干モナカ状で登り辛い。ダイコンおろし沢から仙ノ倉北尾根へ取り付こうと思っていたのだが、間もなく強風でストップ。積もった雪が飛ばされてくるし、前方に顔が向けられない。そんなわけでさっさと敗退にする。緩斜面だというのに、中くらいのモナカはこれもまた滑りにくい。

群大ヒュッテの辺りから、先週滑った仙ノ倉沢西ゼンが正面に

 群大ヒュッテの下で、このOB二人がヒュッテに泊まると登ってきた。その下から3人組も登ってきた。Pに戻ると地元のオジサンが、ここはもう1m50も雪が解けたと話しかけてきた。帰りがけ二月前の荒沢山からの雪崩れ跡を見に行ったが、南カドナミ沢からの雪崩で、斜面の木もなぎ倒されていたのがわかる。



仙ノ倉谷・西ゼン
 06・3・11 晴れ・曇り 気温+2 ☆☆☆ 登行1300m
 毛渡沢橋P510〜群大ヒュッテ700〜平標沢取り付き800〜標高1450mから右斜面へ830〜標高1700m稜線1030〜平標手前ピーク1873m1230=1250(西ゼン滑降)〜仙ノ倉谷出合1340〜毛渡沢P1430
 元を正せば、3年前の今頃(3月4週目)、子連れで仙ノ倉谷の西ゼンの取り付きくらまで、クロカンで遊びに行ったことが、こうした山スキーを始めるきっかけになっている。HPを始めたのもその頃だ。けっきょく今回はそのコースを滑ることになったのだが、その前に大きな勘違いをしていた。
2週前にも土樽からこうして平標を目指したのだが、平標沢に入ったつもりだったのだが、実はそれは仙ノ倉谷で、なんと西ゼンの滝の取り付きまで登って敗退している。「どうも地形が前に平標沢に登った時と違う」と思い続けて2週間。今回はそのリベンジをしたつもりだったのだが。

西ゼンでは最初の核心部のところで、スノボー隊が壁に集結しています。

前日は曇りで明け方から急に快晴になった。空には満点の星が出ている。平標に登っても、どうせ土樽側に滑ってくるわけだからと、土樽の毛渡沢出合に車を置いて早めに出発する。こちらから稜線まで登り上げるのは、チンタラしていると失敗する。
ところが今日は出発で気温が2度。雪が絞まっていないで、つぼ足だとズボッと潜る。どういう春の天気なんだ。
2週前と同じように平標沢を詰めようと思って、その出合に達したつもりだったのだが、やはり2週前にも違和感があったように「何となく変」。例えばそこには10本近いシュプールが上から降りてきているのである。前日のものか?まさか先週末のものか? 今時平標沢を滑ってくる人がいるんだろうか。ナビと地図で再確認してはたと気が付いた。ここは目的の平標沢じゃない。西ゼンから滑ってくる仙ノ倉谷じゃないのか。この辺の地形はよく知っているはずなのに、また間違えた。2週前も間違った。今シーズンは2回もルートを間違えていて、私はボケたか。
さらに本流奥までスキーを進めると、そうだよ、ここだよ、昨年にここも子連れで遊びに来た平標沢じゃないのか。見覚えがあるよ。下部から上部のなだらかな稜線がしっかり見える、ここが目的の沢だよ。

平標新道1873mピークから山頂を、10人くらいがすでに山頂にいます。

少し入って二股。昨年はここに支流からのデブリが相当ひどくて大きく迂回した場所だ。今年は昨年以上の積雪だというのにデブリはまだない。これから大きな雪崩れが堆積するのだろう。難なく本流を進んで、さて途中から左に大きな斜面が広がっている。谷通しに詰めるのも気が引けるし、斜面を上がっていく。
標高1650mくらいでクラストしてきた。つぼ足のアイゼンに履き替える。これがまた歩きにくくてスピードダウン。1750mくらいで稜線に出たが、1800mくらいで平標頂上が見える。すでに山頂に10人くらい人がいる。この日は30人くらいが元橋から山頂まで来たようだ。ここは上越の栂池。西ゼン上部に200mくらい滑り込んで登り返しているスキーヤーもいるが、そこは上越の千畳敷。こちらから見ても、なだらかな風景だ。

西ゼン上部の緩傾斜帯を滑っていくボーダー。彼ら6人も西ゼンに滑り込み。

 夏なら池糖もあって、頂上から仙ノ倉まで駆け足でもいけそうなのに、今は見えるのになかなか進めない。それに稜線少し曇ってきた。時間も12時を過ぎた。仙ノ倉の方まで回ってみるものいいのだが、しかしパワーダウン。頂上に行くのもやめて、平標手前の1873mピークに到着して、ここから滑ることにする。すぐ真下、西ゼンにしよう。出発前地形図もしっかり見てきたが、滑れない沢ではないと思った。用意して12時50分スタート。
 すると、向こうの稜線コルからなんとスノボー6人組も滑り込んできた。まあ大勢の連れがいるなら、心強いか。それに前日以前に10人部隊の滑り込んでいるのだから。
 最初の喉(滝)のところで、スノボーは左側に集結。私嫌って右へ出てみると、下にシュプール見えるし、十分に滑れる。谷は妙に左右に振らないで、ど真ん中滑った方が実は雪が柔らかかったりするもんだ。大胆に行って、下の滝下から見上げる。スノボーは、上のけっこう急斜の滝側壁で、集結したり、すべり込んだり遊んでいる。時代は進化しかた。さっさと先に行く。

2番目の喉、核心部滑り込んでくるボーダーコーチのスキーヤー

 2番目の喉も傾斜があるが、ここは前日以前のトレースで、一部ガリガリになっていて、少し興ざめ。滑っている最中はずっと曇りになってしまって、曇ると斜面の遠近感がやっぱり分かりにくくなってしまうもんだ。
そこを滑りきると、そうでした、2週前に敗退した滝下に出たのです。あの時は沢筋からも雪煙が上がっていて、しかもクラストしていて、もちろんノートラックだったのだが、2週間たつと景色が全く変わっている。それに中重のシャーベットで、何だか滑りにくい。山足スキーが山側に開いて、股裂き姿勢で「おっとっと」が数回。
 10分休憩していると、ボーダーのコーチのスキーヤーがビデオ回したりしている。
 ここからはもう緩斜面で、2週前のデブリをうまく避けながら、この2週間まったく積雪もなかったようで、デブリがそのままになっているっていうのも、何だか悲しいもんだよ。
車のデポまで急いだ。
 西ゼンは過去2回沢登りできたこともあるのだが、遠い昔過ぎて何も覚えていない。上越の北斜面もスキーヤーが多い。

平標沢1300m付近からの見上げ。上部稜線は平標新道、なんか近い感じはするのだが
 3年前の春に、春の谷に開眼したこの仙ノ倉谷ではあったのだが、あのときほど天気もよくなかったし、あのときほど静けさもなくなったし、私自身もあのときほど初心者でもなくなったし、遠い記憶の懐かしい場所を通過したと言うのに、あのときの心の躍動感はすでにもうなく、気が付かないまま通り過ぎてしまった。





上越蓬峠越え 蓬沢から白樺沢〜武能沢 06・3・5 晴れ ☆☆☆☆☆
土樽610〜蓬沢1050m730〜蓬沢右側尾根〜稜線1570m1030=1050〜下山〜白樺沢トラバース〜武能沢〜湯檜曽川出合1130〜土合橋1230〜土合(電車)土樽〜P1420


 上越稜線を過去何度か越えようとしたけど失敗して、今回は蓬沢から。1月には足拍子からの雪崩れで、毛渡沢橋までしか除雪されていなかったが、3月になってようやく例年通りの除雪形態になった。少し遅くなったが6時過ぎに土樽除雪手前から出発。他の車は2台。

蓬峠上・稜線からケサ丸沢上部斜面 先行者と自分のシュプール2本

 この季節朝はカチカチで全然潜らない。蓬峠方面へは、クロカンやらつぼ足ハイカーのトレース。少し行って、2週前に登った武能岳西尾根へ昨日辺りのワカントレース一人。その先にトレース皆無。
 前に蓬沢を詰めて行ったことがあるが、この季節沢沿いに峠まで上がることはちょっと不安につき、1100m辺りから戻るように、右のなだらかそうな尾根に取り付く。登り始め少し急だが、上に出ればそこそこ登れる。右側、西尾根の北斜面に隠れファンが多いそうだが、昨日あたりのスキーシュプールが2本見える。

向こうの武能西尾根北斜面に見えるシュプール2本

 登りは結構はかどって、左側を覗こうとしたのだが、少し雪庇が出ている。稜線100m手前でさすがにクラストしていて、アイゼンに履き替える。そのまま20分でようやく待望の上越稜線。蓬峠の少し上の平らなコブにでた。しかし稜線トレースはない。

登った蓬沢右側尾根上部、間もなく稜線合流

 稜線に出ると、軽いシャーベット状になっていて滑れそう。さて、まっすぐ降りてしまうとケサ丸沢で、右に1本尾根越すと、白樺沢で、さらに右に越すと武能沢なのだが、下りながらの尾根越えに不安もあって、どうしようか迷う。少し稜線を武能岳の方に登ろうと思ったのだが、風が強くて敗退。つぼ足アイゼンも不安定で、ボコボコ潜る。結局、ここから滑ってしまうことに。それにしても、無木立で斜面が向こうに消えていて、ちょっと高度感がある。

稜線1570mから右側武能岳

 スキーに履き替えて、11時前に斜面をまっすぐ滑り出す。軽いシャーベットで実に楽しいのだが、視界が700m下の湯檜曽川まで一気に見下ろせたりして、どうも遠近感がつかみにくくて、よたよたスキーに。

先行シュプールは、夏道のようにどんどんトラバースしていきます

 150m滑ったところで右下に見えたトレースは、やはり人間のトレースだと確認できる。よくカモシカトレースが多いもんで。さてこのスキーシュプールはなかなかのもので、多分1時間前くらいのものなのだが、蓬峠方面から斜滑降してきて、どうも夏道どおりにこの辺りの3本の沢を大胆にもトラバース滑降しているのである。ふーむ、私も付いていこうと決めて、そちらに寄っていく。

白樺尾根上部を滑る 正面右は笠ヶ岳。左朝日岳

 さて、滑降での尾根越えも、見た目よりはずっと簡単で、1本越えて簡単に白樺沢に入る。さらに小さいの1本越えて、次の尾根がなんと、白樺避難小屋のある尾根だった。しかし、この稜線東面の沢トラバース滑降というのも、なかなか大胆な滑り方だと感心する。初見だけじゃ、こんなことちょっとできない。数年前に清水峠からこの夏道歩いたことはあるんだけど、夏の地形とはさっぱり違っているし、こんな狭い稜線のかわいい避難小屋など見たのは初めてだ。なんか感激。

こんな狭い尾根の上に、白樺避難小屋 もうちゃんと除雪されています

 しかし先行者もこんなところで小屋に寄った形跡も全くなくて、私も通過。その小屋の辺りから右の沢が武能沢。300m下くらいに見えるのだが、このあたり標高1200mで樹林も始まってきて、その合間を縫うように急斜面下るが、シュプールから点雪崩れがどんどん落ちてきて、左右に逃げながらの滑降も面白い。先行者も大きく左右に振っている。

湯檜曽川、一ノ倉出合のハイカー

 軽いシャーベットをうまく下って、武能沢に合流。ここまでくればもう安心。後はそのまま滑って、右にトラバースしながら、湯檜曽川合流して、どうにか滑らせながら、芝倉出合から、一ノ倉出合。ここで堅炭沢滑ってきた人と合流。この出合に何と30人ものワカンハイカーが昼飯食っている。驚き。湯檜曽川も雪のウォーキングブームになったか。そういえば、マチガ出合の休憩所は完全に雪の下だった。土合橋まで滑らせて、駅からJRで土樽に戻る。帰りが面倒だけど、こういうツアーも楽しい。

PS 
後日、先行者からのレス
 3月からの18切符利用の山スキー、行き先をどこにしようかあれこれ考え、結局蓬峠に決定、この土曜に実行しました。鷹觜さんの武能岳西尾根の記録もヒントになっています。
 さて、土曜の昼までに蓬沢方面に上がったスキーヤーは私を含めて4人だけで、私は夏道沿いに登りました。こちらは単独ラッセルも脛程度で楽勝、硬い部分も無くシールだけで蓬峠まで行けました。結局蓬峠を越えたのは私だけだったようで、鷹觜さんが辿られたシュプールは私のものです。土曜日は、峠を越えた方が雪が良かったのではないかと思います。
 夏道沿いのコースを滑ったのは、峠を越えるのが初めてで勝手が良く分からなかったためで、白樺沢に入り、状態の非常に良い大斜面をを見上げたときは、「しまったー、もっと上から滑れば良かったー」と後悔しました。さらに、あの状態と積雪量なら、そのまま白樺沢を湯檜曽川まで下れたのではないでしょうか。白樺沢を上から下まで通して滑れたなら、私程度のテレマークスキーヤーには本当に素晴らしい斜面だと思います。(もう一度行ってみようかな)土曜の雪質は上質で、シャーベットというよりウェットパウダーでした。
 白樺小屋前はせっかくの急斜面なのに、日が良く当たるため表面が硬化、その上に金曜に積もった新雪が雪崩れっぽい薄皮をつくり、ショートターンをすると落ちてくる雪に流されそうになりました。仕方なく雪の安定した場所を求めて右往左往。結局広範囲を思いっきり荒らしてしまいました(申し訳ありません)。
 通過駅化していた土樽駅も殆どの列車が停車するまで復活、平標・仙ノ倉・万太郎・茂倉等を越えてきても余程遅くならない限り大丈夫ですね。

PS 2
3/4に蓬沢から武能岳北西尾根に入ったものです。そうです。向こうの武能西尾根北斜面に見えるシュプール2本の主です。
鷹觜さんの武能岳西尾根の記録を参考に(特にPSの部分)して、トライしました。上部の急斜面に阻まれ(行って行けなくはなかったのですが)1400m付近までとなりましたが、天候・雪質に恵まれて良いツアーとなりました。アプローチに少々難がありますが良いところです。隠れファンの一員になってしまいました。
また、先行者のテレマーカーとは一言、二言会話をしただけですが、後日我々のHP(ブログ)にコメントを頂きました




仙ノ倉谷〜平標沢 1350m 快晴 ―2度 ☆☆☆
06・2・25 毛渡沢橋手前P550〜群大ヒュッテ730=750〜平標沢分岐1000m830〜平標沢1350m1000(下山)1040〜群大ヒュッテ1110〜P1200

 この1週間まったく積雪がなくて、大雪だったシーズンの降雪は2月にぱったり止まってしまったという珍しい冬になっている。登り易いロングルートに行ったつもりだったのだが。

登り始めてまもなく、明けがたの空に下弦の三日月と、空けの明星の金星か?

 毛渡沢の先は、1月には除雪さえもしていなかったのに、もう例年の冬とまったく変わりはなくなっている。降雪もとまって除雪も進んだようだ。ここのPに他の車もなし。でも昨年よりもたくさんの雪を越えて山に入る。明け方は星空で、しかしその割りに気温は−2度と高めで、夜まで曇っていたようだ。

朝7時頃ようやく朝日が差し込んできた、平標山(右)と、仙ノ倉山(左)。仙ノ倉谷から

 ここから山に入ると、関越とJRの2回ガードをくぐるのだが、いつもそこは雪がなくて、急坂で面倒くさい。
数日前だと思われるスノーモービルと、それに乗っていたクロカンの客だと思われるトレースそって、仙ノ倉谷を奥へ行く。毛渡沢との分岐の群大ヒュッテに1時間半くらいで着く。いつも思うんだけど、ここのヒュッテとか、湯檜曽川にある成蹊の虹芝寮(こうしりょう)だとかは、本当にいい時代の国有林の中に立てられたプライベート小屋なんだけど、冬に使われているのは見たことないよね。いつも夏だけ。こんなとこに学校の小屋を持っているんなら、私毎週のように使っちゃうんだけど、宝の持ち腐れだと思うよなあ、もったいない。

ヒュッテのある辺りは、バッキガ平というらしいが、広葉疎林で開けたいいところだ。

 7時半になって、日が差してきた。谷間のここにもようやく暖かい直射でしばし休憩。薄手のアウターの着替える。この辺りもちろん雪は豊富で、本流は完全に埋まっている。

群大ヒュッテの先から平標沢と、その向こうの平標山。この沢を詰めたのdが、中間部の急傾斜滝の下に出てそこでストップ。

 そこから30分ほどで、平標沢の分岐。例のスノモーの後は、分岐した両方の沢を奥へ進んでいる。さて200mくらい登ると、デブリが出てくる。昨年4月にもここへ来たのだが、その頃よりもデブリは小さいのだが。振り返ると、向こうに巻機山が正面になっている。真っ白な巻機だけど、割引沢とヌクビ沢の分岐の天狗岩だけが、雪をつけずに黒くなっていて、これが分かりやすい目印だ。そのヌクビの右が井戸尾根で、そういえば去年の4月もこうやって、ここから巻機がしっかり見えたよなあと思い出す。

振り返った真正面が巻機山で、中間部黒い岩が天狗岩は、この距離でもしっかり分かる。その右のヌクビ沢の右の大きな尾根が井戸尾根

 さて昨年はここから左が本流だったように思えてそちらに進んだと思うのだが、今回は右が本流に見えて、そちらに進む。ナビで確認しようと思ったのだが、ナビが故障して作動しない。なんだそりゃ。
 風が強くなってきて、薄手の上に厚手のアウターを着込む。そのまま150m登って、標高1350mで、本流滝の下に平らな場所があって、そこで休憩。やはりこの地形は見覚えがない。昨年とは違う。沢の中だというのに、斜面クラスト気味で、その斜面からときどき雪煙が上がる。普通は沢の真ん中というのは、雪が堆積していて、硬くなっているなんて経験ないんだけどねえ。それに上方見上げると、松手山方面に急斜面。登れないことはないと思うのだが。先のデブリの合流のところで、間違ったのか。昨年は子供連れで遊びに来ていたのに、そのときが正しくて今日間違えたとなると、なんかガックリくる。

1350mから上方、右の急傾斜下が休んだところ。1700mくらいが松手山の尾根のようだ。

 それにしても快晴だというのに、この風の強さはいったいなんだ。今日はもう登らない方がいいんじゃないかと、改めて風の弱い日にまたくるか。冬は天候に恵まれていても、風に敗退することもある。

下りは一瞬デブリ帯を横切ることにはなるのだが

 30分くらい、滝の下の陽だまりで休憩しながら、下山に決める。10時半過ぎ。
 さて下りに入るが、クラスト気味とはいっても、どうにか滑れる。デブリ避けながら、左斜面に入って下り、先の合流地点。しかしどう見ても、自分が登った方が本流に見えるのだが、不思議だ。そのまま緩傾斜の本流下って、平標沢合流から群大ヒュッテまで。2時間で登った距離を、下りは30分。そのまま滑らせながら、Pデポに12時戻りつく。

下りの途中1200mくらいからの平標沢

 そこでタカマタギ稜線の棒立山1420mから下ってきたワカンの単独と合流。「風は穏やかでしたよ」と聞いて、なんだか納得しない。翌日の新聞に、ガーラ湯沢の強風で、下山できなくて夜明かしした客1400人いたと聞いて、少し納得。条件が満たされなければ登頂できないのは仕方がないのだが、しかし快晴の日に、どうも釈然としない。



上越・武能岳西尾根1550mまで〜檜又(ひのきまた)二ノ沢下降
06・2・18 快晴 ☆☆☆☆ セミファット 登行900m同滑降
土樽P550標高650m気温−6度〜西尾根取り付き630〜標高900m830〜1197m一ノ沢頭1000〜1500m二ノ沢頭1230〜最高点1550m1310=1320〜下降点1500m1340〜二ノ沢滑降〜檜又出合900m1420〜土樽P1510


 未明に土樽で雲の切れ目から月が見えている。しかし、この数日間無雪で、ガリガリの雪の上に、20センチくらいに新雪が被っていて、雪の状況はさほどいいというわけでもない。すでに春の状態になっていて、今週からセミファット戻して、クトー、アイゼンの用意をして、ピッケルは持たなかったが、天気がよければ上の方に行って見たい。冬のクラシカルの武能西尾根にいく。2週前には取り付を間違えてしまった尾根だ。

標高1500m二ノ沢頭。頂上から右への稜線に入って、樹林の間から沢筋へ滑降。

 蓬沢に沿って、静かな沢沿いを上がっていく。この尾根取り付きが急だ。その急斜面に、やはりガリガリ雪に新雪で、スキーもガリガリ言いながら、上りづらい。ほんの50m登って、クトーをつけて、それでもダメでつぼ足アイゼンにする。樹林帯の標高700mだというのに、アイゼンになる。しかし膝まで潜って、春の雪は、またそれなりにやっかい。

西尾根標高950m辺り、北斜面から直上してくるのは、カモシカのトレース。

 思うように高度が上がらなくて、しかし雲が晴れてだんだん青空に向かっていく。天気予報は午後から晴れるといっていたが、それよりも早い。

そういえば、このあたりから1時間くらいは、カモシカのラッセル後に入って、進んだわけでした。稜線を上手にラッセルしていたのです。目の前に続くカモシカ跡。

 行動の遅さの割には周囲の景色がやはり素晴らしくて、お昼頃までは行動してみようということになる。

振り返って足拍子

 一年ぶりのつぼ足アイゼンでも、だんだんなれてくると、1時間に200mくらいの高度は上がってくる。標高1197m一ノ沢の頭くらいに出ると、振り返れば足拍子、巻機、主稜線は茂倉、万太郎、仙ノ倉、平標、景色は素晴らしい。

主稜線の仙ノ倉と向こうに平標山。

 その辺りで傾斜も落ちて、アイゼンを外して、スキーに履き替える。急にスピードアップ。1500mの少し手前までそのまま言って、そこでまたアイゼン。クラストして気持ちのいい稜線を1550m昼過ぎまで行動したが、そこでやめた。というのも、主稜線の蓬峠の小屋が遠くに眼下になって、主稜笹平のコルの向こうに、一ノ倉岳と芝倉沢の上部も見えて、稜線と同高度になったことを確認したから。それに下降は遅くならないほうがいい。

標高1350m二ノ沢頭への登りのダケカンバ樹氷と開けた緩斜面。

 どこを滑ろうかと思ったが、登った尾根は却下。クラストしている。登った尾根の北斜面も相当よさそうなのだが、南の檜又に下り口が大きな沢が入っているから、それにする。この積雪の状態なら、沢のど真ん中でもOKだろうという判断。

最高点1550mから主稜線笹平のコルの向こうに、一ノ倉岳と芝倉沢上部。右端は茂倉岳。

 この尾根は下部は、左、北東側の雪庇が出ていたのに、上部になると右、南西側に雪庇が出ている。下降は右側。最高点1550m辺りは、雪庇に斜面が消えていて、少し戻って雪庇がなくなる小尾根に入って、そこでスキーをつける。ドロップ。

巻機方面は穏やかな山稜が続く。

 さて少し斜滑降した後に、樹林に入って、いきなり本流の真ん中に突っ込んでいく。ちょっとガリガリしていたが、まもなくきれいな新雪。面白いようにターンができて、眼下に本流檜又。その向こうに土合のPが丸見え。少し下ると、二ノ沢のノドに出て、思った以上に急で35度くらい、本日の点雪崩のデブリが散らばっている。表層の心配はない。昨日の団子デブリの上に、夜間の新雪がきれいに被っていて、そこに入ると下が凸凹で、思わず団子にスキーが刺さって転倒してあせるが、すぐに回復。春はパウダーと違う障害もある。

上の稜線、右の樹林からドロップして、まず一枚。この辺りパウダーにて調子がいい。

 さっさとノドは通過したいのだが、いかんせん疲れて5回ほどターンすると立ち止まって呼吸を整える。でもこんな急な沢に入れるようになったなんて、やっぱり春スキーの恵みである。団子デブリに文句を言うのは辞めよう。結局小一時間もかかって、標高差600m下って、檜又本流に合流。あとは、片足だけシールつけて、緩斜面を歩き滑らせながらPまで戻る。

見下ろしは点雪崩のデブリが少し。

朝の自分のトレースに合流してからは早かった。シールも団子になった。今日は蓬沢にも誰も入っていない。それにしても、カモシカのトレールが本当にたくさんあって、遠くからみると、それは人間トレースとまったく間違ってしまうものだ。1頭だけは遠くに目撃できたが、元気よく沢を横断していた。カモシカと交流しながらの静かな山行になった。ところでPしたところは関越道上り線土樽Pチェーンベースなのだが、本当はあまりいいことではないかもしれない。

檜又合流手前。上の稜線から標高差600m。二ノ沢滑降大満足。

PS後日こんな連絡がきました。私のスキーの翌日のことです。
 今月19日(日)に蓬沢に入ったテレマーカーです。
そのとき、くだんの西尾根の取り付きのところを見ると、スキーのトレースがあるではありませんか。これは、おそらく、クロカン・アドベンチャーさんのものに違いないと確信しました。前回、ルートを間違えて茂倉岳・北西尾根に取り付いてしまったことをHPで見てましたから。また、あのような尾根(武能岳・西尾根)にスキーで取り付くのは、稀な人種(失礼)しか考えられませんから。檜又沢の滑り、ワンダフルですね。☆4つも頷けます。
 ところで、私は何処をめざしたのかといいますと、西尾根の1500m付近から北西に派生している、コンタ1200m表示のある枝尾根です。この尾根は、スキーをするには適度な斜度のぶな林です。昨年の3月初旬に行って、いっぺんに気に入ったところです。山スキー関連のHPを見ても記録あるいは紹介等がなく、私の秘密のエリアでした。因みに、先シーズンは、3月下旬にも行きました。
 当日も予定どおり、標高1300m付近まで登りました。なぜ、1300m付近かと言いますと、初めての時はもうちょっと上の尾根筋まで行ったのですが、尾根筋はガリガリで面白くなかったからです。
 簡単な食事をして、さあ滑ろうかとしていたとき、上から雄叫びのような奇声が聞こえてくるではありませんか。テレマーカー、二人でした。北向き斜面、かつぶな林のため、金曜日から土曜日夜にかけて降った雪が腐らず、フカフカです。奇声を発するのも分かります。しかし、秘密の斜面を滑ろうとしている人がいることに、いささかがっかりしました。
 彼らとしばし話をすると、驚いたことに彼らは西尾根を登ったとのことでした。また、前日のものらしきラッセル跡と、檜又谷を滑った跡があったとも言ってました。それは、間違いなくクロカン・アドベンチャーさんのものでしょう。それにしても、稀な人種はいるものですね(土日で計3人ともなれば稀ではない?)。
 なお、当日の私の記録は土樽駅8:50-北西尾根1300m付近12:00,同地点12:30-土樽駅13:30でした。雪質は蓬沢が登りブレーカブルクラスト、下り湿雪、北西尾根は深雪で20〜30cmのラッセルでした。



白毛門取り付き 06・2・12 ファット 雪 ☆ −5度
土合駅ずっと下のPスペース700〜土合橋730〜100m登り830〜下山〜850

 雪が多い今年は、駐車スペースがあまりない。適当なところに止めていると、除雪のブルオヤジに「どかせ」と言われることも多い。しかも、今日はロープウェーの駐車場までも上がれない車も多くて、私のFR乗用車も上がれないが、降りてきたときにJAFが上がっていった。滑ってぶつかった車もあるみたい。仕方なくかなり下にクルマを止める。

このやせ尾根まで登って、斜面に下り始める。

 しかももう、春の雪になっている。上越のMAX積雪量は、1月の4週目で天神平640センチだった。春になってきた。

 ここは夏の駐車場スペースですね。テント6張り。

 それでもどうにか土合橋手前から白毛門取り付きに行ってみるが、連休のせいかテントが6張り。熱心な人たちもいます。前につぼ足トレース二人分。土合駅にクルマを止めて、そこから取り付いた人のようだ。ほとんど埋まっている橋を渡って向こう側に。この季節に来ると、かなりの急登になっている。つぼ足の直登についていけずにジグ切るのだが、しかし昨日の20センチの新雪の下はボコボコ・ガリガリの半モナカ状態。100m登って稜線に出ると、クラストしていて、クトーとかアイゼンに履き替えるとかが必要になる。けっこうめげる。風も強くて視界は200mくらい。今日も気分ダウンして早々に下るが、その頃他のテントつぼ足も登ってきて、8時半に標高800mでこの後どうするの?
 下りも新雪の下にガリガリモナカで難しい。もう新雪の時期も終わったし、何も急斜面探さなくても、フツーのスキーコースに出かけましょうよ。





上越・赤沢山1454m 尾根手前1356m峰 ☆☆ 曇り −8度 ファットスキー
水上・赤沢スキー場770m810〜ゲレンデトップ1000m850〜1200mコル930=940〜1356m峰1030=1050〜下山〜770m林道1120〜スキー場1140

 気圧配置は少しはゆるくなったもののまだ冬型気圧。スタートで雪が降っていたものの、薄日が差し始めて登ることに。

1356m峰なだらかな頂上

 みなかみ町営の小さなスキー場でリフト2個乗り継げばゲレンデトップなのだが、2個目のリフトがまだ動いていなくて、ゲレンデ脇を登る。圧雪されたところは、とんでもなく登りやすい。300mくらいの標高差を30分くらいで登ってしまう。
 ゲレンデトップから新雪に入るが、昨日も30センチくらいは積もっているはずなのに、もう潜らない。くるぶし程度。尾根をそのまま登っていって、ほんの少しで200m登って休憩。ゲレンデから少し離れただけなのにとても静かだ。それに上空曇りなのだが、薄日も差して自分の影も出てくる。風も弱い。視界は1000mくらいか。

遠くに薄く見えるのが稲包山

 目の前の山が、その1356m峰になるが、さらに小一時間で頂上に出る。この辺りは、赤沢山とか稲包山が有名なのだが、しかしそれにしても送電線や鉄塔がやけに気になる。関東と新潟をこれらの送電線がつないでいるわけだからしょうがないにしても、あんまりお勧めの山域でもないねえ。
 頂上は平らで静かだった。けっきょくゲレンデトップから350m新雪を登ったということだ。さて下山の用意して下る。曇り空だからまだまだフカフカ新雪で最高モード。先の1200mコルに出たときに、少しの登り返しがいやになって、そのまま斜滑降で斜面に入る。なが〜く斜滑降したのだが、ゲレンデに戻ることは不能。そのまま下の部落に出る。

こんな斜面登って頂上に着きましたね。

 さらに本流のスノーブリッジを向こうに渡って、林道から車道に。そこから歩いてスキー場の上り返しはわずかなものだった。スタートして600m下降して本流まで20分。スキーはやはり速い。せめてもう少し天気がよければ、もう少し長いコースを登れるのだが。





倉岳北西尾根950mまで ☆☆
06・1・29 快晴 装備・ファット
520毛渡沢出会いp〜尾根取り付き730〜尾根950m910=930〜下山〜取り付き地点950〜P1120

 土樽から一般ルートのある尾根の左側の尾根。実は道を間違えてそんなところに入り込んだ。

北西尾根900mからの足拍子岳。右のギャップはクロガネノ頭。

 豪雪のためか、土樽も駅までクルマではいけない。平標方面に行くときの毛渡沢出合までしかいけなくて、しかも普通はここにクルマ4台の駐車スペースがあるのだが、それもない。その先にはブルが雪盛して通行止め。少し前にここに大なだれがあったのは知っているが、そのための防御か。でも雪崩の跡はもうない。そこからテクテク歩く。ブルの向こうは少し除雪してあるが、土樽の駅まではしてない。山の家の人はどうしているんだろう。でも電気がついていた。
 いつもの車の終点まで40分ほどもかかる。さらに続く林道も相当雪に隠れている。その先の橋で対岸に渡って、実は武能岳の西尾根に取り付く予定だったのだが、なんとその手前のどうしようもない北西尾根に入ってしまった。取り付きまでクルマから2時間。標高700m。
 この辺り関越の土樽チェーンベースのすぐ下で、「トンネルはチェーンをはずしましょう」のアナウンスがうるさい。
 最初は緩やかで、そのうち少し急になって、茂倉岳北西尾根に入った。パウダーなのは何より。1時間して200mくらい登って、日差しも出てきて開けた展望台。振り返ると、格好のいいピークは、足拍子岳のようだ。1300mのこの山は、国境稜線に出てしまうと、低すぎて見逃してしまうし、この標高900m程度から見ているのが、実に格好がいいものだった。

本来登るべきだった武能岳西尾根の頂上部。

ふとここにきて、尾根を間違えたことがわかった。茂倉谷、檜倉谷の二つを超えて取り付くはずだったのだが、檜倉谷は越えずに、その手前で取り付いて、こんな尾根に出てしまった。最近は、急斜面とパウダーしか頭にないもので、少々不真面目。

蓬沢突き当りの尾根も晴れ上がっている。

さてその先稜線は、ギャップが出てきて、尾根にシュカブラ。左の斜面に入ったのはいいが、さらに急になって、尾根に戻れなくなった。強引に登るとずるずる2mくらい滑って、大いに悩む。スキーをはずすととんでもなく潜ってしまうし、一気に気分が敗退して、もう辞めてしまうことに決めた。9時半。わずか1時間半で250mくらいしか登っていない。

自分が登っていた北西尾根900m辺り。

さっさとシールを外して、滑り込む。実は今日から新しいファットシステム(カルフ・JACbc163センチ・123・89・110)である。確かに、何の努力もしなくても、よく浮く。緩斜面でも滑る。250mを15分くらいで滑り降りた。午前中のパウダーというのは、やっぱりこれは楽しい。

土樽駅先の橋の上からの魚野川。本流だというのに、埋まっているところもある。

さて下で林道に合流してからは、シールがないまま少しの登り返しもあったりして、快晴で暑かったりして、たらたら、さらに1時間少しでPに戻り。天気がよかったのに、へなちょこスキーだった。




八甲田山 1230mまで ☆
06・01・21 雪 酸ヶ湯p850〜およそ夏ルートに従って1230m1050=1110〜下山〜酸ヶ湯p1140

 仕事で日帰り出張秋田へ行ったのが20日。考慮してスキーを積んでクルマにしたのだが、その翌日に東北の山を始めてトライ。東北のハイキング地図6枚積んだだけで、どうせなら最も北の八甲田にする。早朝4時に起きだして秋田の大館を出て、100キロくらい走って、青森市街から八甲田の酸ヶ湯へ。どうも黒石からもいけたようだった。

まあ、こんな雪お化けの地形の中を進みますが

 市街から山道は昼間だけ午前730に開通するというわけで、ちょうどその時間に雲谷ゲート到着。そこから30分ほどで標高880mの山奥の酸ヶ湯(すかゆ)温泉に着く。途中ロープウェーもあったが、無視。もちろん雪はたくさんなんある。しかし視界が悪くて小雪。ゆっくり用意していけるところまで。
八甲田の主峰大岳は1584m。温泉の次のカーブのところから入山。大体夏道どおりとなった。ほんの少し前に単独の先行と、5人パーティ。まもなく追いついてトップを交代するのだが、尾根を直上しようと思ったら「もうちょっとトラバースしないと」と、下から声。実は初めてでハイキング地図だけじゃよくルートはわからない。しかしどんどん上にいけば、どこかに出るとは思っていたのだが。後でよくよく地図を見ると、仙人岱1300mほどまでは沢筋登っているんだね、夏道は。地元の人は冬でもそこを通るみたいだ。

後続できた5人パーティ。裏側の林道から見えた酸ヶ湯温泉街。

そういうわけで途中で私は一人になってしまった。といっても、5人パーティというのは、つぼ足スノボー女性がトップ歩いていて、スキーヤー二人が後から歩いているというとんでもパーティだった。スキーでひざ下くらいのラッセルだった。
八甲田のシラビソ(アオモリトドマツ)に有名なモンスターが発生する。まだ半分くらいの出来損ないが多かったが、上越にはこういうのはない。しかも枝ぶりが大きくて、幹の周辺は、その枝ぶりにあわせて大きな落とし穴にもなっている。近づくととんでもないことになりそうだった。ふむふむ、味わい深い。
尾根を直上していったのは正解だと思う。ところで2時間くらいして、シラビソのモンスターが少なくなった頃に、急に風が強くなった。視界も100mくらいしかない。さて、どうしようかと思う。上を見ても、稜線も見えないし、モヤ〜っと樹林が続くだけ。しかも止まると寒い。これ以上登ってもしょうがないと思い直し、急停止。木陰で休んで、そこから下ることに。
冬山というのは、チャンスベットみたいなものである。下界にいても山の天気はわからず、とりあえず出発して、午前中に半分くらいまで登って、そこで穏やかな天気が続いてくれるのか、晴れてくれるのかというチャンスに期待するわけだ。下界にいたまま雪から晴れになられたんじゃ、登らなかった自分が情けないだけになる。上にいくほど天気が悪くなるようだったら、その日はチャンスが訪れなかったというだけのこと。そういう意味でこの日は下山に。

ガスの中のなだらか斜面。

さて、例によって新雪の緩斜面というのは、滑らない。実は八甲田というのは、ゆったりした緩斜面の山だった。仕方なく、自分の登りトレースに入って、直滑降と新雪ブレーキで下りながら、ほんの一部だけの急斜面をパウダーダウンヒル。もう少し下って5人パーティの登りに合流すれば、そこはハイウェーとなった。およそ2時間で400m登って、30分で下山。
東北の山が山スキーに似合っているといわれたのは、多分昭和30年代じゃなかったのかと思う。いまどきこういう緩斜面の山は、新雪時期には物足りなかった。視界も悪かったし。







会津駒ケ岳 1990mまで 06・01・13 曇り ☆☆☆
桧枝岐p550〜アンテナ1350m800〜森林限界1990m1200〜下山1210=1230〜桧枝岐p1330

 大雪ではあるのだが、これ以上は潜らないという思い込みにつき、昨年3月に大滑降した会津駒にいってみる。実はこの3日間は雪が降っていない。途中岩舘村で明け方クルマの外気温計でマイナス17度。一体現地はどうなってしまうんだろうと思ったが、取り付きでマイナス12度。桧枝岐よりも岩舘の方が寒い。

到達地点1990mピークからの小屋のあるピークが左、本峰が右。ガスで視界が悪い。

 スタートの時は星空だった。それに何となくトレース。下部の林道はいつでも誰かがスキーで少し入って遊んでいるらしい。昨年二度もこの山に登っているから、暗くても地形は分かる。昨年の2月末よりも雪が多い。

最終地点で引き返したガスの中

 一般の冬ルートは、アホ杉植林地帯から沢を詰めていくのだが、かねがねどうしてこんな急斜面雪崩ルート登るのかと疑問になっていて、そのために沢をさらに15分ばかり詰めて尾根を回りこんで、その向こうの枝尾根から登って、アンテナ1350m辺りで合流するルートを取る。トレースは林道を夏道方面に右に消えていた。思い通りに順調にアンテナ台地に付く。

少しだけ朝焼けした左側の稜線と登っているブナ林。会津のブナは大木が多い。

 途中で日の出になるのだが、そうすると何故か高雲が湧いてきて、鮮やかなオレンジの低い光には今日は恵まれない。しかし雪は脛までしか潜らなくて、こんな好条件で登れなくてどうすると思い込む。1時間で200mくらい登る目標。
 この山は高度が高くなるに従って、ドンドン傾斜が落ちてくるという魔法の山である。スキー向き。テレビアンテナから一旦傾斜そのものは急になるのだが、ジグを切っていけば、なんていうことはない。それよりも、徹夜で取り付いたもんで、眠くて仕方なく、睡魔の敗退になりそうだった。
 1600mを境に、ブナ林が消えて、シラビソの稜線になってくる。広い稜線でルートを左右のどちらにしようかと考えながらいくと、眠気も消えてきた。とにかく上に登れば上にいく。

こういうぬるっこいブナの稜線ですから、下りで滑らなかったのは仕方がないです、はい。

 1700m辺りで、なんと後続者が出てきた。斉藤@氏家という元気な60歳オーバーの人で、今シーズン山で他人に出会ったのは初めて。ラッセルが楽になる。

シラビソの雪の向こうに主稜線見えてきました。これは本峰から大戸沢岳の中間ピーク

 さらに進んでシラビソ樹林が途切れて1枚バーンになってくると、急に強風。1990mピークに登りつけば、あと30分で頂上に出られるのだが、この風と、少しガスが出てきて、潔くここで敗退。ガスに巻かれてまで登る頂上でもない。そこから少し下った樹林の無風地帯で下山の用意をして、いざドロップ。

後続でついていくのは、大いに楽チンです、1850mあたり。

 ところが、上部の緩斜面は、登りトレースを外すと滑らない。中重のパウダーにつき、三日前の新雪では、アウト。新雪の賞味期限は二日間だけか。仕方なく半分は登りトラックに入りながらの、直滑降と、トラック外しのブレーキ混合。

くだりはこういうシラビソ林をトレースに従って直滑降でいきます。


シールを付けたまま樹林まで少し戻るところですが、下界は晴れているのです

 途中の急斜面と、アンテナ前後の急斜面は、これは思ったように楽しい。重いが自由にターンができる。
 昨年3月のときは、上部緩やか稜線は自由に滑れたが、急斜面ではおよそ10人くらい滑ったトラックでガリガリになって、総合すると、やっぱり今回の方が楽しかったかな?お天気は昨年は快晴だったから、今回ダメなのは仕方がない。

急なところは、自由にどこでも

 アンテナ台地からは、その常連オジサンにルートを教わって、通常の上りルート、アンテナから左斜面沢の詰めから滑り降りる。小さな雪だるま雪崩がたくさん落ちているが、その上を構わず滑っていく。急斜面でこの辺りは楽しい。

最後の沢筋の斜面も楽しかった

 さらに下に出ると、雪質も春っぽくなって、そういう湿り雪は傾斜が落ちてもトラックがなくてもスキーが滑る。
 1000mのダウンヒルはわずかに1時間で終了。一緒に滑った年配おじさん共に無事にPに戻りつく。およそ6時間で1000m登って、1時間で滑り降りた。