2007 Summer      トップへ



北ア・笠ヶ岳2897m ☆☆☆ 07・9・22〜23
9・22 晴れ〜ガス
槍見P540〜クリヤ頭1300〜笠ヶ岳1620〜小屋1630


抜戸岳への稜線から振り返ると、笠ヶ岳と直下のカールは、崖の上の楽園という感じがする。手前のガレの下に播隆平が広がり、さらに穴毛谷へ落ち込む。

 笠ヶ岳だけに登るにはクリヤ谷の他にルートはないだろうと思っていた。延々と長いルートだからと早めに出発する。標高差で1900mある。狭い谷に日が差し込んでくる9時頃まではちゃんと歩ける。何度か飛び石で谷を横断するが、流れも普通くらいで問題はない。その度にしっかり休んで水をたくさん飲んでいく。
 クリア谷源頭もカール地形にように思えたのだが、ブッシュが相当深くて、思っていたカール地形ではない。でも下部はなだらかに明るい雰囲気で登っていく。そうそう有名な錫丈岳はこの谷に入らないと地形がはっきり分からない。その通り、谷の左側に横尾の屏風岩みたいな感じで、いきなり大岩壁が迫ってきた。


 クリア谷の登山道に入って1時間半でいきなり錫丈岳の前衛峰が出現。この辺りから見るとなかなか迫力がある。

前衛壁というやつだ。こんな標高の低い山にとずっと前から思っていたものだから、ついぞ錫丈には過去に来たことはなかった。登山道にテープがあって、谷に下りる踏み跡があったが、錫丈沢に向けて降りていくものだった。数人がそこに入っていった。
 しかしこの山は2100mの全く低い山で、クリア谷を登っていくとそのうち自然に視界から消えてしまう。

 9時過ぎて直射日光が差し込んでくると、真夏並みに暑い。年を取るとこの暑さに耐えられなくなる。源流部は依然として遠くて、ついに急登の途中で昼飯大休止することにして、コンロでスープなど沸かしてゆっくり休む。もう後続は誰も来ないだろうと思っていたら、一人登ってきて、迷惑かけた。
 40分くらい休んで、クリア頭に向けて最後の急登を登る。この頃からガスが湧いてきて視界が効かなくなったが、しかし直射が遮られて涼しくなってよかった。夏の午後の積乱雲みたいなものだ。少ししてようやく稜線。ここまで7時間半かかったとは、相当なスローペースである。
稜線では幾分涼しくなったが、しかし這松帯のなか小さな登り返しでこの先もなかなか進まない。しかも相当に疲れている。たまにガスが晴れると、左側の長大な尾根と傘谷といわれる過去の登山ルートが分かる。傘谷も大ガレのまま稜線に突き上げる。
 この本峰へ向う稜線は、笠ヶ岳特有の白い花崗岩が眩しいくらいに光っている。数年前の残雪期に穴毛谷に入って、見上げたこの稜線は凄まじい岩稜帯になっていたが、そこを歩いているのだが、平坦なわけがなく、右にガレているところはガスで全部見下ろすことはできないが、岩壁の頂上部であることくらいは分かる。高度が高くなると、風化して堆積しただけの岩が浮石として重なっていて、こういう風景も凄く珍しい。このガレが遠くから笠を見たときの大きな盛り上がりのように、釣鐘状に迫っていて、登りきらないと頂上には出ない。
休みながらのろのろといく。


 最悪でも日暮れまでには小屋に着くだろうかなんて心配しながら、少し涼しくなったもので頑張って歩いて、ようやく夕暮れ頃に頂上に出る。クリア頭から3時間半。小屋はすぐ下に見えるから、こんな時間でも数人の登山者がガスの頂上でも、ウロウロしている。さっさと小屋にいった、飯の時間には十分に間に合った。最後に一緒に登った登山者とビールを飲む。さらに後続も二人いた。今日はクリア谷から15人くらいは登ったか。小屋は適当に混雑。小屋のすぐ裏手が小笠らしい。

9・23 曇り・ガス
小屋550〜抜戸岳710=730〜杓子平850=920〜笠新道〜林道1300〜新穂高1350〜タクシーで槍見1400

 朝外に出ても寒くなくてガッカリ、気温10度。上空曇りで逆光の日の出が少し見えて、槍穂の稜線はシルエットになっている。早々に朝飯を食って出発。


朝焼けシルエットは、ジャンダルムが正面で、左に奥穂高、白出しコル、涸沢岳。

1時間で抜戸岳に着くが、ガスが相当沸いてきて視界が遮られて、縦走を続けるのもあっさり諦めて笠新道を下ることにする。残雪期に抜戸岳からこのカールの杓子平を滑降したことがあるが、夏のイメージはやはり大きく違う。抜戸岳の頂上も見覚えがあって懐かしい。ここから杓子平へ300m以上も下るが、なかなかこれも遠い。

 杓子平で早くも朝飯にして、茶も沸かして、ゆっくりしてから下り出す。昼飯は小屋の弁当だ。登りの登山者も大勢いる。杓子平からはガラ場の急坂を下っていく。道は沢沿いというわけでもないのだが、這松の下の花崗岩の飛び石を1時間もドンドン下っていくし、そこに登りの客が相当数いて、すれ違いに待たされる。しかしいつも思うのだが、登りの客は勝手に登ってくればいいのに、何だか遠慮しがちに、かなり下で止って「どうぞ」なんてやられるから、混乱を起こす。他人への気遣いというのは、ジジ婆登山家の常なのだが、登り客は上などは見ないでそのままのペースで突っ込んできてくれ。2m手前で下りが上手に避けますから。「登り優先」とは基本なのであるから。
 300m下って、少し休むのは膝を労わっているからで、下りも急がない。下っていくと気温も上がってきて、やはり真夏に近い。紅葉なんてのはほんのわずかで気がつかないほど。這松帯がブナ林になって、目の前の中崎尾根もだんだん高くなってきて、3時間下ってようやく下の林道にでた。鏡平からの客がいて、笠へ登るには鏡平経由というのも、多いのだとか。そういう人にすれば、笠新道のこの急登を避けているという話になる。笠とは双六から派生した尾根の末端にある寂しいロケーションではあるのだが、でも格好の良さからどこからでもそれと分かるわけで、最近はこの笠ヶ岳も相当な人気である。

ps 笠の小屋で会った大半は笠新道からの登山客で「どこへ下るか」という話になって、「天気がよければクリア谷」と話したのだが、その道は長いとかなり敬遠された。しかし、どうせ人生二度と笠には来ないとして、晴れているのに、クリア谷へ下降しないとは、登山人生の屈辱だと強要したために、彼女二人を含む4人はそこへ下山したと思われる。大丈夫でしたか?


 けっこう明るいこのクリア谷の登山道のよくないところというのは、登山道への倒木とか横に生えている木をそのままに残していることじゃないかと思う。木を切断するのは自然保護に違反するとばかり、登山者はその大木を跨がないといけないわけで、これに相当苦労する。どうせ登山、山小屋、登山道はそれ自体が自然を少しは破壊しているわけで、登山道を塞いでいる横倒しの倒木などは、電動ソーで輪切りにして、道の幅だけ確保してくれと思うのだが、そこまで手入れができないか。人気の登山道というのは相当上りやすくなっている。それが客を増やして客の増大になっているのだが、手入れも国立公園なら環境庁がしっかり指示してくれと思うのだが。
 そうそうできるなら杓子平に小屋でも作れれば大繁盛するのだが。
 
 





船窪小屋〜蓮華岳 07・9・8 ☆☆☆
9・8 七倉500〜船窪小屋1130 ガス


信濃大町からは一番大きく見える山なのに、実際に登る人は案外少ない蓮華岳、2798m。隣の針ノ木岳より人気がないのは牛山だからか?牛がだら〜りと寝転がっている背中のような山。

 船窪小屋へいずれは行ってみようと思っていたのだが、いよいよ9月になって、台風も過ぎたことだし、意を決して行って見ることにした。



 七倉のスタート地点の標識が実に不親切だよな。少し迷って地図見て、ああ橋を渡ってから右折か。目の前崖のように稜線が迫っているのだが、道は思ったほど急でもない。ブナ林の中をジグザクに登っていく。しかも300m登って稜線に出るなんて、悪い道の印象があったのだが、ここまではさほどでもなかった。
ところが尾根に出てからがひどい。風化して露出した花崗岩の大岩に、ヒメコマツと聞いたんだが、五葉松の大木の根っこが絡みついて、根っこを階段状に滑りながら登っていく。梯子もある。苔むした薄暗いこんなところ、本当に北アルプスなのか?と思う。戸隠といってもいいし、南アルプスでもいい。気分が滅入ってくる。鼻つき八丁とはなんだ? 胸突き八丁よりもひどいということか。陰湿な感じの急登。


 でも2000mを越えてくると、大木もなくなって潅木帯になり、天狗ノ庭でいよいよ、草原の這松帯になる。じゃなかったら来ないよなあ。急登の尾根の上に、こんななだらかなところがあるのかと思ったら、船窪小屋にでた。さらに10分進むと、七倉岳2509m。昼過ぎに小屋に戻って、本日ここまで。ここらの這松は落葉松の這松もあるそうで、冬には枯れるんだとか。小屋の標高2450m


船窪岳のガレガレ風化はいずれ消滅してしまうだろうが、1万年先くらいか。でもしかし風化地形は悪くない。

 有名な小屋だ。オバサンが小屋番して50周年を過ぎた。電気もなくてランプ。午後はビール飲みながらだらだらしていたが、半分くらいガスで視界はさほどでもない。夕方までにぼちぼち客も20人くらいになった。夕食17時に食ってすぐに寝る。その後茶会があるそうだが出席せず。



9・9 快晴〜ガス
 小屋600〜蓮華岳1200(昼飯)〜針ノ木小屋1330〜大沢小屋1700〜扇沢1800



快晴の展望は並べていたらきりがないが、槍と左は前穂の吊尾根か?




 翌日は快晴だった。ならば縦走するしかあるまい。小屋からは、槍穂が見えて、水晶〜野口五郎、さらに薬師、赤牛、立山〜剣。北アルプスが全部見えるということだ。

 出発は針ノ木の方に行くとする。北葛岳2551m、蓮華岳2798m。目の前に見えるのに、6時間かかるとはどういうことだ。七倉岳から300m下って、400m登って北葛岳。さらに400m下って500m登ると蓮華岳。北アルプスにはキレットといわれるところは数箇所あるのだが、ここはそうはいわれていない。言われないほどローカルだからでもある。風化した花崗岩を下り、梯子やクサリが出てくる。
 七倉岳から1時間半くだると七倉乗越に出た。キレットの底というのは、何だか重苦しい。ちょっと飛び降りてザクザク下れば沢沿いに下界に降りられると思うのは大いなる錯覚。でもコルは下界に近いような気もする。そこから1時間登って、北葛岳にでる。


 快晴だと直射が暑い。でも8時前なら日陰も多くてどうにか助かる。下りで小屋に用意してもらった握り飯を食う。田舎のたくわんは塩っ辛くでうまい。
 しかし、小屋に18人泊まったのに、縦走に出たのは私と先行する4人だけで、残りは快晴なのに下るだけじゃつまらないじゃないかと思うのだ。しかもほとんど全員が七倉から登ってきただけで、そこを降りるだけ。いくら小屋が名物小屋だといっ ても、本当にそれだけでいいんでしょうか。宿泊者はマニアが多かったような気もするけれど。
 さらにドンドン下ります。今度は北葛乗越。ここも明らかにキレットの底。


さていよいよ蓮華岳へ登り始める。出だしは岩ゴツゴツ。何だか気疲れするんです。ちゃんとホールド掴まないと。大下りと言われるところを登るわけだから。小一時間ゴツゴツが続く。途中対向者が2パーティ3人だけ。半分くらい登ると、ようやく穏やかになってくる。目の前に蓮華のカールが見えてくる。北アルプスの三大牛山とは、薬師、赤牛、蓮華である。白馬の杓子の巻き道みたいに気分がよくなってきた。さてここで、後から単独の女性。聞けば七倉から登ってきた。ははあ、私の半分の時間ですね。ちなみにその方、頂上で少し休んでこちらに下山してきます。昼の12時に下りで会って、七倉に17時半下山予定だとか。コースタイムで22時間のコース日帰りですか。最近は山で走っている人が多いのですが、七倉から船窪小屋経由で蓮華岳日帰りというには、今まで出会った人の中で最強です。登りは確かに歩いていたけれど、下りは走っています。どこかの選手です。

 私はようやく12時に蓮華岳。頂上には誰もいませんね。昼飯食って、ボーっとしていると、ガスも湧いてきて雷にならなければいいのですが。そこから1時間で針ノ木小屋へ下山。急降下でしたね。
 そういえば昔の縦走コースは、この稜線歩きを避けて、針ノ木小屋から針ノ木谷に降りて、向こう側船窪乗越に登り返す方がメインになっていました。3時間くらい早いんでしょうか。廃道になっていたこの道を、船窪小屋が再び道を付けたようです。
 まあようやくこのローカルを半分歩いたわけですが、向こう側の船越岳〜不動岳など歩くチャンスはあるのかどうか?
針ノ木小屋にはもう2人だけ。道標に大沢小屋まで1時間半とありますが、そんなに早かったけか? 水もなくなって小屋でジュース飲んで、下山。夏の雪渓下りは二度目でした。前回は4年前の8月下旬でしたか。しかし今回雪渓は崩壊しています。雪渓のノドは通常雪渓上を歩きますが、崩壊すると厄介でしたね。ノドの上部で左へ横断して、ノドの下で右へまた横断。その間の巻き道を岩場をクサリで下降して、横断途中はステップのある雪渓を横切って、なんだか大沢小屋まで峠から3時間。それでも針ノ木谷というのは北アルプスでは最も穏やかな沢なんでしょうね。

 大沢小屋は愛想もなくて営業はすでに終わって小屋仕舞い。さらに1時間かけて扇沢に着くと18時で真っ暗です。観光地のターミナルといっても日没後は幽霊屋敷みたいに誰もいません。普通観光地といえば、ホテルもあって、酒場で客が夜でも賑やかなのかと思うけれど、ここは日本の田舎であり、シャモニじゃありません。
 ようやくタクシーがきて、クルマ回収に七倉までいって、無事山行終了。




十勝・上富良野岳1893m ガス 07・8・8
十勝温泉P530〜上富良野岳900〜下山〜安政火山1200〜P1230


上富良野岳。ガスガス

 3泊4日の北海道旅行なのだが、天候は連続曇り雨予報で、がっくし。前日はサホロ泊まりで、午前230起きで100キロ近く移動して、十勝岳へ続く十勝温泉の登山口へ。
 深いガスの中を530分に登山開始。下界の天気は晴れているのだが、上部は一日中天候が安定せずにガスらしい。
 川沿いの林道を行って、その川を横断して向こう側の樹林帯へ。どこがどうして林道だったかというのは帰りにガスが少し晴れたときによく分かったのだが、上部の安政火口という噴火口をモニターしている無人カメラが林道上部にあって、そこに電気を送る地中電線を設置したために林道になっていたようだ。
 樹林の尾根を大きく迂回して、左右の分岐は、上富良野岳(左)と、富良野岳(右)で、左へ。百名山の登山道らしい木道階段をどんどん進んで、どうも300段あると地図には出ている。

 スタートして3時間かかってようやく稜線に出ると、物凄い風と視界はゼロで、これ以上進む元気なしで、そのまま引き返して、中腹で休む。ガスの中長い時間登ったような気になったが、標高差でわずかに600mだった。下山始めて少しずつガスも晴れてきて、登山口に戻るちょっと前に、安政火口という江戸時代に爆発した噴火口に寄るが、硫黄臭くて最後まで進めず。昼過ぎにPに戻る。遅い時間から登っているパーティが少し。

 帰りにクルマで大回りした頃には、十勝岳はガスも上がって、噴煙が上がる山を遠望できたが、登った上富良野岳はついにガスが晴れずに、一体自分はどういう山に登ったのか不明のまま終わる。







朝日連峰・大朝日岳1870m ☆☆ 07・7・13 曇り〜晴れ
古寺鉱泉500〜古寺山830〜大朝日岳1120〜下山〜古寺鉱泉1650

左側本峰、右が手前のコブ。そのコルに朝日小屋。手前ピンクのヒメサユリの咲き乱れ。


 梅雨の合間の出張帰り。予報は曇り。でも日に焼けるし、虫に刺されるし、夏山は辛い。
 前回の墜落から40日振りの登山で、しっかりリハビリもできたようで、打撲した右足は回復していた。山形のホテルを2時半起床したが、現地まで1時間半。山形道が整備されて月山湖なる湖も出現したおかげで、朝日鉱泉の方は道もそのままで実に悪い。月山湖インターから入山した方が、素晴らしい道に整備されている。山中の古寺鉱泉までも綺麗な舗装に。古寺ルートは主峰への最短ルート。
 スタート気温18度。これくらいなら、なんとか暑さはしのげる。しかも登山道も下草が刈られて整備されて、やっぱり百名山ブームなのか。

 古寺山までの3時間は、尾根沿いの道だとはいっても視界が得られずに、単調。2箇所水場があって、帰りに助けられた。その山頂で展望は開けるが、上部はガスっている。小朝日はあっさり巻いて、大朝日方面に。涼しい風が吹く尾根をいくと、やはり高山植物の季節か。ヒメサユリがうるさいくらいに咲いていて、これはピンク色のニッコウキスゲみたいなものだ。本物のニッコウキスゲも少し咲いていたが。コブを二つ越えると、大朝日の小屋に出る。何にも売っていないのに管理人だけがいる。役所の小屋というのは、人件費の無駄遣いだ。せめてビールがあれば。そこから少し登ってついに大朝日山頂。ガスで視界はない。6時間20分かかったが、まあこんなもの、これ以上早くは歩けない。すぐに下山する。


 小屋付近で昼飯食って、下りだす。登りの途中で、20人の百名山オバサン特攻隊がいたのだが、30分ドタドタと歩いて、5分ボーっと休んで、またドタドタ。静かな山がどうも騒がしい。でも意外に速い歩きで、ついに下りでは先に行かせた。連中も同ルートの日帰りだった。


 大朝日や西朝日周辺は、谷筋に残雪も豊富で、風景が気晴らしになる。下りになったら天気がよくなった。しかしどうにも夏山というのは好きになれない。




石転び沢で転んだよ
飯豊連峰・北股岳2024m・石転び沢 07・6・2 快晴 ☆☆
飯豊山荘P430〜石転び沢出合730〜稜線カイラギ小屋1030=1100〜北股岳往復〜1200〜下山転倒〜出合1400=1430〜P1830


標高800m石転び沢出合。豊富な雪渓わくわくしますが、しかしここまでたどり着くのは容易ではない。

 何故か残雪雪渓で有名な飯豊連峰・北股岳の石転び沢。東北道経由でいくがやはり遠い、450キロ。途中福島米沢で降りたら、田舎の香水の匂いがして驚いた。そういえば米沢牛の産地だっけ。
 明け方現地に着いて、430分に出発するがすでに数人が歩き始めている。スキー客は私と相当遅れて一人だけ。

カイラギ沢の滝沢出合。5月頃はこの辺りから雪渓が続いているというのだが、今日はまだまだ1時間以上もヤブ漕ぎが続く。

 初めてきたから状況はよく分からないが、やはり残雪は少ない。例年の7月程度だと他の客人に聞いた。その残雪のある、カイラギ沢の石転び出合まで2時間半。沢登りの高巻きルートみたいな不安定な登山道を登り下りしながら、延々と続く。何しろここには正しい夏道ルートはない。本日は革登山靴に98センチのショートを担いできたのだが、あまりいい選択じゃなかった。
 標高800mの石転び出合に着くと、やはり有名なだけあってここからは稜線まで1000mの雪渓がこれは綺麗に続いていた。3時間もヤブ漕ぎして到達しただけの価値はある。


同高度から下方

 二人パーティとここで一緒になって、前後して歩く。客は10人ほど、静かな山が魅力である。
 見た目雪渓はさほど急傾斜には見えなくて、案外楽な部類には入るのだろう。1時間半で600mの高度差を稼いで、残り400mも1時間程度で頑張ってアイゼンで登る。上部の傾斜はせいぜい30度+(32度)程度で、降りてくるのは不可能じゃない程度には見える。しかしそれにしても、残雪は豊富に見える。北股岳頂上にまで支流の残雪は続いている。最上部は先行登山者のステップに沿って、快適ザラメを登り上げる。稜線に出たところがカイラギ小屋で、無人小屋といっても整備されていた。水場もあった。

 少々休憩して、片道30分の北股岳2000m峰の頂上に出る。

頂上から南東方向へ、カイラギ岳、烏帽子岳、向こうの高峰が飯豊山。右側残雪豊富ななだらかな御西岳。

稜線上も雪渓はかなりある。眺めはいい。地図と見比べて、目の前が大日岳。向こうに飯豊山、御西岳。逆方向には門内岳などなだらかな山が延々と続いている。山は深いのだ。

 さて小屋に戻って、滑降準備。実はショート98センチは3年前に数回滑ったときはさほど苦痛は感じなかったのだが、6月の固めザラメともなると、前に5月に滑ったときとは状況が違う。滑りにくい。最大傾斜のところで少し躊躇したのだが、ナントカなるだろと思って入り込んだのだが、数回のターンのあとでバランス崩して転んだ。転ぶとその場では止らない。50mくらい滑ったか。去年も6月に転んで、どうも6月のスキーとは無理するからよくない。右足ふくらはぎを左足のスキーでぶつけて、それが打撲となって痛かった(ショートには開放システムがありません)。
 転んで止ってから、アイゼンに履き替えて下る。200mほど下って傾斜が落ちてからまたスキーで滑ったが、やっぱりショートスキーはつまらない。いつものように楽しくパワフルに滑れない。しかも下の方の硬い雪ではガタゴトとスキーが暴れてかなり疲れる。所詮ショートは条件のいいときにお遊びスキーで、後悔した。廃棄処分にしよう。
 そんなことで、出合に戻ったときには坪足下山者よりも遅くて、ここで昼飯大休憩。休憩したあと、足が相当痛くなった。打撲とは時間が経つごとにだんだん痛くなってくる。んなわけで、下りは登りよりもどうしようもなく遅くなって、2時間半で登ったところ、4時間で下山した。帰路クルマの運転中に相当痛くなって、救急病院の休日外来で見てもらって、そしたら歩けなくなり車椅子、松葉杖となり、ただ一晩眠ったら相当回復して、松葉杖は病院に返して、ストック杖で歩けるようになった。スキーで転ぶのは致命傷であるのは知っているのだが、年に1回はどうしても転んでしまう、要注意。「転ばぬ先のアイゼン」。
 





桑ノ木山1495m・1338pまで 新潟・南魚沼
07・5・26 晴れ〜曇り
三国ダムP430〜P1338m930=1000〜下山〜ダム1330


 何を勘違いしたのか、ショートスキーを担いで、三国川ダムの十字峡から送水管の脇を上って、ヤブこぎ道で桑ノ木山を目指す。

登り詰めた1338pから中央の下津川山とその右ネコブ山 相当遠くに見えて断念

 以前は殺風景な十字峡だったが、20年前くらいに行ったときには大工事をしていて、今ではダムは観光施設になっている。取り付き辺りは公園にもなっていた。
 送水管からの尾根は、ちょうど5月の連休の頃だけの限定ルートで、3月頃は下津川を進んで小岩沢辺りの尾根から取り付くようになっているし、その雪が切れた5月だけは、このヤブ尾根から上部残雪を利用して登行するのだが、以降になると、猛烈なヤブルートになって登る者はいない。
 傾斜が50度にもなろうという送水管の階段を登るというのは、あまりお勧めの取り付きじゃないのだが、たまには登る人もいるそうで、立ち入り禁止の看板を越えて入る。150mもある階段は、延々30分近くもかかるし、上に出るとそのまま簡単な岩登りが始まって、尾根は急傾斜になっていた。
 ヤブ漕ぎといっても道はある程度はっきりしていて、最初の2時間くらいは痩せ尾根が続く。取り付き標高は450mで新潟特有に高度は低いのだが、涼しい風が吹いていて、さほど汗はかかない。途中ヤブも深くなって、背負っているスキーが枝に当たって気疲れして、しかも雪はなかなか出てこないわけで、背負っていたスキーとアイゼンをデポする。
 その後間もなく尾根は広くなって、残雪が出てくる。残雪利用して高度を上げる。左側には越後中ノ岳が相当に大きくて、そこへの夏道は2年前の秋に登ったわけで、何だか懐かしい。下の土産物屋のおばさんが当時言っていたのは、ここからの中ノ岳への日帰り登山は、日本でも第一級の登行だというわけだ。標高差1500m。ある程度その通りでもあるのだが。後には八海山の五竜岳。

 傾斜が落ちてくると東側の吹き溜まりに残雪が豊富になって、その上を快適に歩いていく。そのままなだらかな尾根が続いて、ようやく1338mピークに登り上げる。スキーは途中に置いてきてしまったのだが、高度差で100mほどの残雪だから、まあ歩きでもいいか。ピークに立って、ようやく周囲の展望が開けたが、尾根はネコブから下津川山へと続いているのだが、途方もなく遠くに見えて、もう先へ進む気力がなくなった。取り付きから5時間。
 ネコブ山1774mの東側は一部に知られるスキールートだそうで、まだ雪も付いているし、傾斜もきつそうに見える。その向こうに下津川山1927mだからかなり遠い。

 この山域は、巻機山から越後中ノ岳へ続く、地味で大きな山の稜線で、東側が奥利根ダム、西側が南魚沼(六日町)で、日帰り夏道が2本しかなく、積雪期はさらに遠くて、よほどの物好きじゃないとあまり行かない山域でもあるわけだ。
 ピークからは、若干黄砂で曇ってはいるのだが、その山域が広々していた。もう少し時期が早い方が、残雪は豊富なのだろうが。

ヤブ漕ぎして帰り道にようやく撮った白い花はニオイコブシだということが判明。雪の重さに幹は湾曲していて、尾根の雪庇側斜面の草つき上部に、つるつる滑る数センチくらいの幹で、物凄い量の邪魔な潅木が山盛りあって、それはすべてコブシだというわけだ。花をつけているのはその中のわずかな数だけだったが、大きな白い花は、緑のブナ林のなかで、引き立って目立っていた。ヤブ漕ぎのときに一番邪魔で大跨ぎしなくちゃ越えられない潅木である。

 ピークに30分ほどいて、来た道を下山する。下りは3時間半。本日ここを登っていたのはもちろん私一人。途中に過去の登山パーティのプレートがあって、ゼフィルス山の会が1973年5月に縦走したときのものだった。




富士山・富士宮口から3400mまで 07・5・24 快晴 ☆☆
富士宮五合目P2350m830〜八合3000m1200〜九合3400m1330=1340〜下山〜2650m1400=1420〜P
1500

 今日も明日も快晴でしょうと予報が言う割りには、「週末は雨」とくれば、いい加減に切れる。しかも先週は読売新聞に富士のスキーが紹介されていた。早朝勝負で残雪富士の初体験。吉田口はクラストだとメールがあって、ならば真南の富士宮口へ。

 いつの間にか富士山スカイラインは無料になっているし、しかしゲートは8時までクローズ。ようやく入ると「スキー禁止・富士宮警察」の看板はどういう意味だ。8時半スタートではあまりに遅く、しかしズルして早朝に入ることもできるみたい。本日スキーヤー2人、坪足4人。登山口にはまたもや、ロープがグルグル巻きに通行止めしていて「登山禁止」。なんだろね。
 かつては4時間で楽々頂上に達したものだが、本日は5時間かかって3400mまで。登山も中年ペースになってしまった。
 雪が出てきたのは、Pから300m登った辺り。そこでスニーカーからスキー靴に履き替えて、坪足のまま登っていく。ほとんど夏道どおり。雪の上を行ったり岩の上を行ったり。標高3000mで早くも早朝スキーヤーが慎重に降りてきたが、先行の坪足も3000mで引き返し。さらに登っていく。雪はザラメでアイゼン履かなくても大丈夫。昼を過ぎてなお登っているのは抵抗感があるが、1時半3400mで下界を見るとだんだんガスが湧いてくる。様相は夏山のようだ。下降中にガスに巻かれるほどアホなことはないと、ここで時間切れとする。あと1時間あれば頂上に出られるのだが。

一滑りで200mダウン

 シールがなくて、スキーは背負っているからセッティングも早い。いざ慎重に滑り出したのだが、しかし富士は思ったよりも傾斜がない。30度未満である。先週末の大勢のスキーヤーのトレースもあり、何といっても直滑降している尻セード跡があるくらいで、ザラメは快適だし、グングン飛ばせる。登りながら滑降ルートをかなり注意深く見てきたつもりだったのだが、いいやと真っ直ぐ降りていく。
 なるほどそのまま突っ込むと宝永火口に向かっている。その手前3000mくらいで右へどうにかつながっている雪で小尾根を越えて、再びどんどん下る。2800m以下は、飛ばされてきた火山灰で雪も汚れているが、ギリギリ2650mまで下降して、わずかに20分だった。
 再び運動靴に履き替えて、残り300mは夏山のように、ポコポコの埃っぽい道を下る。条件が良過ぎたか?もう少し歯ごたえがあるとは思ったのだが。白馬や針ノ木の雪渓よりも大いに緩やかな斜面である。そう言えば富士にデブリは聞いたことがない。




小野子山・群馬中之条 1208m 晴れ ☆
07・5・20 展望台付近登山口830〜小野子山930〜十二ヶ岳1100=1140〜下山〜林道1200〜P1330

 OB会ハイキングに総勢16人。シーズンを迎えて、バス団体客もいる。
 そもそもこの山、関越を水上方面に走っていくと、左に榛名山、右に赤城山、その中央の二つのボコの左が小野子山だということだ。右は子持山。積雪とは全く関係のない地域。

 林道から1時間で頂上。ただその途中に、天然記念物高山の御用ツツジが1本あるというわけで、八汐ツツジでもある。ただ周囲の木を伐採してしまったから、根ごと土砂崩れがあるかも知れないという危ないもの。
 頂上から十二ヶ岳へ縦走して、くだりは早々と林道への近道をしようと思ったが、林道も1時間半歩きで、やはり遠かった。