介護保険と市民社会

2002年 6月分

最新のページへ

このページの目次

バックナンバー

Top page へ戻ります。
2002.06.26

現在の1/4程度に減少した特別養護老人ホームの待機者数

――神戸市で実施された「必要度順」の入所指針が明らかにした実態――

 介護保険で利用契約になって以来、各地で特別養護老人ホームの待機者が増えている。しかし、本当に入所する希望があって申し込んでいるかどうか、疑問視する声も多い。神戸市では02年04月から切実度を点数化して申し込みをやり直す方式を採用した(リセットともいう)。

予約としての申し込みの増大

 神戸市では特別養護老人ホームの入所を申し込んでいて、入所を待っている待機者が約4200名、いるという。神戸市の施設にかぎらず、他の自治体の施設でも待機者増大という。現場では待機者リストに掲載している人は、本当に入所を切実に待っている要介護高齢者であろうかと、不信感もある。

 特養で1名の空きがでた場合、職員は待機者リストにしたがって訪問して入所の手続きをはじめる。ところが、本人は入院中である、老健に入っている、在宅サービスで十分である、家族で対応できるなどの理由で、実際の入所を辞退する人が多い。実際に入所してもらう人は、10名のリストがあっても1名程度ともいう。

 特養に入るには数年かかると報道されている。そのために、あせってしまう市民も多い。今はまだ自立度は高いが、数年先には介護度も高くなり、家族も疲れる可能性もある。そのときのために、介護施設利用は早いもの勝ちだといわれる。どうせ待つのであれば先回りして現在から申し込んでおいたという場合も、かなりある。

1/4に減少した待機者数

 神戸市内の特養ホームは現在60カ所ある。その施設に対して約1万2000件の申し込みがある。02年になっても毎月600〜800件の申し込みが続いている。この状態が続くと大変だという危機意識から、切実度を点数化して待機者の名簿を作りなおす方式を02年04月から採用した。

 業界団体である神戸市老人福祉施設連盟(老施連)と神戸市とが共同で作った基準という(朝日、大阪本社版、02.04.17)。介護保険は利用者が自由に利用の申請をする権利を認めている。

 神戸方式は措置時代に後戻りする入所判定制度ではないかとの議論もある。一方で、切実な状態にある人が入所できないのもおかしいという見方もできる。行政と業界団体で取り決めるのではなく、個別の施設が自主的に基準をつくり、緊急入所も含めて自分の判断で調整すべきだという意見もある。

 実際に、神戸市では再度の申し込みをしなおしてもらった結果は、特養への申込み数が大幅に減った。6月現在でかつて400名近くの待機者がいた施設で100名にまで減少した。切実な場合に絞った入所希望者は、これまでとりあえず入所申し込みをしていた人の1/4に過ぎない。他の施設でも同じような減少率だという。

施設への入所希望をどう読むか

 神戸市は入所希望者は平均して約2.8件の申し込みをしていたと見ていた。調査によると、5ヵ所以上に申し込んだ人もいるという。重複がなくなるだけで待機者数は1/3には減ると見込んでいた。

 それが1/4にまで低下したのである。将来に心配をしていた市民が、予約的、保険的にとりあえず申し込んでいた要介護高齢者が、いかに多かったかを示している。

 逆にいえば、在宅での介護を続けることがいかに困難かを市民は示していた。在宅介護を続けるうえでの市民の不安を取り除かないと、施設待ちの人が増える構造は、改善されない。

施設の改革をどう進めるか

 待機者がたくさん存在している特養は、このままでも利用者の数が多いと安心している。しかし、現在の利用希望者は仮需要にすぎない。施設の定員が空いて、実際に利用ができる状態になったときに、本人も家族もいろいろな理由をつけて入所を辞退する。

 いまの特養の住環境や暮らしの内容をみた人は、前もって申し込んではいても本人が進んで入所したいと思うだろうか?現在の介護報酬では「一人勝ち」と言われたほど、措置時代よりも高く有利に設定された報酬であった。その報酬水準に見合う生活水準が豊かになったと評価されているだろうか。

 すでに老健施設でも、定員が空いている施設もでている。特養も利用者のプライバシーを守るとともに、入所者のその人らしい、より充実した生活を支援するときだ。そうでないと、今後、消費者の目が肥えてくると入所辞退者は増えるであろう。施設改革をどう具体化するか、特別養護老人ホームに切実に求められている。

このページの目次へ
Top page へ戻ります。
2002.06.20

出現率よりも施設入所率のほうが財政には大きな影響

――後期高齢者の増加は制度の基本を揺るがせるか?――

 自治体では介護保険事業計画にむけて作業が進んでいる。要介護認定者の出現率が京都市では22%と推計されたという記事(2002.06.11 「要介護認定者をどう見込むか」)に関連して、いくつかの自治体の担当者の意見を聞いた。

20%以内に抑える数値の操作が重要に

 京都市の事務局案では05年度の要介護出現率を22%と推計した。このデータは私が話を聞いた近畿地方の自治体担当者では、やや高い感じがするが、ほぼ近い数値と受け止められている。最近の出現率をそのまま延長すると、介護保険の要介護認定を受ける人の割合は65歳以上人口の20%に達するのは確かだという。

 推計値をそのまま使用するか、なんらかの操作を行うかは別として、最近の出現率を考慮すれば、データ自体を否定はできない。大阪府や兵庫県のいくつかの自治体では、いずれも要介護高齢者の割合を20%を超えないところで抑えたいという担当者の意見が多い。要介護高齢者の割合が高まれば、保険料も高くなるから、できるだけ出現率を低く設定したいという思惑が伺われる。

10年前とは隔世の感がある数値の操作

 数値の操作ときいて、10年前を思い出した。各自治体は高齢者保健福祉計画を策定する作業に追われた。数値目標を設定するために、高齢者福祉・保健サービスについて、周知度や利用希望率を市民アンケートで調査した。

 ところが、当時はサービスについて市民は十分に知らなかったし、利用したいという希望はほとんど皆無に近かった。措置制度のもとで、周知されていなかったし、本当に必要な人に限って利用できると自治体も対応していた。所得制限や家族条件などもきびしくチェックされた。とくに福祉サービスはできるだけ利用したくない制度というマイナスイメージが張り付いていた。

 行政担当者は政府が作ったゴールドプランにそった数値を出す必要に迫られた。しかし、周知度と利用希望率を掛け合わせると、目標数値に達しない。そこで、制度を知らないという回答や「分からない」という数値も換算して、想定していた目標数値を掲げた。

増税をめぐるいきさつも思い出す

 一方で、自前で悉皆調査をしたり、サービスが当時としては行き渡っていた自治体では、89年当時の政府の水準を超える数値がでてきた。その積み重ねが、新ゴールドプランに結びつく。新規の財源探しで細川首相が突如のように「国民福祉税」構想をぶち上げ、退陣させられた。

 出現率20%を超えると、大数の法則にもとづく危険分散という保険原理は確かに働かない。だから、もう一度、税方式に変わると予言している人もいる。しかし、10年前にわずか7%の消費税相当の提案にさえ、拒否反応を見せた消費税反対派は、今回はどういう態度を取るのだろうか。だれが、増税反対の市民を説得するのであろうか。しかも、消費税は基本的に地方分権の仕組みを採用していない。

サービスの利用実態を分析する必要

 10年前は数値のかさ上げを行政職員が行った。今回は数値を抑える作業に苦労している。それだけ、介護保険が市民の間に、家族の中に、地域のハザマに潜在していた介護ニーズを解き放った。その結果生まれた介護をめぐる実態をどう評価するか。

 要介護出現率を当初高齢者人口の12%台と見ていた。在宅サービスについてはニーズの60%を想定した。これに対して厚生労働省は在宅サービスのニーズ全てに対応していないとして、介護保険に対する批判があった。

 予算編成ではサービスをまったく利用しない人も含めて支給限度額に対する利用割合を約33%としているしかし、要介護認定をうけて在宅サービスを利用する人について限度額に対する利用実態は43.2%にとどまっている。

 00年度予算は60%利用率の前提で立てられたはずだ。予算消化率は在宅サービスでは80%程度にとどまる。予算を100%近くまで利用しているのは、施設介護である。

施設利用から在宅支援に重点を移す政策

 施設利用率のほうが、1人あたりの月単価をみても、圧倒的に保険給付額が高い。介護度5の在宅限度額を使い切っている高齢者はきわめて少ない。しかし、施設であれば限度額はすべて利用している。しかも、介護度が1、2と低い場合は、在宅限度額よりも施設費用のほうが高い。療養型医療施設はさらに高い費用がかかる。

 当事者はいまの施設の住環境やサービスの水準であれば、積極的な入所を望んではいない。家族の事情や地域で暮らす困難さ、安心して住まう場所がないなどの利用で、施設を希望している。もちろん、施設に住んでいる利用者にできるかぎりの安心や自分らしい生活ができるように、努力は必要だ。

 しかし、なにより大切な政策は、望まない人が施設に入らなくてもよいような選択肢を地域にふんだんに、準備することである。家族がいる住宅ではなく、自分なりの住まいの確保。できるかぎり自分の力で生活できる住環境と地域の支援。必要なときにはいつでも利用できる介護・看護・医療サービスの準備。さまざまな市民の連携による安心できる地域作り。どんな方法があるか、市民と事業者とともに、行政も考えていく作業が、第2期事業計画策定&高齢者保健福祉計画&地域福祉計画の策定と運営である。

このページの目次へ
Top page へ戻ります。
2002.06.11

要介護認定者をどう見込むか

――新規の出現がすでに落ち着いているか、いっそう増えるか――

 介護保険の第2期事業計画(03年度〜05年度)を策定するときに、要介護高齢者はどの程度の人数になるかが、大きな要素になる。自治体での試算が始まっている。第1期は措置の時代であったから、申請者の推測は低めに抑えられた。今回はどうだろうか?

京都市は05年度に約22%の出現率を見込んでいる

 京都市の02年度第1回介護保険等運営協議会が02年05月27日に開かれた。ちなみに委員数28名、内市民公募委員は5名である。

 この場で、事務局から要介護認定者数の見込みが示された。第2期計画の終わりの年度、05年度の高齢者(第1号被保険者)は291,225人で、要介護(要支援含む)の人数を63,119人、出現率は21.67%と推計している。02年度は高齢者人口が264,557人で、要介護認定者数は39,984人、出現率15.11%である。

 4年間で要介護認定者数は23135人も増える計算である。出現率も6.5%ポイントと急速に上がると想定している。本当に2割を超える水準にまであがるだろうか。その後は出現率を固定して、07年度を67426人、22.02%と予測している。

要介護者は増加傾向を示しているが・・

 事務局の説明資料によると、この推計は要介護度(6区分)と5歳ごとの年齢区分(5区分)にわけ、合計30のグループに分けて人口に対する出現率の推移から見込んだという。要介護状態の人の掘り起しがほぼ終わり「すでに落ち着いているグループ」と「まだ増加傾向にあるグループ」がある。すでに落ち着いているグループについては直近の出現率を適用し、増加傾向にあるグループには出現率の増加傾向を加味した結果である。

 介護保険導入直前の最終集計によると、全国では00年度が65歳以上人口が21,733千人でサービス利用者の推計は、居宅1,998千人、施設689千人であった。65歳以上人口に占める割合は居宅9.2%、施設3.2%で合計12.4%と見込んでいた。実際の要介護認定者数は00年04月では施設・在宅あわせても2,183,052人で、高齢者人口21,654,789人に対して10.08%しかなかった。

 12%もの数値は過大見積りだと批判された。しかも、認定を受けた人のうちで、サービスを実際に利用した割合はさらに少なく、居宅サービス事業は利用者の不足に悩んだ。

 しかし、認定者数は前年同月比で1%づつあがり、02年02月には約300万人に達している。出現率も01年02月には11.33%に、02年02月には12.73%にまで高まった。多くの自治体でも、00年度と比較して02年度始めの出現率は2%ほどは上昇している。

出現率をこのまま引き伸ばしても良いだろうか

 介護保険によって措置制度とは違って、気兼ねすることなく申請ができるようになった。そのために、これまで十分な介護サービスを利用していなかった人も、サービスにアクセスした。その意味では、当初予定の12%台の出現率は、控えめな数値であった。ただ、実際にサービスを利用する人に限っては、この数値でも過不足はなかったともいえる。

 要介護認定者の出現率と言う意味では、制度発足のときの要介護者が少なすぎた。本来それ以前に要介護認定を受け取っていたはずの人がでてきたために、伸び率はより急角度に増えたように見える。京都市の事務局も「制度実施後に要介護認定者の掘り起こしが進んだためとも考えられ」るとして、妥当な見込みかどうか再度検討するつもりだ。

 また、要介護認定を受けた人でも、実際にサービスを利用していない人もいる。京都市では、01年度実績によって認定予測数をそのまま使うののではなく、居宅サービス利用者の推計を行っている。

 京都市の01年度における認定を受けた人に対する利用者割合は、要支援で65.4%、要介護1は77.7%と2割以上は未利用である。要介護2は83.9%、要介護3も83.6%、要介護4は81.8%とやや下がり、要介護5は73.0%ともっとも低い。

 サービス必要量を算出するには、さらに利用限度額に対する利用量割合も考慮する必要がある。

施設サービス利用を高齢者人口の3.4%にする京都市の計画

 京都市では施設の利用者を厚生労働省の参酌標準である3.2%よりも0.2%高して、3.4%とする補正を行っている。理由は後期高齢者の割合が全国水準よりも高いことが第1に上げられている。第2に、長期入院患者の入院基本料が特定療養費となる診療報酬の改定によって介護保険施設利用者が増え(これは厚生労働省の参酌標準にも考慮されている)、京都市においては高齢者数や病床数を勘案する必要があることが指摘されている。

 07年度では、介護老人福祉施設が4494人分、介護老人保健施設が3296人と利用者の見込みを算出している。現在の施設定員数からの新たな整備目標数値は、介護老人福祉施設が874人分、介護老人保健施設が409人となる。介護療養型医療施設は2620人のまま定員を増やさない。

 出現率も2割になり、施設利用者も全国標準よりも高く設定すれば、京都市の保険料はかなり高くなるであろう。市民はどう考えているのだろう。

 各自治体での作業についても、分かり次第、取り上げていきたい。とともに、数値の操作だけではなく、サービスの質の標準化や向上、一般福祉政策との関連、新しく住宅整備の状況、地域でのより張り合いがある生活の確保、市民と事業者との関係の透明化、互いの言い分の風通しのよい関係なども重要だ。市民の声がどう表現され、どんな形で盛り込まれるか。

このページの目次へ
Top page へ戻ります。
2002.06.10

実績を踏まえて策定できる第2期事業計画介護保険

――市民・事業者など地域の多様な人材が参画する議論の重要性――

 各自治体では、介護保険の第2期事業計画を策定する作業が始まっている。厚生労働省の基本指針(参酌標準)の改定が2002年05月09日付け官報で告示され、あわせて計画見直しについて都道府県知事宛に通知がでた。しかし、今回の計画策定には、前回とは違った条件がある。それをどう生かすかが、自治体の知恵でもある。

未確定な要素が多いときに予測の上に予測を重ねた第1期計画

 前回の計画は、介護保険導入前に作成された。自治体も市民も事業者も、措置時代の高齢者福祉施策しか経験していない時期であった。新しい保険制度が導入されるが、制度の細かい内容について、だれも明確な知識はなかった。

 当時の厚生省も自治体担当者も「走りながら考える」「つまづいても走る」と、制度がスタートしなければ、本当のところは分からないという状況であった。

 要介護者の人数も調査に基づくとはいえ、推計であった。措置時代の申請と介護保険の被保険者からの利用申請は、どう違う状態になるかは、不明であった。しかも、サービスが実際に提供されるかどうか、サービス事業者が進出するかどうかも、予測でしかなかった。まして、サービスが選択される制度とはいえ、利用者は介護サービスを選んだ経験はなかった。

 介護報酬も仮の数値であったし、保険料は事業計画に基づいて決められる性格の数値であった。ユーザーは負担がいくらになるかわからないままに、これまた初めての経験であるケアプラン作成に参加し、サービスを選んで組み合わせる必要があった。

2年間の実績をきちんと見つめなおす

 今回はすでに2年以上の経験を積んでいる。介護保険報酬の一部見直しや利用に当たっての修正はあるが、基本構造はしっかりしてきた。

 措置時代から継続したユーザーのほかに、介護保険になってからの新規利用者も多い。いわば、介護保険世代のユーザー像が見えてきている。

 要介護申請者や介護度別の人数、介護度別のサービスの利用実績、保険料徴収ランク別利用量など、数値もきめ細かく集まっている。指定事業者の数や提供可能サービス量も詳しく計算できる。サービスの満足度に関する市民アンケートやサービス評価、事業者調査も行われている。

 こうした実績を十分に分析して、それぞれの地域における介護保険の現状を明かにできる。確定した数値をもとに計画を作ることができる。むしろ、データがおおすぎて全体像をつかむ上で、かえって戸惑うほどである。

市民参画の広がりで地域の支援システムと利用者の声を反映させる可能性

 第1期事業計画を策定するときに、意識的に市民から委員を募るように主張してきた。今回の作業でも市民参画が基本である。各自治体では、前回はおずおずと市民の委員会への参加を始めたが、今回はより定着している。

 高知市では、前回(99年度)の公募委員は2名(委員定数15名)であった。そのときの応募者数は14名と報告されている。今回の市民公募委員の定員は4名と倍増である。応募は23名(内市外在住者1名)とやはり増えている。市民の事業計画策定への熱意はひろがった。

 前回の応募内訳は分からないが、委員は第1号被保険者も第2号も、どちらも女性であった。今回の応募者は男性12名、女性11名とほぼ半数であった。前回は多くの自治体で女性市民委員が多かったはずだ。高知市は今回は男女2名ずつ委員に就任していただく。男性の介護保険への関心が高まったといえよう。ちなみに、応募者のうち、最年少は30歳の男性、最高齢は86歳の女性であった。

 介護保険について市民の関心が、薄くなっていないか、心配していた。しかし、自分たちも計画や運営に参加する意識は、根強い。会議もこうした熱意を生かすように運営されれば、より市民に密着した、市民のものといえる計画となるだろう。

この点では、大阪府阪南市が地域福祉計画策定にあたって興味深い経験を積んでいる(2002.05.01 住民主体のコミュニティ形成に貢献する地域福祉計画策定――阪南市における公民協働の地域福祉推進計画――)。各自治体の情報も知りたい。

事業者等の連絡協議会も計画策定にどう生きた情報を提案するか

 倉敷市介護保険課に事務局がある介護保険事業者等連絡協議会の平成14年度(2002)総会に招待され、介護保険と地域におけるネットワークについて講演してきた。

 介護保険では、事業者の間で利用者に選ばれる仕組みになっている。競争関係を強調すると、ややもすると、互いに排除しあう関係になる。しかし、この会では、会員相互の情報交換や連携を行い、地域の総合的なサービスの提供や向上を図る目的を掲げて活動している。

 この連絡協議会には220の事業者が参加している(2002年度予算書)。複数の事業を展開している事業者では、サービスごとに加入している場合と一括して加入している場合があり、ほぼ倉敷で事業を行っている事業者を網羅しているといえる。

 01年度の実績によると、全体研修会を5回開催、地域区別支援専門員研修を2回、さらに総会では記念講演も受けている。役員会は年間6回である。研修会への参加も最大182名を数え、100名以上の研修会が大半であり、参加率は高い。

地域の生活水準を引き上げるため協働した計画策定

 介護保険の特徴は、旧来の医療系の事業者組織と福祉系組織、さらに民間企業やNPOなど多様な主体が、同じテーブルについて議論するところにある。これまでややもすると、枠外から「隣の芝生は青い」とばかりに、偏見でみる傾向もあった。市民の暮らしに必要な介護サービスに関して率直に実情を出し合って、課題をともに考えていく共通の土俵ができた。

 事業者が地域で互いにケアの質を競い合いながら、技術水準をひきあげていく試みは、市民にとって貴重な経験である。介護サービスは、お客を奪って他者を倒した事業者が勝者であるという市場主義優先ではない。あくまで要介護状態になった高齢者も自分らしく生活できるように、総合的に連携した支援を実現できる地域社会を気づくところに目的がある。

 事業計画の策定にあたっても、その観点から、事業者連絡会などの参画は不可欠であろう。介護報酬をめぐって、あるサービスを引き上げる反面、他のサービスの価格を引き下げるという面ばかりが、強調されがちである。互いの事業がともに利用者に安心をもたらし、満足してもらえるように、事業者の社会的役割を発揮する。

 その機会を設けることが、自治体にも求められる。とともに、事業者連絡協議会も既存団体の利害ばかりを持ち込むことなく、介護保険時代にふさわしい事業者のあり方を提案して欲しい。

このページの目次へ
Top page へ戻ります。
2002.06.02

ベッド柵、ミトン型手袋、車椅子用のベルトは多くの職員が「仕方ない」と容認

――大阪府の身体拘束についての事業者調査より――

 大阪府はこのほど、府内のすべての介護保険施設を対象にした「身体拘束に関する実態調査」の結果を発表した(速報値であり最終報告の数値とは一致しないこともある)。対象施設は介護老人福祉施設(以下特養)244ヵ所、介護老人保健施設(以下老健)138ヵ所、介護療養型医療施設(以下療養型)130ヵ所に、ショートステイ、グループホームや特定施設入所者生活介護などを含み全体で601ヵ所である。施設調査の基準日は02年02月01日、郵送方式。有効回答は396ヵ所で回答率65.9%。職員調査は各施設で最大5名を施設が選んで職員が無記名で回答し、有効回収は1929名。単純集計による結果から、私が関心を持った点を報告する。なお、最終報告は年内の完成を目指していると担当者はいっている。

2/3の施設で身体拘束を行っている

 なんらかの身体拘束を行っていると答えた施設は249ヵ所で、回答施設の62.9%に達する。とくに多いのは、療養型で82.8%、特養は70.9%、老健が64.0%となっている。施設の2/3が、調査時点で拘束をしていると認めている。グループホームで7.9%(38施設中3施設)や特定施設の26.3%(19施設中5施設)をやはり少ないとみて、全体集計の数値を引き下げていると見るか、施設類似のこうした居住の場にしては多いと見るか。私としては、グループホームや特定施設でも、一部ではあれ拘束が行われているという結果に驚いている。

 基準日でなんらかの身体拘束を受けている入所者は2,402名である。回答施設の入所者定員27,248名に対して8.82%となる。これが大阪府の水準と言って良いだろうか。あるいは回答していない施設ではもっと多くの入所者が拘束されていると推測することもできる。

保険料はどう有効に使われているのだろうか

 人数比でも療養型が13.81%ときわめて高い。特養は9.31%で老健が6.36%ともっとも低い。介護報酬単価がもっとも高い療養型で、より多くの高齢者が拘束されているという現実を、どう考えたらよいだろうか。

 自分で保険料を納めていて、しかも施設を利用して自己負担金を払っている要介護高齢者が、施設に自分の行動を縛り付けて欲しいというのだろうか。はたして市民は、要介護高齢者の自立支援のために保険料を支払い、自己負担をしていたのだろうかとの疑問が残る。

 グループホームで1.28%(定員390名中5名)や特定施設の1.30%(定員846名中11名)を、他の施設よりはやはり低いと判断するか。あるいは、普通の高齢者の住居に近い類似施設でも、拘束されている人が存在していることに、ケアの質について問題を感じとることもできる。

家族の要望を拘束の理由にしている施設側

 身体拘束の廃止にむけて取り組むうえで困難な要因として施設が挙げている理由は、次の通りである。特養や老健では「家族の要望があるから」がもっとも多く、ついで「事故を防止できない」「人手不足」がそれに続いている。

 拘束をなくすために重要と思われる事項については、特養・老健では「介護の創意工夫」がトップ。つづいて「利用者の尊厳を尊重する考え方」「弊害を正確に認識する」「施設全体の取り組みの決意」「ケアプランの作成」などが上がっている。

 療養型では「施設全体の取り組みの決意」と「弊害の認識」がならんでトップになっている。一方では「やむをえず拘束するときの家族の同意」「委員会の検討」にもかなり多くの指摘がある。拘束はなくならないという判断が、施設に強いのだろうか。

職員調査ではベッド柵、ミトン型手袋、車椅子のベルトなどで判断が揺れている

 厚生労働省がたてた拘束禁止について職員は、どう思うかを職員自身に尋ねている。拘束とされている「他人への危害防止のためのベッドへの縛り付け」「開けることができない居室」「向精神薬の複葉」「立ち上げを妨げるいす」「転落防止のためにベッドに縛る」「徘徊防止のための縛り付け」などについては、8割を超える職員がすべきではないと答えている。

 逆に、「自分で降りられないようにベッドをサイドレールで囲む」では5割が仕方がないと認めている。ついで「点滴の時などでミトン型手袋」と「車椅子へのベルトなどをつける」について4割が認めている。排泄に関連して「つなぎ服」も1/4の職員が仕方ないと認めている。

 職員が「仕方ない」と認める理由としては「高齢者の安全確保のため」がもっとも多い。ついで「家族の要望があるため」と答えている。職員は高齢者や家族を引き合いに出して、容認している現実が浮かび上がる。

 安全確保のためには別の方法があるだろうという検討や、ケアの工夫や設備・備品を開発するという発想には、すすんでいない。家族の要望についても、なぜ、家族がそうした要望を出すまでに追い込まれているかについて、1歩立ち入った分析が重要なはずであろう。

アンケート調査を出発点にして利用者が納得・満足するケアを

 多くの人数を対象にしたアンケート調査であるために、単純集計の段階では詳しい意識構造は分からない。しかし、拘束についても意識や判断基準自身が、分かれている。施設内でも、統一した見方ができていない場合も、考えられる。施設のトップから現場の一線にいたるスタッフが、高齢者の拘束について認識を合わせる必要がある。そのためにも、拘束すると高齢者の生活やスタッフの仕事で、どんな点に問題が生じるかを、はっきりさせる必要がある。

 職員も「高齢者の安全のため」「家族の希望」として他人を理由にして安易に容認するのでは、プロとは言えない。ケア技術を高めるためにも、自分たち施設のほうに欠点や足りない点があるのではないかとの検討が求めれる。

 大阪府が全施設に対して調査を行ったが、回答が帰ってきていない施設には、より多くの問題が潜んでいるとの見方もある。回答にあたっても、施設にゆだねたために、解釈の相違や判断基準が甘い場合もある。

オムツはずしによって高齢者の表情が明るくなった施設の実感

 私が施設長から聞いた話であるが、オムツをはずして自力で排泄するように、誘導した施設がある。これまで重介護が必要で、自力排泄は無理だと決め付けていた人々が、トイレで排泄をするようになってから表情が明るくなった。

 もちろん、全員一挙には改善されない。しかし、波及効果はすでにでている。自分も「オムツは嫌だ」と自己主張する高齢者も、同じ階の利用者ででてきている。自分もトイレで排泄をしたいと希望を表現し始めている。

 要介護高齢者にたいして職員が一方的に固定観念を推しつけていた。当事者も職員の見方にあえて逆らわなかった。黙って我慢をしていた。しかし、一部ではあれ、自分で排泄している人をみて、自分もそうしたいと希望を述べる高齢者もでてきた。これまでのケアがいかに高齢者自身を押さえつけていたかが明確になった。

ケアの見直しから客観化・標準化を実現し、質の向上へ

 この調査をもとにして、施設職員や当事者、家族などで、より安心できるケアを実現するために、検討が必要になる。取り組み自身がケアの質を高めるプロセスともなる。しかし、調査だけではケアの改善はできない。

 施設関係者がこの調査をどう活用するか、職員で具体的にどこから改善できるか、検討して欲しい。家族もこれまでの苦渋の選択で施設を選び、高齢者に我慢をしいてきた考え方を、見直してほしい。どんな理由があっても、拘束・抑制を認める発言は、してほしくない。例外はあるとは思うが、また施設職員の苦労もあることは周知しているが、それでも原則禁止を貫いて欲しい。

 施設に全面禁止を求めても無理だから、せめて拘束したときは自治体に届けるように規定した条例を制定した自治体もあるという。でも、やはりおかしい。なぜ、自治体が届出を受けるのか、分からない。裏を読めば、拘束という施設の行為を、自治体が(例外としてでも)認めたともいえる。あくまでも、すべての拘束を廃止するために、活動を広げていきたい。中途半端な対応は、問題の先送りに過ぎない。

このページの目次へ

バックナンバー

最新のページへ戻ります
Top page へ戻ります。