新たな公共を創る社会政策

社会政策についてのコメントを載せていきます。

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2012.02.09

忙しすぎる上司が問題という労働組合

――職場のパワハラに対応する余裕なし――

 2012年の1月30日に厚生労働省から「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」(以下は「当「WG」という)が出た。私の手元にある日本経済新聞(2012年1月31日)でも報道された。その記事は「職場パワハラ6類型」というものだった。

企業は経営上の重要な課題として認識している

 職場のいじめ・嫌がらせは、近年、社会問題として健在化してきているとWGが始まっている。それで都道府県労働局に寄せられている「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は2002年では約6600件であったのが、2010年には約39400件と、年々増加している。

 ある調査で「自分にむけられた職場でのいじめ経験」を尋ねたところ、約6%もパワハラ被害(セクハラも含む)に遭ったという答えがある(平成22年度厚生労働科学研究費労働安全総合研究事業の一環で2010年11月〜2011年2月に実施)。また同じ調査でを見ると「職場でいじめ、パワハラ(セクハラも含む)にあっている人がいる」と目撃した場合を尋ねると、15%がそうだと答えている。本人はふざけているというかも知れないが、他人の方が事態を正確に見ているようだ。

 企業について「パワハラは企業にどんな損失をもたらすと思いますか」(複数回答可)と聞くと、8割の企業が「社員の心の健康を害する」と「職場風土を悪くする」と答えており、7割近くの企業が「本人のみならず周りの士気が低下する」と「職場の生産性を低下させる」と答えている(中央労働災害防止協会「パワーハラスメントの実態に関する調査研究」平成17年3月、調査票を東証一部上場企業1000社に送付し、209社から回収)。

 本調査では「パワハラ」を「職場において、職権などの力関係を利用して、相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることにより、その人の働く環境を悪化させたり、あるいは雇用不安を与えること」と定義している。他にもその人が「十分に能力発揮ができない」58%、「優秀な人材が流出してしまう」が企業らしくて48%とある。さらに企業らしいといえば「企業イメージを悪くする」も37%ほどあった。企業にとって都合が悪いことの羅列であるが「訴訟などによる損害賠償など金銭的負担が生じる」というのが28%と並んで「不正行為などを放置する企業体質をつくる」も26%ある。このような回答が企業の本音であろう。企業は現場に任せて、企業のトップは知らないふりをしていると思う。

企業が忙し過ぎて、対応困難な理由

 企業に「パワーハラスメントが起きたときに対応が困難と感じること」(複数回答可)で尋ねたところ「パワハラと業務上の指揮との線引きが難しい」という回答は64%にも上り、さらに「事実確認が難しい」は45%である(東京都労働相談情報センター「使用者の職場環境配慮義務に関する実態調査平成18年2月、都内に所在する従業員30人以上の3000事業所に調査票を送付し、954事業所から回収)。他にはほぼ同じ程度であるが、「被害者が嫌がっていることを加害者に理解させるのが難しい」17%、「プライバシー確保が難しい」15%、「被害者の精神的ダメージが大きいときの対応が難しい」13%である。業務上の指導との線引きが困難という企業の回答である。

 企業側と違って労働組合の意見が参考になる。最大の要因としているのが「上司が忙しすぎること」を答えている(「参考資料集」2011年7月19日労働組合のヒアリングより)。部門内における「仕事の管理が精一杯で、部下の管理までしている余裕がない」という答えは、納得がいくものである。最近入った若者の教育指導に割く余裕がない(それだけ労働力の質が悪くなる)という現場の話を聞いたところだ。

 現場にいると思ったら、会議ばかりで現場に不在という訴えは切実なものがある。パワハラをなくすには、現場でコミュニケーションの不足を嘆くよりも、労働時間を短くすることが大切だと思った。

 いろいろな読み方ができる円卓会議(当WG)の報告だろう。この読み方が正しいというものでもない。別な読み方が正しい場合もある。

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2012.02.06

TPPは国の成りたちに反する

――反対意見も省みない民主党――

 最近、いくつかの雑誌に掲載された文章が、どれも押しなべて「TPP」への参加に反対している。いくつかの記事を(「関西よつ葉連絡会」の「よつばつうしん」11号2012年2月に掲載された山下惣一さんの「TPPと私たちの暮らし」や静岡市議の佐野けい子さんによる「佐野けい子・わくわく通信」2012年冬号の[TTP参加は地域経済を破壊する!!」それにブログ「All about FiFi」の記事「TTPのこと、諦めるんですか?」を読んでいると)を読んでいると、民主党は第2自民党としてしか存在しないのだろうか?という印象が強くする。政権交代を喜んだはずの民衆の一部に大きな失望や落胆を強いている。その政党に関しては大衆は最終的には「革命」しかないのだと印象付けるようにしていると思う。民主党が行っている政局は「保守反動」の政治だろう。東北大震災では「相互扶助」や「絆」をもてはやした人々が、それらに反対をする行為がTPPに象徴的に扱われている。一言でいえば「アメリカ風に自由主義の国になって日本の国のかたちが変る」とまとめられる。民主党の政権になってから政治における左右の対立ではなくて、アメリカの外圧によって「絆」や「国にとって必要な倫理の変化」が生まれている。あえてナショナリストになることが求められている(本来は嫌いだが)。

国の主権が危うくなる

 山下惣一さんによると「TPPに加入すると、農業は衰退する。現在260万人いるが、平均年齢は65.8歳だと言う。日本に住んでいる100人の食を高齢者2人が支えている」という計算ではなるらしい(「よつばつうしん」第11号、2012年2月)。

 日本医師会などが反対している理由に、これまで育ててきた国民皆保険制度が崩壊するという危機があると指摘していることと同時に厚生労働省も反対している。医療分野での企業の病院経営に参入、医療保険の民営化などが含まれているという。国保問題とは別に考えるべきと思う。

 労働者の移動の自由化にも問題がある。低賃金労働者によって国内労働市場があらされるだけではないようだ。教師はTTPに加入に反対しているが、日本の教育システムが外国人の子弟を教育する準備が今はないからという理由からである。これは日本の教育システムを変えれば済むだろうと思う。それでも解決しないとすれば何があるのか。

 前掲の山下さんによると俗に「毒素条項」があるという。これは投資家が相手国の国内法の規制によって損害を受けたと判断する。相手国政府を国際裁判所に提訴して、損害賠償請求ができるというものだそうだ(山下さんの文章によると韓国でもFTAで大もめしているという)。

自動車・家電などの輸出はGDPの2%弱という

 国際比較をしてみると日本の農業人口は2%程度になる。山下さんによれば、フランスは2%、アメリカは1.1%、イギリス・ドイツは0.8%らしい。

 その一方で「わくわくけい子」によると、自動車・家電などの耐久消費財輸出は4兆円程度でGDPの1.65%になる程度という。2%弱のために98%が犠牲になる奇妙な構造はだれがだれのために作ったのか?

 消費者にとって注目すべき数字がある。食料品の値段を比較してみると(農水産統計09年版「食料品の内外価格差」による)東京を100として、ニューヨーク130、ロンドン128、パリ155、ジュネーヴ165、ソウル134、となる(2006年の調査で)。東京における輸入農産物の自由化が低価格に影響している。それには前史があり、中曽根内閣の時代、1986年の前川レポートをきっかけにして農業パッシングが噴出したという。

地域の中小企業の方が経済活性化にとっては重要

 静岡市の小売業、地場産業、建設業の売上高では10年前に比べてそれぞれ59.9%、50.2%、54.3%と激減している(「わくわくけい子」今号による)だそうです。小売業は増設された大型店舗にも関わらず衰退しているが、地場産業や中小企業の衰退は、輸出産業のほんの一部の関税を引き下げた影響によるものだろう。

 先に出た「前川レポート」が推奨し1991年大型店舗法の撤廃の影響だと小売業や商店街のシャッター商店街になったこととの(買い物難民問題が起きている)おかげだと言う。大型商業施設は地域経済に貢献したかという話さえ出ているそうだ。このTPPはそれをはるかに凌ぐ影響が出るはずだと報告されている。

 今の技術の伝承すら危ぶまれると言う。家具製造業の安い輸入家具に押されて大変だそうだ。世代をつなぐ後継者、技術の伝承も課題になっている。

 国内産林業は注目を浴びているらしい。山林資源はあるのに林業従事者も(当然農業従事者も)激減しているそうだ。

政治行動を変えるとき

 いくつか問題点も出ている。政策のながれを切断することが政権交代した民主党に求められている。民主党に替わる政党が出て欲しいところだ。

 私は従来民主党に入れていた票を他の政党に変えることで、責務を果たしたいと思う。外国からの圧力と危険に曝されないようにTPPに対して反対をする行動をとりたい。日本の食糧自給を現在の水準よりもさらに下げることがなくなるように思っている。

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2012.02.02

薬物に取り巻かれている若者

――大学新入生たちの薬物に関する意識調査から――

 薬物についての意識調査がある。私が勤めている大学の2011年度新入生たち(全学部)を対象とした調査である。調査時点は2011年4月である。対象は5470名(内男性2779名、女性は2691名)の全部を対象としたが、回答者は4390名(有効回収率80.3%、内男性2115名、女性2222名)である。18問から構成されているが、棒グラフに表されている。多数の意見を「こうだ」と示すのは適切であるといえる。(棒グラフが圧倒的に大きいと印象付けやすい。)極めて少数でも意義があると思えるだけに、具体的に数字で示してあれば良かっただろう。この調査の詳細はすでに取り締まり当局には通報していると思える。大学当局のアンケートだから、数字を正面から、にわかに信じるわけには出来ない面もある。

大麻に取り囲まれている若者たち

 大麻を手に入れるために、どの程度の苦労をするかと聞いたところ「少々苦労するが、何とか手に入る」が4割強、「簡単に手に入る」と答えたのが25%ほどである。学長のまとめによると約7割が「違法薬物が身近に存在することが読み取れます」という。

 「大麻を使用されているところを直接見たことがありますか」と聞いたところ、約4%の学生が見ている。約5000人の4%といえば200人に相当するはずだ。2007年の大学生大麻検挙人員が92名であるというが、200名の数は大きいと思える。

 同一人が繰り返しているとしても警察の検挙人員と数は合わない。それ程薬物が入手し易くなっているのか。大麻事犯の検挙人員のなかでも20歳代の若年層の比率が高いという他、初犯者の比率が高いとされている。

大麻についての肯定的なイメージ

 複数回答を認めているが、圧倒的には「1回でも使うと止められなくなる」と答えたのが60%強で、女性は70%に達している。また「使ったり、持っていたりするのは悪いことだ」が60%と「心や体に害がある」は50%強、さらに「犯罪に巻き込まれる」が46〜47%を占めるなど被害者的な見方をする人も多い。

 また大麻については否定的な意見が強いが「気持ち良くなれる気がする」は肯定的なグループでは5%近くある。また「かっこいい」と答える人も皆無ではない。さらに「ダイエットに効果がある」と答えた人も存在する。また「眠気覚ましに効果がある」はわずかでも存在する。

 こうした肯定的なイメージは確かに否定的なイメージと比べると数が少ない。一部でもこうした意見をもっていると取締りには苦労するだろう。

大麻事件を報道する2面性

 大麻を入手するには「少々苦労するが、何とか手に入る」と「簡単に手に入る」と答えた7割近くの人に「そう思う由は何だ」と聞いたところ(1つ選択)「報道等で大麻に関する事件が増加しており、簡単に入手できると感じるから」が70%近くもある。大学生や芸能人などが多く関わっているから事件報道等がされるが、入手方法も伝えなくてはならない。

 報道に両面があるというカラクリに記者の一人ひとりは気付いているのだが、報道せざるを得ない宿命がある。特に最近の若者はテレビが報道することは真実であると信じているようだ。報道には2面性がある。

 また「入手する方法は知らないが、簡単に手に入ると聞いたことがあるから」も25%ほどいる。どこで聞いたのか、誰に聞いたのか、さらに知りたい。事件報道の「成果」であろう。

 これに対して「インターネットなどで販売されているのを見かけたことがある」は極わずかであるし「入手する方法を知っているから」は男子に多いが(数%)全体では5%もない。実際に使っていると目撃した数字とは違いがありすぎる感じがする。

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2012.01.22

作業を改善して心の病に備えよう

――ディーセント・ワークの実現を労働組合の力で――

 私の手元にはいろいろな種類の機関誌が届く。そのひとつで「尼崎労働者安全衛生センター」が編集している「安全センター」(第113号、2011年12月20日)は「全国労働安全衛生センター」が、2011年11月26日から北海道で第22回の総会が開かれたことを伝えている。総会では26日はアスベストとメンタルヘルス・ハラスメントのセミナーが開かれたと言う。

企業間競争の激化に伴う精神障害等が増えている現状

 経済のグローバル化は企業間競争の激化をもたらし、従業員に対してコストダウンや商品・サービスの多様化を迫り、その結果、長時間労働や業務の単純化、さらに非正規など労働形態における格差を余儀なくしている。背景にはパソコンや携帯電話などの情報通信革新がある。

 そうした企業の置かれた状態から、人員削減や仕事量の増加さらには人間関係の軋みなど従業員にストレス要因が増えている。肩こり、慢性疲労、ゆううつ症状、不眠などが溜まり心の病に罹ることが起きやすい。

 最近は労災申請件数も増えており、2007年から精神障害等が脳・心臓疾患を上回っている。さらに2010年からは認定件数でも上回っている。各地で運動をしている労働安全衛生センターでも、アンケート調査を始め、電話・メール相談・冊子・講演会・労災申請サポートなどで取り上げている。

3次に及ぶ予防の徹底化

 メンタルヘルス対策として基本的な取り組みは次のことが重要である。一次予防として全労働者を対象にした心身の健康保持・増進を図る(職場ストレス要因の把握・予防対策)ために「快適な職場つくりを進める」「職員が正しい知識と理解を身に付ける」や「ストレス解消策の提供」などがある。

 二次予防として、メンタルヘルス不全に陥った労働者を早期に発見し治療等で適切に対応していく(早期発見・早期対応)のために「監督者やまわりの労働者の気付き、対応」が大切。また「労働者自らの自発的相談・受診」ができる雰囲気・機会の提供。同じことだが「職員が相談しやすい体制の確保」さらには「早期発見・対応のための研修」がこれらと共に大切である。

 三次予防として、メンタルヘルス不全のため療養していた労働者の円滑な職場復帰を図るとともに、再発を防止すること(職場復帰・再発防止)が大切である。このために「円滑な職場復帰のための整備」を整えることと「再発要因の除去」が重要である。

現場で行いやすいメンタルヘルス6つの領域

 まず1の領域では作業条件への参加と情報共有として具体的に改善する視点として「作業予定の話し合い、過大な作業の調整、情報の周知」がある。2つ目では勤務時間と作業編成が上げられる。具体的視点としては「恒常的残業の制限と休日確保、ピーク作業の調整、交代制」の整備などが必要だ。

 仕事のやり方として「円滑な作業手順」という3つ目の領域では「運搬・作業姿勢などの改善、反復作業の点検、作業ミス予防」などが大切である。領域の4つ目が「作業場の環境」が必要だ。具体的には「温熱・音対策、有害物質対策、受動喫煙防止や休憩設備」などが重要となる。5つ目として「職場内の相互支援」を図るために「職場内の相談しやすさ、研修機会、災害への備え」が大切である。最後の6つ目になると「安心できる職場のしくみ」として「訴えの窓口、ストレス対処情報、緊急の心のケア」の整備が必要になる(労働科学研究所 吉川 徹さんのまとめによる)。

 すべて日常の労働安全衛生活動でもやっていることが、そのままメンタルヘルス対策になることが分かるだろう。わざわざ労働組合がメンタルヘルス対策として特別なことをしないでも大丈夫である。

労働組合はディーセント・ワークを実現するために多くの労働者の日常的な拠り所

 賃金もかつてほどは上がらないし労働組合費を払っているだけだと所得は赤字になるとして不平を言う人がいる。ことほど労働組合の役割が組合員に見えなくなって久しい。

 しかし、労働組合と言うのは賃金引上げための組織か。そうではないだろう。職場に立脚している労働組合は、組合員の命と健康を大事にする面を大切にしたディーセント・ワークを実現できる組織だろう。労働組合という自主的に集まることに意義がある組織だ。

 その時々に併せた課題を取り上げる。例えば労働時間の短縮をする時もあろう。賃金引き上げを主要な課題とする時もあるだろう。

 なにより職場の人々が集まる労働組合の課題は、現場労働者の命と健康を守ることだろう。職場の従業員が自発的に集まる場を労働組合と言う単位で保障している。現場の従業員たちが集まったら話がでる。職場の話がでた結果は、それぞれの職場でディーセント・ワークを実現する課題が明確になる。

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2012.01.15

相手候補に匹敵する努力を行ったか

――維新の会候補に閉塞感を感じるだけではなく――

 これも転載である。社会福祉法人「ぷくぷくの会」が発行している「まねき猫通信」(第114ひきめ2012年1月2日)に掲載されている「新聞の作り方」の筆者の石塚直人氏(現役の記者である――私は勤め先を知っているがここでは明かさない)は原題「橋下・維新の会、圧勝の理由を考える」という記事で、興味深い分析をされていたが、筆者からの承諾を得たので、ここに紹介する。読みやすいように振り仮名をはずした。外国人・知的障害者にも読みやすいように全記事には「ふりがな」を振ってあるが、その原題の「理由」には(わけ)と振っている。なお、転載に当たってはもちろん全文を紹介したが、題名と中見出しも私がつけた。最後に読んだ感想を「コメント」という形で付けた。今号の「まねき猫通信」でも、猪ノ口さんの「石けんライフのすすめ」と、轟さん書いた「当事者リレーエッセイ」や「おまかせシネマ」(今号は松井かんこさんの出番だ)「北摂市長N氏の悩み」が連載で紙面を飾っている。連載ではあるが読み切りというスタイルをとっているので、一度手にとってもらうと面白みが分かるというものだ。

新たな体制作りを「民意」に基づくという理由で行っている

 大阪市長・大阪府知事選(11月27日――原注)は、知事から転進した橋下徹氏と「維新」の松井一郎氏が圧勝した。私が驚いたのは、接戦と見られた知事選で松井氏が200万票を獲得、次点候補に80万票の大差をつけたことだ。改めて「維新」旋風のすさまじさを実感させられた。

 (2011年――大谷注)12月10日現在、両トップは着々と新たな体制づくりを進めている。反維新で結集した各政党や労組も、共産など一部を除けば「これが民意なら仕方がない」とばかり沈黙。中には維新に擦り寄る動きもある。

 法改正が必要な大阪都構想などは別として、教育・職員両「基本条例」や予算の組み替えはすぐにも実施されるだろう。橋下氏は早速「大阪市の意味不明の補助金」を槍玉に挙げたが、この大幅削減により、同市が辛うじて維持してきた教育、文化、福祉分野のきめ細かな施策までが雲散霧消しかねない。

 例えば、外国人住民らが通う夜間中学、財政難でメニューを減らされ今やパンと牛乳だけになった給食さえ打ち切られるのではあるまいか。そんな事態を防ぐべく、現場を守る職員に頑張ってほしい。

 良識ある市民のバックアップも欠かせない。行政のあらゆる分野で、これから本当の闘いが始まる。

橋下知事を圧勝の原因を歴史に見る

 なぜここまで差がついたのか。選挙翌日の各紙は「閉塞感にいらだち、とにかく現状を変えてほしいと願った」市民意識の強さを第一に挙げ、併せて民主、自民の国会議員がほとんど動かなかったことなど、既成政党や集票組織の弱体化を指摘した。確かにその通りなのだが、ここでは少し別の見方をしてみたい。

 歴史好きなら、どうしても「桶狭間」や「赤壁」を連想してしまう。橋下氏が街頭演説で叫んだ「生きるか死ぬかの戦い」は、彼にとってハッタリでも何でもなく、本心だったはずだ。

 それに対し、反橋下陣営は士気が弛んでいた。最後にあわてたが、もはや挽回不可能だった、とういう構図だろう。

橋下知事の苦労に対抗するには反橋下陣営の努力不足

 橋下が知事となって1年後、「連日3,4時間しか眠らず、行政についての本を乱読し、府幹部に500本の政策メールを送った」「単なるタレント知事ではない、と府幹部が目を見張った」と紹介した記事を読んだことがある。

 彼は自身の主張を通すため、死にもの狂いで走り続けてきたのだ。それと匹敵するだけの努力を反橋下陣営の何人がやったのか、が問われなくてはなるまい。

 「三国志」で言えば、橋下氏は曹操。平松氏は微妙だが、自治体連合を組みながら松井氏に大敗した倉田氏は袁紹、といったところか。  以上が石橋直人さんの文章全体である。

反橋下陣営の努力不足を強調――大谷のコメント(1)

 この文章は橋下「維新の会」候補に対して、反橋下陣営の努力不足を指摘したものである。選挙は候補者同士の相対的な勝負であり、相互比較の上で相手候補が強かったというだけではないか。

 ただし、すべては結果論だという報道もあるだろう。たしかに、橋下氏は「たんなるタレント知事」と見られないように、努力した事実はあるかもしれない。

 勝てば官軍という言葉があるように、選挙で勝ったから「有用な努力」と写るようになったとしても、選挙で負けたら「無駄な努力」ということも考えられる。その点も考慮に入れなくてはならないと思う。

 橋下氏がたとえ「3,4時間しか眠れない」知事として事実であったとしても、他の「維新の会」候補が同じだとはいえないということもあるだろう。マスコミ各社は職場でも「橋下が勝った」とはしゃいでいると思ってきたが、どうも違うようだ。

歴史に例をとっても――大谷のコメント(2)

 文中に歴史の例をとる話がある。他の障害者関係の雑誌にも、W選挙で「維新の会」には明治「維新」を思い出すように「維新」のイメージはプラスイメージだという。

 その後の展開はマスコミ各社の記事と同じだ。大阪の人々は「せめて何とかして欲しい」と「維新」に願いを賭けたようだ。それだと状況を説明するだけに留まり「なぜここまで差がついたのか」という疑問に答えることになっていない。

 もっと歴史に例をとる話も時代を古くにさかのぼらないといけないようだ。もう少しさかのぼる必要があったようだ。さらに最近では大阪府ではタレント知事の経験もある。タレント知事にも良い面がある。

予想よりも大差がついたのはなぜか――大谷のコメント(3)

 新聞社であるから事前に正確な予想があったと思う。知事選は接戦であるという「わが社」(ここでも何社かを示さない)の予想に反して「なぜここまで差がついたのか」という、質問として受け止めることが出来る。

 大阪で外国人の通う夜間中学に着目した点は鋭いということがいえる。筆者は新聞記者らしく「現場の職員」が維持する努力にゆだねるという書き方をしている。マスコミの報道も責任があるという意識になれないものか。市民の良識がバックアップしてくれることを期待しているが、市民の多くはマスコミの報道で世論を形成していると思う。

 轟広志さんが「障がい者という身になってから行政が生活に少なからず影響するのを実感しているからです」と書いているのを読むと、ひしひしと生活に影響を感じる。

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2012.01.01

就職活動と大学生の夜明け

――「自分探し」が優先する――

 これも転載である。元はNPO法人「あったかサポート」が編集・発行している「あったか情報」(第28号、2012年1月1日)が「主張」(私は筆者名を知っているが、あえて名を明かさない)の欄に「大学生の就職活動と支援の方法を問う」とが掲載されている。承諾を取ったので、ここに転載する。見出しが原題と変わっているが私がつけたものだ。原文には中見出しもあるが、自分流につけたものである。最後に私が読んだ感想をコメントという形でつける。この雑誌は理事長(夫婦とも古くからの友人でもある)澤井勝さんの新年の挨拶から始まる。京都府商工労働観光労政課長のお祝い文の他、パーソナル・サポートセンターの「一体型支援」という話や出前授業の聞き手の感想や、これまた私の古くからの友人・社会保険労務士の森田定和さんの「公契約条例」に便利な方法などで構成されている。ファイナンシャルプラナーの目で見た「東日本被災地を訪ねて」など20ページの小冊子であるが、ページをめくると他の記事が飛び込む雑誌の形態を採用している。実に盛りだくさんの記事があり「編集後記」まで息を抜くところがない。是非読んで欲しい。  以下が「主張」の全文である。

2極化激しい活動になる予想

 2013年度入社となる現在の大学3年生の会社説明会が12月解禁になり、就職活動のスタートが2ケ月から3ケ月ほど遅れることになった。(もっともその「紳士協定」を無視して選考活動を行う企業は少なくないのも事実だが・・・)。しかし、4月1日の選考開始と面接スタートは変わらないから、学生にとって企業説明会への参加、OBやOG訪問を通じた企業研究や情報収集、応募書類の作成などにかける期間が短縮されることになる。

 また、今や就職活動の1つの手段と化したインターンシップは、遅くとも3年生の秋までには終了していることになる。いずれにせよ今まで以上に短期間に事前準備が迫られることになりそうだ。

 その結果、早い学生は大学4年生の6月には内定を取ることができるが、夏休みにずれ込む4年生も多くなりそうだ。その波に乗り遅れた大学4年生は、秋が深まる頃には次年度卒業予定の3年生と時季を同じくして就職活動に励むことになる。その結果、内定がたくさん来る学生と内定が取れない学生という就職活動の二極化がもっと進み、鮮明になって来るのではないかと心配される。

大学の「就職課」の変更に合わせて

 学生や大学によっては、入学当初から資格の取得をも視野に入れて就職活動を開始するという。少子化によって、大学自体も生き残りを賭けて「就職に強い大学」として広報を強めている。

 大学の就職課がキャリアセンターと名称を変更し始めたのは1990年代の後半からだ。 2000年代に入ってからは、どこの大学も就職課という古い名称は使用しなくなった。

 バブル経済が崩壊し、労働力の売り手市場から買い手市場の時代に、学生は企業を選ぶ主体から選ばれる客体に変化してきた。自分をいかに良い印象で見せるかに気を使わざるを得ないために、見た目が重視されるが、面接を通過するのは「わが社の雰囲気に合うか否か」が問われているのであって、若者の職業能力が問われているわけではない。

疑ってかかると良い「自分に合った仕事」

 ところが大学のキャリアセンターを含めて若者の就職活動を支援する官民を問わない様々なキャリア支援機関は、就職が決まらない若者に「自己分析」を通して「自分に合った仕事って何だ?」と問いかける。カウンセリングの予約をして、相談に乗ってはくれるものの自分に合った就職先は決まらない。

 しかし、どこの企業がわざわざその若者の個性や好みに合った仕事を提供してくれるだろうか。一人ひとりにそんな優しい対応をしていては、とても企業はやっていけるものではない。

 そんなことを要求すれば、「うちの会社はボランティアをやっているのではない」と一喝されるのが関の山だ。厳しい企業間競争の現実を知らない若者は、就職先で「自分に合った仕事」が与えられるものと勘違いしてしまっている。

 「自分に合った仕事」ということで果てしない「自分探しの旅」にでるだけではないか、との危惧を覚えるのは筆者だけではないだろう。自分の能力は具体的な仕事を通じて発見されるものではないだろうか。

現実に起きている事実を知らせることも大切

 そうだとすれば、そうしたカウンセリングや就職支援をしている大学や相談支援機関の罪ではないだろうか。とりわけ、わが国の雇用慣行は仕事に対して賃金を支払うのではなく、労働者の全人格的な職業能力に対して賃金を支払う仕組みとなっている。

 だから、就職が決まった企業の中では、営業、経理、総務、企画など様々な配置転換が待っているのであって、仮に思いの業種を選んで、入社できたとしても、自分に合った思い通りの仕事が与えられるものではない。過労死や過労自殺が30、40代の働き盛りの労働者に集中しているのもその延長だ。

 新聞を読む習慣のなくなった今の若者に対して、この国で現実に生じている事実を知らせることも大切なのではないか。そうすれば、少なくとも企業選択に当たって「ブラック企業」を避けることのできる目を養うことになるし、雇用につまずくことを少しは避けることも繋るのではないだろうか。

 とにかく、どこかに就職を決めてくれたら、それで良いとする本音が見え隠れしてはいないだろうか。

職業安定行政の変身を促した要因

 今やキャリア教育やキャリアコンサルタントのあり方について再考を促されているように思える。これまでは、職安行政の一元化を背景に職員の大柄な対応が「ハローワークが怖い」という印象をも与えてきたことは事実だ。

 しかし、今やハローワークには就職支援ナビゲーターが配置されるなど、きめ細かな対応がなされるようになってきた。

 求職者の話をマンツーマンで聞いて、就職に向けた意欲喚起などこれまでのキャリアカウンセリング技法だけでは、もはや時代の変化に対応した就職支援の方法としてはマッチしていないのではないだろうか。

働く環境と実情への理解を求めたい就職支援活動

 これまで当法人が進めてきた労働関連法教育の出前授業についても「働くこととは何か」など生きることへの根源的な問いかけが求められているように思える。2人のうち1人が大学に進学する時代に大卒の就職活動は、椅子取りゲームの様相を呈している。

 企業へのエントリーシートの提出がフリーになったとはいえ、企業による学校歴格差とふるい落としは確実に存在している。新規学卒者を含めて若者に夢や希望を与えるのは大事だが、事実に眼を背けることであってはならない。根拠の無い願望を若者にいたずらに抱かせることは、私たち大人の罪ではないだろうか。

 企業が本音のところで若者に求めている能力について、大学や様々な若者の就職相談機関の就職支援相談員は率直に語っているだろうか。企業社会に入って、「私生活と企業人としての生活のどちらを君は優先するのか」と暗に迫られた際にどのような態度を取るべきかなど、答えにくい問題は必ず生じることなのだ。

 「企業を選ぶ視点」の他に「働く環境と実情への理解」を大企業、公務職場、中小企業毎に異なるそれぞれのメリットとデメリットなどを率直に語れるようにすべきだろう。

 働くことや社会参加しようとする若者のニーズに即した役立つ情報と支援の方法を提供できる内容に切り替えないと時代に乗り遅れることになりかねない。 以上が「大学生の就職活動と支援の方法を問う」という「主張」欄の全文である。

大学生は自分の有利な就職のために大学を選ぶ――大谷のコメント(1)

 大学は「就職に強い大学」という宣伝をしている。これに対して学生から批判が出ないのが不思議という訳ではない。

 学生も同じように就職に強い大学、学部、学科、ゼミも選んでいる。同じ存在である。だから1年生の時から就職活動に強い科目を選んで取っている。大学がそうなら、学生も同じだ。

 現実を見すぎているために起きていることだ。今の学生は新聞を読まないと批判される。替わりに携帯を見ている時が目立つ。

 それよりも学生に言わすとテレビだという。携帯を見ている振りをしてテレビを見ているのだ。学生たちの会話にもテレビがよく出てくる。テレビにでないと馬鹿にされる。テレビの時代に生まれて育ったのだ。テレビでよく出演しているキャスターの言うことを信じているようだ。

流行っている若者の就職支援活動に対する批判――大谷のコメント(2)

 危機感が溢れている大人の文章である。しかも、時代は2人に1人が大学に進学する時に(卒業者の50%が進学すると言うことはそうなる)、このまま就職相談を遣っていたら時代に先を越されてしまうという文章である。

 時代に乗りそうに見えるキャリアカンセリングも、欧米の労働市場を背景にしているだけで、日本型雇用慣行に馴染まない面もあり、日本の実情に合わない。せいぜいが「自分探しの旅に出る」という表現は、学生の真実を見て来たように感じる。

 日本の企業における配置転換を意味している。そこにはあるのは「就職」ではなく「就社」という表現があるが、そうして次々と企業人として成長して行くことを表す言葉だ。

大学で教育している身には辛い――大谷のコメント(3)

 就職期間が短くなるのは学生にとっては大変なことだけど、教育に携わる人にとっても不満が多い。企業が求めている人材は大卒の資格だけが必要なのかという不満である。学生が大学にいるせめて3年間だけでも、ちゃんと教育をしたいという願いに反するからである。学生は多分より有利な就職活動のために大学に入学したのにと思っているかも知れないが。就職活動が大学に行く前提条件になっている。それも寂しいが。

 2極化が進めば早期に決める人が多くなると予想される。とりあえず、もっと後にさらに良い就職先があるかも知れないから期待をかけていたが、早々と最初の内々定が出た段階で企業にチャレンジすることを諦めて、就職活動を終わる人も多くなるだろう。

採用を決める基準は「企業に合うか合わないか」ということ――大谷のコメント(4)

 首尾よく内定を決めた人によると、企業が「この企業に合うか合わないか」を決めるという判断をしているそうだという。事実そうだと肯定する話がある。10月1日に内定式があり、学生がこの企業に行ってみたら同じような雰囲気の学生ばかりだという。

 それは個性を豊かに持っている学生といいながら「わが社に合う人間」という基準で採用をしたので、同じような雰囲気の学生ばかりが集まっていたという話だ。採用するときは個性を重視というが、キャッチフレーズのようなものだという。

 採用活動に職業能力を見ているとは思えない。周りとのうまくやっていけるか協調性を見ているだけである。同僚と仲良くなれるかというかつては批判されたが、仕事一途の冷徹な職場よりも仲間を求めて行く職場もあってよいだろう。就職活動のノウハウ本がウソを書いているようで、何だか信じにくい話だ。

 過労死ついては初耳だった。良い意見を聞かせてもらった。私は仕事一筋の冷徹な職場で能力全部が競争に曝され、職場がギスギスしていたのではないかと思っていた。

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2011.12.28

京都の魅力を「芸術や文化、歴史的遺産」で感じる京都市民

――やさしいまちづくりには「魅力」を感じない京都の人々――

 2011年12月27日にNPO法人格をとった京都地方自治総合研究所の第2回目の理事会が京都市内で行われた。その席上、自治労京都市職員労働組合が京都地方自治総合研究所に委託に出した京都市民のアンケート調査の2011年12月に公表された報告書が配布された。調査は2011年9月16日から10月15日にかけて実施されたもので、調査表を自治労京都市職の組合員が市内各家庭に配布しただけではなく連合加盟の各労働組合に依頼し、京都市在住の組合員に配布した。有効回収数は5070人である。労働組合員という調査対象から考えても「男性」が71.3%と「40歳代」が29.3%と最も多くなっている。さらに次いで「30歳代」が25%を占めている。居住区は東山区が2.5%とやや少なくなっているが「伏見区」で18.1%とほぼ満遍なく人口に比例していると思われる。また労働組合員の手によって配布されたので「会社員・公務員」が75.1%と圧倒的な割合を示している他「専業主婦・主夫」は5.6%と他の調査に比べて少ない。

京都市の「魅力」を歴史的遺産で感じている

 京都のまちをどの点で感じているかを総括的に訊ねたが、9割の人支持した答えは「芸術や文化、歴史的遺産が大切にされている」点を答えたのは「魅力がある」と言う答えは46.8%とほぼ半数にあたる46.8%で最大である。「どちらかいえば魅力がある」は43.1%である。

 ほぼ同じ設問である「まちなみや景観が大切にされている」は8割強の人が魅力があると考えている。居住区別には知りたいが、最近京都でも新興住宅地などには新しい建物が増えており「どちらかといえば魅力があるとはいえない」12.7%とやや多くなっている。

 ここで知りたいのは「コミュニティ活性化条例」についてである。調査は3.11以降に行われたが、東北大震災で人と地域の「絆」を強調した後だけに地域と人とのつながりを魅力と感じているかが興味が沸くものだ。それを直接に訊ねた「町内や学校区内などで人々の交流が活発である」に答えた割合は9.1%という積極的な答えと合わせると「ややそうだと」魅力があるは38.6%とわずかに半数を切るのに対し「やや魅力ではない」という答えは41.6%と「魅力ではない」という答えは10.7%ととなり、合わせると半数以上に達する。解説は「コミュニティ活性化条例」の「さらなる充実した取り組みが求められている」と結ばれている地区ごとの詳細な分析が必要だろう。

 まちづくりの要素として「子どもやお年寄り、障がい者にやさしいまちづくりが進められている」は「魅力がある」は9.6%と「やや魅力」がある34.5%と合わせて4割強しかない。それに対して「やや魅力がない」41.4%と「魅力がない」と答えた人は14.8%でこの比較の中ではもっとも多い。バリアフリーのまちづくりは進んでいない。

 京都市の魅力は歴史的な遺産に頼っているが観光客も居住者も一般的なようだ。人々のつながりの側面にも、バリアフリーの「やさしい」まちづくりにも、この歴史的な遺産をどう活かすかを考えた方が現実的だ。

男女差が激しく出ている市政の方向

 「今後、京都市政はどのような分野」という質問には男女差が出ている。女性は1位に「保健・医療の充実」が上がっているが、厳しい経済情勢に対して男性は「雇用対策」を求めている。女性は「教育の充実」が5位になっているが、子育ては女性の関心が高い。

 男性でも小子化が社会が一段と厳しくなっていることを反映してか「子育て支援」が男性の2番目に上がっている。子どもを産むには男性も力を出す必要があり、企業でも官公庁でも少子化が話題になっている反映だと思う。

 男性の第4位には「道路・交通網の整備」が求められている。日々の運転で混雑している道路にやきもきした気持ちでいるのだろう。地域毎に特徴がありそうだ。ただ、選択肢が与えられているためもあり複数回答のためか、この要望については上位5者については大きな開きは見られない。

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2011.12.25

社会そのものが大きな課題に登場

――憲章の人間と自然との関わりを重視する社会へ見直し――

 この文章は『「よつ葉憲章」見直しに向けて』と題する文章の続きである。2011.08.26に掲載した文章の続きが発表された。前回は行動指針である「よつ葉憲章」の改定があり、そのお知らせの結果を掲載するページも必要だと思った。結果は第1項を「私たちは、食は自然の恵み・人も自然の一部という価値観に重きを置き、自然との関わりを大切にする、安心して暮らせる社会を求め、その実現に向けて行動します」と改定されたという記事を、関西よつ葉連絡会が発行している「よつばつうしん」(第9号、2011年12月)で読んだ。

作ることは壊すことという経済の成長批判が明確に

 この訂正の背景がTTPなどに影響されたのか、それとも原発事故で今の社会の危うさが暴露されたのか、社会の発展とか経済の成長が疑わしいと一般に信じられるようになった。これまで作ることの前提にされていた少しなら破壊も許される社会(もちろんないほうが好ましい社会に)から、より安心して暮らせる社会に重きを置くようになった。

 明確になったことは「食べものを人は作り出すことができない」ということだ。食べものを作り出せるという錯覚が、論理の行きつくところ、原発まで認める社会になっている。

 未来は、このまま行けば「工業優先」の社会まで続く。その道に歯止めとなるものは皆無だ。人と自然を重視するとの行動指針になれば生産者が困ると予想されるが「関西よつ葉連絡会」がどのような行動をとるか注目してゆきたい。

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2011.11.23

元の東電(=連合)労働組合役員を死亡した場合に扱う方法

――3.11以後の死亡記事について教育雑誌に掲載されたマスコミ批判――

 週刊で「週刊教育PRO」という雑誌がある。先に「震災と障害者」という記事を転載してから、たまたま見つけた福島原発関連の記事によると、(X)さんが『マスコミに見る教育』という連載をしている(第46巻第39号、2011年11月1日、通巻は1679号だけど、この企画は第952回目と長期間)である。そこに労働組合元連合会長の死亡記事が取り上げられている。その記事は(X)さんによると「その日のニュース面では紙面が限られているため」に、朝日新聞には「惜別」欄が、読売新聞には「追悼抄」欄が別に設けてある。

原発の事故を聞いた後では物足りない記事

 元連合の会長は東京電力労働組合の出身で、単産・電力総連から連合に乗り出したと言う。元連合の会長は70歳で亡くなったというが、元会長となった時は、政権交代の際に当たり菅直人首相の政治アドバイザーだったという(産経新聞IT版、2011年6月6日、高橋昌之記者も「大地震」と記すだけで東電が起こした「原発事故」には触れていない)。

 本人は高校卒業後入社後9年目にして活動を始めたという。きっかけは「感電死事故もある危険な労働環境ながら賃金は高くなかった時代」(読売)に労働組合活動に始めたという。それが新政権の首相アドバイザーになったのだから、(X)さんも「成功物語」と評価している。

 彼が労働組合活動の担当者となったのはすでに1971年3月に福島第一は営業運転を開始している。その事実を踏まえ(X)さんは「労組のトップなら、原発にかかわる組合員や周辺住民の安全をどう会社側と話をしたのか取材すべきだ」という。さらに「下請け、孫請け会社にまかせているから問題とはしなかったのか」と記者の取材の至らなさを責めている。

3.11事故に際して何も触れない記事

 (X)さんの「原発事故への言及はなかった。新聞記者の問題意識の欠如である」という批判は当たっている。朝日や読売は下請け、孫請け会社を活用しているから日頃育った感性では無理な部分もある。

 二重構造を活用しているのは東京電力だけではない。日本において、大企業が取り上げられる出来事がある。とすると二重構造にあるのではないかと、想像するだけでもかなり記事の書き方は変わってくるはずだ。

 最後に(X)さんは次のように指南する。その案は「せめて『福島原発の事故をどのように思うのか、聞いてみたかった』と書きたい」というが、そうしたことも書かれていないのにも「死者を送る言葉」に驚く。

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2011.11.12

母子家庭の就労の現実

――パチンコでのストライキや最低賃金の動向――

 これも転載である。NPO法人「しんぐるまざーず・ふぉーらむ」の関西が出している機関誌『しんぐるまざーず・ふぉーらむ・関西News』(第26号、2011年10月20日)に掲載されたものである。参考になるからと言って承諾を取ったものであるから、最後に私が読んだ感想をコメントという形で取り上げるほかは、これまでと同じである。この号には転載した母子家庭の母親の就労現場の実態と、各地の地域グループからの報告と「一泊合宿」の様子が写真入りで掲載されている。尼崎の光熱費添付を求める児童扶養手当に対して関係の各地から行政の情報を集めている「児童扶養手当のホットライン」も分かりやすいが、「子ども・法律・お金の話」も、難しくなるので分かりやすく記事にまとめている。「ハーグ条約」と言うものの解説をしていることも特筆に価する。さらに大阪高裁が「婚外子の相続差別を違憲」だとする決定を出した記事も読ませる。こうした記事が満載である。一度手にとって読んで欲しい。以下は3人の方の記事になった意見である。

1.ぱちんこ屋における景品交換所の現場から

リードから

 パチンコ景品交換所で働くシングルマザーたちが時給あっぷを要求しストライキをするという新聞記事に目が止まり話を聞きに行った。

 労働条件の悪さと闘いながらも「この仕事、まだ給料がいいから止められない」という厳しい現実。

 背景には女性の賃金の低さと一向に上がらない最低賃金の低さも一因にある。母子家庭の就労率は80%以上で、一日に2つ3つの仕事を掛け持ちしてなんとか食べていけるという「貧困」さだ。

 「シングルマザーがまともに生活できる賃金をよこせ!と何回も叫びたい。

パチンコ景品交換所というところでの仕事内容

 にぎやかなパチンコ屋さんの裏手にひっそりある交換所(パチンコで得た商品を換金する)。畳一帖の広さで窓なしの所も多い。通称「箱」と呼ばれる。その中で働くIさん(43歳)に話を聞いた。

 「離婚して社会保険のある職場を探し、チラシをみてやっと見つけた職場です。始めパートを3ヶ月して正規になり、勤続2年です。」

 勤務条件を聞くと1日平均6.33時間、シフト制で10:00?17:30、17:30?22:30.だが計算が合わず帰宅が12時をこえることもあった。週1日休み、月26日勤務、休憩時間15分が3回。時給1010円で月17万円くらい。月4回の12時間労働で20万。ボーナスなし。歩合給あり。夏季、年末年始休暇なし。

 正規が60歳まで、その後嘱託で65歳まで働ける。パートは2日に1回の勤務で時給810円。2割くらいが母子家庭で仕事のかけもち(清掃業務や新聞配達)をしている。「皆、パートしながら正規に上がっていくのを待っています。私もそうでした。」「休憩時間15分の間に急いで食事します。」

毎日、危険な仕事をしている反面

 仕事の大変さを聞くと、狭い職場で一日中座りっぱなしという劣悪な労働環境以上に、一人勤務で大金を扱うので大変神経を使い、おまけにびっくりしたのが景品と現金が合わなかったら自腹(!)を切らなければならないということ。不正防止からということだが、賃金の安さからみて責任が重すぎる。

 防犯面が悪く、1日に何百万と扱うのにガードマンはおらず、監視カメラのみ。「負けて腹いせでパチンコ玉を交換所に投げ込むお客さんもいます。換金の時、並んでいる後ろの客が前の客のお金を取ったという事件も聞きます。」

彼女たちはストライキに立ち上がった

 このような状況の中、彼女たちは時給1010円から1100円への賃上げを求めて立ち上がった。パチンコ業界の大阪府遊戯業協同組合は社団法人・大阪母子寡婦福祉事業協会(母子家庭等の就労の場を作るために設立された)に景品買取業務を委託しており、直接の雇い主である協会は母子家庭などの女性2400人を府内800店の交換所に派遣している。

 今回ストライキの参加したのはその中で大阪地域合同労組等3組合に加盟する約500人。組合側の要求に対し協会側はボーナス3万円出すという妥協案を提示。これに対し、数十人の組合員がスト破り側に回ってしまった。「お店の人に言われたら仕方がないんですよ。」

 組合員を分断するような辛い経験もあり、ストは決行されたが、実効性はなくなった。しかし、交渉の結果、賃上げはされなかったが、繁忙手当が改善されたので一歩前進。

陰で応援している人たちの声

 「クビを覚悟でしたが、必ず勝ち取ろうと3つの組合で一致団結してストライキができてよかったです。2人の娘の教育費もかかりお母さん頑張ってと応援が嬉しかったです。」

 組合は始め親睦会から出発し組合に発展したが、一人勤務で他の人と話し合う時間もなく仲間づくりがむつかしい。組合の獲得物に文句をいう非組合員もいる中で彼女たちの孤軍奮闘が想像できる。引き続き闘うという彼女たちに大きなエールを贈りたい。(絹)

 以上が「パチンコ景品交換所の女性たちの労働全文である。以下が原題「最低賃金が786円にアップ――最低賃金って何?――」赤羽(働く女性の人権センターいこ☆る)で全文である。

2.最低賃金の仕組みと最低賃金法の改正

最低賃金とは

 最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が定めている賃金の最低限度で、主婦パートや学生アルバイトなども含め、原則、雇用されて働くすべての労働者に適用されます。

 最賃には、地域別最賃と産業別最賃がありますが、私たちのほとんどに影響のある地域別最賃がどのように決められるのか、大阪府を例にお話します。

 毎年、中央最低賃金審議会で全国を地域別にA,B、C三つのランク(大阪はAランク)に振り分けて決められる目安額をもとに、各都道府県におかれた地方審議会で決められます。審議会は、中央も地方も労働者、使用者、公益を代表する委員で構成されていて、労使の意見には隔たりが大きく、実際には公益委員が労使の意見を調整することになります。

 金額は、その年の賃金上昇率や景気の動向を元に議論されますが、2007年、40年ぶりに最賃法の改正があり、「生活保護との整合性」が明記されたことで、ここ数年、未曾有の金融危機等もありながら、大阪では生活保護費との乖離を解消する2桁アップを実現してきました。

今年の最低賃金の額

 今年は、東日本大震災やかってない円高等、労働者にとっては不利な条件がそろっていたのですが、中央の目安、「生活保護費との乖離額7円を2年で解消の4円」を上回る、一年で解消の7円アップの786円を実現。

 これには7/27の審議会で、労働者側からしんぐるまざーず・ふぉーらむ・関西からの社納葉子さんをはじめ三人の方が意見陳述をされたことが後押しになりました。

 これが赤羽(働く女性の人権センターいこ☆る)さんの「最低賃金が786円にアップ――最低賃金って何?――」であり、全文である。次に地方最低賃金審議会で意見陳述をされた社納葉子さんたちの意見である。原題を「最低賃金は普通に働いて、普通に暮らしていける社会の大前提!――最低賃金審議会に参加して――」である。

3 .地方最低賃金審議会に参加して

審議会に参加して

 (2011年)7月27日(水)、大阪地方最低賃金審議会に労働側意見陳述人の一人として出席しました。私はフリーライターの仕事をしながら、2年前からファストフード店で週2、3回働いています。その経験から感じていることを話しました。

 強く感じているのは、やはり「不安定性」です。私が入って半年後に、新しく採用される人の時給が50円下げられました。

 店にはシングルマザーも多く、少しでも収入を得るためきつい仕事をこなしてマネージャーになる人が多いのですが、マネージャーになってしまうと今度は時給が店(会社)にとってはコスト高に映ります。会社側はできるだけ若く無理のきく人を次々採用したい。

 しかし生活がかかっているシングルマザーは真面目で危険で臭い仕事もいとわず、要領よくやるので切り捨てがたくもある。あるシングルマザーは、そんな会社の本音を見抜き、体を張りつつ店長(店で唯一の社員)と交渉しながら自分の仕事を守っています。そして3人の子どもたちの大学進学費用をまかなっています。でも怪我や病気をすれば「そこまで」です。

 審議会ではそんな話を紹介しつつ、「普通に働いて、普通に暮らしていける社会であってほしい。最賃はそのための大前提です」と訴えました。(葉) これが3番目に紹介したい記事である。

一人職場で実行できたのは難しい事を実現――大谷のコメント(1)

 ストライキはむつかしいことだ。無事ストライキができた事をうれしく思う。それに一人職場である。さぞ皆のストライキに賭ける意識が高かったのだろう。そこまで労働者たちがそれほどまでに燃え上がっていたことに、使用者は驚いたはずだ。

 これまでストライキを経験した職場は、多くが労働組合員ばかりで固めていた場所だ。その意味でも孤立している人に指令が行き届かないという問題があった。携帯電話を使ってメールで遣り取りしたのかわからないが(今流行の)、団結を保持しながら皆がまとまってストライキにまで行為をするというのは、すばらしい効果だ。

 昔だったら、圧倒的に多くの労働者が占めていたというがストライキは容易に打ててはずであるが、こうした一人職場で構成されている労働者はなかなかストライキも打てなかったという伝説は生きている。一人職場の悪条件を除外しても、それほど止むに止まれない条件(不満)があったことを示している。それの詳細は分からないとしてもお客さんの態度に対する防犯上のことであろうか。

最低賃金審議会を団交の場として――大谷のコメント(2)

 そうした個人の意識を支えたものに地方最低賃金審議会に当事者が参加したことにあると思うのは言いすぎだろうか?地方最低審議会を未組織労働者の団交の場として活用するという戦略が立てられたのは、かなり昔だ。

 多分、パチンコ屋の景品交換所以外には労働組合は組織されていないと思う。パート労働者の利害を代表するという労働組合の立場にたち、自分たちの心配事を経営者団体に直接にいえる場が保障されることは貴重である。そこから未組織労働者の組織化が生れると思う。

 職場には非組合員もいることだし、組合でも連合系も存在するだろう。職場の過半数を組織した組合が交渉結果を横断的に主張するようにしたら、どう事態は変わるだろうか?

直接に声を聞くことの重要さ――大谷のコメント(3)

 労働関係の審議会の例として、労、使の代表と公益委員が参加する三者構成による構成となっている。そこで訴えることは先ず、公益委員に訴えることを意味する。

 それに労働団体とは言いながらも、中小零細企業を代表する労働団体はほとんど入っていない。経営者も中小を代表する経営者団体もほとんどないだろう。大手企業を代表する労使には実情は分かりにくいものだ。

 本当は今日でも日本でもこうした事例があるのだということを示す具体的な話の方が、相応しい。通り一遍の理解よりも自分たちで調査をすれば、それが現実だと分かるだろう。

最低賃金審議会の最低賃金に過大な期待をしないこと――大谷のコメント(4)

 地方最低賃金審議会は上記に書いているように3つのランクを示している。かつては瀬戸内海側と日本海側とで地域がわかれていたが、労働市場の流動を考えると、京阪神という一連の市場と日本海側の市場とは別に考えた方が現実にあうという話があった。

 ただ「最低賃金は普通に働いて、普通に暮らしていける社会の大前提!」という主張にとらわれすぎると、最低賃金の本質を忘れかねない。あくまで「最低賃金」とは、国が定めている賃金の最低額であり、これを上回ったからといって、使用者には無理に出すことが決められているが労働者の生活が豊かになるものではない。

 日本は生産大国にもかかわらず、国際的にも低すぎる傾向がある。ナショナル・ミニマムと言え国民的最低限の暮らしを意味するものだ。労働者が皆最低賃金に張り付けば、それで良いものだという理解は得られない。さまざまな低所得者の支えになる社会保障のあくまでセーフティネット(社会的安全網)を構成するものである。

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2011.10.09

有料老人ホームの建築計画の工夫と

――神戸市に本拠を構える社会福祉法人の場合――

 これは連載記事からの転載である。社会福祉法人・全電通近畿社会福祉事業団は大阪府岬町に知的障害児の施設「愛の家」と神戸市に「特別養護老人ホーム愛ハート須磨」とを持っている。社会福祉法人・全電通近畿社会福祉事業団が編集・発行している『愛&ハート』(第193号、2011年9月10日)に、事務局長森本光弘さんの記事が原題「連載・今後の福祉事業の安定運営に向けて――(7)建築計画と事業者募集状況――」として掲載されている。

 同号に夏まつりが行なわれたという記事が出ている。「愛ハート須磨」で行なわれたが、あいにくの雨の中で家族会が運営する「綿菓子」コーナーや現役NTT労働組合による「焼きそば」や「たこ焼き」を始めとして入居者も鉄板メニューなどで大満足したという記事のほか、職員総出による朝里屋ユンタの踊りまで、記事に出ている。知的障害児施設「愛の家」では「一般就労をめざして」という取り組みの記事などがある。いろいろと地域を巻き込んで全員参加によって取り組みを社会福祉法人が行なっている実例として受け止めることが出来るので、他の記事も大いに役に立つ。ぜひ読んでほしい。

 編集委員会や執筆者の同意をとったので、ここで紹介する。紙面と同時に事業が進んでいるので途中の動きだけになるが、福祉用の建築計画の一端を明らかにしているともに、行政が行なう事業所コンペに際して普通は秘密にされている各企業の実情も分かると思うので、大いに参考にしてほしい。最後に私が読んだ感想を「コメント」という形で示す。以下は同事業団事務局長森本光弘さんの記事全体である。

ハードが自立を促す仕組み

 事業用地が決定したことで(前号で事業用地までの獲得の動きが報告さている)、建設に関する基本計画の策定が可能になりました。高齢者住宅・施設は、建物の設計内容によって、入居者の自立支援や運営コストに影響を与えるという特徴があります。

 自立支援については、支援内容や介護技術等、ソフト面が中心であるものの、入居者の意欲や行動を促すハード面の工夫や仕掛け(「普通」の生活をするための「特別」な工夫)も重要な要素となります。また、介護動線が非効率なフロアプランは、より多くの介護スタッフの配置が必要になり、運営コストの増加につながります。

 更に、私たちが検討している「介護付有料老人ホーム」は、まずは神戸市の事業者募集に応募し、事業者として選定されなければ開設できないのですが、開設を希望する事業者は少なくありません。

プロポーザルで他の事業者との優位性を示す必要性

 そのため、事業者として選定されるには、利用者ニーズに適合した事業計画の策定はもとより、他事業者の計画に対する優位性を訴求する必要があり、このような面からも建築計画は重要になります。以上のようなことから、建築計画については、プロポーザルを実施して策定することにしました。

 プロポーザルは、福祉施設専門の設計事務所に仕様書や評価項目の作成を委託し、4社の設計事務所からの提案を受けることにしました。評価項目については、(1)提案内容、(2)会社及び担当技術者の実績、(3)設計費用で、特に(1)提案内容については、プロポーザルの運営を委託した設計事務所から、各社のフロアレイアウト等に関する長所と短所のレクチャーを受けた上で評価を実施しました。各評価項目の合計点で提案内容(設計事務所)を決定し、その後、居室やフロアレイアウトの微調整を行い、建築計画が完成しました。

自立した入居者の行動を支える工夫の例

 建築計画上の特色としては、一階にゆったりとしたラウンジを地域交流スペース・ボランティア室を設置するとともに、建物の南側に庭園を整備し、ご家族や地域の方々が訪れやすい空間を設けています。

 2階から5階については、介護居室10室と一般居室1.2室の混合ユニットで、環境のいい南東の共用スペースにキッチンを設けるなど、入居者同士の支え合いや自立的な行動を推進する生活空間となっています。

 また、各フロアの中心にスタッフ室を設けるなど、短くわかりやすい動線計画と見通しのよい視線計画で、介護サービスをサポートするとともに運営コストの増加を防止する工夫も施されています。

特別養護老人ホームと一体的な運営を図る

 収益を追求すれば、共用スペースを極力小さくして、より多くの居室を設けるということが一般的です。したがって、地域交流スペースやボランティア室のある介護付有料老人ホームは、珍しいのではないかと思います。

 私たちの事業計画の最大の優位性は、事業用地のロケーション(あいハート須磨とのシナジー効果が期待できる、交通アクセスや生活面での利便性が高いなど)にありますが、建築計画においても相当にあると思っています。

神戸市における経過と今後の予測

 今年度の神戸市の事業者募集は、(2011年)5月18日から7月15日の約2ヶ月間で、私たちは6月上旬に応募(資料提出)を行ないました。募集数は、新設と増床合わせて183室以下(介護居室)となっていますので、仮に増床を希望する事業者がなく、新設を希望する事業者のすべてが介護居室数を40室(1施設あたりの上限値であり、大半は40室で計画を策定すると思われる)で応募した場合、選定される事業者は4社ということになります。

 8月下旬に神戸市のヒアリングを受け、現在は選考結果の通知を待っている状態です。選考結果は9月末に確定する予定なので、次回、ご報告できると思います。以上が森本光弘事務局長の文章である。

関連する部門が経営の安定化につながる構造――大谷のコメント(1)

 原題は「今後の福祉事業の安定運営に向けて」とあるように、施設を運営している法人が有料老人ホーム事業も運営する。社会福祉法人の本来的な事業を経営的に助けるものとして位置づけられている。

 株式会社が訪問介護事業者を行なっていることと構造は同じだ。先日の報道にも介護保険以外で「高齢者宅近くの住民を配達スタッフとして雇い、電話を受けてスーパーやコンビニエンスストアで買い物し、自転車で届ける。」と紹介されていた(日経2011年9月21日夕刊)。家事代行(この例は買い物だが、清掃なども行うという)を低額で行なうサービスだという。確かに買い物をするには援助があれば良いと思う。

 保険外ではあるが、訪問介護を利用していない家庭からも注文も受け付けるという。訪問介護の利用者拡大に結びつける意図はないようだ。その企業の収益になっているらしい。

 問題はサービスを提供する人の人件費だろう。まぁ、引退しても、身体は元気で動き回れるような人はいると思う。お小遣い程度の安い人件費で現状は済む。

 NPO法人でも地域の住民による「助け合い」ということで、同様な事を行っている例もある。

 介護保険だけでは収益は不十分だが、関連する介護事業を行なえば法人経営も安定する時代になってきた。介護保険の財源だけではなく、高齢化社会を迎えて関連の介護需要は巨大化する。

自立をハードが促す――大谷のコメント(2)

 読んでいて自立をハードが促すと書いてあるので、ソフトばかりを考えていたので「アレッ」と思った。段差とか蛇口とか「不便だなぁ」と愚痴を言うが、ハードは変更しえないものという意識がある。その意味で新築マンションを建てるのと大きな違いがある。

 歳をとってから高齢者向けの新築された建物を探すのであれば、身体が動き辛いときにも出来る限りスムーズに移動できることを求めるだろう。利用者はそうした目的から有料老人ホームを評価するだろう。まして「介護付」というのであれば、森本さんが書いている通りである。

 動線計画はもとより、見通しの良い視線計画も考慮するだろうと思う。この種の言葉を久ぶりに聞いただけに、使うのが一般化していると思った。

 必要最低限な要因を配置して価格もできるだけ抑える必要がある。さらに介護の必要性に手がかかるようになってから、(介護度を超えてまで)値上げは出来ない。

行政のコンペが当たり前になった――大谷のコメント(3)

 行政が「委託」や「指定管理者制度」をする場合だけでなく、的確な事業者を募集する場合でも、プロポーザルによるコンペが一般になった。関係事業者が他の事業者に優位に立つ意味が分かる。委託契約を獲得する場合であるので当然かなと思っていた。

 利用者(住民)のニーズに応えた事業者の方が優遇されるこのシステムのメリットだろう。プロポーザルの応札した事業体の準備状況が分かると思った。一度プロポーザルシステムを始めたら業界全体に行きわたる仕組みも理解が出来る。

 ただ、発注主が実際に建設していないと適性に評価できない場合も起こりうる。この場合も設計事務所から各社のフロアレイアウト等について、レクチャーを事前に受けるという方法もある。

有料老人ホームの建設承認―ー大谷のコメント(4)

 先日神戸市から連絡があり「選考結果の通知が届き、おかげさまで事業者に選定していただくことになりました。」という短文の記事が『愛&ハート』(第194号、2011年10月10日)に載った。更に「今後は神戸市との事前協議等、建設に向けた対応を進めていくことになります」とある。

 事前協議が必要なのは行政の建前を尊重していると表現ともとればいいのだ。事前協議を事業者と共に行なうのであれば、コンペは一体何のためかと思われる。特別養護老人ホームの建設を介護保険の財政を抑制するために、支出を抑えることとつながりはあるのだろうか?

 営利事業体のように利益を上げるためには、社会福祉法人格のように、営利を目的としない有料老人ホームを選ぶしか道はなかったという。行政がコンペを行なうのに、他の競争相手の事業と相対的な価格だけではなく、協業の参加する事業者同士より緊張するもののようだ。

 アイディアのより良い事業体が勝ってくれる方が市民にとって望ましい。価格についても情報を発する方が望ましい。

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2011.10.01

共に静かな時を過ごした経験

――地震の被災地仙台におけるコンサートの時間の流れ――

 これも転載である。もとは豊能障害者労働センターが発行している『積み木』(2011年9月13日編集、第227号)に掲載されている細谷常彦さん(ブログ「恋する経済」とホームページ「ゆめ風基金とわたしたち」)の書いている原題『その静かで特別な時間はひとからひとへと語り継がれることでしょう』を全文に渡り転載したものである。関係者の承諾を得たので見出し、中見出しを付けたと同時に読んだ感想を、コメントという形で最後に付けた。松井しのぶさん作成になるカレンダー(やさしいちきゅうものがたり)が注意深く事業所に運び込まれる巻頭の写真やバリアフリーについての牧口さんの記事もある。隅から隅まで読んでいて役に立つ記事が多い。以下は細谷さんの記事全文である。

被災地仙台でのコンサート

 (2011年)8月23日、被災障害者支援・ゆめ風基金と被災地障害者センターみやぎとの共催で、永六輔さんと小室等さんのライブがあり、そのスッタフとして仙台に行ってきました。

 1995年ゆめ風基金が立ちあがった時から、前呼びかけ人代表の永六輔さんも現代表の小室等さんもゆめ風基金をささえてこられました。今回の震災後もラジオ番組やコンサートで基金を呼びかけて下さいました。

 このイベントは(2011年)6月5日に行われた仙台の「とっておきの音楽祭」に小室等さんがゲスト出演し、仙台の障害者と交流したことを永六輔さんにお話しされたところ、「被災地でふたりのライブをしよう」ということになったのでした。

仮設住宅の広場に作られた会場

 お二人が来てくださることになり、さて会場は?となった時、被災地障害者センターみやぎのひとびとは近所に建てられた仮設住宅の広場にしようと思いました。

 それはこの町で普通に暮らすことから遠ざけられてきた障害者が、それでも町を愛し、困難を共に分かち合い、生きていこうとする決意のあらわれでもありましたし、仮設住宅の被災市民に少しでも心をひとやすみしてもらえる時間をつくれたらと思う切ない願いでもありました。

 わたしは前日から現地に行ったのですが、あいにくの雨で、当日も雨は降り続き、野外でのライブはだめかと思った午後、雨が止み、空も少し明るくなってきました。

 夕方四時、永六輔さん、小室等さん、小室ゆいさん、そして永さんのお孫さんが現地に到着しました。「天気が心配なんですが」とわたしが言うと、小室さんは言いました。「だいじょうぶ、ぼくは晴れ男だから」。

永六輔さんのトークから始まったライブ

 そして、五時半ちょうど、ライブが始まりました。

 ライブは永六輔さんのトークから始まりました。永さんはパーキンソン病になられてからも、それを受け入れながらリハビリをするプロセスをラジオやトークイベントで話してこられました。

 この日もリハビリの先生に「日本には『上を向いて歩こう』(作詞・永六輔)というすばらしい歌があるので、この歌を歌いながらまっすぐ歩く練習をしましょう。あなたはこの歌を知っていますか?」と聞かれ、「知りません」と答えたという話や、交通事故にあったのがきっかけでろれつが回るようになったお話などを永さんが語ると、身を乗り出すようにお客さんが聞き入り、大笑いされていました。手話通訳のひとを本来の役割をこえた共演者として話され、手話を通じてコミュニケーションの楽しさも伝わってきました。

木枯らし紋次郎の音楽で小室等さんの登場

 そしてあたりが暗くなり始め、照明の光がやわらかく仮設の舞台を包みかけた頃、永さんに呼ばれて小室さんが登場しました。

 ♪けれども どこかで おまえは待っていてくれる
  きっと おまえは 風の中で待っている
   「だれかが風の中で」 作詞:和田夏十 作曲:小室等

「この歌はテレビドラマ『木枯らし紋次郎』のテーマソングで、作詞は市川昆監督の妻で脚本家の和田夏十さんでした。ずいぶん前の歌ですが、3.11以後、この歌詞の意味をかみしめています」。最初に歌った後、小室さんはしみじみと語られました。

 2003年のNHK金曜ドラマ「蝉しぐれ」のテーマソングだった「遥かな愛」、「黄昏のビギン」、そして永さんが作詞し、三波春夫さんの最後の歌となった「明日咲くつぼみに」を歌った時に、「三波春夫さんは声を張り上げてきたので、元気がないように歌ってほしいと、お手本として小室君のCDを渡したんだよ」と永さんがこの歌のエピソードを話されると、みんな爆笑してしまいました。

雨が降り始めてきたが、熱心なお客さんに支えられて

 途中から、やはり雨が降ってきました。用意してあったビニールカッパをお客さんに配りました。お客さんは誰ひとり去らず、みんな「ありがとう」とカッパを着ました。

 その風景を後ろから見ていると、涙が出てきました。この仮設住宅に入られている方々は大方が津波で被災された方々で、ここに来られるまでに、ご家族、お友達をなくされた方もたくさんおられることでしょう。

 実際、後ろで立ってご覧になっている方を座席にご案内しようとすると、「あと少しで行かないといけないので。でも永さんのラジオな何十年も聞いていて、さっき握手してくださって感激です」と言われた後、津波が来た時、後ろから津波が追いかけてきて、もう一分遅かったら命がなかったこと、友達が10人もなくなったことを話してくださいました。

ラジオは送り手と聞き手が固い絆で結ばれている媒体

 あらためて、永さんと永さんのラジオ番組のリスナーが固い絆で結ばれていることと、永さんがパーキンソン病にかかり、言葉がわからなくなった時もラジオに耳をかたむけ、今のようにお話されるまで、リスナーもまた共に歩んでこられてことに感激しました。そして今回の震災がさらに永さんとリスナーの絆をより強くしたことも知らされました。

 震災直後、永さんがラジオ番組で連日のようにゆめ風基金への募金を呼びかけられ、番組終了後ほんとうにたくさんの方々からの電話が殺到し、うれしい悲鳴を上げていたのですが、いま目の前で永さんが話されるのを一言も聞き逃さないようにと、静かに聞き入るお客さんを見て今更ながら納得しました。

 永さんのお話と小室さんの歌が、それをほんとうに待ち望み、必要とするひとたちに届けられたのでした。

 ライブの後、ゆめ風基金のスタッフがお二人にお礼を言うと、「ぼくたちの方がゆめ風基金の活動に助けてもらっているのだよ」と言われたと聞き、勇気がわいてきました。

好評だったイベント参加者の感想

 翌朝、被災地障害者センターみやぎのすぐそばの喫茶店で、このイベントのことを一生懸命話されているグループがおられました。

 「市民会館や立派なホールよりも、仮設住宅であったあの催しの方が何倍もよかった。最初に挨拶した車いすの女性のあいさつも、すごくよかった」と、この催しのチラシを大切そうにクリアファイルに挟み、話されている声を聞き、ほんとうにうれしく思いました。

 仙台の仲間がこの催しにこめた精いっぱいの願いは、仙台の街に届いたのだと思いました。そして、このイベントで流れた特別の時間は、その時間を共に過ごした人から人へと何年も語り継がれることでしょう。

 以上が細谷常彦さんの文章全体である。

静かなよい文章――大谷のコメント(1)

 今年東日本大震災についての文章は多い。上掲した文章を読んだとき「静かなよい文章だなぁ」と私が感じた。

 2011年3月11日以降の一連の出来事は、確かに政府や当該の事故を引き起こした会社に対して批判をしたくなる。だれでも声を荒立てるような出来事が多すぎる。

 地域の市民に向けて防災活動をしている被災地障害者センターから始まった「ゆめ風基金」にはそぐわない。あえて筆者は「静か」であろうと志しているのでもない。

 とくに、文中に穏やかな人が舞台に登場するだけではない。イベントの時間の流れがそれを表しているだけでもない。観衆が静かだということでもない。

 表面は「静か」だが、強烈な意思を持っている文章である。いわば現実の姿を認めた上で、障害者発の仙台の街を変えようとその意思が届いたのであるから。

 現実に負けないようにするには、数多くの市民や被災した市民と共に「将来実現するだろう夢」を語るなかから、現実化をする作業である。今の現実を地域から改造することが必要だと、自覚した文章でしかも自立した拠点から自分たちの生活を眺めている。

ラジオは人と人を繋ぎ合わせる作用がある――大谷のコメント(2)

 ラジオだと生身の声を聞くことになる。生の音源である。ラジオでは送り手と聞き手の関係が密接になりがちである。メディアを客観的に見るというより、1対1の関係で、わが身に起きたことのように受け止める傾向が強い。聞いている人と放送に携わる人の絆は強くなるといえよう。

 それに対してテレビは画面と音声がでる。どうも、画面を見ている数多くの人たちと送り手がよそよそしくなる傾向が強い。好きなときや嫌いになった時にプイと余所見をすることも出来る。最近の若い人たちはテレビ時代にトップリと育ったようである。テレビからの情報が多いようといえる。

 新聞の場合はどうだろうか。パソコンの場合はどう位置づけられるだろうか?メディアの比較をしてもよい場面だ。

懐かしい歌が登場する――大谷のコメント(3)

 かつてであれば何となく聞いた覚えがある。全部の歌詞は覚えてなくとも、メロディを辿れば、私にも歌えることが出来る。

 それだけ心の奥深く浸透していたのであろう。他に余暇を過ごす手段もあっただろう。

 「上を向いて歩こう」はたしか坂本九が歌手だった。NHKのテレビで6(永六輔)、8(中村八大)、9(坂本九)のトリオで「夢で合いましょう」から流行り始め、海外では「スキヤキ」として流行した。坂本九は残念ながら1985年の日航機の事故に巻き込まれ死亡した。

 「木枯らし紋次郎」も笹沢佐保さんの原作で、上条恒彦による歌手、市川昆監督が演出し、中村敦夫がはまり役だった。一時期テレビで流行ったことがあり、懐かしいなぁ。もう今は見られないだろう。

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