全くもって迷惑な話だが、最近ゆうたは寝るとき必ず私の耳をつまみながら寝る。子供が入眠する時、偏執的必須アイテムがあるのはよく聞く話だが、まさか私の耳無しでは眠れなくなるほどのフェチになろうとは、私も迂闊であった。 最初は横向きで額を合わせるようにし、ゆっくりめの呼吸を合わせてやるとよく寝たためいつもこの方法にしていたが、その時にゆうたが私の顔を抱きかかえるようにしていたところから端を発したようだ。 いくらか寝付きの悪いときでも抱っこして「ホレホレ」と耳を差し出し、掴ませた体勢のままベッドに横になるとあくびをするのだから不思議なものである。 もう一つ不思議なことは、同じ耳でもちゅまの耳ではまるで効果がないのである。大きさには幾らか差があるものの、どちらも決して金の貯まりそうもない薄っぺらで貧相な耳たぶをしており、とても触り心地に差があるとは思えない。 にもかかわらず、夜泣きしてグズっても私のほうにしか来ない。しかも私の顔を抱えようとするので仰向けに寝ているとモロに顔を塞がれてしまい、呼吸困難で起きざるを得ない。 仕方なく横向きになって「ヨシヨシ」としてやると、私の耳をいじりながらウトウトし出すのだが、いじるといっても時に引っ掻き、つねり、なぜか叩くのである。特につねられるのは痛い。爪先でやられると針で突つかれたような痛さである。 「パパっ子でいいじゃない」と言われそうだが、そんな甘いものではない。もはやこれは私にとって悲劇である。 考えてみて欲しい。私はいつも泣き声ではなく息を止められるか、耳や首を針で突つかれて起きるようなものである。おまけに今は、なかなか治らない風邪のため鼻がつまって眠りが浅いらしく、夜中に何度となくこれをやられる。 実にストレスフルな覚醒法ゆえ、毎晩3度目か4度目にはムズと掴んで窓の外に放り投げてやりたい衝動に駈られる。昨今のように親による虐待が取り沙汰されていなければ、今ごろ1回や2回投げていたかもしれない。 ちゅまにももちろん被害は及んでいる。私の顔にのしかかれば、横に寝ているちゅまには足が自ずと向き易く、悲鳴付き全身屈伸運動の際には破壊力抜群の踵が、泣き声だけではちっとも起きなくなったちゅまの顔面を容赦無く捉え、ボスッ、ゴキッという鈍い音とともに深淵の眠りから引上げるのである。 アホなやつだ。1歳から両親を敵にまわすなんて。 |
![]() 耳だけは放しません! |
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