本ページは、あくまでも交通事故遺族を原告として、 損害賠償を求める民事裁判を対象としています。 傷害を負った方には、必ずしも満足のいくものではありません。 また、当然ながら加害者側には利用に適しないものと考えています。 内容については、私が自分の裁判を闘う段階で身につけた知識が中心であり、 素人の悲しさで、すべてが法的に正確ではない可能性もあります。 本文の使用にあたっては、弁護士に確認しながらご利用ください。 もくじ 1、訴訟の前段階 (1)時効の確認 (2)弁護士 (3)訴訟を考えたら (4)訴訟人になる (5)提訴の準備 (6)裁判費用 2、民事裁判の開始 (1)裁判の手続の開始 (2)審理制の決定 (3)裁判所はどこに (4)裁判の期間 (5)裁判日程の決め方 (6)訴訟の取り下げ(略) 3、交通事故裁判の流れ (1)裁判の流れ図 (2)事前準備 (3)加害者側の逆襲 4、裁判の進行 (1)口頭弁論の開始 (2)弁論の中身 (3)争点の洗い出し (4)証拠調べ (5)証人尋問 5、和解 6、結審と判決 (1)最終準備書面 (2)判決 7、高裁へ
1、訴訟の前段階 (1)時効の確認 イ、消滅時効 交通事故損害賠償請求民事裁判は、裁判に訴えようとする人に、損害賠償を求める権利があって、 初めて成り立ちます。しかしこの権利は、時間の経過によって消えていってしまいます。 これを「消滅時効」といいます。 交通事故の時効は、事故後3年です。この期限を越えてしまうと、一切の権利は消滅してしまいま す。当然、民事裁判を起こす権利もなくなるわけです。 ロ、時効の中断 理由があって、時効を先延ばししたい場合は、以下の手続きが必要です。 @ 6ヶ月間の時効延長 加害者側に損害賠償を求める意志があることを証明します。具体的には、保険会社の請求書式に 従った請求書を、直接保険会社または代理店に持ち込んで、受領印をもらっておきます。 または、「内容証明郵便」で請求しておきます。 いずれの場合も、金額はいくらでも構いませんが、相手がその金額で受諾した場合は、延長の目 的は果たせません。 A 時効中断請求 正当な理由があるとされる場合(被害額が固定できない、請求者の病気や海外在留など)、加害 者側に時効の中断を求めることができます。 ただし、あくまでも双方の契約ですので、拒絶された場合は成立しません。 不成立のことも考えて、時間的余裕をもって当たること、できれば弁護士に介在してもらいたい ところです。 (2)弁護士 イ、弁護士の必要性 民事裁判は弁護士がいなくても、原告本人で裁判に臨むことができます。これを「本人訴訟」とい います。法律知識に自信があるか、裁判に勝ったとしても弁護士料が支払えない場合を除いて、交 通事故裁判は専門家の手助けが必要だと考えた方が良いでしょう。 ロ、弁護士料 契約段階で、弁護士費用についても取り決めしておきます。それに従って、着手金を支払うのが一 般的です。 弁護士料は、基本的に依頼人(原告)が支払うものです。ただし交通事故のように、不法行為に基 づく損害賠償裁判においては、裁判所の判断(判決)で、相手側(被告)に支払わせることも出来 ます。弁護士料は、着手金と報酬金に分けることが出来ます。 @ 着手金 訴訟代理人(弁護士)の労働にたいする対価と考えてください。すなわち弁護士の給料のような ものです。 着手金の金額は、弁護士会の基準がありますが、必ずしもそれに縛られてはいないようです。 請求額の5%くらいが標準とされていますが、50万円から200万円くらいの幅があります。 A 報酬金 裁判の結果得られる成果についての成功報酬です。従って裁判に負ければ、支払う必要がないこ とになります。 弁護士料について、裁判所が判断を下さなかった場合、依頼人が支払うことになります。 およそ判決金額の6〜10%を考えておきましょう。 B 諸雑(経)費 弁護士の活動に関する経費です。交通費・通信費などで、原則として事務経費は入りません。 遠方の弁護士に依頼する場合、日当・宿泊費なども経費の対象になります。諸経費は実費精算が 基本ですが、一ヶ月数千円程度の定額を求められることもあります。 ハ、目的の共有化と弁護外の雇用 依頼人が問題解決のために弁護士を雇う場合は、「委任契約(書)」を結びます。この契約時には、 訴訟の目的・原告の主張・裁判の進め方についての要望、和解や調停などへの対応などについて、 依頼者と弁護士の認識が一致していなければなりません。 また、直接的な訴訟目的外の仕事(警察や検察庁への同行など)を依頼する場合も、報酬などにつ いて取り決めるなど、議事の記録メモの交換などをしておきましょう。 ニ、代理人の届け出 委任契約した弁護士は、次いで「訴訟代理人選任届(依頼者の捺印が必要)」を裁判所に、訴状の 提出時に合わせて提出します。 (3)訴訟を考えたら イ、心構え 現実的に考えれば、裁判とは損得勘定で行うものです。勝訴の見込みがまったく立たなければ、裁 判は起こすべきではありません。また勝ったにせよ、費用や時間に見合う成果が得られなければ、 裁判をする意味はありません。 ロ、事実関係を整理と証拠の確保 裁判に勝つには、裁判官を納得させるだけの合理的な説得が出来るかどうかによります。合理的な 説得とは、争いの元となる事故の事実関係を整理して、正当な権利が存在するかを確認が出来るこ とです。そして、これを支えるだけの有効な証拠を確保しなければなりません。 ハ、相手が何を争うか 裁判に至るまでには、様々なプロセスがあるはずです。なぜ正常な個人間交渉で問題解決が図れな かったかを考えてみましょう。そこに相手の言い分が発見できます。 この言い分を、予め予想して、かつ反論できるだけの準備をしておく必要があります。 (4)訴訟人になる イ、原告と被告 個人対個人の争いを、裁判所など公的な場所に持ち込む人を「訴訟人」と呼びます。 こちらから訴えを起こした場合は、訴えた側が「原告」(申立人)となり、訴えられた側を「被告」 (相手方)と呼びます。 交通事故では、逆に相手側から先に訴えを起こされることもあります。 この場合は、相手側が「原告」、こちら側を「被告」と呼びますので、必ずしも被害者が原告で、 加害者が被告になるとは限りません。 ロ、当事者 裁判所側からみて、原告・被告を「当事者」と呼びます。刑事裁判にはない呼び方で、原告・被告 とも対等な立場であることを表しています。 (5)提訴の準備 イ、 訴状の作成 @ 訴状とは 世の中に様々な争いがあったにせよ、誰かが裁判所に訴えない限り、解決のために裁判所は何も してくれません。その初めの訴えが「訴状」です。 A 訴状の重要性 被告を追いつめるには、被告側の不当行為・不法行為を法的に位置づけ(立証)るものです。 訴状は、裁判の原点です。加害者の非を挙げ、それにたいする損害を金員(お金)に換えて請求 するため、刑法・道路交通法違反の具体的証明、原告側の被害の正確な算出が不可欠です。 書式は簡潔で、読みやすいものを心がけましょう。 B 訴状に盛り込む内容 訴状には、最低限以下の内容が含まれていなければなりません。 ・当事者 原告と被告の住所・氏名 ・請求の主旨 損害賠償の請求金額 ・請求の原因 加害者の不当行為、もしくは証拠と立証の方法 C 説得力のある訴状 訴状に必要な事項が書き込まれたとしても、満足してはいけません。訴状には、加えて、裁判官 の心を動かす説得(文章)力が要求されます。 弁護士との打ち合わせを密にして、精緻で説得力のあるものに仕上げましょう。 (5)裁判費用 裁判には思わぬ費用と時間がかかります。ただし勝訴すれば、多くの裁判費用は、被告にもたせる 判決が期待できます。裁判費用には以下のような項目があります。 詳しくは、裁判所の「訴訟相談窓口」で確認してください。 イ、収入印紙 裁判は個人間の争いに、国の人と設備と知識を使うことです。収入印紙代はその対価と見なしても よい、一種の特別税です。3000万円の請求について、およそ13万円とみてください。 また高等裁判所に控訴した場合は、さらに18万円の印紙代がかかります。 ロ、予納郵券 訴状や準備書面など、裁判中に被告側に送る郵便代金です。 ハ、証人・鑑定費用 当事者以外の証人を裁判所に呼ぶ時に支払う謝金は、一人あたり5000円程度です。鑑定費用は、 原告が自分の意志で発注する自費鑑定費用のことです。内容によって大きな幅がありますが、証言 代も含めて100万円から300万円くらいでしょうか。 公的な鑑定には、一切の負担はありません。 ニ、弁護士費用(略) ホ、諸雑費 裁判に要する資料収集のための経費です。文書・文献購入や、謄写(コピー)などの事務経費で、 これらは弁護士が立て替えておき、裁判終了後の実費精算が建前ですが、裁判が長引いた時などは、 途中精算ということもあります。 2、 民事裁判の開始 (1)裁判の手続の開始 イ、裁判所の決定 民事裁判では、原則として当事者が裁判所を選ぶことができません。通常は被告の在住する地域に ある裁判所ということになります。これを「管轄裁判所」といいます。 ただし交通事故のように、事故が発生した場所を管轄する裁判所を選んだ方が良いと判断した場合 は、当事者の合意(契約)によって、その裁判所に訴えることが許されています。 ロ、訴状の提出 「訴状」は3部(裁判所・被告・原告分)作成します。 訴状は、通常各地の地方裁判所に、平日の時間内に持ち込みます。 裁判所の指示に従って所定の印紙を購入して貼るなど、書類が整うと、提訴が受理されたことにな ります。 訴状が裁判所に提出(受理される)されることにより、当事者は「訴訟係属」(正式な係争状態に 入ったこと)という状態になります。 裁判所では「事件番号」という通し番号をふり、以降はこの訴訟は、この番号で呼ばれます。 ハ、被告への送達 訴状を受け付けた裁判所は、被告宛に訴状を郵送します。また第一回目の口頭弁論の期日を通知し ます。被告は、この段階で初めて自分が訴えられたことを知ることになります。 ニ、答弁書 訴状が被告に手渡され(送達)され、被告に対しては、答弁書(訴状にたいする被告側の反論・意 見など)の提出期限と第1回目の裁判(口頭弁論といいます)の期日が通知されます。 第1回目の口頭弁論期日は裁判所の都合で指定され、日程の調整は原則としてできません ホ、加害者側の代理人 訴状を受け取った加害者は、加入している任意保険の損害保険会社に相談します。 損害保険会社は、その内容に従って、雇用している弁護士を「訴訟代理人」として選任します。 すなわち加害者側の弁護士は、損保会社の都合で選ばれていることを知っておきましょう。 (2)審理制の決定 イ、裁判官は、単独か複数か 地裁では、通常の場合裁判官は一人(単独体)で裁判が行われます。しかし、事件が大きい場合や、 事故の内容が複雑な場合、または社会の注目度の高い事件では3人の裁判官(合議体)のよって裁 判が進められます。この判断は裁判所が行うもので、当事者(原告・被告)が希望することは出来 ません。 ロ、裁判所側の陣容 単独体の裁判では、裁判官の他に、一名ずつの書記官と速記官がつきます。その他に、司法修習生 などが、裁判官の脇で裁判を見学することもあります。 ハ、合議体の役割 3人の真ん中に座る人が裁判長です。裁判長から見て右側の判事が「右陪席判事」で、年齢的にも 裁判長に近い世代のベテランが当たります。また左に座る判事を「左陪席判事」と呼びます。 左陪席は、年齢的にも2〜30代の若手判事です。ただし、この左陪席判事が、裁判の実質的な担 当者です。判決素案の作成を行うほか、和解交渉では行司役にもなります。 ニ、裁判官の自由主義 勝敗の決めては証拠である、ことは間違いありません。言い方を換えれば、明らかな証拠があれば、 裁判なんか不要になってしまいます。 つまり大多数の裁判とは、そのくらいのレベルというか、完璧な証拠を持たないまま戦われている のが実状です。 裁判官は、すべての判断を証拠だけに委ねているわけではありません。 当事者の態度や言動なども含めて、その心証を読みとろうとします。 最終的には証拠に加えて、こうした「心証」などを元に判断を下すことになります。これを裁判官 の「自由主義」といいます。 (3)裁判所はどこに イ、裁判所の役割分担 交通事故をめぐる損害賠償裁判は地方裁判所、または地裁の支所の民事部で行われます。 地裁は、各県庁所在地にあり、また大きな都市には地裁の支所があります。 ロ、扱い窓口 裁判は大きく分ければ「刑事裁判」と「民事裁判」となり、それぞれ担当する裁判官が異なりま す。そのため、扱いは各地裁の民事部ということになります。普通は法廷(裁判が開かれる部屋) も刑事と民事が分けられています。 ハ、法廷 どの法廷で裁判が行われるかは、裁判所の入り口にある受付で調べることになります。 受付では、その日に行われる全ての公判を、法廷別の一覧表にしています。 裁判官が変わらない限り、以降の法廷も変わることがありません。 一覧表では、同じ裁判官が同一時間に何件もの裁判を入れている場合があります。こうした時は、 受付順に審理が開始されます。 ニ、入廷確認 決められた時間通りに、裁判当事者が法廷に入ったことを証明するため、法廷に置かれた「確認表」 に記名します。 これは代理人(弁護士)も含めて、誰か一名が記入すれば事足りますが、自分の参画意識を高める ためにも、ぜひ記名しましょう。 ホ、原告席 原告席は裁判官に向かって左側です。普通、3脚ほどの椅子が用意されています。 一番裁判官寄りの席には弁護士が座ります。証人尋問のある時などを除き、証遺族が原告席に座る 必要はありません。当然、座っても構いませんので、出来れば座ることをお薦めします。 ヘ、被告席 被告席は裁判官に向かって右側です。そこには加害者側の代理人が座ります。やはり証人尋問のあ る時などを除き、被告席に加害者が座ることはまずありません。その場合も、被告人席に座るので はなく、傍聴席から直接証人台に上ることが多いと思っていてください。 ト、傍聴人 傍聴席は、椅子の数だけ傍聴人の入室が許されます。人数が多い場合は入場制限があります。 普通は先着順または、抽選で決められます。 最近は、遺族など被害者側の席数が、裁判所で予め確保されることもあります。傍聴者が多いと予 想される場合は、弁護士を通じて、そうした措置を裁判所に求めます。 チ、傍聴席 傍聴者は原告・被告の違いにかかわらず、何処にでも座ることができます。(大きな事件の場合は、 記者席として、報道機関向けに席が予め確保されている場合もあります。) 一般的には、原告席の後ろ(左側)に原告側の傍聴者が座り、被告席の後ろ側に被告側の傍聴者が 座ります。 リ、裁判官の入廷 開廷の時間が来ると、書記官が裁判官の前の席に着席します。裁判官は法服という黒い上っ張りを 着て、裁判官席の後ろ、または脇ののドアから入廷します。 法廷内にいる全員は、裁判官を起立して迎え、指定位置に達した時に黙礼します。 裁判官が着席後、各自着席し、いよいよ裁判の始まりです。 ヌ、法廷でのルール 法廷内では、私語・発言・写真撮影・録音・飲食喫煙など、裁判に影響のありそうな行為は禁止さ れています。また、常識を越えた服装や化粧なども規制の対象となります 「遺影」の持ち込みは、裁判官によっては許可になる場合もあります。弁護士を通じて申し込みま す。 (4)裁判の期間 イ、地裁で2年 裁判は地裁の抱える仕事量にもよりますが、およそ一月に一度のペースで開催されます。 夏の2ヶ月間、年末年始や、人事異動の季節の年度末には、裁判はほとんど開かれませんので、年 に8〜9回というのが標準のペースです。 そんなペースで行くと、普通、一審の判決まで2年から2.5年くらいかかると思っていた方がい いでしょう。 ロ、高裁で1.5年 それにたいして高裁では、事実認定についてはほとんど行いませんんので、裁判期間は一般的に短 く、およそ1年から1.5年かかります。 (5)裁判日程の決め方 裁判は口頭弁論が終わるたびに、次回の開催日を決定します。通常は、裁判官から日程案が出され ます。その案に依存がなければ良いのですが、どちらかの代理人の都合が悪い時は、再び裁判官か ら案が出されます。 双方の弁護士が多忙な場合は、これによってますます間隔が開いてしまうことになります。 通常は裁判官の都合で曜日は決まっています。すなわちこの週がだめなら、翌週ということになる からです。 (6)訴訟の取り下げ(略) 3、交通事故裁判の流れ (1)裁判の流れ図(フローチャート)
| 民事裁判の流れ |
(原告側) | 事故発生 | (被告側) |
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弁護士委任 | 訴状の作成 | ||||
訴訟の提起 |
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訴状の送達 答弁書の提出 |
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(裁判所) | |||||
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準備書面 陳述書 意見書 上申書 | 口頭弁論 |
訴状の陳述 ・ 反論 争点の整理 |
準備書面 陳述書 |
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自費鑑定 (公的)鑑定 | 証拠調べ | 現場検証 |
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原告証人尋問 | 被告人証人尋問 |
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最終準備書面 最終陳述書 | 弁論終結 |
最終準備書面 最終陳述書 |
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判決 | |||||
確定 | 控訴 | ||||
(2)事前準備 イ、不法行為(民法709条)の立証責任 裁判は、最初に原告側から加害者の違法性を立証し、それに基づいて原告側に損害を賠償するよう、 求めます。 ・「故意・過失」 故意か過失かの判断 ・「法的利益の侵害」 原告側に請求権が発生する法的根拠 ・「損害の発生」 損害額の算出根拠 以上3点は、基本的に賠償金を請求する側(原告=一般には被害者)に立証責任があります。 原告は、事故における被告の不当性を主張するため、それを根拠づける証拠を積極的に出す必要が あります。 また損害に関して、人損部分を一般的標準より多く(高く)主張するのであれば、それを根拠づけ る証拠(算出根拠)を積極的に出す必要があります。 ロ、答弁書の読み方 訴状では、損害賠償の請求と、損害賠償の原因となる、加害者の不当な運転行為を指摘することに なります。 それにたいして被告側は、答弁書において、請求にたいする是非と、この行為についての是非を回 答(答弁)してきます。 ロー1、請求の趣旨にたいする是非 答弁書において、被告が請求の是非を認めれば、その段階で裁判は実質的に終了します。 一般的には、その是非を認めないため、裁判所には「原告の請求を棄却するよう求める」という答 弁を行います。 ロー2、請求の原因にたいする是非 原告に損害賠償の権利が生じる事実関係(加害者の道路交通法などに抵触する不当運転行為)につ いて、回答(答弁)の方法は以下の5種類に分けることができます。 これにより、被告の主張が見えてくることになり、以降の裁判の論点が見えてきます。 @ (事実関係)は認める → 証拠は不要 A (事実関係は)は否認する → 証明が必要 B (事実関係)は知らない(不知) → 証明が必要 C (原告の権利について)は争う → 法律上の主張への異議 D (沈黙で答える) → 判断は裁判官に委ねる ハ、証言と証人 証拠は、具体的・科学的なものが求められます。証言(言葉の証拠)・証人は、もともと証拠の中 でも重要度は高いのですが、こと交通事故の場合は、決定的な決め手になることが多いのです。 裁判官にたいする説得力があるのは、第3者による新たな事故目撃証言です。 ただし事故証言は警察でも取っているはずですから、それ以外ということになります。 遺族の中には、様々な形で、新証人(事故目撃者)探しをしています。 ニ、証拠 証拠には、証言録・地図・写真などの文書さらには録音テープやビデオテープなどの電子メディア、 また原告が作成した意見書(事故に関して原告が入手した情報)なども証拠として見なされます。 その形は一切問いません。 ただし、裁判が長期にわたり、裁判官も移動することを考えると、音声や映像などは一部を文書化 して、本証拠に併せて提出しておいた方がベターです。 いつでも取り出して見られるという、文書のメリットを生かすためです。 なおデジタルカメラのデータは、改竄がしやすいこともあって、証拠能力は低いと見なされますの で、アナログ写真にしましょう。 ホ、争点 裁判は、損害賠償をめぐる双方の異なる主張に決着をつけることです。 多くの主張のなかには、相手側も「もっともだ」と認める事柄もあります。また過去に主張したこ とを、再度持ち出してくることもあります。 裁判官は、それらを整理して、双方の意見の不一致の部分を浮き彫りにさせようとします。 これを「争点の整理」と呼びます。 (3)加害者側の逆襲 イ、過失割合 請求を減額する側(一般的には被告=加害者)には、その主旨について、主張立証責任があります。 原告の訴状に書かれている請求金額に、被告側が全額の支払いに応じれば、裁判は不要(結審)に なります。 普通はその減額を求めてくるわけですが、その主な理由が「過失割合」です。被告側の一定の過失 は認めながら、原告側にも事故の一部の責任を申し立て、その割合に従って減額を求めてきます。 その時は、被告側にその過失割合などを証明する義務が生じます。 ロ、債務不存在確認の反訴 被告側が、事故の責任が全面的に原告側にあると考えた場合、請求された損害賠償金そのものの支 払い義務が無いと考えます。そのため「そんな請求をされるいわれがない」ことを裁判所が確認す るよう、「債務不存在確認」の訴え(反訴)を逆に起こされることになります。 いわゆる訴訟合戦と呼ばれるもので、双方の主張が真っ向からぶつかる、激しい裁判になります。 被告の反訴にたいして、基本的に原告は、事故の関する事実関係だけを主張しておけば充分です。 すなわち、白黒は裁判官につけてもらおう、という考え方です。 4、裁判の進行 (1)口頭弁論の開始 イ、口頭弁論 法廷で、原告と被告の双方が、自分の主張を繰り広げることを「口頭弁論」といいます。 弁論とは、文字通り言葉の応酬を指しますが、テレビのドラマのように、丁々発止、口頭で言い争 うことは、ほとんどありません。 ロ、準備書面 口頭弁論の代用をするのが、「準備書面」といわれる代用文書です。現実的には、この準備書面の 交換をもって、口頭弁論がなされたものとして、裁判は進行していきます。 すなわち、「主張」にたいして「反論」、また「反論にたいする反論」という具合に、双方の主張 を繰り返し行い、争点を整理していきます。 新しい準備書面などが出た場合は、裁判官は「(これをもって)陳述ということでよろしいですね」 と、相手側に確認します。 ハ、関係書類の提出 準備書面も含めて、裁判開始後に提出される書類は、意見書・陳述書・上申書・鑑定書など、さま ざまな書類が双方から提出されます。 これらの書類には、原告側の書類には「甲1号証」から「甲2号証」と時系列に番号がふられます。 一方被告側の書類には、「乙1号証」「乙2号証」とつけられます。 ニ、陳述書 裁判における争点以外のこと(周辺事情)や証拠になり得ない推論、また裁判(官)への要望など を書いた文章を陳述書といいます。 陳述書には、加害者の非道ぶりを鳴らしたり、故人の死を悼み、遺族としてのダメージを訴える、 という個人的な感情や意見が陳べられます。 裁判の行方には直接関係ありませんが、遺族が唯一、心の中を見せるチャンスでもあり、力を入れ たいところです。 陳述書・意見書、および上申書は、必ず提出しなければならないものではありません。 ホ、意見書 裁判所に提出する書類では、準備書面、陳述書よりもやや軽い扱いの文書です。 事故の様態や、加害者の犯罪性への推測・推論や、遺族以外の関係者の意見など、比較的証拠能力 の薄い事項を書きます。 逆にいうと、思い切った推論を陳べることで、裁判官の目を開かせ、真実の発見につながるチャン スでもあります。 とは言え、あまり常識外れなことが多いと、他の書面の信憑性にも関わってきますので、弁護士の 意見を聞きながら作成しましょう。意見書には、遺族以外の知人・友人などの文章もあります。 ヘ、上申書 上申書とは、「裁判官へのお手紙」です。陳述書や意見書に比べて、やや重要性を欠く文書です。 上申書には、おもに裁判官への遺族の思いなどが語られることになります。裁判への影響力は少な いかも知れませんが、裁判官の心を揺さぶる内容があれば、判決にストレートに反映されます。 もう一つ、上申書を書くことでは、多くの遺族が抱え込んでいる悲しみを、生の声で吐き出すため、 裁判への参画意識の満足感が得られます。思いの丈をぶちまけるべきだと思います。 (2)弁論の中身 イ、裁判を難しく言うと 裁判(訴訟)とは、原告の被告にたいする権利(請求権)があるかどうかを判断する手続というこ とになります。 この場合、原告の権利は、必ず何らかの法律に基づいて発生します。交通事故では、不当ないし不 注意な加害者の運転によって、被害者側は予想外の損害を受けたのであるから、その損害を賠償す るよう請求出来る権利がある、ということになります。 従って原告側は、権利の発生を根拠づける事実として、加害者の運転行為について、その不当性を 立証しなければなりません。 ロ、被告が原告の権利を認めたら 被告が、訴状に書かれた原告の法的権利(この場合、権利の見返りとしてお金が支払われること) を全面的に認めることを、「要件事実」または「主要事実」といいます。 要件事実ということになると、裁判は事実上必要性がなくなるため、即座に結審して、判決になり ます。 こういうケースは大変稀なのですが、合理的な計算に拠った損害賠償金を支払うような判決内容 (全面勝訴)になります。 ハ、被告が原告の権利を認めないとき 現実は被告側から、原告にそのような権利発生させるような、運転に関する不当な事実はなかった、 と反論されるケースがほとんどです。となると、原告は主張の正しさを証明する義務が発生します。 警察で作った検分調書や、鑑定書などは有力な証拠となります。 原告が、被告の運転の不当性を言い立てた時、そんな事実はなかったと主張することが考えられま す。これは原告が主張する事実について、その真偽を争うということです。一般に、これを「否認」 といいます。 ニ、言い逃れ 抗弁 完全な否認ではなく、一部の主張を認めたうえで、言い訳をすることを「抗弁」といいます。 一般的には答弁書において、事実関係にたいする弱い反論の意味でなされます。 (3)争点の洗い出し イ、はじめは口げんか 口頭弁論とは、簡単にいえば口げんかです。ああ言えば、こう言う式に、主張と反論・反論と逆反 論が繰り返し行われます。 口げんかは、すべて準備書面をもって行います。このプロセスが一番の時間とエネルギーが必要に なります。 ロ、重複・感情的な事項を整理 裁判にはどうしても感情論が前に出て、おいおい同じことの繰り返しも多くなります。 裁判官はそうした重複事項を指摘して、無駄を省くよう指導します。裁判官のこうした指導を、 「訴訟指揮」といいます。 ハ、無証拠のものを整理 証拠のあるものと推測段階のものを整理し、事実関係を正確に表して、双方のもっとも大きな意見 の食い違い部分(争点)をあぶり出します。 この点についての判断を行うことを裁判官と当事者で確認する段階が、裁判の前半部分です。 (4)証拠調べ イ、証拠調べ 厳密には、争点の整理と明確な区分は出来ませんが、争点に関わる証拠について的を絞った進行が 図られます。裁判の山場に差し掛かった段階です。 証拠調べの最大のはものは鑑定と、遺族と加害者の証人尋問です。まれには現場検証が行われるこ ともあります。 ロ、鑑定 @ 公的(司法)鑑定 事実関係について当事者の主張がかけ離れている場合、第三者による科学的な論証が必要になり ます。これを鑑定といい、主に裁判所の命令で行われるものを指します。 当然、鑑定者探しや費用は、裁判所の負担になりますが、その報告書の証拠能力も高いものと考 えられます。 当事者が裁判の途中で、鑑定を求めたとき、裁判官がその是非を判断します。 A 自費鑑定 それにたいして、双方が私費でそれぞれの有利性を立証しようとして行う鑑定は、自費鑑定と呼 ばれます。当然鑑定者探しや費用の負担がかかります。 鑑定費用は、書類・現場調査と報告書の作成、および法廷での証人尋問など一式で、200万円 程度は覚悟しなければならないかも知れません。 鑑定費用は、たとえ勝訴しても、相手側に負担させることは無理なようです。 B 自認書 まれなケースではありますが、加害者が自らの不当運転行為を認め、文書で陳謝することがありま す。また焼香などに来た折り、会話の中で同様の話をすることがあります。 こうした加害者の言動を記録したり、メモ類に確認の署名をさせたものを「自認書」といいます。 刑事事件の供述書に匹敵する、重要な証拠となります。加害者との直接折衝がある場合は、常に記 録出来る体制で臨みましょう。 C 第三者意見書 被害者の日常行動は、とくに目撃者がいない場合など、事故当時の模様を再現するのに大切な情報 です。それが第三者によるものでしたら、客観的な証拠と見なされます。 「赤信号などで、横断したことなど見たことがない」など、事故に関わる情報を文書化したものが、 第三者「意見書」です。文書名は意見書とし、意見者の身分、および被害者との関係を明記します。 こうした意見書は積極的に集め、提出したいものです。 (5)証人尋問 イ、遺族尋問 @ 遺族尋問の必要性 証拠調べが進み、証拠としての双方の文書類類が出尽くしたという状態になると、最終的に争点 を判断するため、証人の尋問を行います。 証人尋問は、原告と被告がそれぞれ裁判所に申請して、裁判所が必要と認めた者について行われ るという形をとります どんなに心臓の強い人でも、衆人の見守る中、裁判官の前で証言することは勇気のいることです。 証人尋問は強制されるものではないのですが、被害者遺族の思いを公的な場所で陳べるのは、こ の場しかありません。 出来るだけ被害者に近い身内の者が、勇気を奮って立ってほしいものです。 A 遺族証人尋問の内容 尋問の中で欠かせないものは、被害者の性行(安全に関する意識)、当日の健康状態、被害者を 失った遺族の痛手などです。 その他、加害者側の誠実さに関してなど、思いの丈を陳べて良いと理解して結構です。 B 尋問 証人尋問は、初めに原告側の弁護士が立ち、遺族に尋問します。次いでそれにたいする反対尋問 を被告側の弁護士が行い、最後に裁判官が、補足的な尋問を行います。 時間は、およそ30〜45分程度でしょう。 関係する家族が多い場合など、複数の証人が尋問されることもあります。 C 尋問の準備 初めの尋問者は、自分の弁護士が行うわけですから、気分的にも楽に行けます。どういう質問を 用意して、それにどう答えるかなど、弁護士と入念な打ち合わせ(「証人テスト」という模擬練 習)を行う必要があります。 D 反対尋問への備え 加害者側の弁護士からの反対尋問は、争点の整理の場面に立ち帰り、質問される事項を予想して、 正確に答えなければなりません。 一般に、原告の記憶の曖昧な点などを突いてきますが、これは証人に動揺を与え、証言の信憑性 を崩そうとする手法です。 証言は言葉の証拠ということを思い出して、どう答えたら良いのか解らなくなったら、無理して 答えないで、「忘れた」ことにした方がベターです。 ロ、加害者尋問 @ 最初で最後のチャンス 多くの裁判では、加害者が出廷することはなく、この証人尋問が唯一のチャンスになります。 弁護士とも念を入れた打ち合わせが必要となります。 加害者尋問も、初めに被告側の弁護士が行い、次いで原告側の弁護士が尋問します。最後は裁判 官が補足質問します。 A 加害者の生の言葉を引き出す 事故の様態については、ほとんど警察官の誘導によって作られています。すなわち「ボー」と運 転していたからこそ事故を起こしたわけであり、当然加害者が正確な事故の模様を把握している はずはありません。 要は、事故の模様は覚えていないという証言が引き出せれば、8割方成功と考えても良いでしょ う。 B 加害者の胸に悲しみを刻み込む 人の命を奪ったことにたいして、どうのような対応をしたのか、慰謝の姿勢はどうやって示した のかなどを具体的に問い質したいところです。 この尋問を通じて加害者の心に、遺族の悲しみを移植し、生涯にわたる反省をさせたいものです。 5、和解 イ、和解の打診 裁判官は、裁判の成り行きを眺めながら、和解のチャンスを探っています。当事者が闘志むき出し で争っている場合などは、和解の見込みがないということで、和解提案が必ずあるものとは限りま せん。 ロ、和解のメリット 和解は、今の日本の裁判制度においては、早期決着のために基本的に望ましい制度かと思います。 その利点は以下のとおりです。 ・ 訴訟の早期解決(判決の場合、勝っても控訴される可能性がある) ・ 互譲精神が基調にあるから、双方ともそれなりに納得しやすい ・ 裏側での妥協、すなわち玉虫色の解決が図れる ハ、弁論途中の和解 和解のチャンスは大きく分けて2回あります。初めは弁論の途中で行われるもので、まだ証拠が十 分に出そろっていない段階ですから、当事者が口頭弁論で主張した内容から、紛争の早期解決のた めに、お互い譲り合うことができないかと聞いて来るものです。 双方が裁判の行く末に自信を持っていない場合など、渡りに船的に決着する場合もあります。 ニ、証拠調べ後の和解 証拠調べを終えた裁判官は、判決についておよその見通しをもっています。 この段階での和解は、負けそうな側に多少の色を付けるという案が出されます。敗訴が確実な状況 においては、それに従うのもひとつの方法かも知れません。 ホ、和解の判断は自分で決める 世の中には、「和解」という言葉を聞くだけで拒否反応が出る人もいます。 民事裁判が金額の争いだと考えれば、和解によって少しでも良い解決になるならば、ためらうこと はないでしょう。 一方和解は、裁判官の判断を仰がないという、精神的未消化感が残ります。 「負けても高裁があるさ」と思えば、気分も楽になります。 6、結審と判決 (1)最終準備書面 イ、最終準備書面 証人尋問が終了し、また裁判官から出された和解も出来ないとなった場合、いよいよ判決を迎える ことになります。 判決に先立ち、原告被告双方から、これまで提出した証拠や尋問の結果を分析検討した最終的な準 備書面を提出します。 これが最終準備書面と言われるもので、刑事事件における論告・弁論と同じようなものだと考えて ください。 ロ、準備書面に書きたいこと @ 被告側が立証しきれなかった事実関係 A 答弁書からの変転してきた事実の再列挙 B 裁判を闘ってきた感想 C 裁判官への謝意と、公正な判断の要望 (2)判決 イ、結審 最終準備書面の陳述が終わると、裁判官は「結審」を宣言します。これによって、以降はすべて裁 判官の胸の内、ということになります。 裁判官から、判決日が一方的に指定されます。 ロ、判決日の指定 これまでの弁論の日程調整と異なり、裁判官の都合で、一方的に判決日が指定されます。変更など の調整は出来ません。 なお判決公判には必ずしも出廷する必要性はありません。要は、判決文を入手するだけですから、 後刻弁護士に行ってもらうということも出来ます。 ハ、判決 判決は、裁判官が担当する事件をある程度まとめて行いますので、一日のわずかな時間の中に何件 もの判決が行われます。判決は、当事者ならびに代理人も着席の義務はありません。 時間が来ると、事務官の読み上げる事件番号に従って、裁判官が判決を読み上げて行きます。 民事裁判の場合、判決骨子が読み上げられることはなく、主旨だけが小さな声で読み上げられるだ けです。一件あたりの時間は、1分もかからないことが多々あります。 ニ、判決文の受領 判決後、弁護士に限って、判決文が手交されます。 通常は弁護士が持ち帰った判決を読んで、細かい内容を知ることになります。 ホ、控訴 この判決に双方が異存ない場合、控訴期限の切れる2週間後に、この判決は自動的に確定します。 またどちらか一方、または双方が判決にたいして不満をもった場合、判決文が手交されてから、2 週間以内に高等裁判所に控訴することが出来ます。 へ、強制執行(略) 7、高裁へ イ、裁判制度 日本の裁判制度は「三審制」と呼ばれています。すなわちその頂点には最高裁判所がある、と多く の人が考えています。 しかしその実態は違っています。最高裁は、判決が「憲法」の解釈に抵触していないか、著しく過 去の判例との間に乖離がないかを判断するところです。 言葉を変えれば、量刑にたいする不満は、その審理に値しないことになります。 よく最高裁のことを「千三つ」と呼びますが、まさにその通りの狭き関門です。前述の条件に当て はまらない案件は、すべて「上告棄却」という一文字で門前払いされてしまいます。 つまり、一般の民事裁判は高裁までの「二審制」と考えておきましょう。 ロ、高裁の役割 地裁とは、裁判官の裁量に任されて、かなりの自由度をもちながら判決を出すところだという認識 をもっても、あながち間違いとはいえません。 高裁はこうした判決を、法社会の規範に照らす所だといえます。法に定める量刑範囲内にあるか、 同様事件の判決と著しい隔絶がないか、さらに各裁判所ごとの個性が出過ぎていないか、などをみ るところです。 分かりやすく言えば、荒削りの塑像に研磨をかけたり、装飾したりするところです。 ハ、控訴すべきか 相手側から控訴されれば仕方がないことですが、こちらから控訴するかどうかは迷うところです。 新たに費用もかかりますし、また2年近い年月も大きな負担です。 端的にいえば、高裁に持ち込めばさらに状況が良くなるという感触、または裁判を通じて加害者を 「被告」の席に座らせておくという口実がない以上、控訴が得策とは考えられません。 最終的には、原告の判断に委ねざるを得ません。 ニ、対抗控訴 原告側が控訴すると、被告側も間違いなく控訴してきます。 この背景には、民事裁判における控訴とは「金員にたいする不満」と受け取られているからです。 すなわち、よほどのことがない限り、高裁では地裁の判決(金額)を下げることはないのです。 とはいえ現実には、高裁で金額も落ちたという原告も少なからずいることも事実です。 何故かといえば、被告側が対抗して控訴してきたことが、その理由です。 最近の裁判では、原告が控訴すれば、間違いなく対抗控訴され、事実関係が見直されたり、前述の 高裁良識という修正が行われると考えておきましょう。 (この章、終わり)