このページは交通事故損害賠償民事裁判を闘ってきた私の体験を元にした
民事裁判、かくあるべし論、すなわち完璧な持(自)論です。
ご利用に当たっては、そのことをご承知おきください。

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        私たちの生活で、これほど無縁の役所もありません。民事裁判を戦わざるを得なかった人は、しみじ
        みと述懐します。
        「もしも事故にでも遭わなかったら、一生裁判所の敷居をまたぐことはなかった」と。
        そしてもうひとつ学ぶことは、現実と、テレビや映画等虚像とのギャップです。
        裁判官も、弁護士も、私たちと何ら変わることがありません。テレビや映画の中に出てくるような、
        正義感・熱血漢など元々いないと思いましょう。
        裁判は、損害賠償金をめぐる、厳しい戦いの場です。裁判官は人間の善し悪しで判決を出すのではな
        く、論理的な主張をしたと思われる方に軍配を上げるのです。
        損害賠償裁判は、損害を受けた側が加害者側の罪や過失を立証しなければなりません。
        事故の恐怖と悲しみから立ち直れない中で、冷酷な法律と営利主義と戦う苦しさが待ち受けています。
        そして何にもまして、金銭という、得るものに「的違いな」違和感があります。しかし、裁判を戦う
        ことで、私本人は生き返ったのです。
        事故から間もない被害者や遺族に、私は心を鬼にして、裁判への道を推薦します。裁判以外に、今交
        通事故の被害者は救われないのです。


 
       1、刑事裁判民事裁判の違い

        交通事故は、人と車・車と車の間で発生したアクシデントです。
        例えば、車を使って故意に人を跳ねて怪我をさせれば、刑法の中でも最強の殺人や障害罪で処罰され
        ます。交通事故は不可抗力、すなわち過失という前提で裁かれるのです。
        交通事故を起こした加害者は、検察庁から裁判所に送(起訴)られ、裁判にかけられます。これが刑
        事裁判です。訴える人、すなわち原告は、検事となります。
        この場合、よく誤解を招きやすいのですが、検事は被害者の代理として原告席に座るのではなく、法
        律と、その背景である国家を代表していることです。
        有罪とされれば、加害者は懲役刑や罰金刑に処せられます。被害者には、加害者が罰せられたという
        心の充足がもたらされますが、他には何の救済もありません。
        加害者が納めた罰金も、国庫に入ってしまい、被害者には1円も渡りません。

        一方事故によって、双方に財産的な損害や、人命が損なわれたりします。
        その損害を、双方の過失に照らして補填しあおうとするのが、損害賠償制度です。一般には、事故後
        双方またはその代理人が話し合い、お金の支払いと、示談書という和解文書を交わすことによって解
        ま決しす。しかし示談がうまく出来なかったとき裁判、すなわち訴訟に発展することになります。
        また被害者がお金以外の解決を求めたときにも裁判になります。すなわち刑事裁判と民事裁判の違い
        は、原告と被告がそれぞれに違うこと、そして裁判に求めるものが、「処罰」と「補償」という根本
        的な目的の違いがあります。


       2、裁判が解決策のすべてではない

        裁判とは、ひとつの問題をめぐって争う当事者の間に、裁判官が割って入り、強制的に解決策を押し
        つける、すなわち法律の名の元に行われる仲裁です。
        交通事故の損害賠償で、結局裁判までに至るのは1%にも満ちません。すなわち多くの当事者は、直
        接交渉によって解決しているのです。これを「示談」と言います。
        示談は当然ながら、被害者と加害者同士で行うことが理想的です。しかし保険金の支払いが絡んだと
        きは、加害者と保険会社の間に、「示談代行制度」という付帯契約がなされています。
        保険金を支払う損害保険会社は、事故当事者だけの当事者交渉だと、加害者が安易に過剰の支払いを
        してしまうということを恐れ、専門家どおしによる客観的な交渉で解決しようとしているのです。
        これによって事実上、被害者と加害者の直接交渉はあり得ないことになります。この交渉が進捗しな
        い場合には、第3者による仲裁を求める道に進みます。
        この役割を担うのが、各地に置かれた「日弁連交通事故相談センター」や「交通事故紛争処理センタ
        ー」です。ここでは弁護士などが仲立ちして、双方の主張を調整してくれます。
        しかし、所詮はボランティア活動です。複雑な事故の様態などの調整には、いわゆる「エイッヤ」と
        いう乱暴な調整になりかねません。
        しかし長引いても精々3ヶ月程度で解決すること、費用がかからないことなどで大きなメリットがあ
        ります。これでも解決しない場合は、各地の家庭裁判所に「調停」を申し立てることになります。
        これらのプロセスは、必ずしも忠実になぞる必要はなく、中には加害者と一遍の交渉もなく裁判に突
        入するケースもあります。


       3、裁判の功罪

        民事裁判は、当事者間の話し合いがこじれた時に起こされます。しかし、必ずしもそれだけで裁判に
        なるとは限りません。
        常識的な解決策では納得できない場合や、金銭の他に何かを求めたケースなどは、最初から裁判の道
        を歩むこともあります。
        ところで裁判は、いったん乗ったら下りることができない舟に乗るようなものです。
        イヤになったとか疲れたとか言って逃げることは出来ません。逃げること、すなわち裁判所に出向か
        なかったり、必要な主張をしないということは、加害者側の主張が正しいと、無条件に認定されてし
        まうことに他なりません。
        結局裁判には負けてしまいます。最後まで戦い抜くという、信念と体力、そして何より家族の強い団
        結が不可欠です。
        裁判になったからといって、必ずしも勝てるとは限りません。さらに裁判には、基本料とも言うべき
        手数料(印紙代)の他、弁護士費用や、場合によっては鑑定費用など大きな出費が予想されます。
        そして、地裁でおよそ2年、高裁で1年など、下手をすると最低でも3年くらいの時間がかかること
        も忘れてはなりません。
        裁判は裁判官と代理人(弁護士)の都合によって日程が決まっていきます。
        さほどの頻度ではないのですが、裁判にはかなりの時間が取られることを覚悟しなければなりません。
        もう一点、裁判の公開制の問題があります。裁判は、原則として公開されます。当然多くの人の目に
        触れる可能性がありますし、マスコミに嗅ぎつけられてしまうこともあります。
        すなわち、プライバシーが侵犯されるということです。特に地方都市など、狭い地域社会では、他人
        の目という大きな障害を覚悟しなくてはなりません。
        裁判の最大のメリットは、実はこの公開制(性)にあるのです。
        すべての審理が公の場で行われるため、良くも悪くも公正さが保たれることです。
        交通事故の損害賠償は、事故の様態がどうであったかが、最大の争点になります。交通事故の遺族の
        ほとんどが、事故の真相を知りたいと願っています。ところが普通の示談交渉では、その部分が曖昧
        にされ、ただ金銭の多寡だけが問題にされます。
        自分の家族がどのような目に遭ったのかを知るには、裁判しか無いと考えてください。

          裁判をすることのメリット

            @ 事故の真相を知ることが出来る
            A 言いたいことが言える
            B 加害者に、罪の意識を植え付けることができる
            C 社会への警鐘効果
            D 損害賠償金が高くなる

        などがあります。ちなみに私は「被害者を少なくとも3年間、被告呼ばわりできる」というメリット
        を最重要視しました。


     
       4、裁判は、加害者側から仕掛けられることもある

        最近の実例をみると、加害者側の保険会社は通り一遍の挨拶程度には来るものの、本格交渉には入り
        たがらないケースが非常に多くなっています。
        これを分析してみると、被害者が子供であったり、事故の様態が複雑で、簡単に過失割合を決められ
        ないようなケースに多いようです。
        つまり保険会社の事故調査係は、被害者が強硬な主張をしたり、通常の交渉では絶対に解決しないと
        思われる事例では、積極的に示談を言い出さない傾向があります。彼らにしてみれば、この件はいず
        れ裁判など公の場に持ち込まれるだろうということで、あえて苦労の多い交渉をしたがらないのでは
        ないかと思います。
        要は、「被害者の方で裁判でも何でも起こしてくれ」という開き直りです。事故後2ヶ月くらいで、
        加害者側から交渉を持ちかけられなかったら、多分この敬遠されたケースです。
        こうなったらあえて被害者側から交渉を持ち出すなんてことは止めましょう。なめられて、足下を見
        られるだけのことです。
        交渉も巧くいきませんし、精神的にも充実感のない交渉になるだけです。

       5、裁判の目的をはっきりさせる

        ○ 目的とは

         裁判とは、分かりやすい例を牽けば、決まった相手に喧嘩を売るようなものです。
         とすれば、誰を相手に喧嘩をするのか、何を要求するのかをはっきりさせなければなりません。ま
         た喧嘩ですから、相手も本気で反撃してきます。
         やってみるまで勝てるかどうかは分かりません。当然、負けたときの覚悟も出来ていなくてはなり
         ません。

        ○ 民事裁判は「お金の要求」

         民事裁判は、相手にお金を要求することである、と言っても過言ではありません。交通事故で、大
         切な家族を奪われたとします。
         裁判を起こす人(原告)としては、お金なんかいらないから、死んだ人を返して欲しいと思ってい
         ることでしょう。
         しかし、現実的に出来ない要求で裁判を起こすことはできません。結局、亡くなった人の価値や家
         族の悲しみを、お金に換えることで償わせるということになります。
         これを損害賠償と言います。

        ○ お金以外の要求

         民事裁判では、お金だけを要求するとは限りません。中にはまったくお金を求めないケースもあり
         ます。
         代表的なものは「謝れ」という要求です。謝り方も色々あって、面と向かって謝れというのから、
         謝罪の広告を求めたり、詫び状を書かせるなど様々です。
         ただし、面と向かって謝れというのは自主的なもの以外、多分認められないでしょう。

        ○ 付帯請求

         損害賠償請求に併せて、他の要求を裁判に盛り込むこともあります。
         例えば、事故の原因となった道路の改善を求めたり、関係する法律を改めることを要求することも
         あります。
         また車のメーカーに改善を要求したり、医療体制の整備を求めたりするなどなどです。
         交通事故の場合、訴える人(被告)は原則として加害者ですから、付帯要求は、ほとんどそれ以外
         の関係者に向けられます。
         国や自治体などを相手にしたものは、国家賠償責任保障法(国賠法)と言います。
         いくつの要求を求めても良いのですが、法律の範囲を逸脱したもの、例えば加害者を死刑にしろと
         か、1兆円支払えとかいう要求は通りません。

        ○ 自分が受け取らないお金

         「お金が欲しくて裁判している訳じゃない」という人も沢山います。
         損害賠償で得たお金を、何らかの目的で、然るべきところに供託する場合は認められます。
         しかし損害賠償金を要求しながら、その支払先を例えば寄付先の遺児育英会などに指定したい、な
         どの条件は認められません。

        ○ 裁判の目的に制約は無い

         裁判の常識とか、過去の判例などにより、裁判の目的にも自ずと限界があります。
         しかし原則は、何を求めても良いのです。被害者の命が奪われたようなケースでは、遺族としても
         賠償金だけの定型的な裁判は望まないでしょう。
         家族の死を無駄にしないためにも、画期的な判決を求めたいということもあります。
         ただし厖大な要求や、現実的でない要求は、裁判を弄んでいるように思われますし、真面目な弁護
         士であればあるほど、代理人を引き受けてくれないでしょう。

        ○ 中途半端なお金は請求しない

         日本の司法制度は、多くの判例の積み重ねでもあります。被害者が損害賠償裁判を起こすときも、
         当然その判例に影響されます。
         よく「人の命は地球よりも重い」と言います。しかし現実は宝くじの2等賞金よりも劣るのです。
         判例を大きく上回らない範囲で請求することが、経済効率からみて正解でしょう。
         ただし、「金額ではない」と、あくまで思う方は、1億とか2億とか、法外な賠償金をぶっつける
         作戦もあります。ただし「印紙代」すなわち裁判費用も、その分大きな負担になります。
         しかし、相手を驚かし、命を数日でも縮める効果くらいはあるでしょう。


       6、弁護士探し

        日本の弁護士は、欧米に比べて極端に少ないのです。しかもその弁護士は、東京・大阪などの大都市
        に集中しています。
        それに対し、地方では少ない弁護士があらゆる事件を扱うため、様々なところでバッティングします。
        できれば、損害保険会社の代理人などの経験を持たない人を探すことが理想的です。
        弁護士はつい最近まで「広告宣伝」が許されていませんでした。現状でも完全解禁とはいえないため、
        被害者など、コネクションを持たない人には、未だに弁護士探しには苦労します。
        さらには「弁護士法」という法律があって、第3者から紹介されることも原則的にはないことになり
        ます。
        裁判においては、弁護士の質が絶対にものを言います。やはり、あらゆる情報網を駆使して探し回ら
        なくてはなりません。
        地裁のある都市には、弁護士会の法律相談センターがあります。ここでは当番弁護士が、依頼者の要
        望を聞いた上で、一応適任と思われる弁護士を紹介してくれます。
        私は、ここで紹介された弁護士と話し合って、結局3人目の弁護士にお願いしました。


       7、理想的な弁護士とは

        理想的な弁護士とは、交通事故の専門家で、加害者側の弁護は行わず、正義感と体力がある若い弁護
        士です。でも、こんな人は滅多にお目にかかることはできません。
        今日本で「交通事故の専門弁護士」と自称している人は、ほとんど損保会社のお抱え弁護士のような、
        加害者専門の弁護士です。加害者の弁護はしない、という弁護士もまれでしょう。
        いわゆる名士といわれるようなベテラン弁護士は、損害賠償金を取ることについては凄腕を発揮して
        くれます。
        しかし被害者の心情などは、なかなか汲んでくれません。いわゆる定型処理されることになります。
        交通事故にさほど詳しくはなくても、正義感と真面目さをもった弁護士を選びましょう。
        私たちが考えるモアベターな弁護士は、依頼者の気持ちを良く聞いてくれるとともに、事故の個性を
        大切にして、細かい配慮をしてくれる人です。


       8、弁護士費用

        弁護士を雇うということは、その段階で費用が発生します。ことはお金の問題ですから、あやふやに
        進めることなく、最初からきちんと取り決めておくことが大切です。
        普通の場合、弁護士と契約しようとすると、まず「委任状」を書かされます。「この事件について、
        ○○弁護士に弁護を委任します」というものです。
        この書類を交わしたら「着手金」が発生します。着手金は各弁護士会などに基準がありますが、これ
        は交渉次第いかようにもなる性格のものです。
        この他に経費がありますが、これは実費精算が建前です。
        肝心の弁護士報酬は、基本的には「成功報酬」的性格のものです。最大賠償金額の1割くらいになる
        場合もありますが、標準的には5%くらいです。このあたりも間違いのないように、事前に話し合っ
        ておきましょう。


       9、裁判をおこすタイミング

        損害賠償請求には、3年という時効があります。事故後の辛さからは、2年や3年では抜け出せるも
        のではありません。
        こんな中で守銭奴のような「保険会社」と渡り合うことは、大変な心労を伴います。
        とくに経済的な面で影響が少ない子供が被害者になったりするケースでは、しばしばこの時効によっ
        て「請求権」を喪失してしまうこともあります。
        時効は相手先にたいして正式に金額を請求した時点で停止します。このことをよく考えて、余裕をも
        って当たることが大切です。普通は2年以内に損害賠償請求裁判をおこすことがほとんどです。


      10、訴状の書き方

        訴状は、なぜ裁判を起こすのかという理由と、請求金額・支払方法などを明記します。
        すなわち宣戦布告状のようなものですが、その主旨は裁判官に、今回訴訟の目的を明確にすることに
        あります。
        そのためには、あくまでも科学的に明快な論述がなされなければなりません。ただし喧嘩状の意味を
        考えると、「勢い」がない訴状は、及び腰と受け取られる可能性があります。
        訴状は決まった書き方があり、素人では書けませんので、どうしても弁護士などの専門家の手を借り
        ることになります。
        しかし当事者(原告)が一番事件に対して詳しく、かつ「勢い」があるわけですから、何から何まで
        弁護士に任せるのではなく、むしろ下書きくらいは自分で書くくらいの気持ちが必要です。
        また弁護士が書いてきたものはあくまで「案」ですから、自分が納得するまで何度でも書き直しても
        らいましょう。


      11、裁判前にしておくこと

       イ、事前の準備

        裁判は、損害保険会社とのお金をめぐっての争いです。たとえこちらの気持ちが別のところにあろう
        と、保険会社はすべて金額闘争としか見ていません。
        民事裁判は被害を受けた側が、その被害を立証する必要があります。立証とは、科学的で論理的であ
        ることです。
        その代表格が「物的証拠証人」ということになります。
        科学的鑑定なども事前にやっておいた方がベターですが、鑑定は基本的には裁判所命令を受けての方
        が、信憑性の高いものになることは間違いありません。
        まずはこうした準備をしなければなりません。その上で、どういう戦法で戦っていくか、弁護士とも
        よく打ち合わせて、ストーリーを描いておく必要性があります。
        とくに、俗に言う「落としどころ」という決着の形については、弁護士と心を合わせておかないと、
        とんでもないことになります。

       ロ、加害者にたいして

        加害者に比較的誠意があり、焼香などに来ている場合は、本人にたいして今から裁判に入ることを伝
        えておきましょう。
        その中で、裁判には必ず傍聴すること、加害者尋問の際には正直に真実を陳べることを命じておきま
        しょう。
        焼香にも来ない加害者には、その旨を手紙などで知らせておくことしかできません。ただし、脅迫め
        いた言葉などは使わないようにすること、また裁判が始まってからの加害者への手紙は、裁判官の心
        情を害するので勧められません。

       ハ、家族の心構え

        裁判は、乗ったが最後降りることの許されない舟です。最後まで家族が心をひとつにして戦い抜くこ
        とが大切です。
        裁判ともなれば、相手側から思わぬ反撃を受けて苦しむこともあります。裁判に勝っても、こちらの
        身が潰れてしまっては何にもなりません。
        それには体力を維持することも大切です。健康を最優先で心がけましょう。

       ニ、支援者の確保

        裁判は孤独な戦いです。プライバシーなども暴かれますので相当辛い思いをしなければなりません。
        しかし、そうまでして裁判に踏み切った気持ちを理解してくれる人がいれば、心強く戦っていけます。
        理解者には、ある程度までの経過を話した上で、傍聴に来てもらいましょう。
        法廷で勇気づけられますし、裁判官にたいしても、この裁判を重要視させて、先を急いだり、判断を
        誤ったりさせない効果があるでしょう。


      12、法廷ですること

       イ、被害者の遺影の持ち込み

        被害者の遺影を持ち込むことなど、つい最近まで考えられないことでした。被害者の権利回復が進む
        中、まだまだ少ないのですが、遺影の持ち込みを許す裁判官も出始めています。
        弁護士を通じて、事前に申し込みましょう。

       ロ、陳述書は最低2回

        裁判は本来、原告と被告が法廷の場でもって丁々発止するのが建前です。しかし現実は「準備書面」
        という双方の主張を認めた書面の交換をもって、口頭弁論に代えています。
        裁判官と弁護士が、何やら専門用語を交わしているかと思うと、あっという間に閉廷してしまいます。
        裁判に参加するためには、最低2回は陳述書を提出しましょう。
        陳述書は遺族の心情などを綴って、法廷闘争を側面から支援します。最初に陳述書は、なぜこの裁判
        を起こしたか、被害者の人となり、加害者の誠意の無さなどを書きます。
        書式は「です」「ます」調が良いでしょう。第2回目は裁判の後半あたり、加害者尋問が終わったこ
        ろが理想的です。公判が始まってから以降の所感を書きます。
        加害者の論述や証言の、嘘や間違いなどはここで訂正しておきます。また、加害者にたいする怒りの
        気持ちが、その段階でも薄らいでいないことを陳べましょう。

       ハ、加害者尋問

        加害者にたいする尋問は普通に認められますが、裁判官の中には「不要である」として認めないケー
        スもあります。加害者尋問は、公式の場でその非を問いつめる最初にして最後のチャンスです。
        勇気と、冷静に対処できる自信があれば、遺族(原告)本人の尋問もできます。
        いずれにしても、弁護士と相談して、漏れのない尋問をしましょう。

       ニ、本人(原告)尋問

        交通事故の民事裁判では、申請さえすれば本人尋問は実現します。極端な言い方をすれば、本人尋問
        を受けるつもりがないならば、裁判は始めないことです。
        この機会に、加害者にたいして言いたいことを思いっきり言わなければ、何のために裁判をしている
        か分からなくなってしまいます。
        ここで陳べることは陳述書と重複することが多いかも知れませんが、裁判官に直接聞いてもらうとい
        う効果は小さくありません。
        裁判に直接影響するだけでなく、社会にたいする啓蒙になることも間違いありません。 


      13、和解について

        裁判が始まり、ある程度論点が出そろうと、裁判官から和解を持ちかけられることがあります。和解
        は双方の合意があれば、即刻解決という時間的メリットがあります。
        また判決を伴わない解決ですから、名を捨てて実をとる、すなわち金額での満足感を充足させる場合
        があります。
        和解をどう考えるかは、裁判を起こした人の権利です。納得がいかないようならば、断っても差し支
        えありません。ただし、裁判官のお手盛り的な成果は諦めなければなりません。


      14、判決控訴

        判決はたいてい、裁判官が主文だけを読み上げるだけで終わります。判決文は書記官室で手渡されま
        す。
        時間をかけて内容をチェックしましょう。現実、多くの裁判で、裁判官のケアレスミスがあります。
        判決に不満があったり、間違いがあったりしても、そのまま受け取れば確定してしまいます。
        家族と相談して納得がいかない場合には、高等裁判所にたいして控訴することになります。
        期限は2週間以内です。
        原告が控訴すれば、被告側もまず対抗して控訴してきます。逆の場合もそうなるでしょう。
        これは、対抗控訴しないと、金額面で必ず負けることが約束されてしまうからです。


     15、損害賠償金の支払い

        損害賠償金は損害保険会社から、原告側の弁護士の口座に振り込まれてきます。
        大概の場合、判決文に裁判費用や弁護士料もうたわれていますので、それらを精算して、今度は原告
        の口座に振り込んでもらいます。
        これで民事裁判は終了ですが、この時の気持ちに満足できるかどうかは、あくまでも気持ちのもちよ
        うにあります。
        勝っても負けても、遺族にとって気が晴れることはありません。しかし、裁判を通じて語ってきたこ
        とは、必ず亡き人の慰めになっているばずです。


                                              (この章、終わり)

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