0288   2004.7.29
▼セミのぬけがら。

▼セミのぬけがらを喰う話は、たしか團伊玖磨がやっていた。天ぷらにするとぱりぱりしてうまい、とかなんとか。まあ、本体を喰うのじゃなければ、気持ち悪くはないけれど、喰うだけ集めるのは大変だろ。

▼〈それ〉

力つき、腹を向け横たわる蝉。死んでいるのかどうかはわからない。

すぐよこに雀が止まり、それをつつきはじめる。蝉は生きていることを主張するように翅を動かし、脚をばたつかせる。その〈抵抗〉は意味をなさないばかりか、むしろ雀の歓心を引いているようにさえみえた。

雀は蝉を咥え、首を振りまわす。回転しながら地面に叩きつけられた蝉は弾み、予期せぬ方向に弾き飛ばされた。蝉は、脚と翅を動かし続ける。雀には邪魔にもならないであろうそれを、あたかもそうすることが当たり前のように、蝉を弾き飛ばしながら、翅を一枚ずつちぎり、脚を一本ずつもいでいく。蝉にはもう自由になる部分はない。雀は蝉の白い内蔵をついばみはじめる。

おそらく内蔵が全部なくなっても蝉はしばらくの間生きているのだろう。空洞と化した腹を抱えて、自分に対する要求も、自分からの要求も消費しつくされた余生を生きる。

夏の木立の中、蝉の鳴き声が生命活動の終わったそれに降り注ぐ。