まさか車載工具だけでエンジンをばらそうとする奴はいないだろうが、まっとうな整備をしようと思うなら工具や工具箱は、バイク屋に払う工賃と思って買ってしまったほうが、結局は安上がりで、手間もかからない。
不出来な工具を使ってると部品の破損、怪我、時間の無駄、ストレスのもと・・・と良いことはなにもない。黙って買え!

言わずと知れたスパナである。正式にはコンビネーションレンチというらしい。下がリングスパナとオープンエンドのコンビ。上はいわゆるメガネである。リングが使えるところにオープンエンドを使ってはイケナイ。
ボルト=ナットで締結している部品も多いので、最低でも8mmから19mmくらいまでは2本づつ持っていたほうが良い。首のオフセットなどが極端なものはとりあえずいらない。いきなりSnap-onを買えとは言わんが、ホームセンターの安売りはやめた方がいいと思う。KTCやKOKENなんかは値段もお手ごろで物も良い。
ソケットヘッドである。メガネより作業スピードが速く便利。特ににHazetの六角はお薦めである。
ソケットは無くしやすいので必ずホルダーも一緒に買うこと。ソケットをバラで持っていると絶対無くす。エクステンションも1本は必要。ラチェットハンドルは1ノッチの角度が狭いものが便利。
お薦めは真中のKoken製Tハンドル。Tレンチを何本も持つのは邪魔くさいが、これ一本とソケットの組み合わせで、ほとんどOK.
右側のスライディングTハンドルより安いし使いやすい。
下手な精度のTレンチより、よっぽどカッチリしてるぞ。
Tレンチ。以前に乗ってたバイクでソケットの肉厚が邪魔な個所があったので、8mmだけ買った。Tレンチ(Tハンドル+ソケットも)はアッと言う間にネジを緩められて便利だが、締めつけトルクが掛かりすぎるので、締め過ぎに注意が必要。
これはスズキの特殊工具。ヘッドに六角のビットを差し込んで使う。γのシリンダー締結ボルトにはこれが一番!とORF代表に薦められたがホントにそのとおり。
もちろんトルクレンチ対応
ねじまわし。正式にはスクリュードライバーと言うらしい。といっても女を口説く時に呑ませてはイケナイ。
ねじ山の大きさにあわせて3本ぐらい必要。ネジと合ってないと簡単にナメる。
堅いネジには尻をハンマーで叩きながら使うので貫通ドライバ-を買うこと。BPじゃなきゃぁ・・と言う人もいるが、しょっちゅうひっぱたく私はそこそこの物を使い捨てにしている。
一番下の奴は根元にメガネをかけることが出来るので、固く締まったネジを外すときに必要。ちびドライバーは狭いところの作業に便利。
マイナスドライバーをたがね代わりに使ってはイケナイ
ショックドライバー。先っちょ(ビットという)をセットしてネジにあてがい、祈りを込めて尻をぶっ叩けば自動的にネジが緩む。
γはエンジン回りなどの熱のかかるところにも、けっこうプラスネジが使われている。ナメルと後々面倒なので、イヤだな〜と思ったら早めにショックを使うことにしている。
一度外したネジはヘキサゴンボルトにかえちゃえば、次から安心。
サークリッププライヤー。これはひっくり返してSタイプ(軸用)、Rタイプ(溝用)の両方に使えるもの。今のところこれで間に合っている。手近な工具でサークリップを無理やり外した途端にどっかに飛ばしてしまい、部品が来るまで作業が止まった経験が無いとは言わせない。それを考えれば買っといて損は無い。
トルクレンチ。エンジンを組むときの必需品。これがなかったらエンジンは組むな。買うときはトルクの設定範囲に注意すること。
トルクレンチを使うときには、ネジとボルトは完璧に洗浄、潤滑されてなければならない。また、締める時はいきなり規定トルクで締めず、2〜3回にわけて締める。
今はニュートンメーターとかに表示が変わったが、換算すれば一緒。使ったらダイヤルを最弱に戻すこと。
がさつな工具類。プラハン、ワイヤーツイスター、ラジペン、ペンチ、ニッパ、モンキー。
ラジオペンチは先の太いのと細いのがあるとなお良い。これにペンチとニッパがあれば、電装系も何とかなる。プラハンことプラスチックハンマーはストレス解消の必需品。

モンキーは締めつけの道具でなく、物を押さえとくためのモノと考えること。モンキーがこの向きの時は時計方向に力を加える
工具箱。けしてゴミ箱ではない。
せっかく買った工具なんだから、なくす前に箱も買ったほうが良い。
大きさに関しては「この世に溢れ返らない工具箱ない」という名言が全てを語っている。
必要な時や、金に余裕があるとき(そんな時があるのか!?)にコチョコチョ買い足して行くのが普通だが、一から工具を揃えるのであれば、工具店のオリジナルツールセットを買うのが手っ取り早いかも。Touch Bikeなどの雑誌をチェックしてれば広告に出てることがある。
工具箱も安物はすぐに曲がる。鉄板にある程度の厚みがあって、引き出しにベアリングローラーが付いている物がオススメ。

パーツトレイ。外したネジやパーツは絶対に地面に置いちゃイカン。ネジにホコリが付けばジョリジョリしてまともに締めつけられなくなる。なにより無くす。
100円ショップで売ってるバット、ザル、なんでもいいから数を買っとけ。
中に入ってる歯ブラシやワイヤーブラシはもちろん部品洗浄用。
洗油は灯油やガソリンを使う。まちがえっても咥えタバコでやらないこと。


ケミカル類。結構使うので、安売りしてたらまとめて買っとけ。
ブレーキクリーナー、防錆潤滑剤、ガスケットリムーバー(キャブクリーナーでも可)、モリブデングリス、耐熱グリス、シリコングリス、液体ガスケット(スリーボンド1215がお薦め。ってぇか、他は知らない)、シリコンガスケットあたりは順当なところ。その他にも、胡散臭いものまで含めていろいろあるから買い出すと切りが無い。ほどほどに。
このほかにもママレモン、換気扇用油取りなど台所用品も安くて便利。
スピナーハンドルは締める時に使うとオーバートルクになるので、もっぱら緩める時のみ使っている。
下の三つは板ラチェットとオープンエンドのコンビ。Signet製のものだが首振り角も小さくて、羽目合いも結構精密。ラチェットハンドルとソケットの組み合わせよりガタツキが少ないし、力点とのズレが無いので気持ち良く使える。おまけに薄いので、狭いところの作業がとても楽。1個2千円以下とは思えない仕上がり。
オススメです。


このページを作ってから、「どんな工具から揃えたら良いですか?」とか、「お勧めの工具は?」っつー質問をいくつか頂いた。おいらの工具についての知識は、ホトンド工具屋さんの受け売りなんだが、それでもよければ教えてしんぜよう。

まず、これから工具を揃えようって人がいきなりエンジンを完バラすることはないだろうから、車体回りの整備をすることを前提にする。
必要なのは、メガネとオープンエンドのコンビネーションレンチの8、10、11、12、13、14、15、17、19。それ以上は自分のバイクに必要な大きさのを買うこと。
ソケットは3/8でレンチと同じサイズと六角を3〜4種類。ただし19以上は1/2にスピナーハンドルの組み合わせのほうが良い。大きいトルクが掛かるところではジョイントが3/8じゃぁちとツライ。
ドライバーは貫通のプラスとマイナスを普通サイズと大きいサイズで揃える。ハンドル類はTハンドルとラチェットハンドル。エクステンションも必要だ。
あとはプラハンとラジペンとペンチとニッパーがあれば良いんじゃないか?それで足りないものが出たら追加して行けばOK.
あと必需品は工具箱。よくあるハンドキャリー用じゃなく引きだしがついたものの方が工具管理の点では絶対に良い。


で、何処のメーカーのが良いかってことについては個人の好き好きだ。値段の割りに良いなぁって印象が強いのはKTCとKokenかな?工具っていうとすぐ外国産と思ってる人がいるが、この2社は海外品に勝るとも劣らない。高級工具の代名詞であるSnap−onは破損交換システムがトルクレンチやラチェットハンドルなんかにゃ良いかもしれないが、俺らじゃぁフツーの工具を磨り減るほどは使わないし工具自体で見たら値段ほど優れてるとは思わない。
六角のソケットはHazetがオススメという話は良く聞くがこれはほんと。
おいらの使ってるHazetのコンビネーションレンチは薄くて精度が良くて頑丈でとても良いのだが、これは今じゃ生産してないそ〜だ。
ソケットはHazetの点接触タイプがカチッとした感触で良い。他社のは殆どが面接触なので、これほどの精度が出ないようだ。

Tハンドルはkokenの物を使ってるが、羽目合い精度も高いし、棒も太過ぎなくて良い。Tハンドルは力が入りやすいので、棒が太いとオーバートルクになりやすい気がする。細い棒だとしなり具合でトルクが分かりやすい。
この辺は良く使う工具なので、良いものを最初に揃えたほうが結局は得だと思う。

なんだかんだ言ってHazetばかり持ち上げてしまったが、これはおいらの好みだからしょうがない。こんなんで参考になるのかなぁ?

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