機体のデザイン
傑作機の優れたデザイン・機能美は、
その目的や用途にふさわしい形から生ずるものです。
紙飛行機のデザインも何か目的や意図があるはず。
例えば軽量化や作り易さなど。
胴体の造り
主翼や尾翼の空気力学的な効果を発揮させるために、
胴体は構造的に翼を支えています。
発進時の加速や着地時のショックに耐えるように、
ケント紙を少なくとも4枚以上貼り合わせた造りにしましょう。
胴体の厚さを増すことは、曲げる力に対して強くなると共に、
翼と胴体との接着面積を増やします。
翼を取り付ける位置にはのりしろを出してあり、
胴体と翼をしっかりつなぎ止めます。
ただし、胴体の強度を増すことは、重量を増すことにもつながります。
むやみに機体が重くならぬように、
必要な部分だけを補強するようにデザインしましょう。
主翼のデザイン
主翼が生ずる揚力は、紙飛行機の重力を支える大きな力です。
左右の翼で揚力のバランスが崩れると、安定した飛行はできません。
主翼の空気力学的なデザインの第一歩として、
いかにして左右均等に翼を作れるかを考えましょう。
主翼の平面形は、シンプルな長方形を基本に、両端を丸く整形してみました。
丸めた翼端には、翼が風をスムーズにかき分けて空気抵抗を抑える効果と、
着地時のショックで翼の角が折れ曲がることを防ぐ意図もあります。
上反角は、主翼中央から離れた位置に設けました。
中央部を平坦にすることで、主翼を胴体にガッチリ固定し、
取付け時の誤差も抑えることができそうです。
尾翼のデザイン
尾翼は、けっこう自由なデザインを楽しむことができる部分です。
空気力学的にも構造的にも、あまり厳しい制約が無いからでしょう。
それでも、十分な安定性を得られるように、紙飛行機の尾翼の大きさについては、
次の経験的なめやすが知られています。
全長と全幅がほぼ同じ長さを持つ標準的な機体の例です。
- 水平尾翼の面積は主翼の約40%
- 垂直尾翼の面積は水平尾翼の1/4くらい
水平尾翼の胴体への取付け位置は、胴体の最も細い部分とT字型に組み合わせるようにすると、
細い胴体の補強にもなります。
水平尾翼の設計
水平尾翼の大きさとモーメントアーム
水平尾翼は、上下方向の風見安定の効果によってピッチングを抑えています。
その働きは、水平尾翼の大きさと、重心からの距離によって決まります。
まず、水平尾翼が大きいほど、ピッチング時の水平尾翼にかかる風圧は大きくなり、
風見安定効果は大きくなります。
もう一つは、重心からの距離で、これは「てこの原理」に関係します。
公園のシーソーのように、中央の支点から遠いほど、大きな力を発揮するのが「てこの原理」です。
飛行機でも同じで、機体の重心を支点と考えると、その重心から遠いほど、水平尾翼はよく効きます。
この重心からの距離を「モーメントアーム」と呼びます。
つまり、水平尾翼の効きは、水平尾翼の大きさと、モーメントアームの長さの両方で決まります。
水平尾翼容積比
水平尾翼の面積とモーメントアームを合わせた、水平尾翼の働きを示す指標を「水平尾翼容積比」といいます。
主翼の働きに対する、水平尾翼の働きの比率として表しています。
例えば、次の三つの設計は、いずれも水平尾翼容積比が同じで、ほぼ同じ安定性を得ることができます。
- 普通の大きさの水平尾翼を、重心から普通に離して配置する
- 大きな水平尾翼を、重心の近くに配置する
- 小さな水平尾翼を、重心から遠くに配置する
標準型
- 主翼面積:100、水平尾翼面積:40、モーメントアーム:2.5 MAC
- 安定性と効率のバランスがよく、多くの紙飛行機に適する。
派生型1:大きな水平尾翼×短いモーメントアーム
- 主翼面積:100、水平尾翼面積:50、モーメントアーム:2.0 MAC
- 安定しやすく、調整もしやすいが、尾翼の空気抵抗が増える。
派生型2:小さな水平尾翼×長いモーメントアーム
- 主翼面積:100、水平尾翼面積:25、モーメントアーム:4.0 MAC
- 尾翼の空気抵抗が少なく、滑空性能がよいが、長い胴体が必要になる。
空力面では空気抵抗を少なくしたい。構造面では長くて軽くて強い胴体を作りたい。
それが創意工夫のきっかけになります。
例えば、紙を細く丸めてストローのような円筒状にしたり、折り重ねて棒状にするなど、
軽くて強い胴体を考えてみてください。
紙飛行機の設計には、一つだけの正解はありません。
尾翼の大きさや配置、胴体の形や作り方を工夫しながら、自分だけの紙飛行機を作ってみましょう。
試作機の作り方
飛ばしやすい、標準的な紙飛行機のめやすに沿って、現物合わせでの作り方をご紹介します。
- まず全長と全幅を同じ長さとします。
- 主翼は、翼幅に対する翼弦(前後の幅)を1/5とします。この比率を「アスペクト比」といいます。
- 水平尾翼面積は主翼の40%、垂直尾翼面積はその1/4とします。
- 胴体は前半は太く丈夫に、後半は細く軽く作り、その後端に水平尾翼と垂直尾翼を取り付けます。
- 胴体と尾翼を組み合わせた状態で、重心位置を調べます。
- その重心位置に主翼の後縁が合うように主翼を取り付ければ、機体の完成です。
テスト飛行
- カーテンなどに向かって、軽く前へ押し出すように飛ばしてみます。
- 機首を下げて急降下する場合は、機首おもりを少し減らします。
- 機首を上げて失速する場合は、機首おもりを少し増やします。
- 一定の速度と降下角で、ゆるやかにまっすぐ滑空すれば成功です。
最後の調整では、機首のおもりを加減したり、水平尾翼をわずかに曲げたりします。
設計図どおりに作っても、紙の種類や工作精度によって飛び方は変わります。
作って飛ばすたびに調整することも、紙飛行機の楽しみの一つです。
重心の位置
重心の位置は、主翼の位置や飛行性能を左右する重要な問題です。
紙飛行機を安定して飛ばすためには、
機体の重心と揚力の中心が一致していなければなりません。
揚力の中心は、主翼のほぼ中央にあります。しかし、
重心は機体が完成し、実際に手にとって見るまでハッキリ判りません。
重心が主翼中央からずれている時は、胴体におもりのケント紙をかさね、
重心が主翼中央に一致するように調整します。
重心が判明するのは機体の完成後ですが、
調整で追加するおもりを最小限に抑えるため、
主翼の位置は胴体の中央付近にデザインするとよいでしょう。
また、重心を確かめながら主翼の取付け位置を決めるように、
あらかじめ取付け位置に幅を持たせておくアイディアも、
おもりを減らして軽量化に役立つでしょう。
Hideyuki Kikuchi (gotha@ops.dti.ne.jp)