バランスの確保
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ヒラヒラ舞う木の葉と飛行機では、姿勢の安定性が違います。 上下左右に支える物のない空中で、しかも強い風の流れの中、 どうやって飛行機はバランスを取るのでしょうか。 |
紙飛行機のはなし目次
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飛行すなわちバランス
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飛行機は、翼の揚力だけでは飛ぶことはできません。 空中でバランスを確保しなければ、 きっと木の葉のように舞い落ちてしまうでしょう。 「安定性」とは、物体が一定の状態を維持できる度合いのことです。 魚のヒレや鳥の尾羽のかたちが、 水や風の流れの中で安定性を生み出していることは古くから知られ、 風見や矢羽根に活かされてきました。 19世紀初頭、ケイリー卿の模型飛行機にも尾ヒレと尾羽が付いていました。 3次元で移動する飛行機の左右の安定性を尾ヒレに、上下の安定性を尾羽に、 それぞれ分担させたのです。 ケイリー卿は、翼の揚力で重量を支えつつ、 安定性で空中にとどまる大切さを初めて明らかにしました。
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機体のレイアウト
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きまぐれな突風や飛行機自身のクセによって、 空中の飛行機は、たえず安定を乱されます。 そこで、揚力と安定性を確保するために、 どの飛行機も基本的なレイアウトは共通しています。 重心の近くに主翼があり、最後尾に垂直尾翼と水平尾翼が配置されています。 主翼の両端をV字型に持ち上げた角度は「上反角」といいます。 尾翼が重心から遠く後方に配置されているのは、 てこの原理によって、尾翼が効果的に安定性を発揮するからです。 ドイツのオットー・リリエンタールは、 グライダーによるテスト飛行を2000回以上も繰り返し、 この安定性の高いレイアウトを確立しました。
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風見のしくみ
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風見は、つねに風の吹いてくる方向を指し示します。 この性質は、飛行機が作る相対的な風の中で進路を安定させる 「風見安定」として活かされています。 風見のデザインの特徴は、回転軸から後半部分を、 前半部分よりも広くとっていることです。 前後の面積のちがいは、風の中で受ける圧力のちがいをもたらし、 軸を中心とした回転運動を生み出します。 風見に真横から風があたると、後半部は前半部よりも大きな風圧を受け、 風見を回転させながら後半部が風下に流されます。 前後の風圧差がある限り回転は続き、風の流れに完全に沿った時、 すなわち風見が風上を向いた時、回転が止んで安定します。
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ヨーイングと垂直尾翼
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飛行機を上から見て、重心を中心とした左右方向の回転運動を 「ヨーイング」といいます。自動車のスリップに似ており、 機体の向きと実際の飛行経路との間にギャップが生じる現象です。 ヨーイングを生じた機体は、風見の時と同じように、 飛行経路の前方から吹く相対的な風を横から受けることになります。 面積の大きい垂直尾翼にかかる風圧によって、機体は重心を中心に回転し、 風上すなわち実際の飛行経路を向きます。 垂直尾翼は、左右方向の風見安定の効果によってヨーイングを抑えています。
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ピッチングと水平尾翼
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飛行機を横から見て、重心を中心とした上下方向の回転運動を 「ピッチング」といいます。ピッチングは主翼の迎角の変化につながります。 これを放置すると失速や急降下を招きます。 水平尾翼は、風見の左右方向の回転を上下方向に置き換えたものです。 面積の大きい水平尾翼にかかる風圧によって、機体は重心を中心に回転し、 風上すなわち実際の飛行経路を向きます。同時に迎角も小さく抑えられます。 水平尾翼は、上下方向の風見安定の効果によってピッチングを抑えています。
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ローリング&横すべりと上半角
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飛行機を後から見て、重心を中心に機体を左右に傾ける運動を 「ローリング」といいます。機体が左右に傾くと、 主翼が生じる上向きの揚力も傾斜の内側に傾くため、 ローリングは内側への「横すべり」も誘発します。 上反角のついた左右の翼は、横すべりによる相対的な横風をとらえます。 横風が左右の翼にあたる角度は、上反角のため左右で異なります。 傾斜の内側の翼は、下から横風に押し上げられて揚力を増加させ、 反対側の翼は、上から横風に押し下げられて揚力を減少させます。 左右の翼の揚力のちがいは、傾いた機体を水平に戻し、横すべりも抑まります。 これが上反角効果です。
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Hideyuki Kikuchi (gotha@ops.dti.ne.jp)