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VR4400の中身
■きっかけ
4月、研究室の大掃除がある。机をすべて外に出し、床を拭いて、再配置する。いらないロッカー、机、本を捨てる。 そして、いらなくなったパソコン、ワークステーションなども捨てられる。
臨時にできたゴミ捨て場は、宝の山だ。 朝出されたパソコンなど、夕方までには完全に分解され、使える部品は全部取られる。使い道のないものだけが残る。 まるでバクテリアが分解しているようだ。
私も、そのバクテリアなので、捨てられた電気製品を見ると、自然と目が輝いてしまう。 ドライバーとペンチを持って出動! 捨ててあるものだから、バリバリ分解できる。 いらない部品の処分が面倒なので、その場で分解する。
取り放題となると、使わないものまで持って帰ってしまうので、小さくて高価で、きれいな部品だけを持って帰ることにしている。 いらないものを持って帰ると、後で処分に困ってしまう。よく持って帰るのが、ROM, CPU, RAMなどだ。
今回はワークステーションのCPU (VR4400) をもって帰った。こんなもの、どうするのか?
2つあったので、一つ分解してみることにした。きっと大きな半導体チップが入っているはず。
■まずはカッターで
チップがパッケージに乗せられ、配線が終わると、金属で蓋をされる。 その蓋をはずせば、チップを見ることができるだろうと思った。 まずは、カッターで蓋の端を削ってみた。どうやら結構厚みがあるようだ。 もちろんカッターでは開かない。どうしようか。
■そしてフライス盤
私の所属するロボット技術研究会には、力強い見方、フライス盤がある。 一気にフライスで蓋を削ることにした。
直径6mmのフライスで削ってみた。ずいぶん厚い蓋らしい。 表面を均一に削ったのでは、チップまで削ってしまうかもしれないので、蓋の端に穴を開けることにした。 フライスを下げていくと、運良く中身に傷を付けることなく穴が開いた。 そこにペンチを挟み、まるでコーンビーフの缶詰を開けるように蓋を取った。
■チップが見えた
切り子を取り除くと、きれいなチップが現れた。これほどきれいに中身を見ることができるとは思わなかった。 写真で見たことはあっても、これほど大きい実物のチップを見たことはなかった。 さわったのも初めてだ。 NHKの「半導体立国 日本の自叙伝」を実際に見れた、といった感じだ。
よくこれほどのものを作れると、感心するばかりだ。 チップ上のパッドと端子とを結ぶボンディング・ワイヤーも見えたが、まるで綿ゴミだ。 このような細い線をあの速さで配線しているのは、すごい。
回路がブロックごとに並んでいて、バスが配線されているのもわかる。 小さな長方形がいくつも並んでいて、どこが何の機能を果たしているのかわからないが、 ただ光って筋にしか見えないほど小さいトランジスタが働いているのかと思うと、すごい。
身の回りに、これほどすごいものがたくさんあるのは、 もっと驚きだ。分解して、ほんとうにいいものを見ることができた。
(c) 1999 Ishijima Seiichiro