鉄道模型の自動運転
■制御方式
コンピュータ
運転というリアルタイムな処理と、Windowsを使用したユーザーインターフェイスを両方使用するため、 マイコンとパソコンで通信しながら 列車を運転する方法を採用しました。
制御用マイコンのプログラムはC++で書きたかったので、8086互換のV25CPUを使用しています。 パソコンとマイコンとの通信には、RS232Cを使用しました。列車の駆動
PWM制御方式です。8列車同時運転ができるように設計してあるため、8つの独立なPWM信号を生成する回路があります。ちょうど台の運転台があるようなものです。PWMの生成は、UPP(Universal Pulse Processor) HD63140 で行っています。
列車選択
列車を独立にコントロールするために、線路を電気的に区切ります。区切られた区間「セクション」には、1列車だけが入るようにします。実物の「閉塞区間」と同じ考え方です。コンピュータはどのセクションにどの列車がいるのかを常に追跡し、把握しています。列車の速度や方向を変えるときには、その列車がいるセクションに流す電流をかえてやります。セクションへは、セレクターにより8つのPWM信号のうち一つを選択し、走行方向(極性)を加味したあと、ドライバーを通して電流が供給されます。
模型の制御方式は、全てセクションに流す電流を変えることによって行っていますが、コンピュータが列車の位置を把握し、自動的にセクションを選択するので、操作する側からは、1つの列車を操作しているように見えます。
一つのセクションに2つの列車が入ってしまうと、2つの列車を独立して制御できなくなります。1本の線路に複数の列車を運転するときには、ATC(Automatic Train Control 列車自動制御)が必要です。
センサー
- 列車がいるセクションには、線路を通じて電流がながれます。この電流を検知する電流検知方式。
- 線路に赤外線反射型光センサーを設置し、列車を検知する光検知方式。
現在この二つの方式を採用しています。(自動運転で現在使用しているのは光検知方式)
光検知方式には、外乱光によって誤動作しないように、フォトIC (S4282-11) を使用しています。
電流検知方式では、セクションとドライバーとの間に、直列に0.1ohmの抵抗入れ、この電圧降下をオペアンプで増幅し、フォトカプラーとRS-FFを通して検知します。
ポイントの切り替え
ポイントを切り替えるソレノイドに一瞬 12V の電流を流す方式です。現在、ソフトウエアで電流を流す時間を決定しているので、コンピュータにリセットがかかるなどして電流が流れたままになってしまうこともありました。(3つポイントマシンを焼いてしまいました。) 改良し、ハードウエアのタイマーで時間を決めようと考えています。
運転台
実物の運転感覚を再現するために、本物そっくりの運転台を製作する予定です。運転台自体は、プレイステーション用「電車でGO!」のコントローラーを改造して作ろうかと考えています。機械工作に自信がないので、本体の外側をいかに作るかが課題です。メーターについては、幸い、先輩に丸形メーターを譲っていただいたので、これに少し手を加えて使おうと思っています。中の回路の設計はほとんど終わり、製作に取り掛かろうとしています。音も鳴らすので、ここにもコンピュータを搭載します。
■大学祭展示
専用のハードウエア、ソフトウエアを3ヶ月ほどで製作し、「ロボット技術研究会 電車研究室」として大学祭で展示しました。
上の写真は、2つの列車を運転しているところです。展示中に列車を検知するセンサーが働かなくなり、電車が止まらなくなったり、ポイントを切り替えるコイルが焼けてしまったりと、いろいろ問題が起こりましたが、なんとか2日間展示することができました。
「電車研究室」は、私が一人でやっているため、展示のための鉄道模型を自宅から運ばなければならず、大変でした。
小さなお子さまが意外と多く、喜んでもらえました。来年の大学祭では、もう少しよくできたものを展示する予定です。
製作してみて感じたことは、とにかく開発環境を整えるのが大変だということです。
装置のテストをするには、模型が置いてある部屋にコンピュータを運び、実際に動作させてみる必要があります。
実際に模型を動かしてみると、机の上でデバッグしていたときには思いもしなかったことが起こり、あわてました。
■製作の感想
技術面
問題も多いですが、列車の速度制御は確実でした。加減速はなめらかで、安定して走行しました。発車するとき、低速で連続走行するときには、市販のコントローラーでは不可能なスムーズな走行でした。(鉄道模型ファンの私は、にんまりしてしまいました。)
今後は、装置の信頼性を高め、制御用マイコンのソフトウエアを完成させ、運転台も製作するつもりです。
- 感動
鉄道ファンで電子工作好きの私にとって、鉄道模型の自動制御ほど楽しいものはありません。小さい頃から大切にしてきた車両が、生きているように動き出すのは感動的です。
交通博物館にある鉄道模型のように、たくさんの列車が走っている姿は、鉄道ファンでなくても見ていて楽しいものだと思います。だれもが感動できる自動運転装置をめざしています。
電子工作と鉄道模型が好きな方は、ぜひ自動運転にチャレンジしてみて下さい。技術的には難しくなさそうですが、完成された方はそう多くはないようです。 このページでは、今後も経過を発表していきたいと思います。
(C) Ishijima Seiichiro 1999