BANGKOK:新千歳空港からドンムアン空港へ

 1999年4月4日。雪残る札幌を後に、新千歳空港行きのJRに乗り込んだ。今から南国に行くというのにトレーナーを着ていく訳には行かない。それでも長袖Tシャツに長袖チェックシャツ。薄手のジーンズに革のスニーカー。この時来ていた長袖Tシャツと履いていた革スニーカーはただの荷物となってしまう。最初からサンダルで行けば良かったとものすごく後悔することに(スニーカーは場所もとるし重い)。

 今回は「ヴェトナムまで陸路越境」というテーマを掲げたものの、ものすごい不安が私を襲う。くよくよしても今更仕方がないので「私は旅を楽しみに行くのだ!」と言い聞かせ、一路出国カウンターへ。4日から24日までという計21日間、人生最大の長旅である。今まで会社員だったから、長くて2週間。今回も行くとは決めていたものの、日程を決め、チケットを注文しに行ったのが出発の10日前。今が一番安いオフシーズンで千歳ーバンコク往復21日FIXで63,000円。案の定、行き帰りともソウルでストップオーバー1日づつ。ううう。でもここが1人旅の強み&いつも手配を頼んでいる強み(か?)、ノマド(旅行代理店)のHさんが嬉しいことに出発ぎりぎり3日前に、ストップオーバー無しのチケットを調達してくれた、ラッキー。

 こういうときに限ってギリギリまで仕事が立て込むものだ。出発前数日はバタバタと準備が出来ず、前日にやっと荷物をまとめる。こんなもんか。

 そんなこんなで、荷物を極力減らした(はず)バックパックを背に、旅が始まった。思えば今まで借り物人生。最初にアメリカに行ったときから数えて計5回、全て人からスーツケース、バックパックを借りていたので、今回こそはと大枚2枚をはたいてついにマイ・バックパックを購入。今回人から借りたものはひとつもない!

 そもそも何でカンボジア?上にも書いたが今回のテーマは陸路越境。そして水辺の東南アジア。ベトナムは3年前に一度行ったが、テト(旧正月)にぶつかり南しか回れなかったので、今回は鉄道で北上を目指す。友人が2ヶ月前に陸路でカンボジア、ヴェトナム、中国、ラオスに行った時の話を聞いて、どうしても行きたくなった。血が騒いだのであーる。旅行仲間は「いいじゃん!」というが、そのほかの友達は「なんで」という。皆が口を揃えて「気を付けて」。ま、誰も私を止めることは出来ない。

 まず千歳からソウルへ(新千歳は空港使用税がない、素晴らしい空港)。15:00発、前回のベトナムと同じフライトスケジュールだ。真夜中にバンコクに着く予定。前回はこの乗り継ぎで、タイ3日間行動をともにする女の子に出会ったのだが、今回はどう見てもお気楽ソウルショッピングの女の子たちしか見えない。楽しそうだ。乗り継ぎの待合いラウンジに行く途中に、同じ飛行機に乗ってたらしき1人の女の子が乗り継ぎラインに来た、声をかける。彼女はものすごく不安そうである。聞くとこれからオーストラリアにワーキングホリデーに行くという、それも海外ははじめてだという。う・うらやましいっ!と思いきや、本当に彼女は私なんか比べものにならないくらいの極度な緊張状態だ。これは和ませてあげないと!とひとしきりいろんな話をする、というか話を聞く。その間わずか30分。彼女と話したおかげで、私の方はすっかり落ちついてしまった。彼女の勢いが着いたらしい。住所を交換し、彼女と別れ、1人待合いラウンジへ。

 バンコク行きのラウンジは周りを見渡すと、いるいる、ハネムーン組のペアルック・カップルがうようよと。え?なに?みると女性は皆同じヘアスタイル。男性は皆、果物やワインや垢こすりが入っている花篭を持っている。見事に一緒なのだ。「ピンッ」多分統一教会の合同結婚式ではなかろうか!私は当初バンコク行きのチケットがとれなかったのも、統一教会の大移動がある、というのを小耳に挟んでいた。やっぱりー、とはいうもののこの光景はなかなかお目にかかれない、面白い!この時点で旅の不安はすっかり吹っ飛んでいた。

 バンコク行きの飛行機に乗り込む。シートはもちろん窓側である。隣に座ったタイ人のおばちゃんは何だかリッチそうだ。服装はピンク。つけてる香水までリッチ、たっぷり付けてるのである。ムーンとした邪悪な匂いに頭痛が走るが仕方がない。そのうちこのおばちゃん、新聞を読みながらあぐらを組み始めた。名付けて「マダム・ピンク・アグラー」。このおばちゃんのたっぷりな香水に、最後まで悩まされることに・・・。このフライトの目玉は、目線に輝く月と星だ。これはホントに綺麗というか宇宙を飛んでいるような気分に。

 バンコク着。イミグレがものすごい混雑だ。日付は既に5日。24:30。バゲジをとってエクスチェンジをしてタクシーチケットを買う。25:30をとっくにまわっている。3年前はここで白タクに捕まったので、バスにしようかとも思うが、行き先がカオサンではなくチャイナタウンなので、ここは安全策でリムジンタクシー650バーツ(1B=約3円)。外に出るとじっとり湿った空気がからみつく。

東南アジアにきたっ!

 不思議なことに、やはり不安は全くない。1人旅もいちおう5度目、少しは成長したのか!? タクシーのおじちゃんは良い奴だったので一安心。だが、やっぱり明日は何処行くんだ?エアポートに行くなら迎えに来てやる、と営業が始まる。3年前はここでまずくじけたのだ。白タクの運ちゃんが「俺の紹介するホテルに泊まれ!」とほざいたので、抗議してエアポートに引き返えさせたのだ。外に出てすぐメータータクシーに乗った私たちがバカだったのだ。今回は英語をあんまりしゃべらないおっちゃんと、楽しく英タイ語会話をしながら夜のバンコクをクルージング。「いくつだ?どう思う?18だろベイビー。(・・・フクザツ)28だよ、おっちゃん。結婚してるのか?俺は独身だ。あのねーっ」そうこうしているうちにチャイナタウンはヤワラー通りのホワイト・オーキッドに到着。ここはまだ屋台がずらっと並んで賑わっている。今回も夜中着だったので1泊だけは日本でとっていった。とても疲れていたので大正解。

 ホワイトオーキッドはボロイが、ホットシャワーも出るし、エアコンも着いている!シャワーを浴びて、さっぱりしながら砂原良徳「TAKE OFF & LANDING」を聞く。テレビはKink Kidsやパフィーとか、日本のポップス目白押し。2:55(日本時間4:55)就寝。明日はカンボジアビザを取りにゆく。

※大韓航空の機内食のプラスチックのティーカップを歯磨き用に失敬してきた。後にこのカップが大活躍。

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