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2002初春 北海道ノート最終便


1・序

 流氷を見たいな、と思っていた。
 豪雪も見たいな、と思っていた。
 そうそう、極寒を味わいたいな、とも思っていた。
 タンチョウヅルなんかも見られないかな、と思っていた。

 なんでこんなことを考えたのだろう?これは単に好奇心だけからの発想ではなく、実は渡道するたびに、僕の頭の片隅にひっかかっていたことなのである。というのも、僕が好んで読むある紀行作家が、夏の北海道を知っているだけでは誤解の元だ、冬の北海道こそ北海道らしい、という趣旨のことを書いていたから。そりゃもっともだと思っていたら、幸いなことに一昨年の冬にはスキーで、去年の冬には雪まつりで、初春には引越でと、北海道の冬を経験することができた。しかし、それは単なる“経験”であって、北海道の冬を“味わった”わけではない。そう、今回は“味わう”旅をしたくて、僕は北海道に行くことにした。

2・冬の北海道

 北海道と一口に言っても、とても広大であることはみなさんご存知であろう。そのため、これまた一口に“冬の北海道”と言っても、千差万別なのである。単純に考えてみても、比較的温暖な地域から氷点下30度にもなる寒冷地帯まで、そしてほとんど積雪がない小雪地域から豪雪地域まで、それが随所に展開しているのが北海道だ。つまり、どこか1ケ所を見るだけでは、一つの気候しか経験できないことに他ならないのである。

 さらに、流氷と豪雪と極寒とタンチョウを味わいたい、というのが第一の目的ではあるが、これをいっぺんに体験できるところはない。流氷を見るにはオホーツク海沿岸(網走や紋別)しかないわけだし、極寒なら内陸部に名所(朱鞠内・占冠・足寄など)がある。ならば、去年のような1ケ所ピンポイント観光ではダメだ。いろんなところをぐる〜っと回れないだろうか。そう考えると、とても選択肢は多い。

 しかし、流氷とタンチョウを見るにはどうしても道東に行かねばならない。冬の道東の観光スポットをあれこれ考えれば、おのずと道は見えてくるのではなかろうか・・・すると、天啓のようにひらめいたものがあった。せっかく道東に行くのなら、以前に回ったところになるべく行こう。そこの冬を見てきて夏と比較してやろう、と。再訪旅行としゃれこんでみようか。これだ、と思った。

3・日程について

 例によって、往路は朝イチの飛行機で安く、復路はJASさまさまの“ウルトラ特割”を考えてみた。北海道内でたっぷり時間をとり、4日くらい過ごせればおもしろい。と考えたのだが、よりによって往路の安い席が発売日に売り切れてしまった。復路は首尾よく取れたのに、往路の安い席がない!どうしよう・・・

 すると、“飛行機の通常料金”を基準に、いろんなことをやってみたいと考え出すのが僕の不思議なクセである。“いろんなこと”というのがマトモではないような気がするが、今回は基本的に一人旅か網走のTsとの二人旅であるため、無茶なことをやりやすい(?)。そこで、こんな日程にしてみた。

 2月28日 北斗星1号で上野駅から陸路出発。 (車中泊)
 3月1日  深名線再訪(6年半ぶり)。     (紋別泊)
 3月2日  流氷を味わってから網走再訪(半年ぶり)。 (網走泊)
 3月3日  道東再訪(1年半ぶり)してツル探し(初)。   (釧路泊)
 3月4日  釧路周辺観光(初)、カキを食べて(初)空路帰京。

もちろん、これ以外にも初めて行く場所はいくらでもあるのだが、メインは“再訪”なのだから、とりあえずはこれだけ書いておくことにする。あとはいつものように追々明らかにしていくことにしよう。

4・旅行記
0日目(〜出発前〜)

 冬の北海道に行くのだから、防寒を主目的に荷物を用意せねばならない。まあ、3月上旬はすでに寒さのピークを過ぎているし、列車やバスや車に船に飛行機という移動の多い(それを望んだ)旅だから、そんなに厳しい寒さであっても、耐える準備はほとんど不要だろう。また、天気予報を見る限りはかなりの暖冬になっているようだ。そこで、手袋だけを忘れないようにして、基本的には東京と同じカッコウでいることにした。

 それよりも困ったのは、寝台特急「北斗星」のお作法である。これは首尾よく個室のきっぷを入手できたものの、寝台列車の雰囲気が分からない。例えば、せっかくだから食堂車を利用してみたいが、夕食どきは事前の予約者(寝台券等と一緒に予約しましょう)優先なのである。すると、メニューはビックリ価格(フランス料理7800円か懐石御膳5500円のどっちか)になってしまう!倹約を旨としているわけではないが、いくらなんでも夕食にあまりお金はかけられない。では、夕食は駅弁で済ますとしても、予約ナシで食堂車を利用できる“パブタイム”なる時間のメニューは・・・?気分によっては、駅弁をやめてこのときに夕食をとってみようかと思うのだが、『時刻表』には予約不要としか書いていない。他の本を見ても、アルコールに軽食におつまみ、などしか書いてない。これでは夕食にならない・・・さらに、車内販売はあるのだろうか?ないとすると、食堂車の混雑状況によっては、翌朝の朝食にありつけないかもしれない(食堂車なら和・洋定食いづれも1600円)。新聞や朝のコーヒーなんかはどこで買えるのか・・・?事前にこうした情報を集めるのは好きなのだが、とにかく集まりが悪い。結局、ネット上で「北斗星」を利用した人の旅行記を検索し、情報を収集するという姑息な手段に出た。しかし、他に情報源がないのも事実。現在、寝台車(食堂車)は比較的レアな存在なのだから、『時刻表』にあらゆる情報を乗せてくれてもいいのに、と思う。・・・いや、僕のような人間の個人的趣向を満たすような『時刻表』では、やっぱマズいか。

 もう一つの目玉“流氷見物”について。やっぱり海の上から、流氷を割って進む船に乗りたいものだ。その夢を叶える観光砕氷船は、網走(オーロラ号)か紋別(ガリンコ号)から乗ることができる。ただ、紋別の方には船にドリルがついているというので、おもしろそうだ。全便予約が必要なので電話すると、3月2日の昼間のいい時間帯はすべて満席です、と。オイオイ、まだ1月だぜ・・・しかたなく、朝イチの便(8時発)にした。なお、天候不良で欠航ということもありうるわけだから、翌3日を予備日とし、なるべくタイトなスケジュールにならないように調整した。

 ところで、今回の旅を『北海道ノート』シリーズの“最終便”にしようと思う。この旅で北海道に満足するというものではないが、念願の冬の北海道を訪問する今回で、一つの区切りとしたいのである。きっと今後も北海道を訪れることはあるだろうが、旅行記として北海道旅行をまとめるのは、これが最後だ。そんなことを考えながら、出発することにした。

 

 

第1日目に続く

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