第1日目(2002年2月28日・木曜日)
北海道に向かうのは、ここ数回が羽田空港からだったが、今回は上野駅からである。北の玄関口と形容される上野駅を、本当に玄関として利用するのだ。小さいころから慣れ親しんできた駅だけに、我ながらうれしさが込み上げてくるのが分かる。寝台特急で渡道することが念願だったつもりはないのだが、やはり念願だったのかもしれない。
これが肝心の寝台券です。
ちなみに、乗車券はこちら。
寝台特急「北斗星1号」の入線時刻は、16:28である。地上ホーム13番線に到着だ。しかし、そこからだと写真を撮りづらいので、14・15番線ホームのはじに陣取り(=僕1人)、カメラを構える。ここまでの予習はカンペキ、躊躇することなく実戦である。間もなく入線、緊張の一瞬だ。・・・と、このタイミングで電話がかかってきた。なんちゅう間の悪いヤツ!しかも、ケータイの画面には相棒Tの名前が表示されている。この忙しいときになんだよ!電話に出ると、いまどこにいるの?と聞いてきた。なんだか笑いをこらえているようだ。そこでピンときた。こいつ、上野駅にいやがるな・・・撮影してから行くから5号車の前で待ってろ!と言い捨て、カメラを構え直した。
上野駅で発車を待つ「北斗星」1号
駅弁とビールと日本酒を買い込み、13番線へ移動する。5号車5番・B個室ソロ。これから16時間の旅の、僕の部屋だ。さっそく入ってみるとけっこう狭いのだが、間違いなく個室である。誰に気兼ねをすることもない。空調のせいかとても暑かったので、さっそく上着をほうり出し、酒と弁当をテーブルに陳列したら、入室からわずか30秒でとっても生活感あふれる個室になってしまった。
B個室「ソロ」室内。
そのうちに相棒Tがやってきた。いくら仕事が早く終わったからといって、上野駅にやってくるヤツは筋金入りである。でも、乗車するのは僕。彼は指をくわえてお見送りである。僕の室内をいろいろと物色(見物とは言えない)する彼の視線が恨めしい。そして、車内の自動販売機で“サッポロクラシック”を売っていたので、さっそく購入して乾杯。彼はおみやげ用にとさらに1本買い足した。飲んでいるうちに、もう発車ベルである。うらやましいぞちくしょう、という相棒Tの言葉を残し、北斗星のドアが閉った。
上野(1650)―札幌(920) 1 寝台特急北斗星1 上野→札幌
たっぷりと出発前のひとときをとり、列車はゆったりと動き出した。客車には乗り馴れないのだが、コトコトという静かな響きが心地よい。それに、僕の部屋はベッドが進行方向に向いていてしかも上段である。見なれた山手線沿線も、見なれない位置からの風景なのでとても愉快だ。いや、愉快なのはすでにビールを飲んじゃったから?
2本目のビールを開ける前に、シャワーカードを買いに行く。北斗星にはシャワー室があるのだが、それを利用するにはカードキーが必要なのだ。食堂車で売っていると放送があったので確保に走ると、まだ準備中の食堂車で問題なくカードを購入できた。時間はいつにします?と聞かれたので、思いつきで21時半からと答えた。シャワー室を占拠できるのは30分間(ちなみに、お湯が出るのは6分間である)だから、22時までがシャワータイム、ということになる。
これがシャワーカードです。
カード購入ついでに、車内探検に出かけることにした。気分は完全にお子ちゃまモード、26歳のいい年したオトナの所行ではないと思うのだが、好奇心を押さえられるわけがない。僕がいるのは5号車なのだが、1号車から順に説明してみよう。
1号車 B寝台2段式 ほとんど人がいない・・・
2号車 B個室ツイン 同上
3号車 B個室ツイン 同上
4号車 B個室ツイン こちらはけっこう乗っている模様。
5号車 B個室ソロ こちらもけっこう乗っている模様(5号室が僕の部屋)。
6号車 B個室ソロ・ミニロビー・シャワー室 ロビーは喫煙所と化している。
7号車 食堂車 予約1組のみなさん、まもなくお食事です。
8号車 A個室ツインデラックス 乗客ナシ!
9号車 A個室ロイヤル・B個室ソロ ロイヤル以外乗客ナシ!!
10号車 A個室ロイヤル・B個室ツイン 同上!!!
11号車 B寝台2段式 乗客ナシ!!!!
ずいぶん空いているものである。まだ何駅も止まるわけだが、どれだけ乗ってくるのか・・・?
ビールを飲み、ワンカップを飲み、つまみに駅弁を食べる。後で食堂車に行きたいという野望は捨てていないので、駅弁は軽めだ。グイグイ飲んでいるうちに、列車は大宮に停車した(なぜか3分遅れ)。ホームには帰宅する人々が並んでいる。こちらは観光、あちらは日常。その日常の中から、こちらの非日常の世界に足を踏み入れる人はほとんどいない。やっぱりずいぶん空いてるぞ?この後もじわじわと乗客は増えたが、結局6割も乗車していなかったのではなかろうか。まあ、普通の木曜日の列車だしね。
そのうちにウトウトしてしまい、起きたら福島(20:10)だった。タッチ&ゴーですぐ発車、時計を見るとまだ3分ほど遅れている。取り戻せそうで取り戻せないのだが、傷口は広がらない。せっかくだから定時に走ってほしいのだが・・・そのうちに、食堂車の予約2組が終わったようで、これから予約なしで利用できるパブタイムですという案内があった。むむっ、満席になっちゃうかな・・・
シャワーは2室ある。設備はドライヤーと鏡しかないようなモノなので、シャンプー等は持参する必要があるが、操作は御案内に従ってやるだけなので、楽勝である。入ってゆくと、脱衣場は狭さを感じないし、シャワー室内はマットが敷いてあって滑らないようになっているのが好ましい。広さも十分だ。さっそくお湯を出してみると、かなりたっぷり出てくる。湯量の調整はできないが、十分な量ではないだろうか。もちろん温度の調整はできるので、6分間もあれば、なかなか利用しがいのあるシャワーだ。残り時間だって大きな時計がカウントダウンしてくれるので分かりやすい。ただ、残り1分で“すわ火事か!”と心配になるようなブザーが鳴る。もうちょっとなんとかならんかな・・・とにかく、制限時間6分の限界まで湯を浴びた。さっぱりできて御満悦である。
シャワー室入り口。ドア内右側にある機械にカードキーを入れる。
シャワー室内のパネル。シンプルでわかりやすかった。
食堂車に行ってみると、けっこう空いていた。アッサリと席につき、肝心のメニューを吟味する。ライスとスープとサラダがつくシチューセットなんてのもあり、駅弁でなくこっちのほうがおもしろかったかなと思うが、さすがにこれから食べてみる気にはならない。アルコール類は各種とり揃っていてうれしかったが、僕が注文したのは生ビール(クラシック・600円)とソーセージの盛り合わせ(800円)。ナイフとフォークでソーセージをつまむ!気分はとっても贅沢でいいかもしれない。味も悪くない。他には、おつまみ類が1000円以内でいろいろとあるので、けっこう楽しめると思う。食堂車でも御満悦。
列車は順調に進んでいるかに思えたが、花巻付近で徐行運転をしたため、盛岡に到着したときには遅れが20分に広がっていた。車掌さんにどうかしたのかと聞くと、何もない、とのこと。何もないのに20分遅れるってどーゆーことじゃ。腑に落ちないのだが、そろそろ眠るとしよう。青函トンネル進入は2:55ころだから、さすがに起きていられない。
酔いに列車の振動が重なり、熟睡するはずだった。しかし、軽くかけておいたエアコンの温風がたばこ臭くて、たまったものではない。なかなか寝つけないうちに、一晩が過ぎた。禁煙の個室を作れよな、という恨み節を奏でながら。