作家とサッカー 〜全国高校サッカー選手権大会:市立船橋vs国見〜
サラリーマン作家というのは不自由なもので、平日の昼間は会社へ通っているため、どうしても土日に小説を書くことになります。したがって、世間の人が街でショッピングしたりどこかで遊んだりしている週末は、不健康にもアパートから一歩も出ずに執筆して過ごすことが多くなります。
書く作業は疲れますから、行き詰まると唸りながらカーペットでのたうちまわります。ここで変わっているのは唸り声です。普通は「あー」「うー」なんて唸るのでしょうが、ぼくは「にゃー!」と声をあげます。だから執筆中に困ったことがあるとカーペットでごろごろ転がりながら「にゃー! にゃー!」と叫びます。
この日は順調に小説を書いていました。いいストーリー展開が思い浮かんで指をパチンと鳴らし、さらに書き進めようとしたのですが、サッカー中継の時間になりました。いいアイディアが浮かぶなんて珍しいのですが、試合を観ないわけにはいきません。アイディアなんかはそっちのけでテレビをつけました。
高校サッカーの決勝戦だけあって白熱した試合でした。市立船橋の守備陣が要所をおさえ、大会得点王の国見・平山選手を封じこめました。後半には市立船橋・小川選手の30メートルのロングシュートがゴールネットへ突き刺さり、1−0で市立船橋が優勝しました。Jリーグや海外リーグなどと違い、技術やスピードに驚きはなかったものの、高校生らしい懸命さに心を惹かれました。来年もすばらしい大会になることを期待しながらテレビの電源を切りました。
さて執筆に戻ろうか、とテーブルに向きあったのですが、試合前に思い浮かんだいいアイディアが頭から消えてしまいました。どうしても思い出せません。記憶力のなさに悲しくなり「こんなことなら試合前、アイディアが浮かんだときにメモを取っておくんだった」と嘆きました。「にゃー! にゃー!」と叫びながらカーペットでのたうちまわったのは言うまでもありません。
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