■エッセイ「楽書帳」
●11/22
三十路が近くなったせいか記憶力が落ちてきたようです。 先日、高校時代の恋人のことをふと思い出しました。初デートではミスタードーナツで1時間くらい話したなとか、彼女の誕生日にはピアノの形をしたオルゴールをプレゼントしたなとか、その1ヶ月後にはディズニーランドへ遊びに行ったなとか、たくさんの記憶が甦ったのですが、どうしても思い出せないことがありました。 彼女の名前です。 彼女は結婚していますし、もう八年も会っていません。彼女との思い出で忘れたこともたくさんありますが、いくらなんでも名前を忘れてしまっては申し訳ない。でも、顔や旧姓は覚えているのですが、下の名前がどうしても出てきません。 高校時代の名簿を調べればすぐにわかるのですが、なんとか自力で思い出そうと3日3晩考えつづけました。しかし彼女の名前は記憶の底に埋もれたままです。いろいろな女の子の名前をあいうえお順に彼女の旧姓へ当てはめてもしっくりきません。なんでこんなに考えても思い出せないのかと歯痒くなりました。 しかし4日目の夜、風呂へ入っているときにようやく思い出し「そうだったよぉ」とバスルームで大声を上げてしまいました。こんなふうに、歳を重ねるとともにたくさんのことを忘れてしまうのだろうな、と思いつつ、忘れてはいけないことまでは忘れたくないと強く感じます。 いずれにしても思い出せてよかったです。ごめんね、尚ちゃん(笑)。
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