考古学のおやつ たぬぼり探偵社 管理人著作集

たった4ページを誤読

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3/Nov/1999(Wed)登録

定森秀夫・白井克也,1999,韓国江原道溟州下詩洞古墳群出土遺物−東京大学工学部建築史研究室所蔵資料の紹介−,京都文化博物館研究紀要朱雀第11集,79-108

いきなりコーナーになってしまいました。とはいえ,休眠コーナーは多いので,私がひどい間違い論文を量産しない限りは,このコーナーも休眠コーナーになることでしょう。できればその方がいいのですが,なにぶんにも軽率な人間ですから,けっこう人気コーナーになったりして(そ,それだけは……(^^;)

さて,今回は上に掲げた資料紹介(共同執筆という事情もあって,今のところWebでは公開していません)の修正です。まず,今回修正する部分を引用しておきましょう(もちろん,私の執筆部分です)。

伊藤純・内田好昭両氏は須恵器高杯形器台の製作工程をロクロ方向一定の前提のもとで復元する研究を公表しているが51),…(中略)…。これに対して中條英樹氏は,素地の乾燥状態が製作工程を制約したであろうという前提のもと,伊藤・内田両氏の用いた濁り池窯出土資料を再観察した結果,…(中略)…という結論を得ている52)[定森・白井1999:99]

萬維網考古夜話の第18話 第三の選択で出てきた話題ですが,この文の後半に間違いがあります。注52に挙げているのは次の文献です。

中條英樹,1997,初期須恵器の製作技術−高坏形器台の製作技術とその変遷−,遡航第15号,東京,早稲田大学大学院文学研究科考古談話会,85-88

で,何がおかしいかというと,私はこのたった4ページの論文を誤読していたのです。バカですねー

中條くんの原文を読んでいただければあっという間にわかるのですが,彼が観察したのは別の事例で,「濁り池窯出土資料」を見たとは書いてないんですね。う〜ん,我ながらバカすぎる(^^;ゞ。

一応原稿書いたときには,「中條くんが濁り池窯の土器を再観察したかどうか確認しよう」と思ってわざわざ読み返したのに,それで誤読してたら,お話になりませんね。

そんなわけですので,『朱雀』の当該部分はちょっと読み替えてくださいm(_ _)m。

原典に当たっても間違えるんだから,孫引きなんて恐ろしいことはもっと危険なんだろうなぁ。


白井克也 Copyright © SHIRAI Katsuya 1999. All rights reserved.