エスニック

不景気の効用

  昨年、大規模な水害に見舞われた栃木県の那珂川では、今年のアユの遡上率が記録的に良いらしい。川底などに沈殿していた汚染物質などが洪水できれいさっぱり流された為に、たった一年で「清流」に復活したという。
被害にあわれた周辺住民の方々には不謹慎な言い方ながら、人間の立場から「災害」と呼ばれることでも、自然界においてもそうであるとは限らないのだ。つまり、自然の営みに無駄なことは何も無いということ。
 出口の見えない不況に喘ぎ、悲観論ばかりが渦巻く現在だが、自然界に倣って「不況も捨てたもんじゃない」とポジティブに考えられないものだろうか。

 戦後最悪の失業率を記録し、男性のそれはついに5%台に突入した。早々に諦めが先に立っているのか、若年層を中心にフリーターの道を選ぶ人も少なくないが、就職への狭き門は求職者のモラル改善に幾らかなりとも役に立たないだろうか。最近はスーツ姿のまま道路や階段に座り込んでいたり、女性なら女子高生がスーツを着ただけというような人をよく見かける。

個性重視の大義名分に押し切られ、街ゆく高校性たちは「制服のように統一された」ルーズな格好をしている。私からすれば、彼らを入社させた企業は余程人手が足らないか、人事部の頭が余程悪かったのか、はたまた彼らに余程隠された才能があるのか、とても見当は付かない。
 いずれにせよ、終身雇用の崩壊とリストラの影響で人材が流動化してこれば、ひとつの仕事に縛られることなく「適所」を求め、収まっていくことになるだろう。今でこそ転職のイメージは「キャリアダウン」だが、将来的には「キャリアアップ」型も相当増えるものと思われる。

 経済構造などはどうか。事実上、財政破綻している自治体が顕著化し、さしもの公務員にもコスト意識改革が叫ばれだしており、(建前上)聖域を設けないで癒着構造にもメスが入れられる。民間企業は当然、好況に胡座をかいた放漫経営は糾弾されている。
そもそも不況時に会社の存続が危ぶまれるような状態になる要因は大概好況時にある。「アク抜き」の観点からしてもここはひとつ大いに病巣を一掃してもらいたいものだ。

 家庭内においても、節約・倹約は美徳ある生活スタイルであるということが認識されつつあるのではないか。暮らしにおける豊かさは必ずしも消費・支出とは比例しないということを気付く人も多いはずだ。
 その他にも、不況だからこそ出来ることも多いのではないか。個人的には割と不況の効用は大きいと思う。

 不況とは次なる好況の為には欠かせないものと、もう少し前向きに考えようではありませんか。

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