エスニック

踊るCM

  元来、対象商品や企業の性能や特長を伝えることを目的としていた広告。中でも演出の幅が広く露出度の高いテレビコマーシャルは広告業界の大黒柱である。このTVCM、妙に最近踊るモノが多い気がする。
 消費者金融ではお地蔵さんが踊り、軽自動車では気味の悪いアニメの赤ん坊がクネクネし、引越屋は対照的に「キッチリ」踊っている。冬だというのにヘソを出しながらキムタクが「夢をつかめ!」とバクチを薦め、藤原紀香は携帯電話を手に、古館伊知郎は二日酔いのオヤジ達を集めて踊っている。
GAPに関しては踊るだけ踊っといて何の説明もしないという、知らない人には極めて不親切な内容である。ついでに追悼の意を表せば、スキャットマンも子供たちとプリンを手に踊っていたっけ…。

 消費者が物を選ぶ時代になり、これだけ商品も多様化してくると、正直なところ競合品との差別化を図るのが実に難しい。薬を例にとると、車やパソコンのように様々な機能で差別化を明確に出来ないため成分表示で差をつけようということだろうが、やれイソプロピルアンチピリンだのイブプロフェンだのと舌を噛みそうな言葉を並べられても、我々素人には今一つピンとは来ない反面、(本来頭痛薬などに使われる)エテンザミド配合の便秘薬と言われればそれなりに効きそうな気にもなる。

 マイナーな参考例で恐縮だが、同じ薬品でも整腸薬ビオフェルミンのCMは分かり易い例えで効果を示すいい例だろう。「あなたのお腹の急降下をストップ」と言うナレーションとともに飛行機から飛び降りたスカイダイバーのパラシュートが開き、見事急降下は止まるのである。もちろんパラシュートには「新ビオフェルミンs」と書かれている。最後に市販されている製品を映しておしまい。
 こうした広告の原理原則に忠実に則ったCMは極めて稀で、今はほとんどがイメージ広告である。踊りのイメージを考えると「元気」「明るい」といったところだろう。これがウケているとなると世は明るく元気なものを求めているということか。

 なんだか「ええじゃないか」の世界である。右も左も暗い話題ばかりなら、せめてCMの世界くらい明るく楽しく「踊りゃな損損」てところだろうか。


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