「ヒトゲノム計画」。日米欧でヒトの遺伝子情報を解読しようという計画が新聞紙面を飾ったのも束の間、米のベンチャー、セラーノ・ジェノミクス社が遺伝子情報約32億の塩基配列の内80割以上を解読したと発表しましたね。これで既に解読されている分と合わせて90%以上が解読されたことになるそうです。国際プロジェクトを一ベンチャー企業が出し抜くんですからエライことだと思います。 ところでこの人間の設計図たる遺伝子。錆び付いた記憶を辿れば、生物の授業で4種のアミノ酸(アデニン・グアニン・シトシン・チミンでしたっけ?懐かしいですね)による塩基配列が螺旋状に組み合わさって出来ていると習ったような気もしますが、これはヒト遺伝子の97%を占めており、残り3%は別にあるらしいですね。とはいえ、97%中の90%以上ですから概ね解読されたといってもいいのでしょうけど。 専門家によれば、この段階はまだ前半戦と考えられているようで、後半戦が今後解読された情報がヒトのどの機能に結びつくのかを「解明」するという本番に当たるそうです。 「解明」がどの程度大変なことかはド素人の私が知る由もありませんが、「神秘」とまで称されていた我々の設計図が32億程度の配列で出来ているとは、なんだか少ない気がしなくも有りません。日頃、「公的資金何千億円投入」「公的債務何百兆円」なんて記事を目にしているだけに、なんとなく「命の元」は天文学的数字を期待してしまいます。 ではこの遺伝子、全部解明されたらどうなるのでしょう。遺伝子治療はもちろん、先天的障害を胎児のうちに治療してしまったりも出来るのでしょうね。 更に飛躍させれば、思い通りの設計図に組み替えて、受精卵の段階から育てることも可能になるんでしょうか。であれば、容姿端麗な子どもが欲しいとかスポーツ選手向きな体を持った子どもが欲しいという希望も叶うようになりますね。 この程度の希望なら可愛いもんですが、穏やかでない国では兵隊向きの人間が「製造」されたりして。こうなってしまえば、指を7本、足を3本、目は前後左右になんてことも。もはや、サイボーグやアンドロイドも真っ青の世界ですね。 当然人間以外にも応用されるでしょうから、1本の木で様々なフルーツが実るというフルーツポンチみたいな植物が出来たり、一本で野菜サラダが作れるような種類も出るかもしてません。動植物で組み合わせれば鍋用に「羽の替わりにネギが生える鴨」とか刺身用に「生姜のたてがみが生える馬」なんてのもいいですね。 まあ、ここまで「倫理を超え」「神を冒涜」した寒いギャグのような世界になるかは別にして、東側の原子力研究者が不穏な国々に流出していったように、出来るのにやらないという倫理的抑制力はどの程度有効なのかは至って懐疑的です。 さあ、文字通りの世紀末、2000年のスタートです。 |