至ってローカルな話題で恐縮だが、私が通勤で利用している水天宮前駅は営団地下鉄半蔵門線の最終駅で、他の路線への乗り継ぎにもならない完全な行き止まり状態の駅である。珍しいことに、世界でも最高水準を誇る東京の地下鉄網の中で唯一の袋小路である。 地理的にはオフィス街のド真中に位置してはいるが、先の理由から通勤時間帯でも混雑らしいものも無い。よって、人で埋め尽くされてしまうような駅では望むべくも無いが、私が利用している方の改札を出たところに熱帯魚を飼育している水槽が置いてある。水族館なら何時間でも居れるタイプの私にはなんとも粋な計らいと感じられたが、無用とも思える程広くて殺風景な通路があまりに寂しいからという理由かもしれない。 さて、この水槽では数日前に赤ちゃんが誕生し、幾らか賑わいを増している。もともと魚は10種類ほどいるようだが、子供たちはその中のミッキーマウスプラティという種類のもので、名前の由来は尾びれの近くにミッキーマウスの影を象ったような模様があるためだが、これが無ければただの金魚に見えなくもない。性質は至っておとなしく、子どももよく産れるため人気のある種類である。 私は卵の状態を知らないが、一斉に孵化するためか、薄いオレンジ色をした耳かきの先っぽほどのツブツブが突然登場して驚かされる。よく見ると米粒のような形に目玉をチョンチョンと付けたような姿でぼやっと佇んでいるだけなのだが、別の魚が近づいてくるとピョンと跳ねるように逃げるのである。 しかし、所詮は狭い水槽の中の話しである。本気で攻撃されたら逃げおおせられるものではない。本来なら子ども用のゲージを入れてやるか、他の水槽で育てなければ生き残るのは至難の業である。案の定、最初目にした時は十数匹はいたはずだが、今朝は2・3匹しか確認できなかった。明日はどうかな、とちょっぴり心配しているのである。 |