エスニック

バックアップ

  ヒトゲノムの解読で相変わらず賑わいを見せているバイオ業界ですが、先日は絶滅した恐竜だか何かのDNAがほぼ完全な形で採取できたとかで話題になっていました。何で話題になるのかといえば、DNAが完全な形で残っているということは、遺伝子情報が完全に解読された暁には絶滅した生物でもクローンとして蘇らせることが可能になるということの様です。
 これは確かに凄いとこです。まさに映画「ジュラシックパーク」の世界さながらですが、つまりは遺伝子さえ残っていれば、もう種の絶滅なんて心配は要らなくなるのでしょうね。
 いつぞや「人造人間」でも触れましたが、やはりそうなると人間への応用が気になるところです。仕事柄、毎日使うPCの非常時用のバックアップを取っている時に思うのですが、人間の記憶もそのうちこうしてバックアップが取れる時代になるのかなあ、と考えてしまいます。
 最近は、日本でも臓器移植が珍しくなくなってきましたが、極端な話し最後まで取り替えの利かないのは「脳」でしょう。もし仮に脳のデータが全て解読され、デジタル化することが可能になったらどうでしょう。事故か何かで手足を失った場合、脳のデータを一時余所へ移し、どこかのキレイなDNAを取り出して「高速培養」するなりなんなりで実年齢に合うまで育ててやる。そしてその肉体にバックアップデータを移してやるのです。これが可能なら、事実上人間は「不死」になれますね。脳が直接破損しない限り、肉体が古くなればいくらでも交換できるし、脳に関してもまめにバックアップしていれば、脳がやられてしまった場合でもその時点からならやり直しが可能になります。 つまり簡単に自分のコピーが出来る訳です。
 さらにさらに、都合の悪い記憶を削除したり、大切にしたい思い出は忠実に記録してデータ保存しておくことも出来るようになるでしょう。カラダは無傷、記憶も新鮮、気分はいつもハッピーと願ったり叶ったりの状態で居られる訳です。
 さて、この夢のような話し、現実になったらどうでしょう。遺伝子操作の話題が出るたび思うのですが、好きなようにさせたら人間はどこまで欲深くなるのでしょう。本当にみんながみんな不死を求めて、自分のコピーを作り続けるのでしょうか。
 いろんな映画や小説で、永遠の命を手に入れた主人公の物語が描かれていますが、その多くはハッピーエンドにはなりません。「不死」は人を幸せにするとは限らないということを、作者たちは手に入れる前から知っている訳です。
 嫌な記憶も傷だらけで気に入らないところばかりの体も、取り替えが利かないからこそ「自分」があるのだと思えば、なんだか愛着が湧いてくるではありませんか。


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