21日に大倉商事が事実上の倒産ということでニュースになっている。昨年あたりから特に大型の倒産が相次いでいるが、銀行に関しては拓銀以降ピタリなくなっている。 最近も株価が額面を一時割り込んだ長銀の不良債権を公的資金をつぎ込んで処理させようという動きが政府・日銀から出ている。 いいよなあ、銀行は。やれ高給だとかなんとか批判されててもヤバクなったら国が助けてくれるんだもの。勿論、一国民として金融パニックは困る。しかし、世界に通じる金融市場を形成しようとする流れの中で、いつまでも消費者に選択肢を与えないのは余りに不自然だし、必要な情報さえ与えてもらえれば自己責任の上で国民はちゃんと金融機関を選べるはずである。 機会があるごとに言っているが、まず徹底したディスクローズがあってこそ、自己責任の原則は成り立ってくる。それが確立できれば、「小さな政府」の実現は速やかなものになるはずだ。ところがそれをせずに、金融システム安定と称しひたすら銀行に金を注ぎ込むばかりである。それ以外の手段としても、旧態依然としたコテコテの利権確保目的の公共投資ぐらいなものである。 87兆円を超える問題債権(不良債権)も見方によればまだまだ甘いと指摘されており、欧米並みの基準でいえば倍以上になるともいわれているが、日本におけるありとあらゆる不良債権の総額とは一体幾らぐらいになるんだろう。もしかして、不良債権と呼ばれるものは全て公的資金で埋められるということになるのではないか。現在の処理策を見ていると真剣にそんな気がしてくる。 話題のブリッジバンク構想にしても、詰まるところ国有銀行たる債権回収銀行は譲渡先のない不良債権のごみ箱になるのだから、税金で埋めるしかない。ほかにも債権債務の両方が公的資金のやり取りで処理されている例が記事であったので、参考例として分解してみよう。 8月25日付の日経朝刊。99年度の郵貯事業見通しが約1兆6千億円の赤字になるとの記事である。登場するのは大蔵省資金運用部、郵便貯金、旧国鉄の3者。ではまず、なぜ郵貯が赤字になるかというと、原則全額預託義務がある資金運用部からの利払いが高金利時代のものが満期になり低利のものへ乗り換える為、利息収入が大幅に減少するからである。預けられた資金運用部の方はというと、国債を買ったり、PKOと称して株価を買い支えたり、地方自治体に貸し付けたりと、とても利回りの上がる運用をしているわけではない。それでも満期が来れば郵貯に返済しなくてはならず、約束した利払い分や元本割れしている部分は公的資金で埋め合わせるわけである。一方の郵貯側は、そうして溜まった累積黒字(4兆9千億円超)は一部を旧国鉄債務返済に充てるなど理解しがたい使い道に回されるし、来年度のように赤字となれば予算の概算要求に盛り込んで税金で埋めればよいし、とどの道税金が注がれるようになっているのだ。 よくこんなシステムを信用して郵貯なんかに預けるもんだと思う。おまけに、民間銀行にしても公的資金投入して助けてやるはずの長銀の元頭取の退職金が9億円以上もあったり、不良債権の内訳は一向に明らかにならないし、行員年収カットといっても元の年収がさっぱりわからなかったりと、まるで当てにならない。 無闇矢鱈と金をばら撒く放漫財政を信任しているわけでもないのに、そのツケを払わされるのはゴメンである。預金保護がなくたって結構、「自己責任原則」で結構。とにかく自分で選ぶ為の情報を公開してくれなければ話にならない。 日本にはまだまだ甘い汁に汚染された領域が多く残されている。年金・福祉汚職や「公団」と名の付く利権構造、病院経理の不透明、処方薬の選択などなど。国から補助を受けられる部分については、ほぼ間違いなくこうしたダークな領域が残っていると考えている。金融問題に限らず今後こうした領域もクローズアップされてくるだろう。 だから、「国家」が破綻する前にみんなで叫ぼう。 選ばせろ! 98年8月26日 ThinShin |