エスニック

2%

  ようやく本格的になってきたゲノム解読ですが、先日のニュースのよればヒトの遺伝子の数はハエのそれと比較しても2倍程度ということが判明したとありました。メディアの表現としては大方が「わずか2倍」というように「想像以上に少ない」というようなニュアンスでした。
遺伝子の数と様々な能力とがどれほど比例するのか解りませんが、高等生物としてのプライドからすればハエの100倍くらいの遺伝子は持っていて欲しかったのでしょうか。

 しかし思うに、確かにヒトは高等動物には違いありませんが、ヒトがヒトたる所以は殆どが「脳ミソ」から発生している部分においてであって、肉体的能力または身体能力という点においてはヒトはそれほど高度な能力を持っていません。
 例えばモノを持ち上げることであればアリは自分の何十倍もの重さを持ち上げるし、視力ならワシは遥か上空から獲物を識別します。嗅覚はヒトと犬では比較になりませんし、ノミなどは人間の大きさに換算したら何十M跳ぶ勘定になるのでしょうか。

 一つ一つの能力を比べるまでもなく、道具を持たないヒトは自然界に放り出されれば実にカヨワイ存在であることが分かるはずです。同じ哺乳類と比較しても、丸裸だとほとんど環境には適応できず、辛うじて頭の上に毛がある奇妙な生き物でしかないわけです。他の動物から見ればヘアレスドッグのように見えているかもしれません。

 ところが人間と一番近いとされるチンパンジーとの遺伝子の差はわずか2%だそうで、その差で言葉を操り、道具を使い、文明を興し、他の生物を圧倒し、地球上の王者として君臨しているわけです。
 地球上の至る所に進出したヒトと熱帯の森を出ることの無かったチンパンジーを考えれば、たった2%の差がそこまで広がったものと言えるでしょう。

 そうなるとたった2%の差が俄然重要な意味を持ってきます。
 ちなみにこの「2%の差」ですが、冒頭のハエの遺伝子との比較の記事よりかなり以前に読んだもので、記憶が曖昧なんですが、遺伝子の数が2%多いという意味ではなく、遺伝子の並び方の差を指していたと思います。ですから生物学的に下等か高等を語る上で、影響するのは遺伝子の数なのか並び方なのかは別の問題かもしれません。

 いずれにせよ、ハエとは数が倍違うわけですから配列は確実にそれ以上違うわけで、2%で雲泥の差がついたことから考えれば、「なんだハエの2倍しか・・」とがっかりすることも無いのでしょう。

 個人的にはさらに興味があるのは、文明が誕生する以前と現在ではどの程度違いがあるのか。恐らくチンパンジーと同じ程度ということはないでしょう。
 それと、ウィルスや細菌にはどの程度の遺伝子があるのでしょうか。恐らくはハエよりも遥かに遺伝子の数は少ないだろうと根拠も無しに想像してますが、もしそうなら地球上で人類を存亡の危機に立たせる可能性のある生命体の遺伝子がヒトより遥かに「下等」であるというのもなんだかケッサクのような気がします。

 これからも目の離せない世界です。

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