「人の命は地球より重い」なんて言われます。「尊い命」とも言われます。ところが地球上ではあちらこちらで紛争が起き、国同士で殺し合いをやっていたりします。 平和を謳っているはずの神の名のもとでも「やられたらやりかえす」を何千年も繰り返してたりもします。 命はみな平等と言われても、誘拐されて身代金を要求された場合などは明らかに「相場」が存在します。犯罪の前では命にも簡単に値段がつくわけです。 さて、例えば子どもにこうした矛盾を尋ねられたらみなさんどう答えるでしょうか。 私は読んでませんが、以前神父さんの書いた本がベストセラーになってましたね。あの本には答えが書いてあったのでしょうか。 まことに恥ずかしながら、私も30年以上生きてきて未だ説明できないのはおろか、自分で納得出来る答えも得ていないのです。 先日、狂牛病の問題で肉骨紛を食べた牛を焼却処分にするというニュースがありました。すでに殺され解体された牛ではなく、まだ生きている牛の話です。もちろん生きたまま焼却処分される訳ではありませんが、治療方法がなくヒトに感染する可能性も捨てきれないことから混乱を避けるために必要な処置というわけです。 人間の生活が多くの命を犠牲にしながら成り立っているのは事実です。食料としてはもちろん、学術研究や医薬品等々挙げればきりがありません。 これらの影には人間のご都合で粗末に扱われてきた命も劣らずありました。先の焼却処分された牛は欧州では数万にも上りますし、カネ儲けのために殺される動物は一体何種類いるのでしょう。 これは人間同士でも同じです。治療法がなくしかも強力な伝染力を持った病気に対して人間はどのような行動をとるでしょう。過去大流行した数々の伝染病を前にどうしたでしょう。 映画「アウトブレイク」では国は患者を隔離した村をまさに「焼却処分」しようとしました。恐らく現実に同じような状態になれば、やはり同じような手段を講じるのだろうと思います。文明が進んだか否かというのは大した差ではないような気がします。 「命はかけがえのないもの」とされるのが豊かで平穏な状況でしか通用しない概念なら、「殺されたくないので殺しません」という程度のものでしかないのでありません。 本当にヒトの命は尊いのか。誰か教えてください。 (10月26日記) |