少子高齢化の進む我が国はいよいよ失業対策とのジレンマが露見することとなってきました。 先の施政方針演説で、小泉首相は歯止めのかからない少子化への対策として保育施設の充実を打ち出しましたが、その見通しとして現在の待機児童の数を目安に考えると、いつまでも問題の解決に結びつかないことになりかねません。 昨年の年金改革案では、政府は受給モデルを従来の分業型(勤労者:専業主婦)世帯から共働き世帯へと転換しました。これはワーキングマザーより専業主婦の方が年金受給に関して有利であるという現状への不公平感是正もありますが、メインは増加する高齢者層を支えるための労働人口を厚くすることを目的としています。 この結果、不況が家計を直撃している状況の中、働きに出ようかと考えている主婦層の就労意識はさらに高まることになるものと思われます。ましてや自分達の老後は年金の受給額が小遣い程度になったり、受給開始が何年も引き延ばされるかもしれないという不安がつきまとっているのですから、そこへ社会での働きが少なかった専業主婦は年金がほとんどもらえない、というニュアンスが感じられれば嫌が上にも働きに出ざるを得なくなるでしょう。 となれば当然、保育施設のニーズも併せて高まることになり、ここに予測される待機児童の増加分も考慮する必要が出てくるはずです。 また、一方では正社員よりコストの安い労働力に転換のきく職種では押し出される形でリストラされる人達も増えると思われます。 政府としては高まる失業率も頭の痛い問題ですが、ワークシェアリングのように雇用対策はともすれば企業にとって負担増につながるものが多く、なかなか議論が進展しないのが実情です。 例えば、正確な数字は忘れましたが、日本中のサービス残業をやめてその分の仕事を新規雇用に向けると数十万人の雇用に繋がるそうです。無償奉仕でなくとも、人減らしのあおりで残った人たちの仕事量は増加し、残業時間は増えているケースも多いようですが、これらを全てシェアする、つまり雇用創出に回したとすると保険や手当等の企業側の負担は倍増してしまいます。 パートや派遣の年金や保険は元来雇用側に加入選択権がありますが、所得税の対象となり年金の負担も期待したい政府の方針があるわけですから、働く側もそれなら各種の社会保障は充実させよという声は当然あがってくるでしょう。 「風が吹けば桶屋が儲かる」式ではありませんが、少子化対策をとれば失業率が上がり、年金改革をすればやはり失業率が上がり、失業対策をすれば企業の業績は悪化する、といったようにどこに「痛み」を持って行くかだけの話であって、とことん悪いものは吐き出させるまでは景気の回復などは有り得ないのではないでしょうか。 こうした状況で出生率があがるということはほとんど不可能に近いと思います。 |