エスニック

泥棒の上前

 国会議員の元秘書が公共工事を請け負った建設会社からいわゆる「口利き料」を受け取っていた事件で、国税局は口利き料を所得とみなし所得税法違反の脱税の容疑をかけてきました。
この所得税法というのに詳しいわけではないのでよく解らないのですが、今回のように不当に得た所得に関しても申告する義務がある、ということなのでしょうか。
例えば、サッチーの脱税事件ではたんと稼ぎがあったのに、なんでもかんでも経費で落として所得を実際より少なく申告したので「脱税」となったはずです。ところが今回の事件では稼いだ手段そのものが不当なのですから申告なんてできるはずもありません。

例えば詐欺や横領などで得た所得を適当な名目をつけて申告したらどうなるのでしょう。
税金を納めた後に摘発された場合、ちゃんと払った税金は返ってくるのでしょうか。恐らく犯罪で得た金を借金返済に充てたり、車を買ったり、それこそ遊んで使ってしまったからといって返さないでよいということはないでしょう。
仮に戻ってくるとしても、一般の所得税や相続・贈与税と同じであれば、犯罪の時効よりははるかに短い還付申請期限ですから、期限後に摘発されても融通を利かせてもらえるのか気になるところです。
今回の事件のように、摘発後に税金を納めろといわれた場合、少なくとも口利き料として得た金は「税金を払った後の金はアンタのカネだよ」と認めたことになるように感じます。公共工事の口利きという最終的には国益を損なう行為に対し、口利き料として得た金を没収できなかった代わりにせめて所得税という形で穴埋めさせた、という考えは穿った見方でしょうか。
もちろん、法により処罰された上に金までとるなんて、と言うつもりではありません。むしろ公金横領や政治汚職に対する刑罰は軽すぎるくらいだと思います。
ただ、悪さを働いて得た金に、罰金ではなく、税金をかけたところに「泥棒の上前をはねるようなものだ」と強く感じるのは私だけなのでしょうか。

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