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腹に入る

 古物商の間ではモノの真贋を見るうえで、まず遠目にそれを眺めて「あ、これはいいものだな」を感じることを「腹に入る(いる)」と言うそうです。

 先日、洋画家中川一政さんのコレクションの絵がゴッホ作と分かり、結局6600万円で落札されたことが大きく取り上げられました。

 作者不明のままでしたら予想落札価格は1万円だったというのですから、「ゴッホ」というブランド力がいかに大きかったかが分かろうというものです。

 中川さん自身は生前、「自分にとって真贋はあまり問題ではない。それを見て心が揺さぶられるのかどうかが問題なんだ」というようなことを仰っていたようです。

 多くのプロも参加していた今回のオークション。作者不明のまま出品しても「これは腹に入る」とどれだけの値段がついたのか、興味あるところです。

 落札価格の6600万円というのは相場からしてもかなり割高のようです。本物のゴッホの作品で、状態の良いものでも4000万円前後という意見が多く、状態がかなり悪かったにもかかわらずこの値段ということも話題性に輪をかけたようです。

 ゴッホといえばやはりバブル期の「ひまわり」が印象に強いのですが、今回も落札者が日本人だっただけに「またアホな日本人が・・」というニュアンスのコメントも見受けられます。ただ、オークション形式というのは100人中98人が「異常だ」と感じる値段でも、残り2人がこれでよしとすれば幾らでも値段は競り上がっていきます。

 異常な高値をつければ売り物が増えて値下がりしてくるマーケットとはこの点が大きく異なります。

 もしかしたら今回も2・3人で競り上がった値段かもしれないのに、「とかく日本人は・・」という言われ方をするのもなんだか癪な気もします。

 もちろん、逆に全員が6000千万円まで妥当、ということだったかもしれませんが。

26日 記


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