エスニック

金利とギャンブル

  私はパチンコをやらないので詳しくわからないが、隆盛を極めているかのようなパチンコ店も随分と盛衰が激しいらしい。玉の出方は勿論、玉1個の換金率が50銭違うだけで一気に客足が変わるようだ。
 皆そんなに緻密な計算をしながら行っているのかと思い、身近にいるパチンコ好きに聞いてみた。たまに行く程度の人でも一度に数万円位は予算として「計上」しており、その一方で勝率は、全部丸ごとスッてしまうまではいかないが、5割には程遠いらしい。勿論、細かく負けて大きく勝つというのであれば勝率自体は余り意味を持たないが、玉の出る確率は所詮コンピューターで管理されているので、店が儲かる以上客は負けるようになっているのだ。

 私は別にパチンコ産業についてとやかくいうつもりなわけでなく、客がちゃんと負けることも覚悟し、その上で少しでも条件の有利な店に流れていくことに感心しているのである。

 こうした動きは人気のブランド品を購入する際の若い女性にも見られる。自他ともに認める買い物下手の私にとって、「セール」というものは「2割引」以上のことを指すが、ブランド品を追う彼女らは数%の値引き率を追い求めて情報収集に励んでいるようだ。元々高価とはいえ3%オフで充分「セール」といえるのはメーカー側の価格維持戦略が成功しているわけだが、ここでも買う側は少しでも安い店を探し出し、10万円を超える買い物でも数千円の差を見つけて流れていくのだから、経済感覚はしっかりしたものだ。

 なのに、である。パチンコで負けるのは平気でも為替リスクは取れないとか、3%の値引きに目は向いても、5%の金利格差は無視されているのはなぜ。勿論、パチンコは単に遊戯としての面白さがあり、買い物は確実にモノが手元に残るなどなど、同じレベルでの比較は出来ないのは判る。しかし、共通項としてあっていいはずなのが「目敏さ」ではないか。

 金融業界でなければこうしたことにはピンと来ないといわれそうなので、違う視点で問うけれど、テレビや新聞のニュースではお粗末な日本の政策が繰り返し報道されており、大概の人は諦らめにも似た怒りを持っているだろう。にもかかわらず、一方では政府を信用し、銀行を信用しているのである。つまりは国債を買ったり郵便局に預金して政府が株を買い支える資金を提供し、コンマ以下の金利で銀行に預けているわけだ。

 膨張し続けている個人金融資産はここ十年間、どんな事態でも内訳に変化がなかった。もう少し「意志」があるところを示そうではありませんか。


98年12月2日 ThinShin


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