ちゅまとなつきが実家から戻ってきてからも、なつきに対するゆうたのかまいぶりは健在である。朝目が覚めると、まずなつきの横にゴロリと転がってチュ。「なっちゃ〜ん」と猫なで声で呼びかけ、頬や耳(←やはりここでも)を撫でる。こんなことをなつきの近くを通るたび繰り返すのである。 父子家庭状態の間、ことさら派手にグズることも、ベタベタと甘えることもなく、ゆうたは実に「いい子」だった。私のほうも「見るのは自分ひとりだから」と心して構えていたからかもしれないが、それでも総合的に大人しくしていたほうだろうと思う。 実家からゆうた一人連れ帰ったことをどう捉えているのかは分からない。しかし母も妹も家に居ないという事実は、やはりどこかで寂しいという思いを残していたに違いない。 2週間の父子家庭状態を終え、ちゅま達が帰ってくるとやはりちゅまには甘え気味。その一方でなつきにもベッタリなのである。 ところで、3歳児が新生・乳児を「可愛い」と本当に感じるものだろうか。 ゆうたの場合、保育園で0歳児に接する機会は多いので自分より小さいものの存在には慣れている。そしてその周囲の大人たちがどういう扱い方をするかというのも見ているので、それを真似ているだけかもしれない。 ただ善意的解釈をすると、出産に立ち会った効果なのか「元気に出ておいで」と語りかけていた大きなお腹の中身がなつきであるということはよく分かっているようで、母親と取り囲んでチュッチュするのが楽しい様子でもある。 お兄さんぶりも凄まじい。ベビーカーで出る時は「ゆーたんが押す」と張り切る。風呂では石鹸を泡立てる、お湯をためる、準備が出来ると「なつき(←なぜかここだけ呼び捨て)連れてきてー!」、出る時は「そろそろ出るヨー!」・・・。 もう甲斐甲斐しいことこの上ない。 実は私は子どもの頃、妹が欲しかった。子ども心に、妹を持つ兄の立場と言うのは何だか随分大人びて見え、「妹は自分が守る」という役割に憧れていたのかもしれない。 そんな私の子だけに、このままいくとゆうたは間違いなく「俺の妹に手ぇ出すヤツはブッ飛ばす」と息巻くアニキになるだろう。 ただ悲しいかな、どんなにゆうたがナイト(騎士)を気取っても、早くもなつきはゆうたが嫌いである。 ゆうたがちょっかいを出す時はまだ力加減が判らないため、首を捻じ曲げる、頭を押さえつける、抱き寄せて鼻を塞ぐ等々、見ている方もヒヤヒヤすることばかり。 なつきもその都度イヤイヤという素振りをするため、幸か不幸か同じ生後1ヵ月の頃のゆうたと比べると格段に首の力が強く、頭や手の動きも多い。恐らく首や腰が据わるのもハイハイをするのも早いのだろう。 それもこれも鬱陶しい兄から逃れんがためである。ここ数日はゆうたがベッドに上るだけで泣くようになって来た。 もうほとんど「近づくだけでイヤ」ってな感じである。 哀れなるかはゆうたなり。 好きで好きで堪らない妹はどんどん「強引でしつこい男は嫌い」になるのは必至。 「ウチのお兄ちゃん、何かとうるさくて困っちゃう」 父親としてはそれも楽で良いかもね。 |
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