エスニック

なにも殺さなくたって

 

 手塚治虫の漫画を買い漁りだしてから知ったことだが、来月の7日(2003年4月7日)は鉄腕アトムの誕生日だそうな。
 アトムの産みの親、天馬博士がアトムを作った科学省の研究所は高田馬場にある、という設定だったので、高田馬場界隈はアトムの誕生日を祝って大いに盛り上がっているとか。
 
国民的ヒーローだっただけに、地元だけに限らず各種のイベントは全国的にも催されるそうで、(細かい数字は忘れたが)結構な経済効果も期待できるとの予測もされていた。
 国があれだけ躍起になってもあがらない景気を刺激できるなら、アトムの力は「馬力」ではなく「公共投資××億円分」という単位にした方がよろしい。
 
50年以上前の作品で今なお社会貢献するなんて、凄いぞ手塚治虫。

 
さて、その手塚作品。ハッキリ言って少し食傷気味である。
 1ヶ月ほどの間に120冊以上買い込んではみたものの、とても読む方が追いつかず一日1冊のペースにもならない。
このままでは大量喫煙による禁煙法と同じ効果になりそうなので、暫く読みそうもない約40冊は実家に送って待機させることにした。


 さてさて、絵本を読んでいて感じることだが、昔話というのは子どもに聞かせる話にも関わらず、実に簡単に登場人物画が殺されてしまう。
 
恐らく昔の方が「死」というものが身近に存在していたからだろうが、なにも殺さなくたって、という感じである。
 
殺すか否かだけではない。その手段もかなり残忍なものが多く、腹を切り裂いて石を詰めたり(狼と7匹の子ヤギ・赤ずきんちゃん)、煮えたぎらせた大釜でゆで殺したり(3匹の子豚)とほとんどマフィアの手口に近い。

 
極めつけは「かちかち山」で、おばあさんを杵で殴り殺したタヌキに対する復讐は、薪を背負わせ火をつける、その火傷のキズにカラシを塗る、とどめに泥の船に乗せて沖合いで溺死させるという3段攻撃。
 
「目には目を」どころか「目には目と鼻と耳を」というくらいである。
 
しかも、手を下したのは当事者のおじいさんではなく、日ごろ仲の良かったというウサギである。
 おまけに、おじいさんに依頼されたわけでもなく、「復讐はこの私にお任せあれ」と自らすすんで請け負っているのだから恐るべき草食動物である。

 
そもそもこの童話は何を伝えたいのかがはっきりしない。
 さしたる教訓も無く、美談でもファンタジーでもロマンスでもない。
であるなら、やはり「ウサギには気をつけろ」ということしか考えられない。
 
もちろん「ウサギ」には「ウサギ年生まれ」も含まれる。

 
先ほどゆうた(←ウサギ年生まれ)が、一人で遊んでいた積み木が崩れたというだけで私に八つ当たりし、殴りかかってきたのを見てそう確信した次第である。




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