結婚前と比べ大分回数が減ったが、今でもなんとか月に1度くらいはゴルフに出かけるようにしている。 ゴルフ仲間は実家の方が中心なので、そんな時は前の晩から単身で里帰りするのだが、ゆうたが生まれてからというものの、妻子を伴わない私の存在価値は暴落の一途を辿っており、最近では実家でありながら独りで帰るのが怖くなってきた。 先日もゴルフのために前日から一人実家に帰ったのだが、当日の朝食を頼み忘れたため、朝起きると私の分だけ何も無かった。しかし、食卓を眺めるとトーストとサラダ、それと幾つか惣菜が並んでいるだけだったので、パンを1枚余分に焼くだけで私一人分くらい何とかなりそうなものである。 パンくらい食わしてくれと頼んだところ… 「えー、あんた食べるなんて言わなかったじゃない」 「言い忘れたんだよ。現にこの時間までいるんだからさあ、なんかくれよ」と言い張ったものの、この時点ですでに半ベソ状態の私。 「ったく、うるさいねえ…ブツブツ」と台所に消えた母が数分して戻ってくると、1枚のトーストがテーブルの上にポンと置かれた。もう少し正確に言えばトーストだけが皿にものせられずそのまま置かれたのである。 ……あんまりである。 自分ちのペットでさえ、餌をやる時は器にくらい入れるものだ。 なのに息子である私でさえ、孫を連れてこなかっただけでペット以下の扱いを受けねばならないのか。 これでは野良犬か公園のハトと同じではないか。 悔しさと寂しさで、人知れず私の頬を一筋の涙が流れ落ちたのは言うまでもない。そっと涙を拭って見回せば、私の箸もコップも無い…。 思い返してみれば、ゆうたを連れてくる時は外に出てまで待ち構えている親父なぞ、前の晩から姿を見せない。聞けば夜中の3時まで飲んでいたらしく、朝は朝で私が起きる前にもう遊びに出て行ったらしい。 ああ、家族3人で来た時のあの歓迎振りは一体何なのか。両親は我々の到着を外に出てまで待ちわび、食べ切れないほどの料理が並び、よく干された布団が用意され、ゆうたのイタズラひとつで幸せそうな笑い声がすべてを包む、あの光景は夢だったのか。 お互い見飽きた顔ではある。歓迎してくれとは言わないがもう少しマシな扱いでもバチは当たるまい。 これでも私はゆうたの父親なのだから。 |
![]() いくつになっても子どもには腹いっぱい食わせてやりたい |
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