20.県境へ(謎の3人組、そして2組の伴走体制へ)
松華堂をスタートして県境を目指す事にする。
坂道は歩き、下りは走る様にする。

かなり進んだところで、マッチャンが”目が見えなくなってきた”と訴えてきた。
マッちゃんは片目に障害(弱視)を持ち、目を使いすぎると疲れるみたいで、さくら道は完走出来る実力を持っているのだが、目が疲れてしまい、仮眠しないと走れないと言う、ハンディーを持っているのである。
ここまで着たらマッちゃん、向地さん両方を時間内完走させると言う気持ちが強くなる。
向地さんは視覚障害者初の時間内完走になるが、マッちゃんも完走すると、夫婦初の時間内完走者となるのである。

右にマッチャン、左に向地さん、男3人で手を繋ぎ伴走する事にする。
知らない人が見たら男3人、それも一人はハゲ、気持ち悪い集団に思えたと思う。

すぐに南さんが気づき、”伴走をしましょうか”と言ってくる。
健常者の伴走の方が難しいので、向地さんの伴走を南さんに頼み、私がマッちゃんの伴走をする事にする。

南さんは初伴走であるが、鈴木さんがフォローしてくれているので頼もしい。
少しでも伴走に関心を持ってもらえると嬉しいので、向地さんの事は南さんにまかせる事にした。
臭い男が伴走するより向地さんは楽しそうだった。

マッチャンは目をつぶって走るが、私が伴走をしているからか安心して眠くなってしまう。
フラフラ状態で県境を越える事になった。
向地さんは歩きながら寝ても大丈夫だったが、マッちゃんは体重がある分寝られるとキツイ状態だった。

5人2組で走っていると、私達に一人ついてきた。
5人が6人になった。
多いほうが楽しいので、6人で県境を目指す。
そして県境に到着。(30日 0時35分)

県境からエードはすぐだと思っていたら以外と長かった。

エードに着いてうどんを頂く。
美味しいうどんでお替りをしたら、2人追いついてきた。
6人でイスを占領していたため、このままでは後から来た2人が座れないので、うどんをあきらめ席を譲り出発することにする。


21.森本へ(5人から8人へ)
エードをスタートし、6人で走っていたら先ほどエードに到着した2人が追いついてきた。
多いほうが楽しいので、皆が離れないようなペースで走る様にする。
南さんや鈴木さん、向地さん達は余裕がありスピードを上げれるのだが、残りの3人はキツいみたいだったのでスピードを落として走ることにした。
マッチャンも眠気がピークになり、フラフラ状態であったが、伴走をしながら森本を目指した。

県境から森本まで長い道程であった。



22.兼六園へ
森本交差点を左に曲がり、兼六園を目指す。
マッチャンには金沢に入ったので自力で走るように伝える。
厳しい判断であったが、来年のためにも自分の力で走る様にと思った。

森本から兼六園までは長い上り坂である。
南さん、鈴木さん、向地さん3人組は余裕で走るが、残りの人達はキツイみたい。
"速い”との声も聞こえた。
南さん、鈴木さん、向地さんに
”記録より記憶に残るさくら道にしたいので皆で行きましょう。ペースを落とします”と言い先を急ごうとするのを抑えた。(この言葉は今でも後悔している)
生意気な行動ではないかと悩みながらも、走れないランナーを置き去りにして先に行く気はしなかった。
走る事もでき、速歩きでついて来れるスピードで先頭を走る。

途中で道に迷って休んでいるランナーと会い、その人も付いてくる事になる。
計9人の部隊になった。

森本を過ぎた時に”トイレに行きたいからコンビニがあったら寄ろう”と言う事を話していたが、地図上のコンビニは無かった。
南さん、鈴木さん、向地さんには先に行ってもらい、コンビニで待っててもらう事にする。

残りの人達は、フラフラ状態で歩いている。
一緒に歩いて兼六園を目指す事にする。

朦朧としているのか、皆はコンビニを通り越して、先に行ってしまう。
私はコンビニの前で、南さん、鈴木さん、向地さんが出てくるのを待ち、一緒に進む事にした。
進もうとした時、細田さんが猛スピードで追い越していく。
速いなと感心してみていた。

そして私達4人で走って行き、先に行った人達に追いつく。(3人先に行っていなかった)
そして皆で進んでいたところ、細田さんが休憩をしていた。
一緒に行こうと誘い、7人で進む事になる。(細田さんに悪い事をしたと後々思う)

兼六園手前県境手前からついてきた人は立ち止まってしまう。
”ここまで来たのだから一緒にゴールを目指しましょう”と言ったら
”100人100様のさくら道だから先に行ってください”と言われる。
せっかくだからと思っていた自分の考えが間違えていた事に気づき
”わかりました申し訳ございませんでした。先に行かせてもらいます”
と謝り先へ進むことにする。
しかしその人は私達に着いて来た。

そして7人で兼六園に到着する。(30日 3時15分)
皆で手を繋ぎ1500本目のさくらと酒井さん迎えられる。



23.感動のゴール(100人100様のさくら道)
金沢の判り難い道を7人で歩く。
走ってきて追いついた細田さんも歩きに着き合わせてしまった。
二口町まで着いて、関家君に迎えられる。
ここまで着て細田さんは先に進む事になる。(いままで歩きに付き合わせて悪かったなと反省する)

そして"それぞれのさくら道"と言っていた人も先に行ってしまった。

県境から兼六園まで一緒に走った。
それも"速いから速度を落として"と言っていた人達もさっさとゴールを目指して行ってしまった。
力が余っていた私達が取り残されてしまった。
森本から兼六園に向かうところで、南さんや鈴木さん、向地さんに"皆が付いてこれないから速度を落としてください、さくら道は楽しむものだから皆でゴールしましょう"と言った自分を後悔した。(今も後悔している)

またゴール手前で"どいて"と言って追いぬいていった人もいた。
歩いていたので邪魔だったかもしれないが、IAU ASIA CHAMPIONSHIPの24時間走で大会記録を出したイアニスクロスもアジア記録を出した関家君も前を行くランナーに"どいて"とは一言も言わなかったし、聞かなかったのがここで耳にするとはおもわなかった。
ゴール手前で人間性の現実に目覚め、しらけムードになってしまった。

しかし、ゴール手前1キロ、五箇山から協力しながらここまで来てくれた私達5人は、手を繋いでゴールを目指す事にした。
ルネス入口に到着。
前のランナーがゴールするのを待ってからスタートしようと待っていたら、後から着たランナーが先に行ってしまった。
そのランナーがゴールしたのを見届けてから私達5人は手を繋ぎゴールを目指した。

荘川桜あたりから抜きつ抜かれつ走ってくれた南さん、鈴木さん
私達を待っていたマッチャン、最初は不信感、喧嘩、そして怪しい二人と化した向地さん、計5人で手を繋ぎゴールに近づいた時、私の目からは自然と涙があふれ出てきた。
"海宝さん、酒井さん、スタッフの皆さん、応援して下さいました皆さん、一緒に走ってくれた多くのランナーの皆さん、南さん、鈴木さん、マッチャン、そして向地さん、ありがとう。
皆さんのおかげで、本当に楽しいさくら道を体験することができました。"


ゴールタイムは46時間46分46秒であった。
1度も眠くならず、命がけで走れたさくら道に大変感謝である。


大変だったでしょうと言われたが、大変だったとは思うことは一つも無い楽しい旅であった。
来年も伴走ができたら良いなと思えるゴールに感謝である。



鈴木さん、私、向地さん、マッチャン、南さん
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