木村朗国際関係論研究室
コラム・バックナンバー

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No.3 TITLE:自自連立政権と新ガイドライン関連法案を問う!(その1) DATE:13 Feb 1999 22:19:03
昨年8月末の北朝鮮による「テポドン」発射事件とその後の地下核施設疑惑の浮上を契機に、自前の軍事偵察衛星保有への着手、米国主導のTMD(戦域ミサイル防衛構想)への参加、そして新ガイドライン(「日米防衛協力のための指針」)の一層の促進など軍事力強化を求める動きが急速に強まっている。こうした追い風を受ける中で、自民党と自由党との連立政権が今年一月に発足し、現在開催中の通常国会において、新ガイドライン関連法案が最大の焦点となっている。

 この自自連立政権成立の背後に、衆参両院で単独過半数に足らずに国会運営に苦しむ自民党、確たる支持組織を欠き次の総選挙への明るい展望が持てぬ自由党という、両党それぞれの党内事情があったことは確かである。その意味で、自自連立政権を、政権維持のための単なる「理念無き数合わせ」(自民党)、あるいは党存続をかけた苦し紛れの「無原則な妥協」(自由党)と批判的に評価することができよう。

 ところが、その一方で、経済再生と安全保障強化を共通の目的として何よりも政局の安定を優先させた、保守合同(55年)以来の画期的な「大同団結(一種の挙国一致)」内閣であり、今日行き詰まりつつあった保守政治に新たな展望を切り開くものとの積極的な評価がなされている。今回の政変劇を実現させた陰の主役とも言うべきクリントン米政権(および日本の財界)が、新政権発足を「歓迎」し、経済再生と安保強化を「期待」する姿勢を見せているという事実は特に注目されねばならない。

 また、昨年11月の小渕(自民)・小沢(自由)両党党首会談での合意を前提に行われた両党の政策協議では、安全保障問題が中心となり、国連平和維持活動への積極的な加、という大まかな点で一致したものの、新ガイドライン関連法案などでの基本認識の相違を残したままの連立政権の出発となった。

 だが、その直後に開催されて今日まで続く通常国会では、民主党など野党側の足並みの乱れや対応のまずさもあって、こうした連立政権の矛盾や自民・自由両党の不一致点もあまり問題とされることもなく、異例とも言えるスピードで予算審議ばかりでなく、新ガイドライン関連法案の審議までが修正折衝という形でそれこそトントン拍子に進められようとしている。

 わたしたちは、自自連立政権が発足して一月が過ぎた今の時点で、本格的な論戦もなく枝葉末節的な論議に終始している通常国会での審議のあり方の異常さ(与党側があまりにも「順調」であることを驚くほどの!)をこのまま黙って見過ごしていてはたしていいのであろうか?
 
 1999年2月13日
(「紀元節復活反対、思想信教の自由を守る奄美地区集会」から帰って) 

 

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Composed by Katsuyoshi Kawano ( heiwa@ops.dti.ne.jp )