木村朗国際関係論研究室
コラム・バックナンバー

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No.20 TITLE:「PKO協力法の見直しの危険な落とし穴!―自自公連立と安保政策の転換
を中心に」
DATE:6 Oct 1999 17:58:28

   自民、自由、公明3党の巨大与党による新たな連立政権(第二次小渕内閣)が発足した。解散・総選挙どころか国会での新たな首班指名も経ていない、きわめて非民主主義的な(体制翼賛的なと言ってもよい)政権である。数合わせ(国会運営での安定)のための自自公連立であることは先の通常国会や今回の衆院定数削減への対処などを見ても明らかである。が、今回の3党による政権合意でとくに注目されるのは、教育および安全
保障での国家主義的な志向がますます強くなっていることであろう。

   すなわち、まず教育分野では、教育基本法の見直しを前提とした「教育改革国民会議」の設置が決まった。これは、国旗・国歌法の成立過程でも見られた「民族アイデンティティーの再確立」や「公共性の復権」という形での国家権力への忠誠・統合を強めようとする動きの一環である。それはまた、「歴史・伝統の尊重、愛国心の育成、道徳教育の視」という視点から、教育に対する国家の管理・統制を強化し、精神面での国家への国民の総
動員を可能とすることを意図したものといえよう。

    また、安全保障分野では、平和維持軍(PKF)への参加凍結の解除や平和5原則の見直し、有事法制の整備促進や領域警備への対応強化、あるいは多国籍軍への後方支援活動への参加といった一連の課題を実施あるいは検討することが合意された。これは、湾岸戦争以来の軍事的国際貢献の拡大・強化と国内面での危機管理・国家統制の強化といった流れの延長線にあるものである。この問題での3党間の意見は微妙に違っており、現時点において政府・自民党はPKF凍結の解除以外は慎重に事を進める姿勢を示してはいるようである。

    しかし、問題はその方向性であり、これまでの安保問題への対応の経緯から見れば、いずれは(自由党が主張するような)多国籍軍による本格的先頭活動への全面的参加に
行きつく可能性は否定できない。なぜなら、小沢氏が主張するところの「普通の国家」とは、「集団的自衛権」を前提にするばかりでなく、自らが最大の受益者である現存「国際秩序」(あるいは、さらにそれを拡大・強化した「新世界秩序」)に挑戦する「ならず者国家」を排除・妥当するための一方的軍事介入を「人道的介入」の名で正当化できると考え行動する国家であるからである。

    もちろん、そこでの日本の役割・存在は、あくまでも「唯一の超大国」であるアメリカを軍事的にも一体化して補佐することができるようなイギリスのような存在(現在の日本よりは「独立」はしているが、あくまでも「目下の同盟国」であって決して「対等の同盟国」とはなりえない---これは、軍事力優先の思考・立場である限り米国以外のいかなる国家も免れない!)

     以上の述べたように、現在の日本は、アメリカに従属したままの形での同盟・軍事力強化に向かう危険な道を選択しようとしており、まさに重大な岐路に立たされているといえる。今わたしたちに必要なことは、こうした軍事力・国家中心の発想から脱して真の平和戦略を提起して実践することである。それにはまず、周辺事態法に基づく自治体・民間協力のあり方など、身近な地域の具体的な問題からともに考え行動していこうではありません
か。

1999年10月6日(自自公連立政権の成立を受けて)
                                    木村 朗
 

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Composed by Katsuyoshi Kawano ( heiwa@ops.dti.ne.jp )